いよいよ、1年生達にとって二回目となる特別試験が数日後に迫っていた...
1年Bクラスでは...
「ねぇ、八神くん?ほんとにあなたが【選択権獲得】グループで大丈夫なの?」
「問題ありませんよ。少なくとも、皆の足手まといになったりはしません。」
「なら、良いけど...」
クラスメートである、堂上美津子からの疑問に八神拓也は平然とした様子で答える。
いくら...クラスのまとめ役的な存在とはいえ、身体能力のOAA数値がCである八神が【選択権獲得】グループに立候補した時は、1年Bクラス中が驚きを隠せていない様子だった...
(堂上...心配してくれるのはありがたいが...あいにく、これは譲れない話なんだ...)
八神が【選択権獲得】グループに固執するのは、ちゃんとした理由がある...
それは、1年Bクラスを完全に掌握するためだ。
前回のパートナー筆記試験辺りから...Bクラス内で八神は台頭していたとはいえ、絶対的なリーダーの地位を得ていたというわけではない。
そこで...今回、入学時に意図的に手を抜いた事で低い評価をされてしまった身体能力面でクラスに貢献し、八神拓也という人物がOAAの数値以上の実力者だとクラスメート達に錯覚させる事で、クラスメート達が完全に自分をリーダーとして崇める方向に持っていきたいのだ。
ちなみに手っ取り早くやるなら...宝泉のように暴力を用いて独裁者となった方が効率が良いはずなのだ。
しかしだ。ホワイトルーム5期生の自分が、たかが不良上がりの宝泉などと同類扱いされたくないという...八神本人のプライドが邪魔をしているせいで、その手段に踏み出すつもりはないようだ。
(今に見てろよ!綾小路清隆!...僕の方が優れてると、お前に見せつけてやるからな!いいか?僕以外の奴らに退学にさせられたりしたら承知しないぞ!...これで、一夏も僕の事を...)
一夏の尽力もあってか...この世界の八神は綾小路に勝とうとはしているが、退学に追い込もうだったり...ましてや、命を奪おうとまでは思っていない。
今の八神から見て...綾小路清隆は憎悪の感情を向ける相手ではなく、自身の目標...または、ある人物をめぐるライバル的な存在だ。
この微妙な変化...さらに、ある人物への対応が後に自分の明暗を分ける事になろうとは...この時の八神は知らなかった。
一方の1年Cクラスでは...
「じゃあ、宇都宮くんは【選択権獲得】グループのまとめ役として、お願いするね。」
「あぁ、【問題回答】グループの方の指揮は頼んだぞ。椿...」
「任せて。」
Cクラスリーダー的存在の宇都宮が、クラスメートの椿桜子と二人で話し合いをしていた。
「それと...宇都宮くん。」
「どうしたんだ?」
「波田野くんに伝えといて。八神拓也を信用するなって。」
「八神...をか?」
宇都宮は椿の言葉が理解できなかった。波田野と八神は同じ生徒会役員同士、親しい間柄な事ぐらいしか知らなかったのだから...
「私から見ると、八神くんは綾小路先輩の退学を狙ってるようには見えないんだよね。むしろ、波田野くんに憎悪の感情を向けているような気がするんだ。」
「そうか?俺から見れば、仲が良いように見えるがな?まぁ...椿の洞察力は本物だから、八神なりに何かしらの理由があるんだろうか...」
「もしかすると、今回の特別試験のペナルティ行為を利用して波田野くんを退学に追いやろうとしてるのかもね。八神くんはBクラスのリーダー的な存在...もしも、彼の根が腹黒なら...それぐらいは思いついてもおかしくはないの。」
「確かに...波田野が退学に追い込まれたとなると、クラスポイントは-100ポイントか...さらに、この状態だと...特別試験の宝泉の采配次第では、Dクラスへの降格の可能性も生まれてくる...それだけは避けないとな。」
「そう...だから、ちゃんと伝えといてよ。」
そう言い残すと、椿はその場を立ち去っていった...
(もしも、波田野が退学になって...その真相をCクラスの皆が知ったならば、Bクラスとは完全に敵対関係になるな...下手をすれば、BクラスとDクラス双方から攻撃を受け続ける展開も考えられる...)
その場に残された宇都宮は頭を捻らせて、今後の事を考えていた。
ただでさえ、宝泉が率いるDクラスにちょっかいをかけられている状況である...宇都宮的には、できれば避けたい事だ。
(今の内に天沢がいるAクラスと手を組むか?もしくは、波田野が退学になったら、表面上...宝泉の仕業と言い掛かりをつけて、Bクラスとの争いは避けるという選択肢も...もしくは、実現は難しいが...天沢をうちのクラスに移籍してもらうよう頼んでみるか?...)
八神が波田野を退学にしたい本当の理由を知った時、椿と宇都宮はどのような反応をするのだろうか?
さらに、1年Dクラスでは...
「今回の特別試験ですが...一夏さんは【選択権獲得】グループとして、参加するでしょうね。」
「ほォ?理由を言ってみやがれェ。」
「一夏さんと同じく...Aクラスのリーダー的存在の石上君が身体能力のOAA数値の低さから【問題回答】グループなのが、ほぼ確定しているからです。さすがにリーダー格を同じグループに偏らせたりはしないでしょう...」
「...なるほどなァ!」
こちらも...七瀬と宝泉が特別試験について、話し合いをしている最中だった。
「そうだなァ!普通の奴らなら、そう予想するはずだぜェ!特に宇都宮辺りがなァ。」
「と...言いますと?」
「けっ!相手はあの天沢だァ。ペティナイフの件のように、奇想天外なやり方で俺達を翻弄してくる可能性があるって事だァ。」
幸運なのか?宝泉は4月に天沢にしてやられた経験があったからこそ、天沢がただの優等生ではない事に気づいていた。
「天沢の件は後回しだァ...とりあえず、うちのクラスで中間の点数の下位20名を強制的に【選択権獲得】グループに入れておく...そいつらに残りの数日の間に少しでも運動能力を上げれるよう、俺が直々にしごいてやるゥ。」
「分かりました。その20人の内、女子の方は私に任せてください。男子と女子とでは、体力や筋肉量などに差がありますので練習メニューを分けた方がよろしいでしょう。」
こうして...各クラス、それぞれの思惑が募る中...時間は、あっという間に流れていった...
そして...ついに4択不一致試験の当日の朝がやって来たのだった...
七瀬翼の決断は⁉️
-
原作通りの展開
-
原作よりも早く...綾小路の忠犬へ