次の日の朝
「ふっ、ふっ、ふっ・・・」
入学式の次の日の朝、達也と深雪は日課である体術の鍛錬の為ある場所へと向かって走っていた。それもただ走るのではなく達也は足に力を入れる度に魔法を展開し坂道を駆け上がっていく。
そして着いた場所は九重寺、表向きは天台宗総本山である比叡山の末寺を標榜しているこの寺だが、この寺の住職である九重八雲は忍術使いとして有名であり、数年前から達也と深雪は彼の元で体術の修行を受けていた。
寺の門を潜ると左右から修行僧達が達也に襲いかかる。達也はそれらをいなしながら反撃、彼の頭の中では"今日は組手の修行か”と考えながら数人の修行僧を相手に立ち回っていく。
そしてその修行を見守る深雪。
そして組手が終わり(途中から師匠の九重八雲が参戦してきてボロボロになってる)師匠と共に朝食を食べていた。
「いやーもう体術だけなら達也君には敵わないな〜」
──その体術+魔法でボコボコにしてきたのは貴方でしょう・・・
と密かに思う達也なのでした。
「それで師匠、お願いしていた事は調べていただけましたか?」
達也は数日前に師である九重八雲にある調べ物を頼んでおりその情報を聞く
「うん、調べたよ。結果から言うと"何も無かった"」
「何も無かった?」
「うん、びっくりするくらい何も無かったんだ。君が依頼してきた野比のび太は紛れもないただの一般人だった。強いて言うなら彼は菅原道真の子孫に当たるくらいかな?でもかなり遠い血筋だし、彼の家系で魔法師になってる人って居ないんだよ。もしかしたら今の彼の目や魔法師の才能も1種の先祖返りなのかもしれないね」
「そうですか・・・」
達也は思った程の情報を得られず僅かに気落ちした。だがそれ以上に達也の頭の疑問は強まるばかりだ。
「何故、叔母上が彼の事を気にかけているのか。それが気になってしょうがないようだね?」
「本当に、なぜ分かるんですか?」
「今のは顔に出てたからさ。でも正直に言って今回は僕でもお手上げだね。調べ回っても彼が四葉と関わった、なんていくら調べても分からなかった。余程入念な情報操作がされたのか、あるいは本当に何も無かったのか・・・」
「ほかの魔法師との関わりは?」
「ん〜なかった訳じゃないよ?君たちが出会った『千葉家』のお嬢さんとそのお友達、後はまぁ、ちょっとしたライバル的な子がいたくらいかな?でもその子も魔法師として接していた訳じゃなくて個人的な付き合いしかしてなかったんだ」
八雲の話を聞いても疑念が晴れない。すると八雲はあっ、と何かを思い出した様に話した。
「これは未確認なんだけど、彼、と言うか彼らにはもう1人友人がいたらしいよ?」
「友人?」
「うん、『ドラえもん』と言う友人がね、ただそのドラえもんって子は人じゃないって話だけどね」
「人じゃない?妖怪とかの類とかですか?」
「いや、ロボットらしい。まぁ、これに関しては殆ど情報がないからただの噂かもしれないし、あまり気にしない方がいいよ。それよりそろそろ行かなくていいのかい?」
八雲に言われ身につけていた時計を見ると7時を過ぎていた。ここから駅まで少々時間がかかる為そろそろでないと遅刻してしまうのだ。
達也は考えを一旦止めて身支度をしそのまま登校する。
「おはよう達也君」
「おはようございます、司波君」
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
達也は教室に入ると既に登校していたのび太達に挨拶をする。
「来るのが早いな」
「いやーアタシももうちょっと遅くなるかなーなんて思ってたんだけど、のび太が珍しく早起きしてたからその分早く来ちゃったのよ」
「ぼ、僕だってたまには早起きぐらいできるよ!」
「そう言ってアタシが何度巻き添い食らって廊下に立たされたと思ってんのよ」
────今時廊下に立たせるなんてことやるのか?
と達也はそう思いながら自分の席のディスプレイを操作し始める。
「あれ、達也君何してるの?」
「カリキュラムの確認と、受講登録」
「すげぇスピードだな・・・」
達也がキーボードを打っていると前の席の男子が声を掛けてきた。キーボードオンリーでディスプレイを操作するのが余程珍しかったのか達也のキーボード捌きを見ていたらしい。
「あぁ、俺、西城レオンハルト、レオでいいぞ。得意な術式は収束系の硬化魔法だ」
「司波達也、俺の事も達也でいいよ」
「OK 達也、それで、得意魔法は何を?」
「俺は魔工技師志望だからな。実技は苦手なんだ」
「へぇ、司波君って魔工技師志望なんだ」
「・・・達也、誰コイツ?」
「うわぁ、いきなりコイツ呼ばわり?失礼なやつ、モテない男はこれだから・・・」
「エリカちゃん、喧嘩売るのが早すぎるよ・・・」
のび太の発言からしてこうなる事を予測していたのか、と達也は4人のやり取りを観察しながら考える。初対面の時から何となく強気な感じの印象が強かったがここまで好戦的だとは思っていなかった。
するといいタイミングで予鈴の鐘の音が聞こえてきた。
「レオ、そこまでにしておけ。予鈴だ」
「エリカちゃんも、早く座ろ?」
「「・・・ふん!」」
ガラガラ・・・ザワザワ・・・
予鈴がなり終わるくらいのタイミングで教室の前方の扉が開かれる。入ってきたのはセーターに白衣を纏っていて少し緩やかな印象の"教員"が教壇にたった。
何故周りの人がザワついているのか、それは本来2科生には教員がつかないからである。そもそもの話日本の魔法師自体が数が少なくその殆どが軍に入っていたり魔法協会の職員となったりとしている為、そもそも教員になりたい人自体少ないのだ。
「新入生の皆さん初めまして、私は小野遥。第一高校のカウンセラーとして今年から赴任してきました。悩み事、相談事があればいつでも受け付けています」
小野先生の紹介が終わりのび太達はそれぞれ興味のある授業の見学へ向かう。
「工房見学、楽しかったですね。私も魔工技師志望なので参考になりました」
「あぁ、中々有意義だったな」
「あんな細かい作業、俺にできるかな・・・」
「僕も・・・」
「あんた達じゃ無理に決まってんでしょ?」
「んだとぉ?!」
「やってみなきゃわからないでしょ?!」
午前の授業見学を終えてのび太達は食堂で昼食を取っていた。のび太達は先程まで工房、CADの作成、ハードやソフト、その運用を主に見学していた。ちなみにのび太やレオは最低限自分のCADは調整出来るようにしておきたいと言う考えの元一緒に見学していた。
「お兄様、ご一緒してもよろしいですか?」
「深雪、ここ空いてるから一緒に座りましょ」
「ありがとうエリカ」
「・・・えっと、誰?」
この中でレオだけが深雪と面識がなく誰に話しかけていたのか分からなかった為、達也に聞く。
「司波深雪、妹だ」
「へぇ・・・」
「初めまして、私は司波深雪です」
「西城レオンハルト、レオでいいぜ?」
と、互いに自己紹介をすると深雪の後ろから声が掛かった。
「のび太?」
「え、あっ、森崎君」
声を掛けてきたのは若干茶色掛かった短髪の青年で、その胸元には1科生の称号である花のエンブレムが刺繍されていた。
「知り合い?」
「うん、ちょっとね」
「受かってたのか、お前勉強出来なかっただろ?」
「が、頑張ったんだよ〜・・・ほぼ寝ずに」
「そうよね、あの時は大変だったわ・・・ 」遠い目
「な、何があったの?」
「また今度話すわ」
のび太の話を聞いて遠い目をしだしたエリカに恐る恐る話を聞こうとする深雪だったが聞かないことに
「 ・・・まぁいい、のび太、今日暇か?」
「うん、特に用事はないから」
「じゃほうか「司波さん、森崎君」」
のび太と森崎が話しているとそこへ1科生のグループがやって来た。
「もっと広い所に行こうよ」
「お前ら・・・」
「い、いえ・・・私はこちらで・・・」
「司波さん・・・」チラッ
「ウィードと相席なんて、辞めるべきだ」
話しかけてきた1人の男子生徒がエリカの肩を見る。2科生だと分かると露骨に差別をし始めた。
「1科と2科のケジメは付けた方がいいよ?」
「なんだと・・・?」
「お前らよせ、場所を考えろ。見られてるのが分からないのか?」
「別に他の人達だって言ってる事だろ」
「今の時間なら風紀員が居ることを忘れるなよ、ウィードは禁止用語。捕縛対象だ」
「っ・・・」
森崎の言葉を聞いた1科生のグループが周りを見渡すと数箇所から睨みを聞かせている生徒がいる事が分かる。
流石に騒ぎすぎたかと思ったのかグループの人間全員がその場から去っていった。
「ありがとう森崎君」
「別に助けたわけじゃない。騒がしくして周りに迷惑を掛けるのが嫌なだけだ」
「それでも、だよ」
「〜〜っ、兎に角放課後、門の前で待ってろよ?!」
と森崎は顔を赤くしてその場を立ち去った。
放課後
昼に約束していた通り門の前で森崎と一緒になりのび太達は一緒に帰ることになったのだが・・・
「いい加減、諦めたらどうなんですか?!」
「俺達はただ彼女に相談したいことがあるんだ!」
のび太と一緒になって帰ろうとしていた達也達、当然その中には深雪も入っており深雪目当てで1科生のグループも着いてきてしまい、「ウィードとは関わっては行けない」や「こんなのと一緒になる必要ないでしょ」等と言われていた。達也は無視すればいいと思っていたのだが意外な事に美月が真っ先に反論、それに続くようにエリカとレオも混ざってしまい今に至る。
「お兄様・・・」
「謝ったりするなよ?深雪」
「深雪さんはお兄さんと一緒に帰ると言っているじゃないですか、一体何の権利があって"二人の仲"を引き裂こうとするんですか?!」
「えっ!み、美月ったら、一体何を、何を勘違いしているのかしら?!」
美月の言葉に反応して深雪の顔が赤くなる。
「深雪、何故お前が焦る?」
「へっ?!べ、別に、焦ってなどいませんよ?」
「そして何故に疑問形?」
「なぁのび太、あの2人って、兄妹・・・なんだよな?」
「そのはず、なんだけど・・・」
と、のび太と森崎はコソコソと話す。そんな会話が繰り広げられる程に二人、と言うより深雪の反応が恋する乙女の反応なのである。
「これは1ーAの問題だ。ウィードごときが僕達ブルームに口出しするな!」
「「っ!」」
「同じ新入生じゃないですか、貴方達ブルームが今の時点で一体どれだけ優れているって言うんですか?!」
「っ」
「不味いな・・・」
今の美月の言葉を受け更に頭に血が登ったのか、リーダー格の生徒は不敵な笑みを浮かべ。
「どれだけ優れているか、知りたいか?」
「ふん、おもしれぇ、教えて貰おうじゃねぇか」
「いいだろう、だったら教えてやる・・・これが、才能の差だ!!」
そう言うとその生徒はホルスターにしまってあった特化型CADを構える。それと同時にレオは動きだし魔法が発動するよりも早く動きだし魔法の構築される前に取り抑えようとする。
すると
「あ!生徒会長さんだ!」
「は?!」
ガキン!
のび太の声に反応して魔法の発動を中断、そして振り返る。だがそこには生徒会長である七草真由美の姿は無い。そしてその隙を着いてエリカがレオと男子生徒の間に割り込み相手のCADを警棒ではじき飛ばした。
「この間合いなら体動かした方が早いのよねー」
「それは同感だが、お前俺の手ごとぶっ叩くつもりだっただろ?!」
「あら〜そんな事しないわよ〜」
「ぐっ・・・おいお前!」
「ひっ!」
「おいおい、俺の後ろに来るなよ・・・」
一方的に痛めつけようとしたのを邪魔されたことに腹を立ててその邪魔をした張本人であるのび太を睨みつける。
睨まれたのび太はその鋭い目付きにビビり、森崎の後ろに隠れてしまう。
「し、CADは人に向けちゃいけないんでしょ?」
「そんなもの、
「ウィードの癖に・・・!」
「皆だめ!」
と、リーダー格の生徒の言葉をきっかけにその生徒の後ろに居た取り巻き達もCADに手を伸ばし魔法を構築しようとする。すると彼らの取り巻きだった1人の女子生徒がその場を収めようと魔法を発動しようとする。その魔法の構築する速さはこの中では深雪を覗いて2番目に早い。
「だめ!っ」
「大丈夫だ、それに・・・」
達也がそう言うと女子生徒が構築していた魔法式が突然破壊された。これは構築中の魔法式が外部からの無系統魔法を受けた事で構築中の魔法式に余計なエイドス(個別情報体)を書き込まれたせいで魔法構築にエラーが起こり構築中の魔法が吹き飛んでしまったのだ。
「きゃ!」
「やめなさい!自衛目的以外での対人攻撃は犯罪行為ですよ?!」
「風紀委員長の渡辺摩利だ。事情を聞きます、全員着いてきなさい」
女子生徒の魔法を破壊したのは先日のび太達が出会った生徒会長の七草真由美と風紀委員長の渡辺摩利だった。
するとここまで殆ど静観をしていた達也が摩利の前に立つ
「すみません、悪ふざけが過ぎました」
「悪ふざけ?」
「はい、森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったんですが・・・後から来た彼らが俺達に魔法を向けていると勘違いしたようなんです」
と、森崎とのび太のいる方へ視線を向けると2人はウンウンと首を縦に振る。
「では、そこの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」
「彼女達も彼等の後から来ていたので恐らくそちらも彼等が俺達に向けて魔法を放とうとしていると思って止めようとしたのでしょう。その証拠に先程発動しようとしていた魔法はただの閃光魔法、それも威力が抑えられていていましたから特に問題は無いでしょう」
「っ!ほう・・・どうやら君は"展開された魔法式"が読み取れるらしいな?」
その場に居た全員が驚愕した。それは摩利が言った展開された魔法式を読み取れるという発言、現代魔法において魔法式は何千何万と言う数字の羅列から作られているものでそれを1秒にも満たない間に、それも肉眼で確認して種類まで判別出来るのは最早人間の域を超えていると言っても過言では無い。
「実技は苦手ですが、分析は得意なんです」
「誤魔化すのも得意なようだ・・・」
「誤魔化すなんてとんでもない、自分はただの二科生です」
達也はそう言うが摩利はまだ疑っていた。仮に教えあっていただけとはいえ風紀委員として見過ごしていいものでは無い、そう考えているがそこへ深雪が間に入り。
「ちょっとした行き違いだったんです。お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした」
「っ・・・」
「・・・ふふ、もういいじゃない摩利。達也くん、本当にただの教え合いだったのよね?」
と真由美は摩利を鎮めながらも達也に確認する。
「生徒同士で教え合うことは禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には細かな制限があります。魔法の発動を伴う自習活動は控えた方がいいですね」
「ううん!会長がこう仰られているので今回の件は不問にします。以後、このような事が無い様に」
摩利の言葉で全員が頭を下げ、その場は収まり真由美と摩利は立ち去ろうとしたが摩利が最後に振り返り達也の方を見て
「君の名前は?」
「・・・1-E組、司波達也です」
「覚えておこう・・・」
そう言い今度こそ2人は去っていった。
その後、1科生のグループ(女子二人を残して)も達也を睨みながら立ち去って行った。
「はぁ、摩利さん怖かった〜」
「入学してから何かしら巻き込まれるかと思ってたけどやっぱりこうなるのね〜」
「ちょっとエリカちゃん、それじゃあいっつも僕が何かに巻き込まれてるみたいじゃん・・・」
「逆に巻き込まれない方がおかしいのよあんたの場合」
「ひどいよ・・・」
と、いつもの巻き込まれ不幸体質のせいにされるのび太、すると先程のグループに居た女子生徒2人が達也に話しかけて来た。
「あの・・・」
「?」
「光井ほのかです。さっきはすみませんでした」
「「「・・・・」」」
1科生で、しかも先程のグループに居た2人だったためか達也も何を言われるのだろうかと警戒していたのだが、自己紹介と謝罪の言葉が出てきて頭もちゃんと下げている事に少し驚いてしまった。
「庇ってくれて、ありがとうございました。彼はあんな感じでしたけど大事にならなかったのはお兄さんのお陰です」
「どういたしまして、でもお兄さんは辞めてくれ。これでも同じ1年生だ」
「分かりました、では何とお呼びすれば?」
「達也で良いから」
「はい!それで、その・・・」
「チラ」
「コクリ なんでしょうか?」
と、ほのかは何か言いたそうに少しモジモジする。少し間を明け声を出すと
「駅までご一緒してもよろしいでしょうか?!」
「「「「・・・え?」」」」
今回のび太要素結構薄かったかな?
あとコメントありがとうございました!