とある傭兵のクソ映画   作:何もかんもダルい

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想像以上に傭兵おじさんが好評でイベント形式で外伝書いちゃったやつ
ストックは無いので不定期更新でございますわよ!!

Tips
傭兵の顔イメージは青の祓魔師の獅郎神父。丸メガネの似合う白髪イケオジ。


イベント(風):銃声哀歌のエブリデイ

 シャーレには7不思議がある。

 その一つに、「傭兵の銃」は入れられている。

 

「何年前だったか、仕事を終えてクタクタになってねぐらに帰ったらあったんだよ、コイツ」

 

 そう言って、傭兵はアサルトライフルを足蹴にする。それは自身の命を預ける武器とは思えない扱いであったが、同時にその程度で何かが変わるほど脆くないという雑な信頼だった。

 

「買った覚えもない、どこで作られたかもさっぱり、おまけに検査のために企業に寄越したら次の日には()()()()()()()()。届けられた訳じゃねぇぞ? 文字通り玄関口にポツンとすっぽかされてたんだ」

 

 銃の形状からM4A1と銘打ってはいるが、その実それは「銃の形をしている何か」である。

 偽装ヘイローも天寿の弾丸も、全てはその銃からもたらされたものだった。

 

「頭に取扱説明書(トリセツ)が直にダウンロードされたような気分だったな。だから使おうと思えばポンと使える……んだがな、それを他人に教えようとすると途端に分からなくなるんだ。頭の中に靄が掛かったみたいに一言も喋れなくなるし、説明を諦めるとそれは勝手に治る」

 

 手入れは不要、何時でも新品同然を保ち続ける。だというのに、それは手入れを怠ると癇癪を起こしたかのように傭兵へ小さな不幸を山ほど振り掛けた。

 

「1ヶ月くらい放っといたときとか酷かったな。頭に物は落ちてくるわ装備は急に壊れるわ、電子機器なんて一番肝心な時にショートだのブルスクだの起こしてゴミになる。それでキレてコイツをロッカーに閉じ込めて新しい銃買ったら何したと思う? 奇跡的な跳ね返りを披露して蹴り上げた石ころが額にホールインワン、おまけにそのまま薬室に入り込んで暴発だ……流石に根負けしたよ」

 

 結局「それ」が一体何なのかは今も尚分かっていない。

 だが、キヴォトスで様々な経験をして、傭兵には新たに分かったことがある。

 

「コイツも()()なんだろうな。キヴォトス(ここ)で色々ガキんちょ見てきてやっと分かったんだが、コイツの癇癪の根底にあるのは『不安』なんだと思う。すぐヘラるしすぐヒスるしクソほど面倒臭ぇけど、そう思うと……まあ、その、何だ。手放すには早ぇ気がしたんだ」

 

 

「おまえが、それほどまでに愛すべき場所であるのか?」

 

 ────「ソレ』が初めて抱いた疑問は、とても抽象的なものだった。

 天にも人にも光輪の浮かぶ世界。蒼色の空が澄み渡る場所。

 

「何も愛さなかったおまえが。何一つ欲しいと思えなかった虚ろが。ただ命を奪うだけのモノであったおまえが。初めて愛したこの世界は……本当に、おまえが愛するに足るモノであるのか?」

 

 『ソレ』は、ただ見つめ続けていた。

 連れられて見ていた景色を、その情景を。見つめた上で、その疑問が蟠り続けた。

 

「おまえが苦しみ続けたあの煙と瓦礫の世界と、何が違う。皆が皆、引き金を引き、人を傷つけて笑うばかりではないのか?」

 

 『ソレ』は、世界を二つに分けて見ていた。

 一つは煙と廃墟、そして死臭の世界。もう一つは、ただ硝煙の匂いだけがする清浄な世界。

 『ソレ』は、キヴォトスを清浄であると見ていた。不条理な死を厭い、皆が加減し、争い続けるのに誰一人死ぬことのない世界が成立する。そのシンプルな()()を、ある種尊いものと解していた。

 

 だが、その上で。

 

「おまえを巻き込み嗤う思惑の数々、妾は吐き気を催していたぞ」

 

 『ソレ』は、根本的な部分で人間が嫌いだった。

 理由はある。原因もまたある。反対に、嫌わない理由もまた存在している。その上で、『ソレ』は人間や人間のように何かを考えるモノを徹底して嫌悪していた。

 

「何度おまえの思惑に逆らおうと思うたか分からぬ。おまえが引き金を引けぬのなら妾が引いてやろうと幾度思うたか数えきれぬ。嗚呼、何故斯様に清浄でありながらげに醜いのだ。幾度彼奴等を滅ぼし尽くす妄想をしたか飽き足らぬ。疎ましい、鬱陶しい、気分が悪い。総じて往ねば良いものを」

 

 その嫌悪は、もはや憎悪と言っても過言ではなかった。

 引き留めるものが無ければ、『ソレ』はキヴォトスの全てを滅ぼしていただろう。そうするだけの力が、()()が、『ソレ』にはあった。

 

「……であると言うのに。そのような醜きものを、おまえは、おまえは…………愛したのだな」

 

 そう、引き留めるものが無ければ。

 『ソレ』が理解を拒んだ世界を、愛した者がいた。

 

「…………」

 

 『何故』。たった一言、それだけが『ソレ』の絞り出した疑問だった。

 

 

「……なぁ先生。俺の銃知らねぇか?」

「傭兵の銃?」

 

 今朝からやけにそわそわとシャーレのビル内を歩き回っていた傭兵。話を聞いてみると、彼の愛銃であるM4A1が朝から行方不明らしい。ガンラックに掛けて保管していたはずが、目を覚ますと忽然と消えていたのだとか。

 

 キヴォトスにおいて銃というものはアイデンティティやパーソナリティともいえる品。生徒たちもそれぞれが自分だけのカスタムやデコレーションを施したものをいつでも携帯している。それゆえに、キヴォトス(ここ)で銃を紛失するという事は保安上の問題よりももっと別の意味を有する。

 速い話が「幼い頃から大切にしていた宝物を盗まれた」といった話と同義なのだ。誰にでも価値があるものではなくとも、当人にとっては命を賭けるに値するような、そういう話。

 

 そんな事情もあり、自分たちからすれば「間違って使われると危ないなぁ」という程度(生徒や住人の頑強さあっての認識だが)ではあるが、生徒からすればそんじょそこらの事件よりも一大事と捉えられて大事になりかねない。それを嫌がって一人で黙々と探していたらしい傭兵だが、いい加減個人の力では限界だと悟ったらしい。

 

「サブの銃は幾らか持ってるから困りゃしねぇんだが……何だろうな。こう、据わりが悪いんだよ。お気に入りのマグカップ無くしちまったみたいな」

「一応こっちからもそれとなく伝えておこうか?」

「気は進まねぇが……まぁそうも言ってられないか。頼むわ。お前さんの方が顔は広いだろうしな」

「うん、任せて」

 

 アロナの手も借りて、モモトークで傭兵の銃について一斉送信。念の為「あまり騒ぎ立てないように」という一文も追加してはみたけれど、どのくらいの効果があるやら……

 

「まぁ雀の涙だろ。基本的にお祭り騒ぎが好きな奴らだしな」

「あはは……」

 

 否定できないのが微妙に辛い。10代特有の有り余るエネルギーというか、生徒たちは基本的にはしゃぐのが好きだから。

 先生としてあまり抑圧するような事はしたくないし、抑えつけたエネルギーは変な方向に炸裂するのが常だ。後輩が出来て矢面に立つようになれば自然と落ち着きも出てくるだろうとなるだけ好きにさせて、事後に制圧するようにしている。度が過ぎれば流石に私だって怒るしお説教もするけど、私個人の怒りや苛立ちとキヴォトスにおける「やり過ぎ」はきっと違うものだから、叱る理由に私の感情が入らないようにだけは注意している。

 

 そんな風に考えていると、続々とモモトークの返信が届き始める。やっぱり皆私や傭兵よりも重く捉えているようで、真面目な子は今日の予定をキャンセルしようとする始末。真面目なのはいい事だけどそこまで重大じゃないよ、とやんわりと押し留めながら返信して、ついでに書類を捌いていく。

 

 傭兵も一度気を休める事にしたのか、インスタントのコーヒーを注いで帳簿の作成を始めていた。

 

「毎度思うが、お前のそのマルチタスクすげぇよなホント」

「そうでもないよ? 書類の方は大抵が決済待ちだし」

 

 紙の書類が山になっている執務室の机。とはいえ私がすべき事は内容に違和がないかとかを見ていって、最後にサインをするだけ。私自身が書類を作らないといけないという事は案外稀。

 量の割にはモモトークを眺めながら確認するだけの余裕はあるし、とんとん拍子に進んでいく。流石に各校の決算期とかにもなると量は数倍になるから夜通しなんてこともあるけれど、その時はその時で手慣れた会計のプロが挙って手伝ってくれるから苦でもない。

 

 初めてキヴォトスに来た日に行政が停止していた原因というのはその殆どが決済待ちのまま止まってしまったからだった。「一番偉い人のOKがないと何も出来ない(違反になってしまう)」というシンプルな常識が足を引っ張ってしまったのが一因だろう。それもあって、今は行政機能も順当に回復している。シャーレの権限を利用して各校の状況を実際に確認できるから、申請の通りやすさも段違いになったという話も聞く。

 書類の山と対面した時は面食らったけど、慣れてくればこんなものだ。むしろ頭を回すスイッチだと思っている節がある。

 

「それが一番すげぇんだがな……」

「そうかな?」

「無自覚なのが一番怖ぇよお前」

 

 私としては傭兵がやっている事の方が凄いと思う。

 毎月予算を弾き出し、弾薬1つから武器、乗り物に至るまでを揃えて運用し、メンテナンスなどにかかる費用を全て計上して申請しているのだ。やっている事はユウカやアオイに近いが、彼女たちから見てもその出来はかなり良いものらしい。

 

「あのアオイから書類について一言も文句が出ないって相当だよ」

「慣れてくりゃこんなもんだろうよ。俺だって最初から全部出来た訳じゃねぇしな」

「その慣れるまでが結構しんどいんだけど……」

 

 先述の通り、私の書類仕事は大半が確認と署名だ。だから未だに予算申請やら精算やら何やらは四苦八苦するし、量が多いと泣きつくこともある。情けないとは思うが普通に苦手なんです。何で傭兵は確定申告を一発で終わらせられるんだ……?

 

「代わりにやってくれない……?」

「書類偽造だの署名虚偽だのって言われても俺は知らねぇぞ」

「だよねぇ…………」

 

 項垂れる。ちょっと奮発して高いプラモとか結構買っちゃったからユウカの目が怖いんだよ……

 

 と、そうこうしているとそのユウカから気になる一報が入った。

 

 

 ────ミレニアムに傭兵の銃を持った少女がいる。

 

「見つかったのか」

「うん、そうなんだけど……」

 

 続いて入力してきたのはモモイだった。

 曰く、傭兵の銃を自身の所有物だと頑なに主張して聞かないらしい。しかも取り上げようとするとアリスすら振り払うほどの無茶苦茶な膂力で暴れるとのこと。

 その事を伝えると、そのまま傭兵は口に手を当てて沈黙する。そうしてしばらく何かを考えた後、開いていた帳簿や書類を片付けて席を立った。

 

「行くの?」

「ああ、先生はどうする」

「一緒に行くよ。一体誰なのかも気になる」

 

 了解だ、といつもの調子で言う傭兵。

 

 その目が、まるで裁きを受ける罪人のような揺れ方をしているのがひどく気に掛かった。

 

 

 

 少女がヘルメットを被った生徒達を素手で叩きのめしていく。全身を弾丸の雨に打ち据えられようと微動だにせず、そのまま頭を鷲掴みにして地面や壁へ叩きつける。ただそれだけで地面は凹み、蜘蛛の巣のようなヒビを入れていく。

 戦車や武装車両が出てこようものなら素手で装甲を文字通り引き剥がし、中身を強引に引き抜いて破壊する。挙句には蹴り壊した戦車の砲塔を棍棒代わりに更なる暴虐を振り撒いていく。

 ミレニアムの一角は、今や紛争跡地もかくやという姿を晒していた。

 

「────触るでない不埒者共が!」

 

 第一発見者のユウカとモモイ、そしてゲーム開発部はその少女の扱いに困り果てていた。

 モモイよりは高く、ユウカよりは低い背丈。足首まである青みがかった黒髪。和風とも洋風とも言い難いロングスカートの衣類に身を包み、片手で大事に抱えているアサルトライフルは間違いようもなくシャーレの傭兵のもの。

 どう説得しようと頑なにライフル(それ)を自身のものであると主張し、いざ取り上げようとすれば嫌悪を露わにして手を振り払う。

 終いには何処から何を聞きつけたのかヘルメット団が出現し攻撃を仕掛けてきた瞬間に激昂。手をつけられないほどの大暴走を開始し、止めようとしたアリスを()()()()()()()ぶん投げてヘルメットの山に突っ込ませてしまった。

 

「ああもう何がどうなってるのよ!」

「ユウカが無理矢理取り上げようとしたからじゃん!!」

「あんただって後ろから羽交締めして怒らせたじゃない!!」

「触られただけであんなに怒ると思わなかったのー!」

「二人とも喧嘩してる場合じゃないって!!」

 

 ミドリの仲裁も暖簾に腕押し。大混乱を極めるミレニアムの一角は、傭兵と先生が到着するまでお祭り騒ぎだった。




???

「妾に触れるな。関わるな。疎ましい」

レアリティ なし
役割 SPECIAL

武器種 なし

基本情報
傭兵の銃を自身のものだと強硬に主張する少女。無理に取り上げようとするとミカやネルなど各学園最高峰に匹敵する膂力で暴れるため手がつけられない。

EXスキル
「⬛︎べ、⬛︎ね、⬛︎ね」
画面内フィールド全域を射程範囲として現在HPの70%のダメージを敵味方を無視して与える

ノーマルスキル
「砕けよ、⬛︎き者」
円形範囲内の存在に現在体力の50%のダメージを与え、10秒間行動不能にする

パッシブスキル
「止めどなき憎悪」
全スキルのコスト回復力を20%ダウン(敵味方無視)

サブスキル
「破滅、慟哭、そして引き金」
「銃器を使用する攻撃」の攻撃力が50%上昇する(敵味方無視)
編成メンバーに傭兵が存在する場合、味方のみに適用される。
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