(ううっ...清隆先輩!)
清隆先輩にお姫様抱っこされるという、これまでにない経験を味わった一夏ちゃんは恥ずかしさと嬉しさが混じった感情にとらわれていた。
「ついたぞ。」
「はっ...はい!さっそく、入りましょう!」
次の目的地である、カラオケボックスについた後も私の胸のドキドキは収まらない。
むしろ、悪化している気もする...
「さっきから、顔を赤くして俯いてるが...やっぱり、俺にあんな事をされるのは嫌だったよな...天沢、すまなかった。」
「ちっ...違いますぅ!確かに恥ずかしかったけど嬉しいって気持ちもありましたから!気にしないでくださいね!」
「そうなのか...」
さすがに清隆先輩が、初デート時にお姫様抱っこという行動に出るとか、私にも予測できるわけないじゃん...
「ちなみにお姫様抱っこも...その、松下先輩からのアドバイスですか?」
「いや、これは池からのアドバイスだな。『世の中の男なら、これぐらいはするもんだぜ!』なんて豪語していたが...」
「あの~?なんか、相談する相手を間違えている気がするんですけど...」
そんな事を思いながら、私は清隆先輩と一緒にカラオケボックスの個室に入ったのだった...
・・・・・
「~~~♪♪♪」
「.........」
個室に入ってから1時間...
私は既に10曲ほど歌っていた。ちなみにメインに歌ったのは、アイドルソングやポップスなどのジャンルだ。
これらのジャンルの曲は元の世界でも...清隆先輩とカラオケに立ち寄った際によく歌っていたからか、その時の感覚を思い出したら楽勝で歌えた。
一方の清隆先輩は私が歌い終わる度に、『上手かったぞ。』と褒めてくれる。
普段の一夏ちゃんなら、これだけでも大満足なんだろうけど...今日ばかりは何か物足りない気分なんだよね~!
「清隆先輩も歌って下さいよ~!」
そう!久しぶりに清隆先輩の生歌も聞きたいのだ!
「俺もか...構わないが、お前には劣るかもしれないぞ?俺がいた頃のホワイトルームに合唱のカリキュラムなんてなかったからな...」
「でも~!ピアノだったり、楽器系のカリキュラムはあったんじゃないですか?」
「それは、確かにあったが...歌うとなると、そこまで自信はないな。」
「なら、大丈夫ですよ!まともな音感が分かっていれば楽勝ですから~!」
「だと、いいんだが...」
私の押しには勝てなかったのか、清隆先輩は渋々といった形で歌ってくれる事になった。
そんなわけで、先輩が歌い始めたんだけど...
(いや...やっぱり、上手すぎでしょ?どの口で自信がないとか、ほざいてんだか...)
元の世界と同じように...抜群の歌唱センスを見せつけてくれた清隆先輩に私は憤慨しつつも、ちょっとした安心感を覚えていた。
そして...あっという間に清隆先輩の歌唱が終わった。
「何が『お前には劣る』や『自信がない』ですか!?清隆先輩の大嘘つき~!」
「いや、俺と同じグループのメンバーも...俺に気を遣って『上手い!!』と言ってくれてるレベルだぞ?どう考えても下...」
「あの~?それ、本気で言ってます?先輩の歌唱レベルで下手なら、私の歌唱レベルなんてゴミ同然になっちゃうんですけど~?」
どう考えても上手すぎるから、綾小路グループの先輩方も褒めてくれたに間違いないんだけどな~...
◆◆◆◆◆
「清隆先輩~!そろそろお食事に行きましょう!」
「意外だな...ポップコーンも食べたし、お腹が空いてないと思ったんだが...」
「カラオケであんなに歌いまくったら、溜め込んだパワーを使い果たしちゃって...自然にお腹が空いちゃうものなんです~!」
「そういうものなのか...」
というわけで!清隆先輩を連れて、レストランにレッツゴー!
レストランに着くと...思ったよりも席は空いていたので私達は無難に近くの2人テーブルを選んで、そこに座ってメニューを選んだ。
「えっと、一夏ちゃんはステーキ定食にしますか!」
「俺はハンバーグで...」
店が混んでるというわけでもなかったので...そこまで時間がかかる事なく、私達が頼んだメニューが運ばれてきた。
「いただきま~す!」
「.........」
私達は、ゆっくりと食事を味わった。
今...私が食べてる料理は、自分の手作りよりも...他の飲食店の料理よりも遥かに美味しいと思える味だ。
だけどね?それは、別にこの店の料理が特別に上手いってわけじゃないんだよ!?
大好きな清隆先輩と一緒に食べているからこそ、美味しいと思えるんだから!
(あぁっ!先輩と一緒に食べる料理...とっても美味しい!)
一方の私の目の前にいる清隆先輩は特にリアクションを示すことなく、黙々と食事を続けている。
(先輩の口に合ってるといいけど...まぁ...少なくとも、まずくはないって認識でいいのかな?)
そんな中...お互いの料理の量が半分近く減った頃、清隆先輩が動いた。
残ったハンバーグをフォークで一口サイズに切り取った後...
「ほら、一夏...口を開けろ。」
なんと、その一口サイズのハンバーグを私の方へと向けて、私に口を開けるように促してきたのだ。
(えっ...えぇっ!!)
これって...確か、普通は恋人同士がやるア~ンってやつだよね?おまけにだよ?さりげなく、清隆先輩は私を下の名前で...一夏呼びになっちゃってるし...
『『『『『.........!!!!』』』』』
さらに...
食事に夢中で気づいてなかったけどさぁ...振り切ったとばかり思っていた、例の尾行軍団達が私達の近くの席に座って様子を伺ってるじゃん!
(ちょっと待って~!どうしよ...これは、めっちゃ嬉しいけど!一夏ちゃんはねぇ...まだ心の準備ができてないんだよぉ~!)
ひょっとすると...また、池先輩が見栄を張って常識外れの清隆先輩に余計な事を教えちゃったのかな?
ゴゴゴッ!!!
ちなみに...尾行集団の内、ギャル系女子の二人組の金髪の方...軽井沢先輩からは、私に向ける尋常じゃないくらいの殺気が溢れ出ちゃってるし~!
(こればかりは、私の方から要求したんじゃないんですよぉ~!)
一夏ちゃん...いったい、どうすればいいんだろう?
一夏ちゃんは生徒会に入る?
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この世界では...入っちゃおうかな?
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元の世界と同じように拓也に任せよう...