ドラえもん のび太の魔法科高校の劣等生   作:むぅち

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久しぶり!

 一校生徒達が乗るバスと作業車が高速に乗ってからだいたい1時間ほどが経った。

 

 

「もうそろそろかな?」

 

「このまま行けば後30分程で着くだろう。着いたら荷降ろししないと」

 

「手伝う?」

 

「お前は選手だろ」

 

「4日目からだから平気でしょ」

 

 

 それでいいのか、と思ったが特段、競技に影響するような作業は無いため問題ないだろう、と考えていたその時

 

 

「ッ!!」

 

「どうしたんですかのび太君?」

 

「タイヤが、破裂した?」

 

「なに?」

 

 

 達也は目を瞑り、以前テロリストの襲撃の時に使った魔法で車外の様子を見るとバスの前方、下りの道路からやって来た車のタイヤが破損し、更に大きくスピン、道路の内側のガード壁に激突した車が、どんな偶然か、宙返りをしながらバスの方へ飛んで来ていた。

 

 

 

 

 バスの中

 

 

「危ない!」

 

 

 誰かの掛け声に全員が驚き窓側座席にいた生徒達が外を見て宙に舞う車がこちらに向かってきていることに気がつく。が、バスは急ブレーキをかけた為か、飛んできた車とぶつかる前に止まり、後ろの作業車もそれに続いて止まる。

 

 

「吹っ飛べ!」

 

「止まって!」

 

「っ!」

 

 

 今の事態をどうにかしようと数人の生徒が魔法を発動し、車を止めようとしたがそれによって事態が悪化、無秩序に重ね掛けされた魔法のそれぞれのサイオン波が干渉を起こして魔法による事象改変力が弱まってしまうという、いわばキャスト・ジャミングと同じことが起きてしまっている。

 

 

「馬鹿やめろ!魔法をキャンセルするんだ!」

 

 

 この状況を打破するには、今あるすべての魔法を圧倒できるだけの事象改変力を持った魔法が必要だ。

 

 

「十文字、行けるか!?」

 

「止めるだけなら出来るが、サイオンの嵐が酷すぎる。消火までは無理だ!」

 

「私が火を消します!」

 

 しかしそのとき、深雪が座席から立ち上がってCADを構えた。そのときには既に魔法の発動準備を終えていて、それを見た克人は即座に防壁の起動式を構築する。

 

 

「頼むぞ」

 

 

 まだ起動中の魔法があるのにも関わらず魔法を使う深雪、すると無秩序に発動していた魔法式の残骸が、何の前触れも無く綺麗に消失した。

 そしてその直後、深雪の魔法が発動した。冷却魔法によって燃え盛る車が一瞬で常温へと戻り、鎮火した。

 克人による防壁魔法がバスを包み込んだのは、更にその直後だった。バスと車は正面衝突し、車はバスが突っ込んだ勢いでみるみる潰れていくが、魔法に守られたバスには傷どころか衝撃すら伝わってこなかった。

 

 

 

 

 

 

「皆、大丈夫だった?」

 

 

 真由美がバスにいる生徒全員に呼び掛けた。急ブレーキの衝撃で軽い怪我を負った生徒はいたが、幸いにも大会に影響するほどの重傷を負った者はいなかった。

 

 

「十文字君ありがとう。おかげでバスは無傷よ、それに深雪さんも、素晴らしい魔法だったわ」

 

「光栄です会長、ですが魔法式を選ぶ余裕が出来たのは、市原先輩が減速魔法でバスを止めてくださったからです」

 

 

 深雪が頭を下げると、市原も笑みを浮かべ軽く会釈をした。

 

 

「それに比べて、千代田お前は!」

 

「す、すみません!」

 

「北山達は1年だからまぁ仕方がないが、2年生のお前が真っ先に場をかき乱すとはどういう了見だ!」

 

「うぅ・・・・すみませんでした・・・・」

 

 

 すっかり落ち込む花音を見てそれ以上責めることはしなかった。しかしそれ以上に摩利には気になることがあった。

 

 

 ────あれは一体なんだったんだ?

 

 

 

 先程の魔法が消えた現象、恐らく魔法によるものなのだろうと摩利は考えていたが、あいにく自分の知識の中ではその様な魔法の情報は持ち合わせていなかった。

 そして何より気になるのがその魔法を誰が発動したのか、最初は真由美が発動させたものばかり思っていたが事故の後の真由美の反応からしてそれは無い。ならば十文字か?とも思ったが彼の得意とする魔法を理解している為それも無い。

 考えを巡らせていると、あの車の傍に技術スタッフの乗った作業車が隣接され、生徒達が救助活動として車のドアを切り取っていた。とはいえ、あれだけの横転事故の末の炎上なのだから、ドライバーの生存は絶望的だろうが。

 そしてそんな救助活動の後方で、現場記録のためにビデオカメラを回す達也の姿が目に入った。

 

 

 ──まさか、な。

 

 

 ふと頭を過ぎった考えを、摩利は鼻で笑って否定した。

 

 その後、破損した車は回収され。安全を確認し、再びバスは富士演習場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテル入口

 

 

「バスの中、大変だったんだね・・・・」

 

「あぁ、マジで焦った」

 

 

 作業車から降りたのび太は作業車の荷物を降ろしつつバスに乗ってた森崎達と合流。

 

 

「・・・・ねぇ、あの車に乗ってた人って」

 

「・・・・まぁ、お察しの通りだ」

 

「気にするな、と言うのは難しいかもしれないが、せめて競技に支障が出ないようにはしておけよ?」

 

 

 のび太は今までそういった場面に近い事は経験してきたが直接人の死を見たのは今回が初めてだった。魔法師ならそういう事はよくある事だと思ってはいるが、やはり割り切れない。

 

 

「のび太?」

 

「あ、ううん、何でもない。僕ちょっと飲み物買ってくるね」

 

「あぁ、じゃあ俺達は先に部屋に行ってるからな」

 

 

 そう言いのび太は森崎達と離れ、ホテルの奥へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・」

 

 

 しばらく歩いたり、いつもと違う景色を見れば少しは気が紛れると思ったが余り変わらない。

 目的の自販機に近づき何を買おうか悩んでいると

 

 

 

 

 

 

「浮かない顔をしているね」

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

 後ろから声をかけられた。振り返ると老人がいた。室内なのにサンバイザーを被っていて眼鏡をかけており、口の周りに髭が生えているが不潔感が無く、しっかり整えられている。

 

 

「いえ、その、大丈夫です・・・・」

 

「いや〜とてもそうは見えんかったのでね。こんな老人で良ければ話を聞くよ?」

 

「・・・・それが───」

 

 

 のび太は途中で起きた事故の事を老人に話し、老人はそれを静かに聞いていた。

 

 

「成程」

 

「変、ですか?」

 

「変だなんて事はない、寧ろそれが普通の反応さ」

 

 

 のび太ほどの年齢ならば、逆に人が死ぬなんて事が目の前に起きれば少なからず動揺するものだと老人は言った。

 

 

「優しさを失わないで、弱いものを労り、互いに助け合い、どんな人達とも友達になろうとする気持ちを失わない。そんな君でいればいいのさ。・・・・おっと、すまない、友人から呼び出されてしまったよ、それじゃあ試合頑張ってくれ」

 

 

 そう言って老人はその場から離れていった。誰かに本音が言えたことで少しは気持ちが楽になったのび太だったが1つ疑問が残った。

 

 

 ────あのお爺さん、僕の事知ってるように話してたような。気の所為かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルのとある一室

 

 

 ガチャン

 

 

「何処に行っていたんだ、英一」

 

「すまんな、烈。なぁに、未来ある若者のお悩み相談をしていただけだ」

 

 

 部屋にいたのは『九島 烈』十師族、『九島家』の先代当主で現在は国防軍の相談役として様々な方面に影響力を持つ人物である。

 そして、今部屋に入ってきた、のび太と話をしていた老人は『木手英一』。烈とは幼い頃からの友人であり烈の右腕でもあり、そして現代において世界最高峰のCADエンジニアとして、その名を轟かしている。

 

 

「あまり関わりすぎるなよ、選手との間に不正が疑われてしまうかもしれないからな」

 

「分かっているさ。・・・・噂の彼とちょっと話しただけだよ」

 

「っ、ほう・・・・なぁ、英一」

 

「なんだ?」

 

「もしかしたら、今回の九校戦、一波乱起きるかもしれんな」

 

 

 烈の言葉に英一は沈黙することしか出来なかった。否定する材料がなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 それから数時間が経ち、一校生徒達は夕方から始まる懇親会に参加していた。パーティーには全国の魔法科高校の代表の生徒達、総勢400名が集まっている。

 パーティーのドレスコードは各学校の制服。なのだが、のび太と達也は借り物のブレザーが身体にしっくり来なくてよりネガティブな気分が増幅していた。

 

 

「あの、元々の制服じゃあダメだったんですか?」

 

「何言ってるんだ。校章が見えないとどの学校の生徒か分からないだろ?」

 

「いや、色で分かるでしょ・・・・」

 

 

 2人は普段のエンブレムが入っていない制服ではなくきちんとその肩にエンブレムが入った制服を着ていたのだ。

 

 

「やっぱ達也君でも緊張するんだね」

 

「それはそうだ、元々この様なパーティーとは無縁の人生だったからな。そう言うのび太はどうなんだ?」

 

「僕は初めてって訳じゃないけど、それでも緊張するよ」

 

 

 のび太の質問に無難な(勿論嘘である)答えを出しつつのび太に聞き返すと意外にもそういったパーティーに参加した経験があったのだ。最もそれが人同士のパーティー以外も含まれる事を達也は知る由もなかった。

 

 

「お飲み物はいかがですか?」

 

 

 近くにやって来たウェイトレスの女性に声をかけられそれに答えようと振り向くとそこには見覚えのある顔ぶれが3人いた。

 

 

「やっほー2人とも」

 

「久しぶりね、のび太さん」

 

「こんな凄い場所にいるなんて、のび太のクセに生意気だぞ!」ニヤニヤ

 

「エリカちゃん、静香ちゃん、スネ夫!」

 

 

 なんとそこには夏休みでこの行事の関係者では無いはずのエリカと半年近く会っていなかった静香とスネ夫が居たのだ。

 

 

「エリカ・・・・この2人は?」

 

「あぁ紹介するわね。小学生の頃からの友達でこっちの女の子が」

 

「源静香です」

 

「僕は骨川スネ夫、よろしくね」

 

「司波達也だ。よろしく」

 

「あれ2人だけ?ジャイアンは?」

 

「あっちは厨房で皿洗いよ、レオと美月と一緒にね。あとミキも来てる」

 

「ジャイアン?」 

 

「もう1人居るのよ。また後で紹介するから」

 

 

 ジャイアンの居場所を聞いて、あぁ・・・・となるのび太、本人的にもここに居たら何をやらかすか分からなかったからだ。

 

 

「お兄様、っと、エリカ?どうしてここに・・・・」

 

「やっほー、深雪。今はちょっとアルバイト中なの、それと深雪にも2人を紹介するわね」

 

「「・・・・・」」

 

「って、どしたの2人とも?」

 

「あっ、えっと・・・・」 

 

「な、なんでもないわ。私、源静香よろしくね」

 

「僕、骨川スネ夫」

 

「司波深雪です」

 

 

 一瞬変な間を感じた深雪だったが、割とよくあることでもあるため気にしてはいなかった。それからエリカ達と少し話をしてから他の選手たちの元へ向かって行き、エリカ達も仕事があるため、のび太達から離れていった。

 それから少し時間が経つと来賓の挨拶が始まった。今日の主役達は世慣れない高校生らしく、食事の手を止め、談笑を中断し、必要以上に真面目な態度で大人達の声に耳を傾けていた。ちなみに

 

 

「もぐもぐ、ゴクン、こういう話っていつも長いよね〜」

 

「・・・・せめて聞いてるふりくらいはしておけ」

 

 達也ものび太のマイペースさに呆れながらも来賓の話を聞いていた。

 

 

『続きまして、魔法教会理事、九島烈様より激励のお言葉をいただきたいと存じます』

 

 

 と、会場にこのアナウンスが流れた途端、今まで話を聞くフリをしていた生徒ですら一斉に表情を引き締めて壇上に注目した。今や伝説の存在といっても過言ではない人物を生で見られるチャンスということで、その注目度は他の来賓者に比べて群を抜いている。

 そうして会場中の視線を集める壇上に姿を現したのは九島烈では無くパーティードレスを纏い髪を金色に染めていた、若い女性だった。

 この状況に生徒達やスタッフ、司会の男性でさえ困惑している。

 

 

「あの人、出る順番間違えたのかな?」

 

「・・・・いや、違うな。これは、“精神干渉魔法”だ。会場のすべてを覆うほど大規模な魔法を発動させているな」

 

「誰が?」

 

「女性の後ろにいる方さ」

 

 

 達也が説明をしたと同時に女性はゆっくりと舞台袖に下がると発動していた魔法が解除され、先ほど女性が立っていた場所より一歩下がった場所に老人が姿を現した。

 

 

『まずは、私の悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する』

 

 

 その声は、マイクを通したものであることを差し引いても、九十近いとは思えない程若々しいものだった。

 

 

『今のはちょっとした余興だ。魔法というより手品の類と言っていいだろう。だが、私の魔法に気づいた者は、私の見たところ、5人だけだった。つまり、私がテロリストだったとして、私を阻むべく行動を起こせた者は5人だけだということだ』

 

 

 烈の言葉に会場の静寂が別の種類のものへと変化した。

 

 

『魔法を学ぶ若人諸君、魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。私が今用いた魔法は、規模こそ大きいものの強度は極めて低い。だが、君達はその弱い魔法に惑わされ、私を認識できなかった。魔法力を向上させる努力は決して怠ってはいけない、だが、それだけでは不十分であることを肝に銘じてほしい。使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣る。魔法を学ぶ若人諸君、私は、君達の工夫を楽しみにしている』

 

 

 烈の挨拶が終わると会場中から拍手が起こる。

 魔法のランクよりも魔法の使い方が重要という考え方は、現代の魔法社会の在り方である“ランク至上主義”に異議を唱えるものだった。

 

 

 ───これが老師か・・・・

 

 

 

 

 

『ふむ、少し緊張をさせ過ぎてしまったかな』

 

 

 挨拶を終えてこれで終わりかと思ったがまだ少し続くようだ。

 

 

『どれ、ならばもう一つ余興をしよう。そうだな・・・・ではそこの、テーブルに近くにいる眼鏡をかけている一校の生徒の君』

 

「・・・・へ?僕?」

 

 

 自分に声がかかるとは思っていなかったせいか、少し抜けた感じに返答してしまった。

 

 

『あぁ、そうだ。君の眼鏡を少し借りてもいいかな?』

 

「は、はい。大丈夫で、っ?!」フワッ

 

 

 のび太が了承し、眼鏡を外そうとした瞬間、眼鏡がひとりでに浮かび上がり、あちこちに動き回り始めた。

 

 

「な、なんだ?!」

 

「どうなっているの!」

 

「このっ!戻って!こいっ!」ブン!

 

 

 勝手に動き回る眼鏡を追いかけていくが中々捕まらない。そしてその眼鏡は烈の手の中に収められた。

 

 

『さて、今のはどういうトリックなのかわかる者はいるかな?』

 

 

 ざわざわ・・・・

 

 

 今の動きにこの会場の殆どの生徒は理解が追い付いていなかった。

 

 

 

 ───一体、どんな魔法を使った?いや、そもそも魔法なのか?俺の“目”には何も見えなかったぞ?

 

 

 

『ははっ、流石に分からないかな?では答え合わせをしよう。英一』

 

 

 バサッ!

 

 

『いや~これだから若い子の驚く姿を見るのをやめられないな!』

 

 

 烈が人の名前を呼ぶと何もなかったはずの烈の隣からいきなり人が現れたのだ。

 

 

「達也さん、あの人って・・・・」

 

「あぁ、間違いない。世界最高峰のCADエンジニア、木手英一博士だ・・・・!」

 

「あの人、そんなにすごい人だったんだ」

 

 

 

『今のは僕の発明品を使ったんだ。“隠れ蓑”っていう物なんだけどね』

 

 

 ───まさか、本当にできたというのか?完璧な透明化に・・・・!

 

 

 あまりに色々起こってしまったせいかリアクションが全く追いつかなくなっている。

 

 

『ははは、こんな爺さんでも色々できるんだ、今の君達なら私達の期待にきっと応えてくれると信じているよ。あとこれは返すね』

 

 

 

 

 

 

 




「二人ともさっきはどうしたの?」

「何が?」

「さっきの、深雪のことを紹介した時の事よ」

「あぁ・・・・えっとね、なんていうか」

「深雪さん、じゃないと思うんだけど、どこかで見たことがある気がするの」

「・・・・やっぱり二人も?アタシものび太も同じ事思ってたのよ」

「んーいつ見たんだろう・・・・」
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