ごすと先輩と時々俺   作:Reppu

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通算UAは一万超えちゃうし、お気に入りも500突破してるし、
本当にありがとうございます。
そんな6話。

ついでに5話超えたし連載にします。




テスターAC破壊。依頼内容はベイラム系列企業、大豊が導入したACを配備前に撃破して欲しいというものだ。まあ実際はそうではなく、ベイラム専属のAC部隊レッドガンへ配備される機体なのだが。

 

「アーキバスが優勢になるわけだ」

 

依頼内容を確認しながら俺はベイラムの現地部隊に同情する。ベイラムからの依頼は主にルビコン解放戦線、つまり現地武装勢力に対する依頼であるのに対し、アーキバスからの依頼は積極的にベイラムの戦力を削ぐ方向のものだ。これでせめてルビコン開放戦線がアーキバスに手を出せるなら三竦みにもなるだろうが、現状の彼等はアーキバス・ベイラムの双方と比較にならない弱小勢力である。だから本来ならばベイラムもアーキバスへ攻撃を行うべきなのだが、何故かそうした依頼は無い。これではアーキバスが一人勝ちする状況になるのも無理はないだろう。

 

「ま、俺には関係の無い話か」

 

高台に陣取り俺はそう呟く。実績作りの為にこの依頼を受けないと言う選択肢は無い。そして最終的な目的からすれば、アーキバスもベイラムも邪魔するなら潰すのには変わりないのだ。まあ、あの暑苦しくて小うるさいミシガンやレッドの奴が居なくなるのは少しばかり寂しい気もするが。

 

『ミッション開始だ。目標を捕捉した、621、仕掛ける好機だ』

 

その声に俺は頷くと高台から飛び降りつつアサルトブーストを実行する。以前の機体より遙かに軽量に組み上げられた機体は心地よい加速と共に俺を敵機へと誘った。

 

『敵襲!解放戦線…、いや独立傭兵か!?』

 

大豊製のフレームで統一されたACからそんな戸惑った声が聞こえる。

 

『相手は輸送にアサインされた訓練生に過ぎん、だが油断はするな』

 

「了解」

 

ご主人の声にそう返事をしつつも内心では溜息を吐かずにはいられなかった。試供サンプルのACに訓練生なんて取り合わせでは、幾らACに乗っていると言っても相手にならないからだ。尤も記憶通りなら最低限の戦闘機動は出来ていたし、クイックブーストも使えていたから強化人間か生身なら相当な上澄みである。それこそ戦闘用にリペアキットを積むだけでMT部隊相手なら後れを取る事はないくらいの実力はあるだろう。案外生き延びれば欠番になっていた7番を引き継いでいたかもしれない。…そうか、そんな可能性もあるんだな。

 

『やってやるっ、俺だって訓練を受けているんだ』

 

そんな言葉と共に果敢にも挑みかかってくる敵AC。だが相手の機体構成から多少は技量を推察出来ないようではまだまだだな。

 

『なっ、速い!?』

 

そらそうだ、積載量からすればかなり重武装をしているとは言え、こっちはシュナイダーの軽量2脚。エルカノのフレームに次いで軽いコイツの運動性は我らが戦友VⅣラスティが証明済みだ。まあその軽量化の為に支払っている代償も大きいのだが。相手の放ったミサイルを躱し、右手に携えた重ショットガン、全621御用達のZIMMERMANを発砲する。至近距離で放ったそれは相手が重量2脚である事も手伝って全て命中する。接近した俺に対して相手はパルスブレードを励起させるがその動きは残念ながら遅すぎる。サイドステップとクイックブーストを併用して横へ大きく飛び退くと同時に両肩のミサイルを発射する。

 

『ぐっ!れ、レッドガンの正規パイロットに…この機体を届けるのが…俺の!』

 

そうだな、だから襲撃された時点でお前が取るべき行動は応戦ではなく逃亡だったんだ。半分のミサイルは避けたが、僅かに時間差を付けた後発分は全て着弾。衝撃にぶれる相手へ更にショットガンを撃ち込む。

 

『気ままな傭兵に、金だけで殺されてたまるか…!』

 

『…直撃を狙え、これ以上付き合う事はない』

 

敵パイロットの悲壮な言葉にご主人がそんな事を言い出す。自分の目的のために前途ある若者の命を奪うことに罪悪感を抱いたか、それともそんな恨み言を俺に聞かせたくないか、あるいはその両方か。まあ両方だろうな、つくづく俺達の中でご主人が一番この仕事に向いていない。

 

「了解」

 

短く答え、俺は少しばかり本気を出す。機体のオートエイム機能をカット、全武装をフルマニュアルに切り替える。

 

『こんな所で、死んでたまるか!』

 

おう、その意気だ。だからしっかり逃げろよ?パルスブレードを励起させ、先ず狙ったのは相手の右腕。上腕から切り飛ばされた腕が回避運動の速度に振り回されて遠くへ飛んでいく。更にショットガンを発射し背面に装備されていたミサイルランチャーを破壊する。案の定武器破壊なんて攻撃に慣れていない敵パイロットは緊急パージが間に合わず左肩に重篤な損傷を負ってしまった。これで残る装備のパルスブレードも満足に扱えない。

 

『ひっ!?』

 

頭のネジが外れた連中はここからでも蹴りだけで応戦してくるが、流石にそんないかれた訓練は施されていないらしい。漸く相手は俺に敵わないと理解して逃亡を始める。だが悪いな、依頼完了にはその機体を逃す訳にはいかないんだ。背を向けたACへクイックブーストで接近しつつ廃熱を終えたパルスブレードを再び振るうと、両足の膝下を失ったACが泥水の中につんのめるように転倒した。おい、そろそろだろう。

 

『畜生…っ』

 

悔しさを滲ませた声音と共に敵パイロットが漸く脱出レバーを引いた。吐き出されるパイロットを見送りつつ俺が残ったACの胴体へショットガンを叩き込むと、既に限界を迎えていた敵機は炎と黒煙を噴き出して機能を停止する。

 

『…敵ACの撃破を確認した。621、仕事は終わりだ、帰投しろ』

 

「了解」

 

いつものように返事をし、俺は拠点へ帰還する。ブースターを噴かし移動を始めるとご主人が話し掛けてきた。

 

『621、お前が撃破したテスターACだが、あれはベイラム専属AC部隊レッドガンに届けられるものだったようだ』

 

ええ、存じております。

 

『レッドガンはベイラムの主力、所属隊員の実力は折り紙付きだ。頭に入れておけ、621』

 

「了解」

 

とは言うもののレッドガンのことは良く知っている。何せ何度も殺し殺された仲である。それでもネガティブな感情を抱けないのは連中の持つ雰囲気のせいだろう。そう考えればベイラム上層部がミシガンのおっさんを危険視するのも良く解るというものだ。尤もご主人の物言いには些か誇張があるのも否めない。さっきご主人はレッドガンに所属する隊員の実力は折り紙付きと言ったが、戦った身としては腕利きはミシガンのおっさんと精々G4ヴォルタの二人くらいだ。後は辛うじてG2ナイルとG5イグアスが入るかどうかという具合である。寧ろ戦闘能力で言うならアーキバスの強化人間部隊であるヴェスパーの方がずっと脅威だ。戦略面だけでなく戦力でもベイラムはアーキバスに後れを取っていると言っていい。

 

『…621、先程の件だが』

 

「なんだ、マスター?」

 

『敵のパイロットを何故見逃した?』

 

やっぱり気付くよな。

 

「依頼の内容はACの撃破、パイロットの生死は含まれていなかった」

 

『成る程、では聞き方を変える。何故わざとあのパイロットを見逃した?』

 

俺の自主性が何処に向かっているかを知りたいのか?ここは素直に答えておくか。

 

「依頼の傾向から、これが最適だと判断した」

 

『…続けろ』

 

「ベイラムの依頼は現地武装勢力の排除に関するものだが、アーキバスの依頼はベイラムを狙ったものだ。企業間の競争はアーキバスが優勢だと考える」

 

『……』

 

「だからあのパイロットを逃した。輸送にアサインされたとすれば、あのパイロットは機体に慣れていなかったはずだ。それでもあれだけ動かせた。ベイラムにとっては貴重な人材だ」

 

『その言い方はベイラムに肩入れすると言う意味か?』

 

「短期的には。企業の力は拮抗している方が俺達には都合が良い、後一押しの戦力は高く売りつけられる」

 

弱い側に付いて戦争を長引かせるのは、争いを飯の種にする傭兵によく見られる行動だ。

 

「それに連中を出し抜くにも注意を引いてくれる相手が居た方がやりやすい。そう判断した」

 

『そうか、妥当な判断だ』

 

…それだけ?ご主人、飼い犬が勝手にやったんだよ。ここ、怒る所ですよ。先に一言言えとか、そう言う判断は俺がするとか!ほんともうこのご主人は!ぎゅんぎゅん上がるご主人ポイントを何とか宥めつつ、俺はもう一件の依頼を考える。あちらはベイラムのばら撒き依頼で、ルビコン解放戦線の輸送ヘリを破壊すると言うものだった筈だ。ここから大して距離も無いし、またついでに片付けようかと考えていると、ご主人が口を開いた。

 

『621、今日の仕事は終わりだ』

 

「…了解」

 

俺の思考を先回りした言葉に素直に従うことにする。出撃前にチェックはしたが、使っているこのフレームは全て中古なのだ。外観からは解らない損傷などが戦闘機動で顕在化し戦闘中に破断など起こしたら笑い話にもならない。そう考えれば慣らしが終わったなら一度精査すべきだろう。

 

「そういえば、マスター。先輩達はどうしてるんだ?」

 

俺が出る頃には機体を組み上げて最終調整をしていたと思ったが。

 

『全員登録を済ませて依頼を受けている。お前のものに比べたら小さい仕事だがな』

 

新規登録は当然ながらランク圏外だ。一応同じ様な依頼を傭兵支援システムから受けることが出来るのだが、大抵は単独ではなく複数名での受注依頼になる。当然報酬は人数で割られるし、そもそもの依頼料もランク圏内とは文字通り桁が違う。なので大半は弾薬費の嵩む戦闘依頼では無く、俗にスカベンジャーなどと呼ばれている戦場跡の廃品漁りの依頼に精を出す事が多い。まあ先輩達なら当然前者だろうが。

 

「撃破対象が不憫だな」

 

本来ならランク上位でもおかしくない先輩達に集団で襲われるとか悪夢でしかないだろう。とは言うものの先輩達も仕事を熟さねばランクを上げることすらままならないのだ。悪いが俺達の未来のために死んで貰おう。そんな事を考えつつ、俺は拠点へと戻ったのだった。




機体紹介

621

【挿絵表示】


ハウンズの反応は、単独で仕事を行うにもかかわらず積載量の制限が厳しく安定性に欠ける軽量2脚で、特にジュエネレーター補正が低く内装の制限も多いシュナイダーを選んだ事への感想です。
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