大好きな清隆先輩からの突然のア~ンに当然、一夏ちゃんは困惑している。
(えっと...ここは、素直に受けるべき?それとも遠慮すべき?)
一夏ちゃんとしては、清隆先輩の思い切った行動を受け入れたいという気持ちもある反面、ギャラリー達...特にクラスメートのあゆみちゃん、春日ちゃん、徹子ちゃんにこの現場を見られちゃうのは恥ずかしいという気持ちもある。
「ねぇ、清隆先輩?これって、まさか...」
「デートの際に食事をする時は女子を下の名前で呼んで、これをすると好印象らしいな。」
「それって...誰からのアドバイスですか?」
「あぁ、池だな。アイツは日頃から彼女がほしいと言ってるだけあって、恋愛面にはかなり詳しいな...最近は篠原といい雰囲気みたいだからな。」
池先輩のバカー!常識外れの清隆先輩になんて事を教えてくれてるんですか!?
「あっ...あのですね?そういうのは...」
「...嫌だったか?」
「えっと...」
そう言った清隆先輩の表情が一瞬...ほんの一瞬だけ、がっかりしたように暗くなる。
(うぅっ...そんなことを言われちゃったら...もう覚悟を決めないと...)
どうやら、一夏ちゃんに断るなどという選択肢は残されていないようだ。
「分かりました...先輩からのア~ンをお受け致します!」
「いや、別にだぞ?覚悟を決めるほどの事では...」
パクッ...
...清隆先輩が言い終わる前に...私は先輩がア~ンしてきた一口サイズのハンバーグに食いついて、自らの口の中へと放り込んだ。
その瞬間だ...
『『『『『~~~!!!!!』』』』』
隠れて私達の様子を伺っていたギャラリー達がそれぞれ、違う反応をしていた。
まるで、『お~!』と言いたげに口を抑えて顔を真っ赤にしていたり...
嫉妬による怒りのあまりに、呼吸が荒くなっていたり...
この光景が面白くないようでどこか、悲しそうな表情をしていたり...
何も言えずにただ、唖然としていたり...
相変わらずの無表情ながらも、興味深そうにしていたり...
面白い物を見させてもらったとばかりにこの光景を盗撮したあげく、誰かと連絡を取ろうとしたりとだ。
「こっ...これで、清隆先輩は満足していただけましたかね!?」
「ん?まぁ...満足かは自分でもよく分からないが...一応、課題は果たした...みたいな気分だな。」
「ですが!今後、女子とデートする際は...くれぐれも!やっちゃダメですからね?今のやつも、相手が私じゃなかったら...引かれてたかもしれないんですから!」
「そうか...参考にさせてもらう。」
清隆先輩との食事はその後も続いたけど...私は気まずくなっちゃって先輩に一言も話しかける事ができずにただ、黙々と食事を進めていった。
あっ...ちなみに...清隆先輩にア~ンされて食べたハンバーグは、元の世界で食べた...どの店のハンバーグよりも美味しかったのは秘密ね?
・・・・・
楽しかった清隆先輩とのデートの時間は、あっという間に終わりを告げた...
「清隆先輩~!今日はありがとうございました!」
「こちらこそだな。中々、充実した1日を過ごせたからな。」
一夏ちゃんと清隆先輩は、人目のつかない場所でお互いに解散しようとしている最中だ。
暗くなったためか、ギャラリー達も解散してくれたみたいで周囲に人の気配はない。
「ねぇ、先輩?一つだけ、聞いてもいいかな?」
「別に構わないが...なんだ?」
「今日、一度も...笑顔を見せてくれなかったけど、本当は私とのデートなんて楽しくなかった?...」
私...デートをしてる時から、ずっと気になってたんだよ?
映画を観た時やカラオケで歌を聞いてくれた時はもちろん、お姫様抱っこやア~ンをしてくれた時ですら...私に笑顔を見せてくれなかったよね?...
本当は...私に対する借りを返すためだけに...嫌々、今日のデートに付き合ってくれたんじゃないのかな?って...
「...天沢、そんな事はないぞ。」
私の心を見透かしていたのか、清隆先輩がそんな事を言ってくれた。
「俺は昔から、笑顔を浮かべるのが苦手なだけだ。」
「ホワイトルームでは感情なんて不要...だったからだよね?先輩の場合は、歴代最高難易度のカリキュラムを受けたというのも理由もあるんじゃ...」
「そうかもしれないな...」
今回のデートで、少しは距離を縮めたとはいえ...彼が私に笑顔を見せてくれるのは、まだまだ先の話になりそうだね~!
「...ところで、天沢...俺は前から気になってたんだが...」
「はい?どうしました~?」
「俺とお前は同じホワイトルーム生のはず...なのになぜだ?お前は感情豊かで、俺は無愛想...期が違うだけで、ここまで差が生まれるものなのか?」
う~ん?受けたカリキュラムの違いってのもあるだろうけど、一番の理由は...
「私と清隆先輩の違いですか...自分の命に賭けてでも守りたい大切な人がいるか?とかですかね...先輩は自分さえ、生き残っていればそれで良いという考えでしょう?」
「否定はしないな...」
私だって...もしも、清隆先輩に崇拝の感情を抱かなかったら?
ある意味、清隆先輩と似たような思考になっていたかもしれないね...
「天沢、同じホワイトルーム生同士とはいえ...俺は学力に身体能力...それ以外の数多くの分野でお前に勝っていると断言できる。」
「いやいや!そんなの当たり前じゃないですか~!?わざわざ、自慢ですか?」
元の世界での力を得て...パワーアップした一夏ちゃんでも、本気の清隆先輩相手には勝てないと断言できるもん!
「だが...感情というもの...それに関しては、俺はお前に負けているんだろうな...」
「先輩...」
清隆先輩の口から、そんな言葉が放たれてるとは思わなかったなぁ...
「余計な事を言って悪かったな...じゃあ、俺はこの辺で帰らせてもらうとしよう...」
それだけを言うと...清隆先輩は私に背を向けてその場を立ち去ろうとした...
「まっ...待って!」
「どうした?まだ、何かあるのか?」
「清隆先輩!感情についてよく知りたいなら...時には合理性や損得勘定じゃなくて...自分が思うがままの選択をしてみるのも良いかもしれませんよ!」
「そうか...その言葉...一応、頭の中に入れておこう。」
私の言葉に返事を返した清隆先輩は今度こそ、私の前から立ち去っていった...
(今日は楽しかったな...また、清隆先輩とデートができたらいいな...)
この時の私は気づいてなかったんだ...
私の最後の一言がきっかけで清隆先輩が思いもよらぬ行動に出る事をね...
一夏ちゃんは生徒会に入る?
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この世界では...入っちゃおうかな?
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元の世界と同じように拓也に任せよう...