「せっかくなので聞かせてもらいますね。今回の特別試験ですが...天沢一夏、あなたがその気になっていれば少なくともトップ3くらいにはなれたのではないのでしょうか?」
先程の自らの失態に対する羞恥心がだいぶ収まってきた頃だった。私は森下先輩にいきなり、そのような事を聞かれたのは...
「えぇ~?さすがに過大評価されすぎだと思いますよ~?いくら、私でも高円寺先輩には勝てっこないですから~!」
実際に高円寺先輩はトータルスペックは清隆先輩とほぼ互角であり、単純な武力だけなら清隆先輩も超えるだろうと清隆先輩本人から評価されているのだ。そんな彼に私が勝てそうな未来は見えないので決して嘘は言っていない。
また、それとは別に私は清隆先輩から事前に今回の特別試験の直前に堀北先輩が高円寺先輩と取引をした事を聞かされていた。
その内容を簡単に言うと...高円寺先輩が今回の特別試験で1位になれたら、堀北先輩は今後は彼の行動に一切の口出ししない...1位になれなかったら、今後は堀北先輩の指示に従ってもらうというものだった。そして、清隆先輩は高円寺先輩に1位になってもらうべく、私に今回の特別試験では全力は出さないようにと指示したのだ。
逆行する前の知識で清隆先輩が将来、クラスを移籍する事を知っていた私は快く了承した。大方、自身のクラス移籍後に高円寺先輩が元のクラスに全力で貢献される可能性を危惧していたのかもしれない。
...まぁ、仮にそうなったとしても清隆先輩なら案外、何とか対処できるんじゃないの?と思ったのはさすがに買い被りすぎだろうか?
「百歩譲って高円寺六助には勝てないとしましょう。正直、あれは半分ほど人間をやめている気がしますし...ですが、あなたが南雲雅先輩や一之瀬帆波や坂柳有栖に劣るとは到底、思えないのですが?」
「えっと、それは...」
さっきも言った通り、私が全力を出していれば南雲先輩や一之瀬先輩、坂柳先輩のグループの得点は超えていた可能性はあった。そして、自分のクラスのクラスポイントを増やす事もできたはずなのになぜ、自分から勝負を捨てるような真似をしたのか?それが森下先輩から見れば不思議だったに違いない。
「さて、天沢一夏。あなたは私のこの問いに一切の否定はしない...この時点で私の考えが正しかったと見なさせてもらいますよ?」
全く...変人キャラの癖して妙なところで鋭いんだから!ほんとに油断ならない先輩だよ...
「まぁ、そうですね...実は私はちょっとした頼み事をされてま...」
「あっ、この話題については深くは追及しません。天沢一夏の実力については非常に興味深いものですが、今回はそれ以上に聞きたい事があるのです。」
「えっ?それって何ですか?」
...ん?私の実力についてとか、特別試験での結果とか以上に聞きたい事だって?あいにく、一夏ちゃんに思い当たる事はないんだけどな~?
「天沢一夏...あなたは坂柳有栖に何かしましたか?」
「はい?どういう事ですか?」
あれっ?どうして森下先輩の口から坂柳先輩の名前が出てくるのかな~?
「私はそれなりに坂柳有栖とは話す機会があるのですが...私が天沢一夏という名前を出す度に坂柳有栖が顔を赤くしたり、体を震わせたりと...普通の女の子のような反応をするので不思議な感じたのです。」
「あぁ...」
やっぱり、坂柳先輩はいまだにあの時の出来事を根に持ってるんだろうか?
「その様子からして心当たりがあるようですね。是非ともお聞かせ願いたいのですが...」
「ちなみに...聞いてどうするんですか?」
「今後、彼女と会話する度に遠回しにからかおうと思っています。」
「わ~お!悪い女ですね~!」
正直、この一夏ちゃんも人の事を言えるような人間ではないんだけどね...まぁ、それはそれとして坂柳先輩の弱みを共有するのも悪くないと判断した私は思い切って森下先輩に坂柳先輩に呼び出されたあの日の事を話し始めた。
森下先輩は途中までは相変わらずの無表情だったけど、坂柳先輩が火事場の馬鹿力で杖を折ったと説明した時から口元が微妙に歪み始め、最終的に坂柳先輩をお姫様抱っこして部屋まで送っていった事を語ると遂に我慢が出来なかったのか、吹き出してしまった。
「ゴホン...!そのような事があったのですか...なら、これからは気をつけるべきですね。坂柳有栖は執念深い性格なのですから。」
それを咄嗟の咳払いでごまかすと私にそう忠告してきたのだ。
坂柳先輩の執念深さの話なら私も清隆先輩から聞いている。
何でも、私が入学する前の2月におこなわれたクラス内投票という特別試験で山内春樹という名の生徒を間接的に退学に追い込んだらしいのだが、その理由が以前に彼が自分を転ばせたからというしょうもないものだったらしい。
私も初めて聞いた時は信じられない話だった。
「森下先輩、ご忠告ありがとうございます。ですが、坂柳先輩だろうと他の誰だろうと...私に牙を向くなら排除するまでですから!坂柳先輩にもそう伝えておいてください!」
「なるほど、分かりました。」
さて、これであの銀髪ロリ先輩が少しでも大人しくなってくれるとありがたいんだけどね~?