天国でスネ夫やジャイアン、藤子先生と会えたでしょうかね
やっぱりそうなるんだね
のび太達が九校戦の選手に選ばれてから約1ヶ月程がたった。その間期末テストに向けて達也達はのび太の勉強を見るのに苦労し、本日そのテストが帰ってきた。結果はギリギリ赤点回避をしており大歓喜をしていた。
「よかったぁぁ!!」
「やっと解放されるわね・・・・」
「一番苦労したのは達也だろ、アイツどこかの宇宙のネコみたいな顔しながら『なんでこれで入試が受かったのか分からない』ってぼやいていたろ」
「仕方がないでしょう、あれは入試に特化させただけの勉強だったんだから身についてるはずが無いもの」
因みに今回のテストの勉強は達也監修の元やっていたが周りはそこまでやらなくてもいいのでは?と言っていたがしかし断ったら断ったで当主の真夜から何を言われるか分からない為一応手伝ったのだ。
しかし今回その立役者である達也の姿がない。
「失礼しました。ん?皆、どうしたんだこんな所で」
「『どうした』はこっちのセリフだぜ、達也。指導室に呼び出されるなんて、一体何をやらかしたんだ?」
「あぁ・・・・期末試験の事でちょっとな」
達也は話し始めた。どうやら達也は実技試験で手を抜いていたのでは無いかと疑いをかけられたのだ。
「そんな事して意味あるの?」
「無いな」
「でも、先生がそんな気になるのも分かる」
「そうですよ! それだけ達也さんの成績が凄かった事なんですから!」
美月が拳を握りしめて力説したが、彼女が興奮するのも無理は無い。
今回のテスト、総合の点数や実技の点数で見れば特別変なことは無いのだが、これが筆記のテストとなると話が変わってくる。なんと1位達也、2位が深雪、3位が吉田幹比古と言う二科生の生徒で、他にも20位以内だと5位がほのか、10位が雫、17位に美月、20位にエリカと、トップ20人に広げても二科生が4人いるという異常事態だった。因みにレオとのび太はランク外であるがここでは取り上げないものとする。
「あらー、レオったらアタシよりも下なのー? おほほほほ」
「だあぁ! わざわざ蒸し返すんじゃねぇよ、エリカ!」
「それで達也さん、誤解は解けたの?」
「あぁ、なんとかな。ただ・・・・」
「ただ?」
「第四高校への転入を勧められたよ。あそこなら魔法工学に力を入れているからって」
「そうなの?」
と、エリカは雫に聞く。実は雫の従兄弟が第四高校の生徒でその話を皆にしていたのだ。そして第四高校での話を聞いている雫は首を横に振っていた。
「ううん、確かに力入れているけど、あくまで“他校よりは"だから。実技が優先される事に変わらない」
「まぁ、赤点ギリギリとは言え合格ラインには届いているんだ。俺が了承しない限り余所に転校されるということはないだろう」
「達也くんみたいなタイプの生徒が初めてだったから先生達もどう扱えばいいのか分からなかったのかもね」
「そうかもな。っと、そろそろ移動しないか?ここじゃ流石に邪魔になる」
達也の言葉に全員が頷き、移動した。
「そう言えばお兄様の一大事なのに深雪はどこ行ったのかしら?」
「深雪は九校戦の準備で大忙しだ。のび太もミーティングで駆り出されているんだろ」
「そう言えば居ねぇな」
全国魔法科高校親善魔法競技大会(通称:九校戦)は、日本国内に9つある国立魔法大学付属高校の生徒がスポーツ系魔法競技で競い合う全国大会である。日本魔法協会主催で行われる。
例年「富士演習場南東エリア」の会場で10日間開催され、観客は10日間で述べ10万人ほどである。映像媒体による中継が行われている。
その競技の性質上、九校戦で活躍した選手から軍人の道に進む者は多い。軍としても優秀な実戦魔法師を確保する為に、競技会場と共に軍の所有するホテルを宿舎として生徒と学校関係者の為に貸切の形で提供して、全面的に協力している。
「そう言えば、ほのかも雫も九校戦の選手として出場するんだよね」
エリカの問い掛けに、ほのかと雫が揃って頷いた。九校戦は全学年が参加可能な“本戦”と1年生のみが参加できる“新人戦”の2つに分かれており、一科生の中でもトップクラスの成績を誇る2人が選手に選ばれるのはむしろ必然であった。
「ま! あの3人とほのか達も入れば新人戦は一高の優勝で決まったようなものでしょ!」
エリカの言葉に、雫は真剣な表情で首を横に振った。
「そんなことはない。今年は三高に、一条の御曹司が入ったから」
「一条って、十師族の一条か? そりゃ確かに強敵っぽいな」
「随分と詳しいね。ひょっとして、雫って九校戦フリーク?」
「雫は毎年、大会を観に行ってるんだよ。特にモノリス・コードがお気に入りなんだよね」
「今年は観る側じゃなくて競う側ですね」
「うん、頑張る」
無表情ながら拳を握り締めて力強く決意を露わにする雫なのであった。
その週の休日
東京都練馬区のとある空き地に3人の男女が集まっていた。彼等はかつてのび太達と共に過ごし様々な冒険を繰り広げてきた友達、
剛田武ことジャイアン
骨川スネ夫
源静香
3人とのび太、エリカとは高校入学で別れ、3人は公立高校に入学したが連絡は取り合っているほど関係は続いているのだ。
「エリカちゃんまだかな」
「なんだろうね用事って、ジャイアンなにか聞いてる?」
「いや、なんも聞いてねぇな。会って話すって言ってたし」
3人は本日エリカから呼び出しを受けていたのだ。因みに直接会うのは中学最後の春休み以来、実に3ヶ月ぶりくらいになる。
「おまたせ〜」
「あっ、やっと来た」
「今日はどうしたの?」
「進学してから顔を合わせる機会が無かったから、会いたいなって思ったのとちょっとした報告をね」
なんだろう。と3人は思うとエリカの口から驚きの一言が出てきた。
「なんとね。のび太が九校戦の選手に選ばれたのよ!」
「「・・・・えぇ!!?」」
「な、なんだよ、九校戦って?」
スネ夫としずかちゃんは九校戦の事を知っているためそれがどれほど凄いことなのかが分かるがジャイアンはよくわかっていない様子。
「知らないのジャイアン?九校戦っていうのは日本国内に9つある国立魔法大学付属高校の生徒がスポーツ系魔法競技で競い合う全国大会だよ」
「毎年テレビでも中継されているのよ?」
「甲子園の中継ばっかり見てるからよぉ・・・・それで、その凄い大会にのび太が出るってのか?」
「そっ、しかも2種類、新人戦の『スピードシューティング』と『モノリスコード』にね」
「モノリスコード?!凄いじゃん!」
「テニスコート?」
「モノリスコード!九校戦の目玉競技の1つだよ、テレビを通してだけど大迫力でさ、興奮するんだよ!ジャイアンにも後で過去の試合映像見せてあげるね」
「スピードシューティングって確かクレー射撃みたいな競技よね?ならのび太さんにピッタリな競技ね」
「へぇー」
「それでさ、8月3日から12日、できればその前後1日も空いてるといいんだけど」
「え?えぇっと、多分大丈夫」
「私も」
「俺も。なんでそんなこと聞くんだよ?」
「あんた達、のび太の応援に行きたくない?」
エリカの問いに3人とも頷きはするが、九校戦を知るスネ夫としずかちゃんは他の事を気にしていた。
「そりゃ、行きたいけど・・・・」
「確か九校戦が行われる場所って富士演習場でしょ?あそこら辺のホテルって軍の関係者しか泊まれないんじゃ・・・・」
「そこはほら、
「じゃあ、当日車出すのは僕の方で頼むよ」
「それなんだけど、その日、一校の連中も一緒にいい?美月とかも連れて行きたいし」
「おっけー」
週明けの昼休み
達也達が生徒会や風紀委員会に入ってから、生徒会室で昼食を取ることが習慣となっていた。深雪は生徒会の仕事するため、達也はその付き添いを。そして時々だがのび太も一緒にいたりもする。
いつもなら真由美や摩利がメインで談笑をしているのだが、特に真由美が深刻そうにため息を吐いている為かあまり会話が弾んでいなかった。
「随分悩んでいるようだな、真由美」
「えぇ、選手の方は十文字君のおかげでどうにかなっているけど、問題なのはエンジニアなのよねぇ・・・・」
「なんだ、まだ決まっていなかったのか?」
驚いた様な口調で摩利が尋ねると、真由美は力なく頷き話し出す。元々一校に入学した生徒の殆どが魔法師志望で達也の様な魔法工学の人材が少なく特に今の3年生には2,3人程しかおらず真由美や十文字がカバーしている。2年生にはあずさともう一人、『五十里』という男子生徒が主力のエンジニアとしている。無論他にもエンジニアはいるがそれでも10人に満たない。
「おいおい、おまえ達は一高でも主力選手だろ? 他の選手にかまけて自分が疎かになったら元も子もないぞ?」
「本当よねー。せめて摩利が自分でCADの調整ができれば良いんだろうけど……」
「……いやぁ、本当に深刻な問題だな、うむ」
と、嫌味たっぷりの視線を摩利に向けると気まずそうに視線を逸らす。
「あっ、じゃあ達也くんにエンジニアをしてもらえばいいんじゃないですか?」
「・・・・は?」
「「・・・・あっ」」
「・・・・へ?」
のび太の発言に達也は目を丸くし、真由美と摩利はそう言えば達也はCADのメンテナンスが出来るでは無いかと思い出し、それに驚いた深雪。
「そうよ、それよ!」
「・・・・一年が技術スタッフなった例は過去にないのでは?」
「何でも最初は初めてよ!」
「前例は覆すためにある」
と真由美、摩利両名をはじめ、市原、あずさの二人も乗り気であった。達也も何とか反論をするも達也にとって反論できない攻撃を受けてしまう。
「私は、お兄様にCADの調整をしていただきたいのですが・・・・ダメでしょうか?」
深雪から“お願い”されてしまっては達也は断ることができなくなってしまう。
「・・・・分かりました、エンジニアの話、謹んでお受けいたします」
「はい、了解です!放課後に九校戦準備会議があるからサボらないでね?」
こうして達也のエンジニアとしてやっていくことが決定したのだった。
放課後
部活連本部にて行われる九校戦準備会議。そこには選手やエンジニア、作戦スタッフが一堂に会している。のび太達は何度も参加しているのだが達也は昼間に出場することが決まったばかりなので今回が初めてだ。
その為か達也が部屋に入ったとき、仲にいた生徒はそれぞれ違った反応を示したがこの部屋にいるほとんどは一科生、一回目から参加しているのび太がいるとはいえ、いい意味でも悪い意味でも視線を集めてしまうらしい。
「ん?司波、お前も九校戦に選ばれたのか?」
「森崎か、まぁ、そんな所だ」
「出る競技は?」
「いや、俺はエンジニアとして呼ばれたんだ」
「そう言えば、委員会の備品のCADのメンテナンスやってたのってお前だったっけ」
「まぁ、俺としてはエンジニアとして出るのもどうかと思うが・・・・」
と森崎に愚痴をこぼすがすべて終わってしまったこと。そしてそれを合図に真由美がミーティングを始めたのだが、やはりというか、達也のエンジニアと腕を疑問視する声が上がった。それを聞いていたこの会議の議長であり部活連会頭である克人は腕を組んだまま何かを思案する表情を浮かべて
「つまり司波のエンジニアとしての腕が分からないから、反対しているのだろ?ならば司波の技能を実際確かめてみればいい」
「具体的にどうするつもりだ?」
「実際にCADの調整をやらせてみればいい。なんなら俺が実験台になろう」
「危険です!下手なチューニングをされてたら怪我だけではすみません!」
「なら、彼を推薦したのは私ですから、その役は私が「いえ、その役目」っ」
「俺にやらせて頂けませんか?」
名乗り出たのは選手として出場する桐原だった。
「会長、準備が整いました」
実際に本番で使用する車載型の調整機を部屋の中央に設置し、片方に達也が、向かい側に桐原が座った。とはいえ、中央にはモニターが取りつけられているので、互いの顔は見えないようになっている。
「それでは今から、課題に取り組んでもらいます。その調整機を使って桐原くんのCADを競技用のものにコピーし、即時使用可能な状態にしてください」
真由美の言葉に、達也は首を縦に――振らなかった。
「スペックの違うCADにコピーするというのは、あまりお勧め出来ませんね・・・・」
「えっ?」
達也の言葉に、真由美だけでなく他の生徒も疑問の表情を浮かべた。普段からやっているようなことであり今更苦言を呈するほどのことではない、と思っているからである。
しかし彼の言葉を聞いた他のエンジニアは、ニタリと意味ありげな笑みを浮かべて彼を見つめていた。
「仕方ありません、安全第一でいきましょう。――桐原先輩、CADを」
「おう、頼むぜ」
その言葉が“自分のCAD”に対するものなのか、あるいは“自分の期待”に対するものなのかは分からなかったが、どちらにしろ達也のやる気に変わりはない。
「では、始めます」
その言葉を合図に、作業を開始した。桐原のCADからデータを抜き出した達也だったが、普通なら競技用CADにコピーするところを調整機にそのまま保存した。
次に桐原のサイオンを測定する。通常の調整なら自動設定に従うだけでも充分だが、ここからマニュアル操作でいかに精密な調整を行うかがエンジニアの腕の見せ所である。
しかし測定を終了した辺りで、達也の手がピタリと止まった。まさか行程を間違えたのか、とあずさが好奇心を抑えきれずに彼の後ろから画面を覗き込んだ。
「えっ・・・・」
あずさは絶句した。
こういう工程の場合は画面グラフなどの図形が出てくるのだが、画面に映っていたのはただの数字の羅列だった。達也はそれらを見てからキーボードを打ち始める。
「まさか、原データから反映させているの?」
「今時キーボードオンリーなんて」
「やり方が変則的すぎる・・・・」
などと先輩方が話していると達也は作業を終わらせ、CADを桐原を渡し、桐原は渡されたCADを装着、魔法を起動させ持っていた竹刀に高周波ブレードを使い数回振る。
「桐原、感触はどうだ?」
「問題ないですね、全く違和感を感じない」
桐原の言葉に、部屋中からどよめきの声があがる。
しかし、すぐさま反論があがった。
「一応の技術はあるようですが、当校の代表レベルとは言えないのでは? 仕上がりまでの時間も平凡ですし」
「そ、そんなことはありません! 私は司波くんの代表入りを強く希望します!彼がみせてくれた技術はとても高度なものです、あれだけ安全マージンを取りながら通常と同じ時間で終わらせることが出来るなんて私にはとても出来ません!」
「しかし、その分効率を上げられるのでは?」
「そ、それは……、司波くんもいきなりのことだったから……」
最初は勢いの良かったあずさだったが、元来の性格が災いして徐々に勢いが弱まっていった。
しかしそんな彼女に助け船を出したのは、意外な人物だった。
「私も、司波達也の代表入りに賛成です」
「は、服部くん……!」
その人物とは、4月に達也が風紀委員に入ることを誰よりも反対していた、服部だった。
「桐原のCADは競技用よりもハイスペックでした。しかしそれにも拘わらず、使用者に違和感を感じさせなかった。この事実が、司波達也のエンジニアとしての実力を裏付けていると考えます。我が校は人選にも悩むほどのエンジニア不足ですし、一年生だの二科生だのに拘ることなく能力的にベストなメンバーで臨むべきかと」
「服部の指摘は最もなものだと、俺も思う。司波は当校の代表として相応しい技量を見せた。俺も、司波のチーム入りを支持する」
しっかりとした技量、そして生徒会副会長、部活連会頭、この2人の宣言に誰も異を唱える者などいるはずもなく、達也の代表入りが決定したのだった。