一夏ちゃん達のホワイトルームでの日々は一部捏造です。
私、一夏ちゃんは即座に自分の状況を理解した...というか、させられた...
(えっ⁉もしかして、私...本当に過去に戻っちゃってる⁉)
確かにもう一度やり直したいと願ってはいたけど、まさか本当に叶っちゃうとはねぇ...このチャンスは絶対にものにしないと...
そして、周りを見て把握できた事は2つ...
私が今いるのは7年前の過去の時代であり、この時点では...まだ、ホワイトルームの5期生が私と拓也以外にも、それなりの人数が残っていたということ...
さらに皆の顔に焦りがないのは、過去に5期生を震撼させた...あの重大発表がまだ、おこなわれていなかったということぐらいだ。
そして...拓也曰く、もうすぐ格闘技のカリキュラムが始まるらしい...
(長らく...ここの教官達とは戦ってないけど、勝てるかなぁ?)
私は数年ぶりにホワイトルームの教官達と戦える事にどこか、興奮していた...
・・・・
「ぐわっ‼...」
「ううっ...」
気づけば...床は血で汚れ、傍らには私の相手をしていた教官達が倒れていた...
「あれぇ~?ひょっとして、これで終わり~?はぁ...つまんないの~!」
「ひっ...ひいっ‼」
「...なんなんだよ⁉お前は⁉」
さっきまではあれほど怖い顔をしていた教官達が今では、怪物を見るような目で私を見ている...
それも、酷く怯えた様子でだ...
「一夏?...」
拓也をはじめとする、他の5期生達も同じ気持ちのようで私に対する畏怖の視線をあちこちから感じる。
それも当然だ。昨日までは自分達とそこまで大差がなかったであろう私が...あの教官達を容易く倒してしまったのだから...
教官達も昨日までは自分達に勝てるはずがないと認識していた私相手に叩きのめされた事から、理解が追いついていないみたいだった。
(はぁ...先輩に比べたら...大した事はなかったな...)
どうやら...私が過去に戻ったのは確かだが、身体能力や学力は7年後の私のままだったらしい。
私は高校2年生になってから、先輩に格闘勝負を挑むようになっていた。何度負け続けても諦めずに清隆先輩に挑み続ける龍園先輩にいつの間にか、私も感化されていたのかもしれない。
最初のうちは当然のように歯が立たなかった。そもそもだけど攻撃を一発を当てることにすら苦労していたっけ...そのまま、気絶させられて部屋まで運ばれるのが日課だったよね...
夏休み明け頃には先輩に何発かの一撃を与えられるようになり、それまでよりも長く戦えるようになった。相変わらず、最終的には気絶させられて部屋まで運ばれるのが日課だったけど...
そして、冬休み明け頃...
『強くなったな。』
朦朧とする意識の中で、私は先輩に初めてそんな事を言われた...それも微かな笑顔を浮かべてだ。その時の私は恐らく、メスの顔だっただろうね...
何回も勝負を挑み続け、この日...ついに私は初めて先輩に本気を引き出させる事に成功した。
...くしくも、この日が先輩に勝負を挑めた最後の日となってしまったのは残念だけどね...
結局は1年間の間、先輩は一度も私にも他の人達にも負ける事のないまま、高校を卒業してしまったなぁ...
だけどね?...ホワイトルームの最高傑作は本当に最高傑作だと言うことを先輩は証明してくれたんだ‼
.........それに比べて、この教官達...いや、このカス共はというと...
(弱すぎでしょ...こんなのに怯えていた昔の私がバカみたいじゃん...)
今の私から見れば、赤子のような存在でしかなかった。
「ねぇ、何で怯えてるの?昨日みたいに私を怒鳴ってみなよ?...そして、いつもみたいに暴力で私を屈服させてみなよ?...ねぇ?」
私に挑発されようとも、逆上して襲いかかってくる教官なんて一人もいなかった。そのぐらい、教官達の顔は恐怖に染まっていた。
あ~あ...なんか、興醒めだね...
・・・・・
次の日、
今日もまた、教官達がボロボロになって、私の前に倒れている。
昨日の格闘技のカリキュラムの私の一件をホワイトルームの上層部の人間が把握していたのか、今回の教官達は昨日の教官達よりも比べ物にならないくらいの強さだったね~‼
でも、所詮はそれ止まり...今の私の相手ですらなかったのが残念だね...
次の日も...また、次の日も...格闘技のカリキュラムで教官達を叩きのめす日々が続いた。
同時に私は学力、書道、華道、水泳、音楽といった他の分野のカリキュラムでも好成績を出していった。
私はいつしか、教官達からは...
【傲慢のホワイトルーム生】だの、
【5期生の最高傑作】だのと異名で呼ばれるようになった。
教官達の中には、
【4期生の綾小路清隆に匹敵する逸材】
...とまで呟く者がいたが、それはさすがに大げさ...というか、あり得ないという事を他でもない...私自身が一番分かってるんだよね~‼
だって...受けているカリキュラムの難易度に圧倒的な差が存在するし、その本人が綾小路清隆と戦って、負け続けてるんだもん!
◆◆◆◆◆
そんな日々が続いたある日...
「一夏‼おはよう!」
「おはよう!拓也!」
この日はなぜか、いつもの授業の前にとある重大発表がおこなわれるという理由で5期生は全員が大広間に集められていた。
「僕たちを集めて、どうするつもりなんだろうね?」
「う~ん?一夏ちゃんにも分かんないな~‼」
いや...知ってるけど、この場で先んじて言う理由がないからね...
「今日は...お前達に言わなければならない重要な事がある。」
やって来た教官が口を開き始めた。ちなみに一瞬だけ、チラッと私の方を見たのを見逃さなかった...
「お前達が本当に存在するのかと半信半疑であろう、ホワイトルームの最高傑作 綾小路清隆は...実在する。」
突然の宣告に同期の皆がザワつき始めるが、教官は無視して話を続ける。
「今から見学室に案内しよう。そこで彼の実力をしっかりと頭の中に刻んでおけ。」
教官のその言葉を聞いた、5期生達の反応は3つに分かれた。
今までの自分の努力は無駄だったのか⁉...と絶望して泣きじゃくる子...
絶対にお前に勝って認められてやる‼...と憎悪をあらわにする子...
実在していた清隆先輩に改めて感嘆し、彼に崇拝の心を抱く子...
...その中で今のところ、私だけがいずれのリアクションをみせないのに違和感を覚えた教官が私の方をじっと見ながら、話を続けていた。
★★★★★
「くそっ‼綾小路清隆!絶対にお前を許さない!一夏もそう思うだろ⁉」
「綾小路清隆かぁ~‼すごい人じゃん‼」
帰り際に私は拓也と清隆先輩の事について話していた。
「はぁっ⁉どういう意味だよ⁉」
「だって、そうじゃん?ホワイトルーム歴代最高難易度のカリキュラムで、しかも綾小路先生が直々に指導した魔の4期生の中で唯一、生き残るぐらいじゃん‼」
「なぁ⁉一夏は悔しいと思わないのか⁉綾小路清隆のせいで、どんなに頑張っても認めてもらえないんだぞ!」
拓也...何か分からないけど、ついでに助けたくなっちゃったな...
「ねえ、拓也?そもそも、何で私達は認められないといけないわけ?」
「そっ...それは‼...」
「それは、ここの教育方針によって生み出された承認欲求に過ぎないんじゃないかな?」
「なっ⁉...」
私の発言に拓也は返す言葉がなかった。
「だからさ...無理に認められようと思い詰める必要はないと思うの...私も強くはなりたいけど、別に綾小路清隆よりも強くなる気は全くないの。5期生として...彼の後輩としての名に恥じない程度の強さを持ってれば十分なんだよ。」
「でもっ‼...」
「それにさ!大人達は認めてくれなくても...私がいるじゃん!私はいつだって拓也の頑張りをすぐ近くで見てるし、認めているもの‼...大人達なんかの評価なんか、気にしないで拓也なりに成長していこう!ね?」
そう言って...拓也を抱き締めて、頭を優しく撫でてあげる.。
「いっ‼一夏⁉...」
「分かった?私達は4期生じゃなくて、5期生。綾小路清隆に勝てないのも当然かもしれない。...だけど、それに恥じる事はないんだよ?」
私の言葉に拓也は黙り込んで私を見ている...今後、自分がどうすべきかを考えているようだ。
そして...
「一夏の言う通りかもね。僕はこれから、綾小路清隆の後輩として...ふさわしい人間になるつもりだよ。」
「拓也‼...」
「そうなったら、一夏は僕を...認めてくれるかな?」
「もちろんだよ!これからも頑張ろうね⁉」
「うん‼」
こうして...私は無事に拓也から、清隆先輩への憎悪を取り除いた。
「ところでさ...一夏は綾小路清隆をどう思ってるの?」
「すっかり...憧れから、大好きになっちゃったの~‼彼のパートナーになりたい!彼に恋愛という感情を教えてあげたい!...それに...」
「ふ~ん...」
「拓也?何で、不機嫌なの?」
「別に...不機嫌なんかじゃない...」
そんな感じで、ホワイトルームでの月日はあっという間に流れていった...