烈達の“お遊び”が終わって再びパーティーが再開され、のび太はなくなった飲み物を貰い、会場の端の方で休んでいた。すると
トントン
「ん?誰です、ふぁ?」プニィ
肩を叩かれた方へ顔を動かすと頬を指で突かれた。あまりやられたことがない悪戯に困惑しながらその犯人の顔を見るとそこには悪戯な笑みを浮かべている赤い制服を着た女子生徒がいた。
制服の色を見る限り第三高校の制服なのだが、のび太の知り合いで第三高校の知り合いは“一人”しかいないのだがその知り合いは男だ。なら・・・・
(誰だろう、この子?)
そう思った瞬間
「
「えっ・・・・あっ!」
今の声と発言、まるで
「クスッ、久しぶりだね。元気にしてた?」
「紗羅・・・・ちゃん?」
「うん、そうだよ」
少女の名は西九条紗羅、大財閥『西九条家』の長女であり、過去に色々あってのび太と知り合ったのだ。
「久しぶりだね、綺麗になったから気が付かなかったよ!」
「も、もう・・・////」
「?」
のび太の素直な感想を述べたせいか紗羅は顔を赤くしながら困りながらも満更でもなさそうな顔をしている。
「でも紗羅ちゃん、なんで三校に?」
「実家が近いからかな。本当は一校受けたかったんだけど実家から遠いし、一人暮らしは流石に亜紀子さんとか他の人達に反対されちゃったから」
紗羅の言う、亜紀子さんとは紗羅のお付をしている人であり、紗羅の保護者でもある人の事で、ある出来事で少し過保護気味になっている事が最近の紗羅の悩みだったりする。
「珍しいね、西九条さんから誰かに話しかけるなんて」
今度は男の声で話しかけられた。話を遮られた紗羅は少しムッとしながら近づいてきた男子生徒を睨む、そしてのび太は聞き覚えのある声に緊張しながらも喜びの感情が湧いてきた。
「出来杉!」
「やぁ、野比君。半年ぶりくらいかな?」
話しかけて来たのはこれまたのび太の知り合いであり、のび太のCADを完成させた『出来杉』だった。
「のび太君、知り合いだったの?」
「うん、小学生の頃からのね。そして僕のCADも見てもらってたんだ」
「君の早撃ちに魔法が追いつく為に色々試行錯誤をするのは大変だったよ」
「処理速度が遅くて悪かったね」
「生まれ持った才能に関しては何も言えないよ。それよりも、まさか君が九校戦の選手になっているなんてね。種目はもしかして、スピードシューティング?」
「スピードシューティングとモノリスコードだよ」
「モノリスコードにも!流石だねのび太君」
「いや〜色々頑張ったんだよ。ちょっと死にかけたくらいで」
「「それは大丈夫なの?」」
ちょっと気絶しただけだから〜と返すと少し引いていた。すると今度は2人の男子生徒達がやって来た。
1人は背が高く、広い肩幅に細い腰、凜々しく若武者を想起させる外見で、女性受けしそうな顔立ちをしている。もう1人はその逆、身長はやや小柄だが、ひ弱な印象はない。
「出来杉、ちょっといいか。っと、話し中だったか」
「いや、大丈夫。野比君紹介するよ、クラスメイトの『一条将輝』君と『吉祥寺真紅郎』君。2人とも、彼は小学生の頃からの友人の野比のび太君だよ」
「一条将輝だ。よろしく」
「吉祥寺真紅郎です」
「野比のび太です」
『一条将輝』、真由美や十文字と同じ十師族の『一条家』の長男であり、一条家の次期当主でもある。
そんな人達に囲まれるが特に何も気にせずのび太は話している。
「・・・・ねぇ、達也さん。あれ、大丈夫なのかな?」
「見た所、悪い雰囲気では無いようだが」
本人達にそういう意図はないのだが、傍から見ると三校の生徒4人が一校の生徒を囲んでいる状態になってしまっている。
「なんであんな事になってるんだろう・・・・」
「どしたの?」
「エリカ、あれよ。あれ」
「ん?あぁ、多分、のび太が話しているうちにどんどん人が集まってきたって感じでしょ?ほら、あの女の子の右隣の男の子。アイツ、アタシ達と同じ中学で、のび太のCADの面倒を見ていたの」
「ほう・・・・」
───彼がのび太のCADを・・・・それはいつか話を聞きたいな。
次の日の夜
「・・・・・・・・眠れない」
普段なら1秒にも満たない早さで眠りにつくのだが・・・・、早く眠らないといけないと考えているのに全く眠れない状態になってしまっている。恐らく明日から始まる九校戦に少し緊張してしまっているせいだろう。
「ちょっと散歩でもしてこよ」
今のままでは眠る事は出来ない、そう思ったのび太は外に出て少し落ち着こうと思い部屋を出た。
中庭
外に出てきて数分歩き回り、一校の作業車の近くまでやってきた。すると作業車の扉が開かれ1人の生徒が降りてきた。
「のび太、こんな時間に何をしているんだ?」
「ちょっと眠れなくてね、散歩をしていたんだ。達也君こそ何してたの?」
「競技用のCADの調整をしていた」
「あれ?達也君は新人戦の女子担当じゃなかったっけ?」
達也が担当している競技はスピードシューティング、アイスピラーズブレイク、ミラージュバットの3種目、メンバーは雫、深雪、ほのかの3人を担当する。本当なら男子生徒の方も見ようとしていたのだが。
『いや、担当増やしすぎてCADの調整に影響が出る方が怖いんだが?』
と至極真っ当な意見を受け男子の担当は五十里にやってもらうことになったのだ。
「それ以外でもやれることはあるからな。その手伝いもしていた、っ!!」
「どうしたの?」
「どうやらこのホテルに、賊が侵入しようとしているらしい」
「えぇっ! 大丈夫なの?」
「生け垣に偽装したフェンス間際に3人、それぞれ拳銃と小型爆弾を所持している。武装して軍の管理地内のセキュリティを突破したとなると、事態は一刻を争うな」
達也はそう言うとすぐさまその方向へと走って行く、のび太も遅れてついて行った。
すると少し先に自分たちの方へ走ってくる人影がのび太でも見えるくらいに近づいてきた。右側の通路を走っている3人組、それが達也の言っている賊であり、左側を走っているのはなんと幹比古だった。
幹比古は手に持った札を相手の頭上へと投げたが、相手も同じくらいのタイミングで幹比古に銃を向ける。
「その魔法じゃあ間に合わないっ」
「任せて!」バンバンバンっ!
「「「なっ!?」」」
バチバチバチバチ!!
幹比古に向けられた銃をのび太の早撃ちで防ぎ、幹比古の魔法が完成しそこから放たれ、侵入者達はその衝撃で意識を刈り取られた3人がそのまま地面に崩れ落ちて動かなくなった。
「危なかったね」
「ありがとう2人とも、助かったよ」
「俺は何もしていないさ。それより幹比古、今の魔法は吉田家の古式魔法か?」
「そうだよ」
「なるほどな。死角から複数の標的に対して正確な遠隔攻撃を行い、あくまで捕獲を目的とした攻撃で相手を一撃で無力化するとは、いい腕だな」
達也の素直な感想に幹比古は嬉しく思うどころか顔を曇らせる。
「でも僕の魔法は、のび太の援護が無ければ間に合わずにそのまま撃たれていた」
「そうだな。確かにあのときのび太の援護が無かったら、おまえは確実に撃たれていた。しかし実際には撃たれていないし、それ以外については完璧な結果を出した。だったら次に向けて改善することができるし、改善すべきポイントはハッキリしている」
「改善すべき、ポイント・・・・」
自分に言い聞かせるようにゆっくりと呟く幹比古を横目に、達也は頷いて口を開いた。
「幹比古。自分でも気づいていると思うが、改善すべきポイントは魔法の発動スピードだ」
「・・・・確かに、それは分かっている。だけど“今の僕”には、それを改善することなんて──」
「いや、できるかもしれない」
「────!」
達也のその言葉に、幹比古は目を丸くする。
「さっき使ったあの術式には、無駄が多すぎる。問題は自分の能力ではなく、術式そのものだな。そのせいで、自分の思っている通りに魔法が発動しないんだ」
「・・・・ま、待て! なんでそんなことが分かるんだ!この術式は吉田家が長い年月を掛けて、古式魔法の伝統に現代魔法の成果を積極的に取り入れて、何度も何度も改良を重ねてきたものだ!それなのに、なんで君は一目見ただけでそんなことが言えるんだ!」
「分かるからだ」
一切遠回しな表現を使わず言い放つ達也に、幹比古は息を呑んだ。
「俺は“視る”だけで魔法の構造が分かる。起動式の記述内容を読み取り、魔法式を解析することができる。――別に、信じてもらう必要は無いがな」
「ねぇ、この人達どうするの?」
「あぁ、そうだった、取り敢えずホテルの人間を呼んできてくれ。幹比古、お前も一緒に行ってきてくれ」
「あ、あぁ、分かった。行こう」
そう言い2人はその場を去っていった。すると
「随分容赦のないアドバイスだな」
「少佐───」
木の影から現れたのは達也の所属している部隊の上官である風間だった。
「他人に無関心な特尉には、珍しいな」
「無関心は言い過ぎでしょう」
「それとも、身につまされる思いでもしたかな? 特尉と同じような悩みを抱えているようだが」
「・・・・」
風間の言葉に達也は何も答えなかった。その後のび太達が戻って来るのを確認した風間はその場を立ち去り、侵入者をホテルの人間に預け、3人はそれぞれの部屋へと戻って行った。
次の日
『いよいよ、全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称、九校戦の開幕です。本大会は例年通り、本戦と新人戦を5日ずつ、計10日間に渡って行われます。今年の注目は一校が3連覇を成すか、三校がそれを阻止するか、注目が集まります』
「一日目なのに凄い人だね」
「種目は確か、スピードシューティングとバトルボードだから、七草会長と渡辺先輩が出るんたっけ?」
「2人とも結構ファンがいるらしいから、そのせいだと思う。他の試合じゃあこんなに人は居ない」
九校戦の前半の3日間はスピードシューティング、バトルボード、クラウドボールの予選から本戦までを行う。1日目はスピードシューティングの予選から本戦までとバトルボードの予選が行われ、その2つに出場するのが真由美と摩利の2人だ。
今全員が居る会場は女子バトルボードの予選会場、目的は摩利の応援である。
「摩利さんって、すごい人気があるんだなぁ」
「ね、道場の片付けをしてる時とは全く違うよ」
「だよな」
「武達もエリカの所の道場に行ってるのか?」
「練習相手とか、人手が足りない時だけだけどな」
観客席では一校のメンバーに静香、スネ夫、ジャイアンの3人が固まって座っている。因みジャイアンは何気にレオと気が合うらしい。
『本戦、女子バトルボード、予選第3レースがまもなく始まります。選手は所定の位置に着いてください』
アナウンスが聞こえ、選手がコールされるとこのレースの選手達がコースに横一列に並ぶ、3人の選手は膝立ち、または片膝立ちで構える中、摩利だけは真っ直ぐ立っている。
「うわっ、相変わらず偉そうな女・・・・」
とエリカが呟いたが、全員聞こえないふりをする。そして、選手紹介アナウンスにより各選手の紹介が始まり、摩利の紹介に入ると
『きゃぁぁぁぁ!!摩利様ぁぁぁぁ!!』
「すっごい声援・・・・」
「熱心なファンがいるもんだな」
「わかる気がします。渡辺先輩はかっこいいですから」
「片付けはてんでダメだけどな」
「武、本人の前では言うなよ?」
普段から見慣れている人に取ってはこれ程人気のある人だったのかと驚いていた。
『On your mark』
パンっ!
ザバァァァン!
ピストルがなったと同時に一斉にスタートすると1人の選手が水面に向けて魔法を放ち自分と他の選手巻き込んだ。しかし、摩利はそれをものともせず先に進んで行った。
「自爆戦術?」
「恐らく、大波を作って他の選手を撹乱しようとしたんだろう」
他の選手はバランスを取る事に気を取られ遅れがでたがそこは本戦に出る選手なだけあって直ぐに持ち直した。
摩利がその事を確認するとボードと自身に魔法をかけ、加速。
「硬化魔法の応用と、移動魔法のマルチキャストか」
「スネ夫、硬化魔法ってなんだ?移動魔法ってのは何となく分かるけどよ」
「ぼ、僕にもわかんない」
「硬化魔法って言うのはバーツの相対位置を固定する魔法なんだが、その副産物として物が硬くなる性質がある。今回は渡辺先輩とボードを1つのオブジェクトを構成するパーツとしてその相対位置を固定しているんだ。そして、自分とボードを1つの物として扱い、丸ごと移動魔法をかけているんだ。ん?」
「・・・・・」プシュ〜
「ジャイアンに20文字以上の説明をするとこうなっちゃうから気にしないで」
「そ、そうか・・・・」
そんなやり取りをしている間に摩利はゴールしていてぶっちぎりの1位になっていた。
「獠!早く準備しなさいよ!」
「わーってるって、てか、今日から行くのか。新人戦は4日目からだろ?」
「その日になって遅刻とかしたらシャレにならんだろうが」
「しょうがないわね。獠、ゴニョゴニョ・・・・」
「・・・・っ!お前ら何やってんだ!早く富士演習場にいくぞ!」
「姉さん、一体何を話したんだろう・・・・」