学校内のとある敷地内にて...
「オラァッ!」
「くっ...」
(あの容赦のなさ...相変わらず、宝泉くんは乱暴者だね~!)
一夏ちゃんは清隆先輩と堀北先輩と須藤先輩の三人と宝泉くんと翼ちゃんのやり取りを覗き見していた。
状況からして...宝泉くんの思惑通りに1年Dクラスと2年Dクラスでペアを組む交渉が決裂したんだろうね~?
「女にしちゃァ...中々、やるじゃねェかよ!堀北パイセンよォ!」
須藤先輩はとっくにやられて...今は堀北先輩が宝泉くんと戦ってる最中だけど...はっきり言って、堀北先輩に勝ち目はないね~!
第一前提として...この年頃の男子と女子では体格や筋肉量に差が出るし、そもそも宝泉くんは中学時代に名を馳せた本物の不良だもの...私ならともかく、運動は得意だけど喧嘩には慣れてない堀北先輩が宝泉くんに勝てるわけがない...
(堀北先輩が清隆先輩に教師を呼ぶように言ってるけど、無駄なんだよね...)
なぜなら、今回の場合...先に手を出したのは須藤先輩だからだ。
教師にもそう主張すれば、宝泉くんには悪くて過剰防衛程度の罰しか与えられないだろうし...
さて、いよいよ清隆先輩の出番が来たみたいだね。
(清隆先輩の作戦を聞かされた時は本当にびっくりしたよ~!)
数日前...再び、清隆先輩の部屋を訪ねた一夏ちゃんは宝泉くんが立てていた計画を清隆先輩に全て話した。
もちろん、清隆先輩の指紋がついたナイフを私に盗み出させるという部分もだ...
そして...私の話を全て聞き終えた清隆先輩は私にとある指示を出した上で、宝泉くんにナイフを渡しにいくように言われたのだ。
チラッ...
「......!!」
宝泉くんの方へと歩みを進めた清隆先輩が一瞬だけ、隠れている私を見てきた。
そんな、清隆先輩に対して『先輩!こっちは準備オーケーで~す!』と、ホワイトルーム生特有のジェスチャーで答えた私...
さっそく、自分のスマホを録画モードにして宝泉くんの方へと向ける。
そして...清隆先輩が宝泉くんに近づいた瞬間だった。宝泉くんがニヤニヤしながら、あのペティナイフを取り出すと...そのまま、思いっきり振りかざした。
「綾小路君!逃げて!」
「綾小路!避けろぉー!」
堀北先輩と須藤先輩は宝泉くんが清隆先輩をナイフで刺そうとしていると思ったのか、必死になって清隆先輩に宝泉くんから離れるよう叫んでいる。
「ぐわっ...」
だけど...安心して?さすがに宝泉くんもそんな事はしないよ!
「はっ?何してやがるんだ?」
「意味がわからないわ、どうして自分の足に...」
宝泉くんが狙ったのは清隆先輩ではなく、自分の足だった。それを見た須藤先輩と堀北先輩は唖然とした表情を浮かべている。
「いてェ...七瀬!早く教員を呼んで来い!俺が綾小路の野郎に刺されたって言ってなァ!」
「なっ...」
次の瞬間、予想を遥かに上回る言動をした宝泉くんに須藤先輩と堀北先輩が絶句した。
「これで終わりだなァ...綾小路よォ!このナイフはお前の私物で、俺が共犯者に指示して奪わせたものなんだよォ...これの意味が分かるカァ?」
「つまり、お前は俺に足を刺されたと訴えるつもりなのか?...」
「そういう事だぜェ...」
いくら...2000万ポイントが欲しいからって自分であんな物騒な真似をする宝泉くんの執念には本当に驚かされるね...
「ふざけやがって!俺達がお前が自分で自分の足を刺したと言えばいい話だろうが!」
「バカかァ?...お前達が証言しようとも、2年Dクラスが口裏を合わせて綾小路を庇ってるとしか見なされねぇよォ。そっちには、そもそも証拠がないだろうがァ...」
「それは...お前だって同じ事だろうが!」
ところが...そうじゃないんだよな~?おっと、堀北先輩は気づいたようだね。
「まさか、綾小路君の指紋を...」
「堀北の言う通りだなァ!このナイフは綾小路の私物...つまり、こっちは奴の指紋を証拠にできるんだよォ!」
「ちっくしょ...」
須藤先輩と堀北先輩は打つ手がなくなったのか、黙り込んでしまう。
その様子を見下しながら、ご機嫌そうに笑う宝泉くんだけど...ある違和感に気づくのに、そう時間はかからなかった。
「おいおい!綾小路ィ...やけに冷静だなァ?ひょっとして、諦めたのかァ?」
「いや、俺はお前を称賛している。まさか、こんな手を使ってくるとはな...確かにこのまま訴えられれば、俺の退学は間違いないだろうな...」
それは...自分がターゲットとした清隆先輩が一切、取り乱す事がなく...未だに冷静さを保っているってこと...
「だが...お前は一つだけミスを犯したな...」
「はァ?いったい、何が言いたいんだァ?」
理解が追い付かない様子の宝泉くんに清隆先輩はさらに続ける。
「それは...協力者として選ぶべき相手を間違えた...という事だ。」
「はァ?...」
きた~!今こそ、あの宝泉和臣を断罪する時!
「天沢...もう出てきていいぞ。」
「は~い!清隆先輩の仰せのままに~!」
私は清隆先輩に返事を返しながら、スマホの録画モードを切ると清隆先輩の元へと駆け寄っていった。
次回...天沢VS宝泉?