ちょっと遅れましたがのび太君誕生日おめでとう
夏休み前半には九校戦で色々あり、後半では誰も知らないところで地球を救ったりととても濃い夏休みを過ごした。そして今日が夏休みの最終日。のび太はと言うと・・・・
「夏休みが足りなぁぁぁい〜」
「また言ってるよ・・・・」
夏休み最終日と言う事実に目を背け更なる休みを欲していた。
「もう色々やっただろ。九校戦に雫ちゃん家の別荘に行ったり海底冒険したりしたじゃないか」
「それでも足りないんだよぉ。ってか九校戦の分、振り返りとか無いわけ!?」
「まぁ、確かに小学生の頃より夏休みが少なくなってるのは確かだけど、それでも2週間は休めたじゃん」
「ゴールデンウィークよりちょっと多いだけじゃーん」
「往生際が悪いなぁ」
こういう所は昔のままだ、と呆れながらテレビをつけた。
『今、うどんが熱い!ここ四国地方では今空前のうどんブームが来ています!』
映されたのはニュース番組でちょうどグルメ特集をしているようだ。映像には勢いよくうどんを啜る老若男女の姿があり人気が出ているのは間違いないと言える内容だった。
「うどん・・・・なんかうどんの口になってきたなぁ・・・・」
「そうだね」
「・・・・ねぇドラえもん。四国地方行こうよ!」
「えっ、うどんならグルメテーブルかけでも・・・・」
「分かってないなぁ。こういうのは雰囲気が大事なんだよ!ほらよくスネ夫が自慢してたじゃないか『本場で食べるおフランスの料理は最高だったよ〜』って」
確かに、と昔を思い出す。まぁその度スネ夫は痛い目にあったりしていたが、それはまた別のお話。
「ねぇ〜ドラえもん、夏休みの最後なんだからそれくらいいいでしょ?」
「ん〜まぁ、最後くらいは楽しい思い出で締めくくるか!」
「じゃあ行こう!四国へ!」
「テッテレーどこでもドア〜」
どこでもドアを取り出し扉を開けると、その先は四国の旧香川県に当たるところに出た。
「「来ました香川〜!」」
「どこのお店に行こうか?」
「ん〜目に見える範囲だけでも結構な数あるね・・・・どこにしよう」
数あるうどん屋からどこのうどんを食べようか悩む2人。
そこで数分間考えているがなかなか結論がでない。そんな時
「きゃっ!」ガタン!
「「えっ!?」」
近くで女性の叫び声が聞こえた。
気になった2人は声のした方へ向かうと、そこには女性が倒れており、近くには車椅子が横転していた。恐らく車椅子から落ちたのだろうと2人は思い、急いで女性の元へ向かう。
「大丈夫ですか!?」
「は、はい・・・・」
「怪我はありませんか?」
「それも大丈夫です。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」
のび太は女性をゆっくり起こし、ドラえもんは車椅子を立て直す。安全確認の為、車椅子のあちこちを見て回り、どこにも異常が無いことを確認すると、のび太と一緒に女性を車椅子に乗せた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、困った時はお互い様ですから」
「あの、何かお礼をさせて下さい。助けて貰ってばかりでは申し訳ありませんので」
「あーそうですか・・・・なら美味しいうどん屋さんを教えて頂けませんか?」
「うどん屋ですか?」
「はい、僕達うどんを食べにここまで来たので」
「そうですか、なら私の行きつけのお店なんてどうでしょうか?」
「いいんですか、ならそこに行きましょう!」
のび太は女性の後ろに立ち、車椅子を押してどこでもドアの前まで戻る。
「あの、この扉は?」
「そのドアを開けてみてください。目的の場所まで一瞬ですから」
女性は?を浮かべながらもドアノブに手をかけ行きたい場所のことを考えながらドアを開けると、その先は正しく女性が行きたいと考えていた場所だった。どういう事?と困惑しているが、のび太に押されてドアの向こう側に来ると、間違いなく目的の場所だと再認識した。
だが驚いていたのは女性だけでは無かった。のび太達も目的の店を見ると目をギョッとさせていた。
「ね、ねぇドラえもん・・・・・ここって・・・・」
「うん言いたいことは分かるよ・・・・」
『なんか高そう!!』
2人はそう思った。
「こ、こんな所で食べて大丈夫かな・・・・?」
「ご安心を、ここは私が出しますので」
「そ、そんな。悪いですよ」
「いえこれくらいさせて下さい。私、家の事情で滅多に外出出来ないので」
「えっ?」
「なんでもありません。さあ行きましょう!」
と女性に押されながら店に入る。中に入ると、より一層高級感溢れる内装をしており、のび太達はさらに萎縮してしまう。奥の部屋に通されメニューを見ると、普段学校などで見かけるうどんの値段とはかけ離れた数字が書かれていた。
ぎょっとしながらもなるべく安い物を注文し、料理が来るのを待つ。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は
「僕は野比のび太です」
「ドラえもんです」
「お2人は、学生さんなんですか?」
「はい、高校1年生です!」
「僕は違います、僕はのび太君のお手伝いをやってます」
「そうなんですか。学校はどちらに?」
「魔法大学付属第一高校です」
「っ、凄いですね。第一高校は倍率が高いって聞いたことがありますが」
一瞬澪に影が落ちたようにも見えた。しかしのび太は気にせず質問に答えた。
「いや〜もう殆ど運ですね。実技も筆記もギリギリだったらしいので」
「でものび太君は凄いんですよ!なんたってあの九校戦にも出場したんですから!」
「そうだったんですか、すみません。普段はあまりテレビを見ないものですから存じ上げませんでした」
「へぇ、珍しいですね。普段は何をしているんですか?」
「主に本を読んだりしています。その時だけは何もかも忘れて没頭できるので・・・・」
「おぉ、凄い知的な感じがする!」
「そ、そうでしょうか?///」
と、照れくさそうに答える澪。すると襖の外から『失礼します』と声が聞こえてきた。
「お料理の方をお持ち致しました」
「あっ、料理が来ましたね。では頂きましょう」
「「「頂きます」」」
ズズズッ
「「っ!美味しい!!」」
「こんなに美味しいうどん食べたの初めてだよ!」ズルズル
「いくらでも食べられる〜」ズルズル
「ふふふっ、それは良かったです。では私も」ちゅるちゅる
2人がうどんを食べる姿を見て、連れてきて良かったと思った澪も、うどんを食べる。
「家関係以外での食事は初めてなんですけど。楽しいですね」
「へぇ、そんなに人と会うこと少ないんですか?」
「はい、家の事情もそうなんですが、私自身が“これ"なので・・・・あ、普通に活動することは出来るんですよ。ただ、ちょっと体力が人より少なくて・・・・」
「それじゃあ、今まで遠出とかもしたことないんですか?」
「そうですね・・・・家の事情以外で出かけたことは一度もありません」
澪は生まれつき体が良く無い訳ではなかった。走り回ることだってしたしそれこそ車椅子の生活なんて必要ではなかった。しかし、自ら授かった魔法演算領域に、彼女のとっておきの魔法の負荷も掛かり、年々動き回ること、生活範囲が徐々に狭まり、自由に生活する事自体もできなかった。
今回、どうして一人で動いていたのかとのび太は聞いた。
「なんと言いますか・・・・・ちょっとした家出、とでも言えばいいのでしょうか・・・・・」
澪自身、自分の“役割"は分かっている。それでも尚自由を求めてしまった。
しかしそんな事はこの場では言えない為、多少濁しながら
「お父様と言い合いになってしまって、ついカッとなって家を飛び出してしまい、お2人と会ったあの時の様になってしまったんです」
「あー分かります。僕も何度も家出しては帰ってを繰り返してたんですよねぇ〜」
と、のび太は家出(原始時代や新宿などなど)の記憶を呼び起こし、澪に寄り添うように返事をする。
「でも意外ですね。澪さんってそういう事しなさそうなのに」
「ホント、どうしちゃったんでしょう。柄にも無い・・・・正直今お父様にどんな顔して会えばいいのか分からなくて」
「うーん、僕はなんやかんや有耶無耶に出来てたんだけど、それじゃあダメだよね・・・・」ボソッ
「そりゃそうだよ。澪さん、いいとこのお嬢様っぽいし・・・・」ボソッ
ここで合ったも何かの縁、どうにかしてあげたいと思うのび太。散々悩んだ末導き出した答えは・・・・・
「・・・・澪さん、もういっその事開き直ってとことん家出しちゃおうよ!」
「えっ?」
「ここで悩んでたってしょうがないですよ。せっかく家出したんですからもう行きたいところに行けばいいんですよ!」
実を言うとのび太は自身も家出をしているが、師匠冴羽獠の元に居た時に家出をしてきた人達の依頼を受けてきた。その経験から好きに行動させる事が良いと判断し、澪に言った。
「ですが、車椅子で行ける所なんてたかが知れています」
「大丈夫、僕達がいます!それにほら、さっき通ってきた扉があればどこでもいけますから!ね、ドラえもん!」
「そうですよ、もう楽しむだけ楽しんじゃいましょう!」
「のび太君・・・・ドラえもんさん・・・・ありがとうございます。ならお言葉に甘えて今日1日、よろしくお願いします!」
澪は心を決め、2人と日本横断弾丸旅行を行う事になった。
「先ずは北海道は函館山〜眼前には海、さらにその奥には山や空が広がり開放的で美しい光景が拝める函館山の山頂展望台からは函館市街地を一望できます〜」
「いい眺め〜」
「空気が美味しい、あ、あれが五稜郭ですかね?」
と函館山からの景色を楽しみ、お土産も買った。
それから東北、関東、中部、近畿、中国、九州、そして沖縄と1日でよく回れたなと言えるくらいあっちこっちを巡った。
「綺麗・・・・」
沖縄の夕焼けの砂浜、その光景に目を惹かれる澪。そして今日1日の事を思い出す。今まで行ったことのない場所、見た事のない景色、どれも澪にとって貴重な体験だった。
「澪さん、どうでした?」
「とてもありがたい体験をさせていただきました。お2人には感謝ですね」
「それは良かった」
2人の間に沈黙が流れる。聞こえるのは小波の音だけ。すると澪は、何か覚悟をした顔でのび太に呼びかけた。
「のび太君」
「・・・・はい」
「私、家に戻る事にしました」
「そうなんですか」
のび太はそれ以上は聞かないが、澪はのび太に聞いて欲しかったからか、自分から話し始めた。
「この国の今をこの目で見て・・・・感じて・・・・改めて“私の使命"を理解できたんです」
「使命、ですか?」
「大っぴらに言えることではないのですが、重大な使命なんです」
「・・・・あぁ、だから家出したんですね?」
のび太は何処か納得し、澪の話を聞き続ける。
「はい・・・・正直な話今日までは息が苦しくなるような生活で腫れ物を扱うように相手されていたんです。でもこんな素晴らしい体験をさせていただけたら、私の中のモヤモヤが晴れました」
「それは良かった。ドラえもーん」
「つ、次はどこ行くの〜?」
「ううん、帰るんだって」
「そうなの?」
「はい、ご迷惑かけてしまい申し訳ございませんがよろしくお願いします」
何が何だか理解出来てないでいるドラえもんだったが、とりあえず澪を連れて扉の前に連れてくる。
澪はすーはーと深呼吸をし、ドアノブに手をかけガチャリと扉を開ける。その先には大きな豪邸の門の前だった。ある程度予想していたからかあまり驚かない2人。澪はくるりと振り返ると深々と頭を下げて
「今日は私の我儘に付き合っていただきありがとうございました」
「いえいえ」
「こっちも色々楽しませてもらいましたから」
挨拶を済ませいざ家に戻ろうとしたが、のび太が待ったをかける。
「もし良ければ連絡先、交換しませんか?連絡をくれればまたどこでも連れていきますから」
「えっ・・・・・ふふっ、ありがとうございます」
のび太と連絡先を交換し、再度自宅へと帰って行き、のび太とドラえもんも自宅に帰る。
「なんか忙しい1日だったね」
「忙しいのはいつもの事じゃん。あっ、そうだ・・・・」
のび太は携帯を取り出しメールを打つ、送り先は勿論澪だ。
『今日は楽しかったですね。また遊びましょう!』
こうして夏休み最後の日を過ごしたのび太は、今日の出来事を思い浮かべながら眠りについた。
「澪、どこへ行っていたんだ。心配したんだぞ!」
「ごめんなさいお父様。ちょっと気分転換して来ただけですよ」
「そうか、でも無理はするんじゃないぞ?」
「はい」
「所でそれは?」
「お土産です」
澪の父は澪が持っていたお土産を見て頭に?が浮かんだ。なんせ全国津々浦々のお土産があったのだから