「天沢一夏...あなたの存在以上に気になってるのが、例の綾小路清隆という男子生徒です。」
「なっ...清隆先輩が...ですか?」
私達の話し合い?が進んでいって、私が3つ目のメロンパンに手を伸ばしたタイミングで...急に森下先輩が話の本題らしき部分を語り出した。
「綾小路清隆...彼は、学力も身体能力も平均程度、常に無気力で無表情な...どこにでもいるような根暗な男子と...最初は思っていました。」
「へぇ~...そうなんですね...」
あのさぁ~?森下先輩?たぶん、悪意はないんだろうけど...清隆先輩を悪く言うのはやめてもらえないかな~?
これが、元の世界の一夏ちゃんだったら...すぐさま、あなたをボコボコにしていたかもしれないんだからね?
「ですが...4月に行われたパートナー筆記試験にて、その評価は覆させられました。」
「それは、清隆先輩が数学のテストで100点をとったからですか?」
「えぇ、例の数学の科目の中には...大学生レベルの問題もありました。それを学力Cの綾小路清隆に解けるとは到底、思えないのです。」
そりゃ、普段の清隆先輩は...意図的に試験におけるテストの点数を下げているため第三者から見ると、この結果は不正を疑ってもおかしくないレベルだ。
「でも?何でその話を私に?そんなの、清隆先輩本人に聞いた方が手っ取り早いんじゃないですか~?」
「綾小路清隆本人に聞くよりも彼と同じ中学出身らしい、天沢一夏から聞き出した方が効率が良いと判断したからです。」
いやいや!果たしてどこが、効率が良いんだか...一夏ちゃんには、よく分かんないかな~?
「いや、私...口が軽い女に見えますか?そう簡単に清隆先輩の個人情報を他人に話すとでも?」
「私が持ってきたメロンパン...食べましたよね?なので、吐いていただきたいのですが...」
「はぁっ!?あのメロンパンは、そういう目的だったんですか?」
「...流石にそれは冗談ですよ。先程から思っていたのですが、天沢一夏...あなたは綾小路清隆と雰囲気は似ている割に感情面は豊かなのですね?...あなたが綾小路清隆に恋愛感情を持ってるのが、一目で分かりましたよ。」
「冗談か~!良かっ...良くないです!その、真顔で恥ずかしい事を言わないで下さいよぉ~!」
よりにもよって、変わり者のこの人に気づかれちゃうなんて...これはまずい展開だよ...
なぜなら、この事が森下先輩を介して同じクラスの坂柳有栖先輩の耳に入ってしまった場合、坂柳先輩も清隆先輩に少なからずの好意を抱いている以上...私の行動を何かしらの方法を使って邪魔してくるなんて可能性があるんだもの...
「正確には...普段は他のクラスの人間と関わらない私が急に同じ学年のDクラスの綾小路清隆と関わってしまうと、うちのクラスを率いるリーダーの坂柳有栖から不審に思われてしまうのは明白。ですが...接触する相手が下級生である天沢一夏ならば、その心配も多少は薄れると判断したまでです。」
「まぁ...Aクラス争いをしている同学年ならともかく、下級生が相手なら...そこまで不審には思われないかもしれませんね...例えば、今年の1年生に知り合いでもいるのかな?程度の認識で済むかもしれませんし...」
森下先輩なりに考えたんだろうけど、仮に接触した相手が下級生だったとしても、疑う人は疑うんだよ?という発想には行きつかなかったのかと疑問に思ってる。
「言葉では言い表せませんが...天沢一夏と綾小路清隆は何かが似ているみたいですね。それは同じ中学の先輩と後輩同士だったという程度の物で表せるような事ではないような気がするのです。」
「そう言われましても~!それだけが事実なんですから、仕方ないじゃないですか?」
「天沢一夏...あなたから、僅かばかりの焦りの色が見えますよ?今、嘘をついているのでは?」
「きっと、気のせいです!ぐぬぬ...」
森下先輩...探り屋なだけあって、意外と鋭い部分もあるんだね?
...いや!この場合は、一夏ちゃんが本調子じゃないっていうのも大きいかもしれないね。清隆先輩とのデートの日の興奮が原因で頭の中が空っぽだったし...
流石にホワイトルームという施設の存在にまでは発想に至らないのは仕方ないか...そもそも、一般人には存在すら、知らされてるのかも怪しいからね?
だけど...それらを抜きにしても森下先輩の評価を少しだけ、上方修正しても良いかもしれないね...
「まぁ...そのメロンパンに免じてちょっとだけ、教えてあげましょう。」
間違っても...森下先輩にペースを乱されて一夏ちゃんの方にも、少なからずのミスがあったとは絶対に言わない...せめてものプライドだ。
「この私がとある場所の傑作と呼ばれていたならば、綾小路清隆という人物はそれの更に上を行く...最高傑作と呼ばれていた...という事ですよ?」
「綾小路清隆が最高傑作...ですか...」
私はホワイトルームの存在自体は伏せたまま、森下先輩に説明してあげる。
すると、森下先輩は何やら思案しているような表情を見せていた...
(う~ん、流石にこれ以上の情報流出はリスクがあるね...)
下手をすれば、自身の過去の情報を無断で売ったとして清隆先輩の不満を招きかねない。
「えっと、森下先輩?これ以上は話しません...今後はですね~?私と清隆先輩の過去については詮索しない事をおすすめしますよ~...」
私がホワイトルーム時代を思わせるような威圧をすると、森下先輩が私の方を見て押し黙る。なにげにこの状況でも表情を変えないのは、本当に尊敬する。
内心では怯えてるだろうから...このまま、帰ってもらえたりしないかな~?
「...いいえ、収穫もありましたし...私はそろそろ帰りますね。」
「えっ?」
森下先輩がそう言うと、玄関に向かって歩きだした。思っていたのと違う反応に私の方が唖然とする。
「あんなに話し込んでたのに?何で、こうも簡単に帰っちゃうんですか?」
「時間も遅くなったので、そろそろ帰りたくなったからですが?」
「いや、何ですか!?それ!」
「では、さようなら。」
そう言って私の部屋を出ていった森下先輩に、あんだけ勝手に話に付き合わせたあげく...自己都合で話を打ち切るなよ~!と心の中でツッコミを入れた。
いったい、何のための時間だったんだろうね?
(あ~...話していて疲れる先輩だったなぁ...とりあえず、残ったメロンパンでも食べて元気出そうっと...)
この後、メロンパンをやけ食いしすぎて...案の定、晩御飯が入らなくなったとさ。
一夏ちゃんは生徒会に入る?
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この世界では...入っちゃおうかな?
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元の世界と同じように拓也に任せよう...