ごすと先輩と時々俺   作:Reppu

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BAWS第2工廠、その名の通りルビコンに唯一残っている星内企業BAWSが保有する製造拠点だ。各勢力にばらまかれているMTの大半はここで製造されていて、ある意味ルビコンにおけるコーラル争奪戦の生命線となっている場所と言える。

 

『ミッション開始だ、惑星封鎖機構の監査部隊を全て排除する』

 

『独立傭兵レイヴン、ご協力に感謝します。後ほど合流しましょう』

 

そんな暗号通信と共にシャッターが開放される。取り敢えず目の前に居たMTへショットガンを撃ち込むと連中は慌てた様子で動き出した。

 

『なっ!?コード15、所属不明ACを確認!』

 

BAWSの方は強制監査へ抵抗する素振りを見せていなかったからな、完全に気が抜けていたんだろう。

 

『何処から出てきた?排除しろ!』

 

『SGの歩哨MTだ、レーザーガンに注意しろ』

 

見慣れたBAWS製に比べれば性能は上なのだろう、ご主人の言葉通りこちらへ向けられたMTの銃口から発せられた高出力のレーザーによって大気がプラズマ化し機体を照らす。尤も運動性能は大差ないので攻撃に当たりさえしなければ対処は変わらない。素早く距離を詰めてしまえば後はこちらのものである。

 

『コード31C、所属不明ACにより被害が出ている』

 

『援護する、これ以上やらせるな』

 

工廠内部に入り込んでいる機体を屠りつつ外壁へと向かって行くと、そんな台詞と共に一回り大きなMTが現れる。すかさずケイトからご丁寧な説明が入った。

 

『レイヴン、LC機体には注意を。量産型とは言えあの制圧艦隊にも配備されています』

 

うん、知ってる。ついでに言えばこいつが大した性能じゃない事もな。LC、ライトキャバルリーと呼ばれるこのMTは運動性能を重視した設計になっている。特に滞空性能は秀逸でACすらも凌駕している。尤もその為に他の性能は控え目だったりするのだが。ミサイルを撃ち込めば連中はマニュアル通りにデコイを射出しつつ回避機動を行う。

 

「経験不足だな、出直してこい」

 

大気中でのクイックブーストによる回避は空気という障害物によって想像よりも遙かに距離が稼げない。そしてLC機体はブースターによる移動速度は控え目な上、クイックブーストのクールタイムがACよりも遙かに長い。案の定大した距離も稼げずに空中で停止した機体にアサルトブーストで接近し、ショットガンとブレードを叩き込んだ。ついでに蹴り飛ばしてやれば地面へ激突して爆発する。うむ、所詮空を飛べてちょっと固いだけのMTだ、何処かの封鎖ステーションに呼び出してくるガチギレルビコニアンに比べれば可愛いものである。

 

『これは…、監査にしては戦力が過剰だ』

 

現れた3機目を処分しているとご主人が戸惑いを含んだ声音でそう呟く。そらそうだ、なんせこの工廠はコーラルを利用しているからな。現地民がミールワームの養殖に使用する程度の少量なら封鎖機構も目こぼししているようだが、工廠を賄うとなればそれなりの量になる。もし他企業の手に落ちてしまった場合、それなりに纏まった量が星外へ持ち出されるというリスクを考慮すれば工廠を制圧し管理下に置きたいと考えるのは当然だろう。

 

『この辺りも片付いたようだな』

 

『…流石は壁越えの傭兵、引き続きよろしくお願いします』

 

『ケイトとか言う傭兵、アリーナにも登録がない。後方部隊を襲撃すると言うが、当てにはするな』

 

コックピットを撃ち抜き最後の1機を無力化するとケイトとご主人が口々にそう言ってくる。大丈夫だご主人、今回に限って言えば奴はちゃんと仕事をするからな。…しかし相変わらず綱渡りな計画だな。奴の資金力からすればもう少しくらい戦力も用意出来るだろうに。

 

『コード78、応援を要請。被害が大きい』

 

『こちらも何者かの襲撃を受けている、目下対処――』

 

『手筈通りか、ケイトが動いたようだな』

 

外壁の上から狙撃してくるLC機体をミサイルで処分しつつ移動していると、そんな通信を傍受する。うん、ここまでは記憶と全く同じだ。ならばこの後は。

 

『工廠内部にいる監査部隊の殲滅を確認した。ケイトとやらが来る前に片付い――』

 

『レイヴン、こちらも片付きましたが一つ報告が。封鎖機構に想定外の動きがあります、ひとまず合流しましょう』

 

最後の機体を切り伏せると再びケイトから通信が入る。以前と全く変わらない状況に少しだけ安堵する。連中がこちらへ向かっているのなら、先輩達はまだ見つかっていないということだからだ。4人揃っている状況なら負ける事はないだろうが、先輩達まで奴に目を付けられるのは避けたい。何せあんな運任せな計画を立てるポンコツだ、思いつきで先輩達を巻き込みかねないし、そうなれば俺の記憶が何処まで役に立つか解らなくなってしまう。

 

『聞いた通りだ、マーカー情報を更新する』

 

ご主人の言葉に従い壁外へと飛び出すと、ブースターを噴かせて1機のACが接近してくる。パーツを全てオールマインド製で誂えているその姿は自分の正体を隠す気があるのか問い詰めたい所であるが、今回は空気を読んで見逃しておく。

 

『貴方が、独立傭兵レイヴン…。壁越えの傭兵と親睦を深めたい所ですが、…その時間は無いようです』

 

彼女が視線を向ける先には、轟音と共に巨大な影が凍り付いた湖へ降り立とうとしている。そしてその影へ侍るように噴射炎の尾を光らせる異形が湖面を踏みしめると同時に通信が聞こえてくる。

 

『コード23、現着。被害状況は31Cです!』

 

『監査部隊は全滅か、やってくれたな』

 

『システムから承認が下りた、強制排除執行』

 

『特務部隊だと?馬鹿な…っ』

 

轟音と共に着地したカタフラクトと共に現れたのはエクドロモイと呼ばれる高機動型の特務機体だ。こちらを見とがめるのと同時に素早く左右へ展開し包囲を仕掛けて来る。

 

『近く、制圧艦隊がルビコンへやって来るでしょう。これはその先遣部隊!』

 

だからお前は本当に正体を隠す気があるのか?今のお前はランクにも未登録の独立傭兵なんだぞ?そんな星内外について詳しい情報を持ってるなんて明らかに不自然だろう。俺はカタフラクトへ接近し、可及的速やかに処分を開始する。既にご主人から訝しんでいる気配を感じるのだ、これ以上時間をかけて余計な事を喋られては今後に悪影響を及ぼしかねない。てかコイツ良くこの調子で今まで暗躍なんて出来たな。

 

『強すぎる…システムに…照会…』

 

苛立ちが動きを少し攻撃的にしたらしく、腹癒せに攻撃を加えたカタフラクトは瞬く間に機能を停止する。と言うか以前もあっさり潰してやったのに弱点を改善していないとかなんなんだ、ナメプとかいうやつか。

 

『片方は素性が割れました、独立傭兵です。識別名は…レイヴン』

 

『あのレイヴンなら死んだ筈だ。もう片方は?』

 

その間エクドロモイ2機とケイトは渡り合っている。劣勢ではあるが通常のランク外に比べれば大分マシだ。恐らく既に何人かは取り込んでいるのだろう。

 

『情報がありません、未登録傭兵かと』

 

交戦中にお喋りとは随分と余裕をかましてくれる。なので遠慮無く近接装備仕様の方へミサイルをぶっ放す。

 

『馬鹿な…あのレイヴンなのか…!?』

 

いいえ違います。けどそれは大して重要じゃない、何故ならこれから死ぬ奴にとって殺した相手が本物かどうかなどどうでも良いことだからだ。こちらのミサイルで姿勢を崩されたエクドロモイへフルチャージされたエネルギーライフルの光が突き刺さる。特務機体としては耐久力の低いエクドロモイではそれに耐えられず、炎と黒煙を吐き出しながら擱座する。

 

『おのれ…レイヴンっ!』

 

それを視界の端で確認しながらアサルトブーストでもう1機へ接近、敵機は慌てて距離を取ろうとするが判断が遅い。あまり傷付けないよう、パルスブレードをマニュアル操作でコックピットへ突き立てる。ノイズ混じりの怨嗟の声が通信に響き、ブレードの刀身が消失するのとほぼ同時に最後のエクドロモイが脱力して崩れ落ちた。

 

『特務機体の全機撃破を確認した。仕事は終わりだ、621』

 

『お疲れ様でした、レイヴン。貴方と共に戦えて良かった』

 

戦闘が始まる前は交流がどうとか言っておきながら、ケイトと名乗る傭兵はさっさと飛び去ってしまう。

 

『強制監査のみならず、特務機体まで投入されるとは…。この工廠で一体何があった?』

 

「それよりもマスター、急いで荷物の回収をしよう。この大物は持って行きたい」

 

コアユニットだけ破壊したからカタフラクトの武装はほぼ無傷だし、エクドロモイも俺が撃破した方はそれなりに無事な部分も多い。復元は難しいだろうが、こいつらのパーツを使うだけでもそれなりの性能が出るはずだ。

 

『…そうだな、今ヘリを向かわせる。621、施設内の残骸も可能な限り回収しておけ』

 

「了解。マスター、先輩達は?」

 

『工廠外に待機していた連中の回収作業中だ』

 

『あのけいととかいうどくりつようへいのおかげでおおいそがしだ!』

 

『たいりょうだー』

 

俺の質問にご主人が答えたのと同時に専用回線が賑やかになる。

 

『あの独立傭兵、良い腕してる』

 

『ああ、クセの強そうな装備だったけど使い熟していたな。まあ脅威と言うほどではなさそうだけど』

 

620と618は奴の戦闘能力について検討している。仕方が無いだろう、奴が取り込んでいるのは過去に死亡した強化人間なのだ。今も生き延び続けている者にしてみれば格下に見えても不思議じゃない。尤も本気を出してきたら油断は出来ないが。

 

『奴の詳細についてはこちらで調べておこう。回収が済み次第帰還しろ』

 

ご主人の言葉に俺達はそれぞれ返事をしながら作業に移るのだった。

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