あゆみちゃん、徹子ちゃん、春日ちゃん、翼ちゃん. ...そして、この私。
この五人が集まったのは簡単な話であり、無人島サバイバル試験が終わった後に五人で何かして遊ぼうと私が事前に話を通していたからだ。私以外の四人もこの提案に乗り気であり、こうして五人で集まって遊ぶ事になったのだ。
まぁ、それはそうと...
「あの~翼ちゃん?何か目が笑っていないような気がするんだけど...私、何かしたっけ?」
「ふふっ...ご冗談を。一夏さんなら、とっくに分かっているのではないのでしょうか?」
十中八九、無人島でのあの出来事だろうとは思っている。何せ、あの時は有耶無耶になってしまっただけでちゃんとした説明をしたわけではないからね...
翼ちゃんのただならぬ雰囲気にあゆみちゃん、徹子ちゃん、春日ちゃんもそわそわした様子で私達のやり取りを見守っている。
「一夏さん?あの時、どうして...綾小路先輩とキスなされたんですか?」
やっぱり、それだったー!!
さすがに...あの状況での一夏ちゃんの清隆先輩への唐突なキスは翼ちゃんから見ても見過ごせない案件だもんね。うん、無理はない...
「えぇー!?てっきり、お姫さま抱っことア~ン止まりだと思ってたのに!」
「なるほど、私達が予想していた以上にお二人の関係性は進行していたのですね...!」
「えっ、一夏ちゃんが...あの綾小路先輩と...?」
あゆみちゃん、徹子ちゃん、春日ちゃん?あなた達...さりげなく私と清隆先輩のデートに尾行してるのをバラしちゃってるねぇ...
まぁ、私は分かってはいたけど...
私が清隆先輩にそんな事をしてるのを知っている人間はあの日、デートを尾行していた人間だけだもの。
「そういえば...確か、一夏さんはそんな事も言っていましたよね?どういう事なのか、私に詳しく説明していただけますよね?」
「えっ?いや、あの...」
「説明していただけますよね?」
「はい...」
結局、翼ちゃんの圧に負ける形で私は清隆先輩とデートにいった時の話や彼に対する好意を包み隠さずに話す事で彼女に何とか落ち着きを取り戻してもらったのだった...
「やっぱりかぁ...同じ中学の先輩と後輩という時点で怪しいとは思ってたんだよね~!」
「中学時代の先輩と後輩...あっ、そういう事でしたか。そこから一夏さんは綾小路先輩に好意を持つようになったと?」
「あはは~...そんなところかな?」
あゆみちゃんの言葉に一瞬だけ首を傾げた翼ちゃんだったが、私からのアイコンタクトで清隆先輩との関係を
「一夏さんの恋を応援します...と言いたいところですが、ちょっと複雑ですね...綾小路先輩ばかりが一夏さんにあんな事してもらえるなんて...」
「翼ちゃん~!その気持ち、私も理解できるよ~!だって一夏ちゃんにそこまで好かれる綾小路先輩が羨ましくてモヤモヤしちゃう時あるもん!」
「ですよね!私もあゆみさんと似たような気持ちになる事があります...たぶん、綾小路先輩に嫉妬しているのでしょうか?」
いやいや!男と女の関係に同性が入り込む余地なんてないはずなのに何でモヤモヤしたり、嫉妬したりするのかな~?
「一夏ちゃんは女の子にも友情とは別の意味で好かれているのかもしれませんね~!ちなみに私もあゆみちゃんと翼ちゃんに同意ですよ?」
私の心の中に浮かんできた疑問を見透かしたかのように徹子ちゃんがそう言ってくるけど...やっぱり、分かんないよー!
だって、こんなの...ホワイトルームでも教わらなかったんだもの...
・・・・・
そんな感じで恋愛トークをしていた私達だったけど、途中であゆみちゃんの提案で豪華客船の屋外プールを貸しきりにして五人で遊ぶ事になった。
「翼ちゃんの水着姿楽しみ~!」
「そうですね...私も少しばかり、興味があります。」
「私もかな~?」
「ちょっ!あゆみさんに徹子さんに春日さん!そんなに言われてしまうと恥ずかしいです...」
黙ってはいるけど、私も翼ちゃんを含めた皆の水着姿が見れるのをちょっと楽しみにしているのは秘密だよ?
「あっ!もちろん、一夏ちゃんの水着姿にも期待しているからね~!」
「うん!一夏ちゃんの水着姿に期待しててね~!」
「私も一夏さんの水着姿には期待しています!」
「翼ちゃん、ありがとう!」
そんな感じでプールにやって来た私達はプールを貸し切ろうとしたんだけど...
『申し訳ないのですが...既に先に貸し切りを申し込んできた団体がいまして...』
「あぁ...そっか...」
係の人からそのように言われた。
どうやら、私達は一足遅かったみたいだ。皆の水着姿はお預けのようだ。
(なら、仕方ないよね...今日は部屋で皆とゆっくり過ごすのがベストかな?)
仕方なく私がそう提案をしようとした時だった。
「あれっ?いちかのんじゃん!もしかして、いちかのんも友達を連れてプールに遊びに来たの?」
「えっ?長谷部先輩!?どうしてここに?」
目の前に現れたのは綾小路グループの一員で私とも顔見知りの長谷部先輩だった。
「あ~、実はここのプールを貸し切ってグループメンバーで楽しもうと思って~!」
どうやら、ここのプールを先客は綾小路グループの皆さんだったようだ。
そして、長谷部先輩の後ろから他の綾小路グループのメンバーも私に気づくとこちらに近寄ってきた。
「わ~お!幸村先輩に三宅先輩に佐倉先輩...そして、清隆先輩まで!」
「あっ...天沢さん、久しぶりです...」
「天沢か、久しぶりだな。」
「よう、久しぶり。」
「いえいえ!こちらこそお久しぶりです!」
私が三人に挨拶を交わしていると清隆先輩もこちらに近寄ってきた。清隆先輩は私が綾小路グループのメンバーと親しい間柄だった事に興味を抱いたのかもね?
「お前達、仲が良かったんだな...」
「はい!夏休み前に色々とありまして~!」
「そうか...」
私が清隆先輩と話しているとあゆみちゃん、徹子ちゃん、翼ちゃんから謎の視線を向けられた。特に翼ちゃんなんかは歯軋りまでしてるし...それとだよ?春日ちゃんが綾小路先輩の姿を見て一瞬だけ怯えているように見えたのは私の気のせいかな?
「あなた達はいちかのんのお友達?」
「いや、いちかのんって...はい、1年Dクラスの七瀬翼です。」
「面白いネーミングセンスですね~!あっ、私は1年Aクラスの三井あゆみです!」
「同じく小西徹子です。」
「栗原春日です...」
お互いに相手に自己紹介をして話を弾ませている内に最初は緊張している様子だった私のグループメンバーも綾小路グループのメンバー...特に長谷部先輩や佐倉先輩とはすっかり仲良くなれたらしい。
(この感じだと...長谷部先輩は四人のあだ名を考えてそうだね~!)
そんな感じで私達がお互いにだいぶ、打ち解けていった頃だった。
「あっ!そうだ!私に提案があるんだけど!いちかのん達もプールを貸し切ろうとしてたんだよね?」
「そうですね~!先を越されちゃいましたけど...」
しかし、次に長谷部先輩の口から出てきたのは一夏ちゃんが予想していなかったものだった。
「だったらさぁ...いっそのこと、プールはこの十人で貸し切りにしない?」
「「えっ...」」
後にも先にも...清隆先輩と一夏ちゃんの困惑したような気の抜けた声が重なったのは今日だけだった...