ごすと先輩と時々俺   作:Reppu

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主人公最強というタグを付けたら友人に、
「そもそもゲームの主人公って最強では?」
と冷静に突っ込まれました。
そんな8話。




その通信は以前も経験したことがあるものだ。これ以降ルビコン解放戦線から依頼が増え、結果的に黒幕であるオールマインドの行動を妨害した事で俺はリリース計画に巻き込まれる事となる。つまりここで受けるのが俺的には最良の選択な訳だが…。

 

『報酬はベイラムの2倍用意しよう。色よい返事を待って――』

 

「あ」

 

交渉役が言い終わるより先に618が依頼を承認し、イグアスへ向けて突っ込んでいく。…うん、結果的に予定通りだからヨシ!

 

『…ルビコン解放戦線から友軍識別タグが交付された。連中の戦力を上手く使え』

 

『なっ!?テメエ何しやがる!?』

 

ご主人が説明する間も無く618がイグアスへと斬りかかる。ブレードから放たれた赤い光波がイグアスを直撃、当然ながらイグアスは混乱した声音で文句を言うが、618は愉快そうに言い返した。

 

『どうした飼い犬、ご自慢の実力とやらを見せてみろ。それともレッドガンは口だけか?』

 

『…そう来るか、ハンドラーウォルター。G4、G5応戦しろ!G13とG14はお前達と遊びたくなったようだ!!』

 

『抱き込まれやがったか!?』

 

イグアスの元へ合流しようとするヴォルタへ向けてミサイルを放ち、その動きを妨害する。抱き込まれたというよりもイグアスが俺達の逆鱗に触れたが正解なのだが、それを教えてやる必要はないだろう。教えた所で状況は変わらんしな。細かい跳躍とクイックブーストでヴォルタの攻撃を避けながらミサイルとショットガンで確実に損傷を蓄積させていく。タンク脚は安定性が高くスタッガー状態にするのは難しい。かといって軽々に接近戦を仕掛けるにはヴォルタのアセンブリは危険だ。ミサイルランチャーはともかく近距離で威力を発揮する重ショットガンに加え、腕と肩のグレネードランチャーは格闘後の硬直に撃ち込まれれば軽量級のAPなど容易に吹き飛ばされてしまう。もし彼にイグアスと同じ位のパイロット適性があればミシガンに勝つことだって夢では無かっただろう。

 

「G4、同じ作戦に参加した誼みだ。そのヘッドパーツは止めておけ」

 

『何を言って!?』

 

3度目のショットガンの直撃で奴の機体はスタッガー状態に陥った。こうなってしまうとACは制御が回復するまで身動きが取れなくなってしまう、重量の大きいタンク型の機体構成は衝撃に対する限界値は高いが残留した衝撃から復旧する能力は乏しい。特にヴォルタの選んでいる頭部は、全パーツ中最も姿勢安定制御性能が低く衝撃が蓄積しやすいのだ。幾らタンク脚に重量級のパーツで構成した高耐久機といっても連続してスタッガー中に直撃を食らえばそうそう耐えられるものではない。

 

『クソっ、機体がイカれやがった!!』

 

パルスブレードの連撃にショットガン、止めのミサイル斉射を全て食らったヴォルタの機体は火花を散らして機能を停止する。だが流石はミシガンの直弟子だけあってヴォルタの判断は早かった。擱座と同時にコックピットハッチが吹き飛び座席が打ち出される。少しばかり冷えるが周囲には解放戦線の戦力も居ない事だしベイラムの連中がちゃんと回収出来るだろう。無事着地し逃げていくヴォルタを見送っていると渓谷の方からも爆発が起こった。

 

『ちっ!避け損なったか…』

 

ノイズ混じりにイグアスの声が聞こえてくる。どうやらあちらもケリが付いたようだ。

 

『G4及びG5、レッドガン2名の撃破を確認した。…ミシガン、機体の修理費は俺に回しておけ』

 

『巫山戯た遠足にしてくれたな、ウォルター。授業料の方は差し引いておくぞ』

 

まあ口喧嘩を理由に依頼放棄からの敵対とか巫山戯んなって話だわな。でもイグアス君の態度もどうかと思うよ?独立傭兵を使うならその辺りはちゃんと教育しとけ、おっさん。

 

『ミッション終了だ、帰還しろ二人とも』

 

「了解」

 

『…悪かった、621』

 

返事をしつつ輸送ヘリへ向かおうとしたら618がそんな事を言ってきた。どうした、急に?

 

「何がだ?」

 

『依頼を受けたのはお前だった。私が勝手にした結果、お前は任務中裏切ったという――』

 

なんだ、そんな事か。

 

「気にするな、どうせ元から企業は独立傭兵なんて信用しちゃいない。寧ろレッドガンを撃破したなんて話の方が箔がつく」

 

ミシガンのおっさんやご主人みたいな義理堅い方が少数なんだ。それに、

 

「618が受けなくても俺が受けていたさ。アイツは少し言い過ぎた」

 

そういうことにしておく。正直イグアスの戯れ言なんてミールワームの鳴き声と大差無い、だが金で裏切るよりもマスターを愚弄されたから依頼を蹴ったと言う方が聞こえは良いだろう。信念で動く奴は金で動く奴よりも厄介だが信用は出来る。

 

『そうだよな!』

 

うん、どこぞのスッラが俺の事を狂犬呼ばわりしていたが618も大概じゃねえかな?輸送ヘリへと戻りハンガーに機体を固定するとメールが届いていた。取り敢えず開くと音声が再生される。

 

『…ケッ、調子に乗るなよ野良犬共。ラッキーパンチが当たっただけだテメエらの実力じゃねえ。俺達レッドガンは壁越えを果たす。せいぜい指を咥えて見ていろ』

 

うーん、このにじみ出るチンピラ臭。

 

『あの野郎…』

 

うわ、618にも送ったのか。でもこれは思ってみれば使えるな。

 

「マスター、良いだろうか?」

 

『なんだ、621』

 

「G5が言っていた壁越えなんだが」

 

壁越え、それはルビコン解放戦線が保有している要塞、通称“壁”の攻略を指す企業連中の言葉だ。ルビコン解放戦線が保有するこの要塞はベリウス地方の中央に位置する交通の要衝となっている。記憶では先行したベイラムが失敗、そして疲弊した所を襲撃したアーキバスによって確保されている。尤もコーラルを求めるならばこの要塞攻略にはあまり意味が無い。何故ならコーラルはベリウス地方どころかこの大陸には無いからだ。だがそれを知らない企業はこの拠点を確保するために結構な戦力を投入している。

 

『どの企業が確保するかで今後の展開も変わるだろう。それがどうかしたのか?』

 

「ベイラムの壁越えに俺をアサイン出来ないだろうか?」

 

『…理由を聞かせろ、621』

 

俺の提案に一度息を呑んだご主人が何とか、といった様子でそう聞き返してきた。

 

「前にも言った話だ、企業の戦力は拮抗していた方がいい。ベイラムの壁越え、あれは失敗するぞ」

 

惑星封鎖機構のおかげで各企業は大規模な航空戦力をルビコンに持ち込めていない、だから攻略は必然的に地上部隊で行う事になる。しかし主戦力こそどちらもBAWS製のMTのため大差は無いがそれ以外、端的に言えばACの戦力差が大きすぎる。

 

「あいつらの腕も問題だが、そもそも連中の機体は要塞攻略に向いていない。ACが墜ちれば残ったMT部隊の末路だって似たようなものだ」

 

しかも記憶通りなら投入されるのはG4のヴォルタだけだ。多数の火砲が待ち構えている要塞にタンク脚を単独で送り出すなんて正に死んでこいと言っているようなものだ。ミシガンのおっさんが良くこんな作戦を承認したと思う。

 

『…売り込むとしたらかなり危険な仕事になる』

 

だろうな、ベイラムの攻撃を退けた後でも壁にはまだかなりの戦力が残っていた。加えて近郊には予備戦力としてジャガーノートと呼ばれる大型砲台まで残していた事も確認されている。あれ以上の戦力を相手取るのだから危険である事は間違いない。

 

「今回の一件でベイラムに借りが出来た。こういうのは早めに返す方がいい」

 

イグアスはともかくヴォルタは完全に巻き込み事故だからな。それにガリア多重ダムを攻略出来なかった上に壁越えも失敗したとなるとベイラム上層部の腰が引けてしまう可能性だってある。今まではそうならなかったが今回もそうだとは限らない、そしてこんな早々に脱落されては俺達が困るのだ。

 

『解った、一応売り込みは掛けてみよう』

 

「ありがとう、マスター」

 

俺はそう礼を言う。断られてしまえばそれまでではあるが、それでも何もしないよりはマシだ。そう考えていると618が口を開いた。

 

『マスター、私もアサインして欲しい』

 

『何だと?』

 

『今回の一件はそもそも私が起こした不始末だ。自分の問題は自分でけじめを付けたい』

 

しまった、コイツ思ったよりも責任感が強いぞ!?おい、止めろご主人!

 

『解った、それがお前の判断ならそうしよう』

 

ご主人んんんん!?ちょっと飼い犬の自主性を重んじ過ぎだぞ!?

 

『ありがとうマスター。そういう訳だ、次も頼むぞ621』

 

そう笑う618をどうにか説得しようと考えていると、事態は更に悪化する。

 

『はなしはきかせてもらった。わたしたちもどうこうする』

 

唐突に通信へ割り込んで来たかと思うと617がとんでもねえ事を言い出した。いや本当に聞いてたか?危険なんだよ、危ないんだよ。なんで好き好んで突っ込んでいくんだよ!?

 

『ちまちまかせぐのもあきてきたところだ。かべごえのようへいなららんくもすぐにあがるだろう?』

 

『解った、ではその方向で話を進める』

 

いかん、ご主人がイエスマン過ぎて止める奴がいねえ。だが今回は惑星封鎖機構の迎撃砲台破壊よりも危険なのだ、俺の我が儘に付き合わせて先輩達を危険に晒すわけには…、

 

『621』

 

黙り込んだ俺に617が声を掛けてくる。

 

『わたしたちははうんず、ますたーのりょうけん。それはなかまでありかぞくということだ。わたしたちをおまえひとりにきけんをおしつけるひとでなしにしてくれるな』

 

彼女の言葉に、俺は頷く以外の答えを持ち合わせていなかった。




作者は頭が悪いのでオリチャーとかは期待しないで下さい。
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