「前から思っていましたが、あなたは...ホワイトルームの人間なのですか?」
「えっ...」
翼ちゃんの口から放たれた、その言葉に私は理解が追いつかなかった。
(おかしい...翼ちゃんが私の正体を知るのは、もう少し先のはずなのに!...)
綾小路清隆を退学にすべく、送り込まれた者同士とはいえ...翼ちゃんは元々、一般人でホワイトルーム側から見れば、使い捨ての駒同然の存在...最初から期待などされておらず、ホワイトルーム5期生の正体も教えてもらえていなかったはずなのに...
少なくとも...元の世界では、そうだったはずだったんだよ...
「ん~?何の事かな~?アメリカの大統領の住む場所と私に何の関係があると?」
「とぼけなくても結構ですよ。こちらには、ちゃんとした確信があるのですから...」
確信だって...
でも...あいにく、一夏ちゃんは翼ちゃんの前で自分がホワイトルーム生だとバレるような行動は一切、とってないんだけどな~?
「パートナー筆記試験の時期に...宝泉君が綾小路先輩に仕掛けたのは覚えていますよね?」
「もちろんだよ~!でも...それがどうかしたの?」
「その際に...一夏さんは綾小路先輩との関係を...『同じ中学の先輩と後輩』と表現されていましたよね?」
「あっ...」
今になって...一夏ちゃんは、自分が初歩的なミスを犯してしまった事に気づいた。
あの時は、宝泉くんを嵌める事に成功した事で調子に乗っていたんだっけ...
冷静になってみれば、あの場面...『私のペアとなる上級生を仲介してくれた先輩』と言っていた方が良かったんだもの...
「綾小路先輩...いいえ、綾小路清隆が中学になど...行ってない事は私は既に把握済みです。それなのに一夏さんは堂々と、綾小路清隆の中学時代の後輩を名乗った...これが証拠ですね。これでも...まだ、反論がおありでしょうか?」
「ううっ...」
私が何とか頭を捻らせて、打開策を考えていると...
「一夏さん...正直に自分の口から話してください。そうでなければ...私は一夏さんをお友達として見れなくなります...」
「翼ちゃん...」
この私が、翼ちゃんの大切な人の命を奪ってしまった男が設立したホワイトルームで育った身と...知ってもなお、翼ちゃんは私とお友達でいてくれようとしているんだ...
だったら、そのチャンスを頂かないなんて選択肢は今の私にはないよ!...
「うん...そうだよ...私、天沢一夏は...ホワイトルームの5期生で綾小路清隆の後輩にあたるの。」
「そう...ですよね...ううっ...よりにもよって!何であなただったんですか!?」
私が正直に答えると、翼ちゃんは激昂していた...それでもだよ?彼女は僅かに残った理性で怒りを必死に抑え込んでいる様子なの...
もし、私が嘘をついていたとしたら...今以上に怒りをあらわにしていただろうね?
「その様子からして...ホワイトルームの内情も知ってるみたいだね?」
「私が知らされたのは、ほんの一握りの情報ですが...ううっ!」
「翼ちゃん、無理に言わなくても良いよ。悲しい事を思い出して欲しくないからね。」
「だって...だって!!!」
翼ちゃんの過去の話は知っている...聞くだけで、ホワイトルーム関係の大人達がどれほどまで性根が腐っているかが分かるんだもん...
「一夏さんは何とも思わないんですか?あの綾小路清隆の父のせいで、過酷な日々を過ごしたと聞きました!それなのに...綾小路清隆に懐いてるなんて!私には理解ができません!」
確かに元の世界だと...ホワイトルームで高度なカリキュラムを受け続ける日々は辛いと思った事はあるよ...
...でもね?
「違う...綾小路清隆という存在がいたからこそ...生きるための目標というものができたの。彼は、私以上に高度なカリキュラムをこなしてきた逸材だったから!いつか、彼の隣に立てるような存在になりたいって思ったの!...そのおかげで私は感情を保ったまま、この学校に入学できて学校生活を謳歌してるんだもん!恨みなんか、あるわけない!」
途中で、自分でも何を言ってるのか分からなくなりそうだった...
それぐらい...私は清隆先輩が大好きなのだから...
「...つまり、一夏さんは...綾小路清隆を退学に追い込む気はないと?」
「うん!清隆先輩は、せっかくの自由を手にいれたんだもん!これからも楽しい学校生活を満喫してほしいし、様々な感情というものを理解してもらいたい!そのために私は彼の支えになりたいな!...
「なっ...」
最後の部分で翼ちゃんの動揺が激しくなったのを、私は見逃さない...
「一夏さん...私は、今日のところは失礼します。ですが、私は...綾小路清隆はこの学校にいるべきではないという思いに変わりはありません...」
「まぁ...翼ちゃんの抱える過去が重すぎるなら、そう簡単に今までの意見は変えられないだろうね...だけど、これだけは言っておくね?私はずっと...翼ちゃんの味方のつもりだから!」
「そうですか...では...」
そして...翼ちゃんは暗い顔をしたまま、その場を去ってしまった。
(翼ちゃん...あなたは悪くないんだよ?)
私は去っていく翼ちゃんに心の中で、そう訴えかけたが...果たして上手く伝わったのかな?
・・・・・
「はぁ...はぁ...」
七瀬は息を切らしながら、自分の部屋へと戻り...そのまま、ベッドにうずくまっていた。
『いいですか、七瀬さん?綾小路清隆...彼が脱走したせいで、栄一郎君は死んでしまったのですよ?』
自分を...この学校に連れてきた月城理事長代理の言葉が頭に浮かんできた...
(...ボクは綾小路清隆を絶対に許さない!...絶対に退学に追い込む!...)
七瀬の中に眠っていた、もう一つの別人格?らしきものが憎悪を訴え続ける。
(ボクは!...ボクは!!...)
『うん!清隆先輩は、せっかくの自由を手にいれたんだもん!これからも楽しい学校生活を満喫してほしいし、様々な感情というものを理解してもらいたい!そのために私は彼の支えになりたいな!...
(ボク...は?...)
だけど、先程まで一緒に話していた...ピンクのツインテールの女子の言葉がどうしても頭に浮かんでしまう...
(ダメ!そんな事をしたら、一夏さんが悲しむ!ボ...私は...一夏さんのお友達...)
その言葉で一時的に本来の七瀬翼を取り戻す。
『七瀬さん、いいのですか?あなたの最愛の栄一郎君が天国で泣いてますよ?』
『綾小路清隆という存在がいたからこそ...生きるための目標というものができたの。彼は、私以上に高度なカリキュラムをこなしてきた逸材だったから!いつか、彼の隣に立てるような存在になりたいって思ったの!...そのおかげで私は感情を保ったまま、この学校に入学できて学校生活を謳歌してるんだもん!恨みなんか、あるわけない!』
(ボクは...私は...)
松雄栄一郎の元彼女として、仇である綾小路清隆を退学に追い込むか...
天沢一夏のお友達として共に綾小路清隆の支えとなっていくべきなのか...
道は二つに一つ...
(あぁ...誰か...ボクを私を助けてよぉ...)
結局、その日はずっと...七瀬の葛藤は続いたのだった...
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七瀬翼の決断は⁉️
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原作通りの展開
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原作よりも早く...綾小路の忠犬へ