「うっ...うぅん...」
どれくらいの間、気を失っていたんだろう?私が目を覚ますと近くには清隆先輩の姿は見えなかった。
その代わりに、台所の方から微かに美味しそうな匂いがするね...
「この匂いって...」
私がその匂いに妙な懐かしさを覚えた時だった。
「起きたか、天沢...」
台所の方から清隆先輩がやって来た。よく見ると...先輩の手にはとある料理がのった皿がある。
それは...!!
「わ~お!!トムヤンクンだ!!」
「...知っているのか?」
「はい!」
それは...世界三大スープの1つとされていて、トムヤムクンの名前でも知られているタイ王国のスープ料理じゃん!
なぜ...一夏ちゃんが、そのトムヤンクンに懐かしさを覚えたのかって?だって、その料理を元の世界でも食べた事があるんだもの...
しかもだよ!!!ただのトムヤンクンじゃなくて...清隆先輩の手作りのトムヤンクンだからね!?
須藤先輩とペアを組むのと引き換えだったとはいえ、先輩の手料理を食べる事ができたんだ~!あの時の味は一生忘れられないよ~!
「さて、俺からお前にいろいろと聞きたいんだが...ただで喋る程、お前はバカじゃなさそうだからな...だから、食え。」
「いいんですか?またしても先輩の手料理を!?」
「...ん?またしても...だと?」
「あっ!なんでもないですよ?綾小路先輩の手料理を頂けるなんて光栄です~!!!」
危な~い...また、先輩のトムヤンクンが食べられる喜びでうっかり、ボロを出しそうになっちゃったよ...
「やったー!じゃあ、遠慮なく...」
「おい...食べるからには、ちゃんと話してもらうからな。」
「もちろん、分かってますよ~!では、いただきま~す!!!」
一夏ちゃんはそれまでの体の痛みも忘れて...清隆先輩の作ったトムヤンクンを美味しく味わいましたとさ~。
・・・・・
「では、改めまして...ホワイトルーム5期生の天沢一夏ちゃんで~す!よろしくお願いしますね~!」
「まぁ、それに関してはあの時点で大体は察していたが...」
楽しい楽しい食事の時間が終わり、今は清隆先輩による尋問タイム?がおこなわれている最中だ。
「それで?お前はあの男に言われて...俺をあの施設に連れ戻しにきたのか?」
清隆先輩が自分にとって障害となると見なした人間だけに向ける、そのおぞましい視線と殺気...
(うわぁ...怖いな~!)
ここで、返事を間違えるわけにはいかないもんね...
「いや~?そのつもりはないかな...だって私は先輩に幸せになってほしいって思ってるんだもん。」
「それは、どういう意味だ?」
「私は綾小路先輩を崇拝してるんだよ?ホワイトルームの最高傑作として私ですら、追いつけない記録を生み出し続けたあなたにね?...」
そう言っても...まだ、清隆先輩は私に対する警戒を解く気配がないね~...
「大人達も驚いてたよ~?ホワイトルーム5期生で生き残ったのは、綾小路清隆に憎悪の感情を持たない二人だったってことにね~?」
「それを俺が信用するとでも?」
「すぐに...信用してもらわなくても構わないよ。私はこれから、あなたが平穏な学園生活を送れるように力を尽くすつもり...なんなら、もう一人のホワイトルーム生の名前を教えてあげようか?」
「必要ない...そのホワイトルーム生が誰であろうとな。相手にするまでもないとは言えないが...お前の話からすると、そいつも俺の退学には否定的と見て問題なさそうだからな...」
おっと?これで、拓也が退学させられる可能性が少し下がったね~。
それにだよ?...元の世界の清隆先輩はホワイトルーム5期生を相手にするまでもないとか言っていたけど...こちらの世界では、その見方も少し変わってるね~。
ひょっとして...私と戦ってホワイトルーム5期生が思ったよりも、いい線をいっていると認識したからだったりしてね...
「だったら、手土産に...今回、一部の1年生達の間で裏で実施されている特別試験の内容を教えてあげようか?」
「それって...俺に言っていいものなのか?」
「一応、他言はダメって言われたけど...特にペナルティとかは説明されてないからね~!」
そんなわけで、私は清隆先輩に裏でおこなわれている特別試験の内容を説明し始めた...
「つまり、主催者は南雲と月城理事長代理というわけか...」
「うん!...で、その場に呼ばれたのが...1年Aクラスからは、石上京くんと私...1年Bクラスからは、八神拓也くん...1年Cクラスからは、宇都宮陸くん...1年Dクラスの宝泉和臣くんと七瀬翼ちゃん...この六人だね。あと、宇都宮くんは同じクラスの椿桜子ちゃんにもこの試験の内容を伝えるつもりなので...実質は七人が知ってる事になりますね~!」
「そうか...この俺を退学させれば、2000万ポイントか...」
特別試験の内容を聞かされても...清隆先輩が動揺を見せる気配は全くない。
「では、今日のところは帰りますけど~!今後は【先輩と同じ中学】という設定で、第三者の前で話す事もあり得ますので...その時は、ちゃんと話を合わせて下さいね~?」
「善処しておこう...」
「あっ!それと~!最後にもう一つだけ言いますね?」
「...なんだ?」
「清隆先輩!!!私はあなたを愛してます!絶対に先輩にも、私に対する愛を芽生えさせてみせますから!」
そう宣言した一夏ちゃんは...清隆先輩の返事を待つことなく、そのまま先輩の部屋を出ていったのだった...
ちなみにだけど...その宣言の際に少しだけ、先輩の顔に笑みが浮かんだような気もするけど...さすがに気のせいだよね~?
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