ごすと先輩と時々俺   作:Reppu

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今週分です。


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G2ナイル、レッドガンのNo2にしてミシガンのおっさんの右腕。元々はコイツがレッドガンのトップだったらしいがミシガンのおっさんに負け続け、最終的にスカウトの上総長の座を譲ったらしい。それはそうだろう、はっきり言ってコイツの技量はイグアス以下だ。恐らく機体構成から推察するに元々指揮官として後方から指揮及び支援を行うと言うのが基本的な立ち位置なのだろう。でなければアセンブリが致命的に下手クソかのどちらかだ。

 

『ミシガンが気に掛けて居たようだが、さて』

 

随分と余裕の口振りだと思えば、案の定複数方向から接近する機体反応をレーダーが捉えた。群れて気が大きくなっているのだろう、実にベイラムのやり方を体現した奴である。

 

「馬鹿か?」

 

あまりの様子に思わずそんな言葉が口をついて出た。成る程数の力というのは無視出来ない要素だ。実際先輩達とやり合えば肝を冷やす戦いを強いられるのだ、それは否定しない。だがなぁ。

 

「足りないな、俺を止めたければレッドガンを丸ごと連れてこい」

 

質を数で補うなら相手にとって脅威になるまで数が居なければ意味が無い。ドローンから降下し降着姿勢の解け切れていないMTへ向かってミサイルを放つ。分散すらしていなかった連中はマルチロックで一網打尽に吹き飛んだ。

 

『成る程、奴の目利きは相変わらずのよう…』

 

まだ余裕をかましている奴にショットガンを撃ち込んで回避を強要、その減らず口を強引に黙らせる。ナイルが調子に乗っているのはここが連中の拠点で増援が間断なく送られてくることと、俺が輸送ヘリという荷物を抱えているからだろう。無礼られたものだ、その程度で戦力を出し惜しみ出来る相手だと思われるとは。

 

「どうした?レッドガンの躾とやらは逃げ回る事なのか?」

 

からかってやるがナイルの奴にすれば他に選択肢がない。友軍への誤射を避けるためにミサイルを中心でかためられた武装はミサイルを回避出来るACとの相性が非常に悪いのだ。その上奴は近接武装を一切持たず、左腕に装備するのはリニアライフルだ。これはエネルギーをチャージする事で威力を向上させることが出来るタイプの武器だが、その場合反動が大きく移動しながらの射撃が出来ないというデメリットも抱えている。恐らく単独で交戦する場合はミサイルで足止めをしつつリニアライフルで削るというスタイルなのだろうが、前提であるミサイルで足止めが出来ない相手には逃げ回るしかない。その上奴は鈍足な重量脚に射撃適性の低い重量腕を装備するというちぐはぐさだ。レッドガンの連中は一度アーキテクトの講習を受けた方がいい。

 

『レイヴン!?』

 

パルスブレードとショットガンで奴を追い詰めているとMTのおかわりがやって来る。それにヘリのパイロットが悲鳴を上げるが心配のし過ぎというものだ。

 

『ぐっ!?』

 

アサルトブーストで一気に接近しナイルのACを蹴りつける。ここまで蓄積していた衝撃で奴は予定通りスタッガーに陥る。振り向きざま降下体勢に入っていたベイラムの輸送ヘリへミサイルを斉射。幾らこっちが戦っている最中とは言え戦場のど真ん中までヘリで来るとか、こいつら頭のネジが何本か飛んでるんじゃないか?

 

「主人なら間に合っている、躾けたければ自分の所の犬にしろ」

 

更にクイックターンの動きのままパルスブレードを最大出力で励起させナイルへ斬りかかる。再起動の間に合わなかった奴はそれを真正面から受ける事になる。

 

『成る程っ、確かにお前はっ…』

 

おまけでショットガンを叩き込みついでにもう一度蹴りつけてやると、奴の機体が吹き飛んでコックピットが弧を描いて打ち出される。その直後機体の方は爆発を起こしてその場に転がった。

 

『ACディープダウンの撃破を確認、敵の増援も引き揚げている』

 

『追撃は無いんだな?レイヴン助かった、我々はこのまま離脱する!』

 

そう言ってルビコン解放戦線の輸送ヘリが再浮上するとゆっくりと領域を離脱していく。そして俺の横を通り過ぎる瞬間、不意に通信が繋がり老境を感じさせる男の声がコクピットに響いた。

 

『レイヴン…意志の表象。…だが全ては消えゆく余燼に過ぎないのだ』

 

ドルマヤンの爺様か。あんた真面目過ぎんだよ、ルビコニアンらしくちょっとコーラルキメてみろ、存外セリアとやらもまだアンタの周りを彷徨いているかもしれんよ?

 

『ミッション完了だ。ご苦労だったな621、戻って休め』

 

「了解」

 

ご主人のいつもの言葉に俺は返事をすると機体を飛び上がらせたのだった。

 

 

 

 

「独立傭兵からの依頼?」

 

捕虜奪還から一夜明け、相変わらず人としての尊厳に喧嘩を売っているアーキバスのレーションを口に運んでいるとご主人が新しい仕事が入ったと告げてきた。だがご主人はどうやら乗り気ではないらしい。

 

「BAWS第2工廠に対する惑星封鎖機構が実施する強制監査の妨害。依頼自体は珍しいものではないが…」

 

企業が後ろ暗い内容を隠蔽するために封鎖機構の監査部隊を襲うなんて事は珍しくないらしい、法も秩序もあったもんじゃねえ世界である。まあそれで飯を食っている俺が言えた義理ではないのだが。問題はこうした依頼は本来企業から直接来るのがセオリーらしい、そりゃ仲介が増えれば増えるだけ情報漏洩のリスクが高まる訳だから当然だろう。だが今回の依頼は俺が口にした通り独立傭兵から出されているのだ。しかも依頼者は傭兵支援システムに登録されていないと言うのだ。そらそうだ、なんせ依頼者はその傭兵支援システムそのものなんだからな。

 

「罠?」

 

胡乱な目つきで620がそう口にする。そうなるよな、あのポンコツなんでこれで俺が受けると思ったんだ?まあ受けるんだが。

 

「俺をはめようって?誰が何のために?」

 

ご主人の手駒が俺だけなら解らない話ではない、殺せればご主人が詰むからだ。ご主人の本当の仕事を知っている人間ならそれを狙う可能性もある。だが今のご主人には先輩達が居る。それに俺はこの仕事の意図を知っている。

 

「ならばなぜこのけいととやらがいらいをしてくるんだ?」

 

「偽装だろう、相手は俺ではなくて封鎖機構だろうが」

 

そもそもこの依頼は惑星封鎖機構の戦力を削ぐためのものだ。連中の戦力を少しでも分散させ企業がコーラルへ辿り着く確率を上げる、その程度のものだろう。その上で俺へ声が掛かったのは、ルビコンに来てから短時間で高い戦闘力を示したからだ。

 

「惑星封鎖機構が活動している以上惑星内で好き勝手にすることは難しい。だが監査の妨害を行えば一時的に注意を集中させる事も可能か」

 

BAWSは惑星封鎖機構からすればあらゆる組織に武器を売りさばいている厄介な企業だ。これで監査を妨害したとなれば惑星封鎖機構の注意は一気に集中する可能性すらある。…そう考えれば独立傭兵なんかに頼らず自前で何とかするべきだろうが、如何せん彼女は手駒が無いからな。

 

「BAWSに注意が向くなら俺達としても動きやすくなる。マスター、俺はこの依頼を受けようと思う」

 

それに俺の最終目的を達成するには連中の協力が必要だからな、その為にはここで連中の興味を引いておく必要がある。

 

「…解った。ではその様にしよう」

 

「ますたー、いらいをうけるならわたしからもていあんがある」

 

話が纏まった所で横に居た617がそう口を開いた。

 

「なんだ?」

 

「わくせいふうさきこうをおそうなられんちゅうのきたいをにゅうしゅしたい。われわれもずいはんしていいだろうか?」

 

彼女は悪い笑顔でとんでもない事を言い出した。いやいや、入手ってどうやってだよ?

 

「どうじにすべてのきたいをとうにゅうするわけではないだろう?ならたいきちゅうのぶたいをおそえばむずかしいはなしじゃない。そうでなくてもげきはしたきたいをかいしゅうすればなんきかはかくほできるはずだ」

 

「疑問、拾ってどうするの?私達にはACがある」

 

もっともな620の疑問に617は真剣な表情を作り直しつつ持論を話し出した。

 

「まずぜんていをせいりしておく。ますたー、われわれのもくてきはこーらるのかくほ、つまりまいぞうちをだれよりもはやくはっけんすることというにんしきでかまわないか?」

 

「ああ、そうだ」

 

ご主人の肯定する言葉に一度頷くと617は話を続ける。

 

「われわれはせんりょくとしてはゆうしゅうなぶるいだろうが、いかんせんかずがすくない。かりにさいしょにたどりついてもべいらむやあーきばすにしゅうげきされれば、かんたんにうばわれてしまうだろう」

 

ご主人は俺達にコーラルを見つけて売りさばくと説明している。だが俺達には大量のコーラルを持ち運ぶ手段がないから、必然見つけた埋蔵地を確保維持しなければならない。なにしろ企業は一番最初に見つけただけで権利を素直に認める様な連中ではないからだ。尤もご主人の本当の仕事は見つけた時点で達成できるから、ご主人はそんな事気にもしていなかっただろうが。うん、案外ご主人も抜けているな。そして表向きの話しかされていない617の説明はこうだ。

 

「だからわたしたちもせんりょくをかくじゅうしなければならない。さいわいきぎょうとてきたいしているそしきにはつてがある」

 

ルビコン解放戦線やドーザーと言った犯罪者達。ランク外の独立傭兵なども報酬次第で味方に付けられるだろう。貧相な装備や巫山戯たアセンブリのACでは戦力にならなくとも、高性能なMTを用意すれば数合わせくらいには使える連中だ。

 

「こーらるをてにいれるにはわれわれもそうおうのきぼにそだっておくひつようがあるとおもう、どうだろうか?」

 

「確かに手に入れた後の事も考えておく必要があるね」

 

「れぎおーん」

 

「だがそれならある程度機体の補修や整備の出来る集団が必要だろう、それはどうする?」

 

俺は解っていて敢えてそう聞いくと、想定通りご主人が答えてくれた。

 

「そちらは俺に伝手がある。当たってみよう」

 

その言葉に先輩達が嬉しそうに頷く、有意義な提案が出来た事に満足したのだろう。だがご主人は内心複雑なのようで表情を消している。そして俺へと向き直るといつもの言葉を口にする。

 

「方針は決まったな。621、仕事の時間だ」

 

俺は小さく頷いた。

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