達也達がミラージ・バットの準備をしている事、ホテルののび太の部屋では。
「のび太、大丈夫だった?」
「うん、かすり傷だけだったから平気だよ・・・・・」
何年もの付き合いのある彼らでさえあまり見かけない表情をするのび太、そんな表情をするのは大切な親友が未来へ帰っていった時以来だ。
「僕、悔しいよ。どんなに頑張ったって言われても、大切な友達を、助ける事が出来ないんだから」ポロポロ
「・・・・・」
コンコン
この重たい空気の中誰一人として口を開けなかった。そんな時、部屋の扉がノックされた。
「誰かしら」
「僕が出てくるよ」
ちょうど扉の近くにいたスネ夫が代わりに開けに行った。
「のび太、おばさんが来たよ」
「のび太・・・・」
「お母さん」
部屋にやってきたのはのび太の母、玉子だった。
「のび太、大きな怪我がなくて良かったわ」
「ありがとう。でも・・・・・」
自分の心配をしてくれる母、これ程ありがたいことは無いのだが、それでも今命の危機に瀕している友達の事が気になってしょうがない。そしてそうなった原因が自分にあるのでは、とずっと自問自答をくりかえしてしまう。
「お友達の事は聞いたわ」
「・・・・・僕、悔しいよ。あんなにいっぱい練習して、絶対に勝つんだって、約束して・・・・・」ポロポロ
のび太の目から涙が溢れ出る。モノリス・コードの選手に選ばれてから毎日練習を重ねた。相手にどれだけすごい選手が来ても勝つために・・・・
しかしそれだけではない。悔しい想いと同時に自分自身の無力感が拭えないのだ。
「ねぇのび太、もしかしたら、お友達を助けられるかもしれないわ」
「えっ・・・・・?」
「ちょっと待ってて」
玉子はのび太の部屋のカードキーを預かりそのまま部屋を出たのだ。
数分後
戻ってきた玉子の手には風呂敷に包まれた箱のような物を持っており、それをのび太に差し出した。
「お母さん、これは?」
「ドラちゃんが残した、最後の道具よ」
「「「「「えっ?!」」」」」
玉子の衝撃的な発言に驚く一同。
「ドラちゃんからはのび太が困っている時に渡して欲しいって言われたの。一度きりしか使えないから渡すタイミングは任せるって言われてるけど。今がその時だって思ったから」
「ドラえもん・・・・・」
「使うかどうかはのび太自身が決めなさい。どんな選択をしても私はのび太の味方だからね」
そう言い残し、玉子は部屋を出て行った。ここから先の話は自身が踏み込むべきでは無いと考えての行動だ。
のび太は玉子から貰った物の風呂敷を広げるとその中には銀色の箱にドラえもんの絵が書かれていた。なんともドラえもんらしいことをすると全員が笑った。そして肝心の箱を開けようと箱に触れた瞬間
『のび太君、聞こえますか?』
「ドラえもんっ!」
数年ぶりに聞く親友の声、それだけで再び泣きそうになるが必死に堪え続きを聞く。
『このメッセージを聞いてるってことは、君の身に何か起きたってことだよね。その為にこれを残したんだ』
『別に君を信用してないから渡さなかったからじゃないよ?僕はあの日、君とジャイアンと決闘した夜、あの時の君を見て、これから先僕の力が無くてもやって行けると思ったんだけど、今までの事を思い出すと僕が居なくなってからも何かしら起こるんじゃないかって思っちゃって・・・・・』
「「「「「あぁ・・・・」」」」」
よくよく考えてみると偶然とはいえ時間犯罪に巻き込まれたり星々の争いに巻き込まれたりと普通じゃ考えられない出来事がある、そう思うとドラえもんの心配する気持ちも理解出来たのだ。
『だからこそ僕は君にこれを託すね』
その言葉と同時に箱の蓋が開いた。中には大きな瓶、その中には赤い液体が入っている。
『ウソ8OO、これを飲むと75分の間飲んだ人の言った事は全部嘘になる。一度きりしか使えないから使う時はよく考えて使ってね』
そして箱から声が聞こえなくなった。録音されたのはここまでだったようだ。
説明が終わってものび太は動かなかった、最後に言われた一度きりしか使えないと言う言葉に少し考えてしまったからだ。
「使っちまえよ」
「っ、ジャイアン・・・・」
「確かに俺達は今まで色んな事に巻き込まれてきたけどよ、いつも乗り越えてきたじゃねぇか」
「そうそう、僕達にはのび太やエリカちゃんみたいに魔法とか使えないけど、出来ることはいくらでもあるさ」
「スネ夫・・・・」
「いつだって、私達がそばに居るわ」
「盛大に巻き込みなさいよ」
「静香ちゃん、エリカちゃん・・・・・ありがとうみんな、行ってくるよ」
全員からの言葉を受けて気持ちが決まり、のび太は瓶を手に取り部屋を後にした。
「それじゃあ私達も行きますか」
「行くって何処に?」
「ミラージ・バット、時間的にちょうど決勝が始まったくらいかな?」
「のび太を待たなくていいのかよ」
「バカね、のび太待ってても本人が暫くは喋れないし、変な事言って巻き添え食らったらどうすんのよ」
「さっき巻き込めって言ったじゃん・・・・」
「それはそれこれはこれよ。あんた達だってひみつ道具で痛い目にあってきたでしょうが」
病院の治療室
みんなの言葉に背中を押され森崎のいる治療室へやって来た。身体中に包帯が巻かれ色々な管が繋がっていて森崎がどれだけ危ない状態なのかすぐに分かる程悲惨な姿がのび太の目に映った。
「森崎君、今助けるから」
そう言うとのび太は持ってきた瓶の蓋を開け、中身の液体を全て飲み干す。
「森崎君も、左江内君も絶対治らない、魔法師として復活することも出来ない」
一つ一つ、傷を直せるであろう言葉を考え発していく。実際ウソ8OOがどれだけ早く効力が出るのかは分からないが余分にやっておく事に損は無い。
が、嘘とはいえ死に面している友達に酷い事を言うのに心を痛めてしまい、のび太の目に涙か零れていく。
一通り言い終えるとのび太は自室へと戻り、ウソ8OOの効力が切れるまで待つことにした。
それから時間が経ち、そろそろ効力が切れると思われる頃、部屋の扉を誰かがノックした。
「野比、服部だ」
「服部先輩、どうしたんですか?」
「会長がお前を呼んでこいとな。事情は行きながら話が、大丈夫か?」
「はい、もう大丈夫です」
「無理をさせて済まない。では行こう」
のび太はユニフォームに着替え直して部屋を出て会議室まで行こうとするとちょうど向かい側からエリカ達が帰ってきてすれ違い様に心配そうに話しかけてきた。
「のび太・・・・」
「もう大丈夫、ずっと引き摺っていく訳にも行かないから。それにね、どれだけ泣いたって、
そう言ってのび太は行ってしまった。
場所は変わって会議室、中では真由美や十文字、摩利を中心とした幹部と一部生徒達、そして、生徒達に囲まれるように達也が立っていた。
「会長、お話というのは?」
「多分分かっていると思うけど、先程の新人戦ミラージ・バットでのポイントの獲得の結果、第三高校とポイントの差が一気に縮まりました」
「それについては、力及ばず、申し訳ごさいませんでした」
「達也君が謝ることでは無いわ、選手の2人もよく頑張ってくれました」
新人戦ミラージ・バット、その結果はなんと三高がワンツーフィニッシュを決めてしまい、ポイント差が一気に縮まってしまったのだ。
しかし真由美は誰かを責めたりはせずこの結果を受け入れ、その上でこれからどうするかを考えている。
「ですがこのポイントの差、少々まずいかもしれません。もしこのまま新人戦モノリス・コードを辞退したとします。そうすると恐らく第三高校が新人戦モノリス・コードを優勝する可能性が極めて高いです。そうなってしまった場合、第三高校のポイントは一高のポイントに一気に近づきその後に行われる本戦ミラージ・バットの結果次第でポイントは完全に逆転、本戦モノリス・コードで優勝したとしてもわずかの差で優勝を逃します」
今の話では本戦ミラージ・バットに出られなくなった摩利の代わりに深雪が出場することになっているのだが、これは悪気がある訳では無い、周りの生徒達は深雪の成績は重々理解しているが本戦では2年生、3年生と、深雪よりも長くミラージ・バットをやっている選手達ばかり。経験値の少ない深雪が不安要素になってしまうのは必然なことなのだ。
その事は理解しているつもりの達也、それ故に何故自分がこの場に呼ばれたのか、おおよその察しが着いていた。
「達也君も今の話を聞いて何となく察したと思うけど。三高の優勝を阻止するには新人戦モノリス・コードを優勝しなければなりません。そこで私達は達也君にモノリス・コードの選手として出て貰えませんか?」
「・・・・2つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「予選の残り二試合は明日に延期された形になるんですよね?」
「えぇそうよ。事情を鑑みて明日の試合スケジュールを変更してもらえることになりました」
「怪我で続行不能となっても、選手の交代は認められないはずでは?」
「それも特例で認めてもらえることになりました」
「何故、自分に白羽の矢が立ったのでしょうか」
「今回のチーム編成がテストの成績ではなく実力を見て決めたことは話したわよね。のび太君を起点に二科生との蟠りの少なく、尚且つモノリス・コードで活躍出来る選手を選んだ。でもそれのせいで他の選手と合わせる時間がなかったの、でも達也君なら普段から風紀委員でのび太君と組んでいるからお互いの事をよく分かる、そう思ったから選んだの」
────個人の実力より総合力を取った、ということか。
達也はこの申し出自体を断るかどうか悩んでいる。達也自身の事情で目立つ行為は極力したくは無いのだが、今回の事は彼の叔母、四葉真夜からの頼み事(ほとんど命令のようなものだが)もある為だ。
さてどうしたものかと考えていると会議室の扉が開いた。
「会長、野比を連れてきました」
「ありがとうはんぞー君、のび太君もごめんなさいね。いきなり呼んじゃって」
「いえ、大分良くなってきたので、そろそろ顔を出そうかと思ってました」
「そうだったのね。じゃあ今起きてるは聞いたかしら?」
「はい、ここに来るまでに服部先輩から聞いたんですが、他の2人はどうするんですか?」
「今、達也君にその代役をお願いしてる所なの」
「え、達也君出てくれるの!!?」
のび太は嬉しそうに達也の方に向いてキラキラした目で見てきて、達也も少し困り顔になった。
「いや、まだ出るとは・・・・」
「えぇ、
「それを今検討している所なんだが、っ」
「?」
「・・・・・・・はぁ、分かった。俺も出よう」
達也は突然諦めたのか、大きくため息を着きながら出場することを了承したのだ。
「ホントに!?ありがとう!」
「それで、もう1人の代役は?」
「えぇ、それなんだけど、2人に決めてもらおうと思ってます」
「ん〜もう1人か・・・・達也君誰かいい人知ってる?」
「思い当たる奴なら1人いる。その前に会長、今回の人選は誰でもいいんですか?」
「えぇ、必要なら私達も説得に協力するわ」
「チームメンバー以外からでも?」
「へっ!?そ、それは・・・・」
突拍子の無い発言に驚いた真由美。それもそのはず、そもそもこの九校戦自体、一部例外はあれど基本的には実技の成績によって選ばれた人間ばかりであるため、彼女にとってはそれが敗北の可能性を増やしてしまう危険性があった。いくら達也からの提案とはいえ、それに簡単にOKを出す訳には行かなかった。のだが──
「構わん」
「十文字君?」
「今回は例外に例外を重ねている。あと一つや二つ増えたところで今更だ」
「大変じゃない?」
「無理は押し通すものだ」
「・・・・分かったわ。達也君の提案を受けましょう」
十文字の頼もしい言葉を受け、それに反対する者は誰もいない、そこまで行くとなると達也の提案を断る理由も無いため、受け入れることに。
「それで、一体誰をメンバーに選ぶんだい達也君?」
「1-Eの吉田幹比古です」
「その理由は?」
「彼は古式魔法師、それも精霊魔法を得意としています。古式魔法自体は発動こそ遅いものの、隠密性と奇襲力は現代魔法より優れています。モノリス・コードには打って付けの人物でありそれに俺達とは顔見知りです。先輩方が気にしている条件も満たすかと」
「成程、確かに」
「それでは会長、俺達は吉田の了承を得てきますので失礼します」
「お兄様、私もご一緒します」
そう言い達也、深雪、のび太の3人は会議室を後にした。
「達也君、先部屋に行ってて、ずっとトイレ我慢してて・・・・」
「分かった。早めに来いよ?」
「うん、すぐ行くから」
と、のび太は達也達と別れトイレに行った。するとこのタイミングを待っていたのか深雪が先程の不可解な行動を達也に聞く。
「あのお兄様、何故突然代役をお引き受けになられたのですか?」
「ん?あぁ、深雪の場所からは見えなかったのか」
「見えなかった?何を・・・・」
「叔母上、もしくは母さんからのメッセージだよ。と言っても一言だけ『しあいにでろ、M.Y』とモニターに一瞬映ったんだ」
「なんともタイミングがいいですね」
「あぁ、まさか盗聴でもしていたのかとも考えたんだか。それならもっと早くに指示を出してきたはず・・・・」
「何故なんでしょう?」
「分からない」
今年中に投稿できて良かった。次は来年、1月中に投稿できるようにします。
では、良いお年を〜