新学期は色々忙しい!
24世紀の未来デパート配送部門
「次、これのデータ消しといてくれ」
「はい!」
ここでは様々なレンタル道具の貸出、返却に伴うデータの整理なんかを取り扱っていた。
「終わったらこのロボットのデータを消して調整し直しておいてくれ」
「分かりました!」
あるロボットのデータ整理と回路の調整を頼まれる男。今やっている作業を終わらせロボットの調整にはいる。
「あぁ・・・・変な調整されちゃってるな。これじゃあレンタルされたお客さん結構大変だったんだろうな・・・・」
なんて独り言を呟いていると
キーンコーンカーンコーン
「昼休みだ・・・・・午後一でやればいっか!」
と中途半端な状態で放置、男はそのまま昼食を取りに行ってしまった。
そして昼休みが終わり別の係の人間がデータ整理を終えたレンタル道具を引き取りに来た。次の借主へ出荷するためにあれこれ回収し出荷準備をしようとしている。
「あと、“これ"もかな」
その男はまだ手付かずだったあのロボットを出荷するタイムカプセルに入れ作業を進める。するとそこへ昼休みを終えたデータ整理の係の男が戻ってきた。
「ふぅ、食った食った・・・・・さて、作業の続きを・・・・・って!あれ!?ここに置いてあったロボットがない!!なぁ、ここに置いてあったロボット知らないか!?」
「えっ、あぁ、それならここに・・・・」
「それまだ調整してないんだよ!」
「えぇ!?」
ガチャ
「「あっ」」
出荷係の男が驚いた拍子に出荷する時に使うレバーを引いてしまいカプセルはタイムホールに吸い込まれてしまった!
「あぁぁぁぁぁ!?どどどどうしよう、送っちゃったよ!?」
「おおお落ち着け!どこに送ったか確認してみろ!」
「えっと・・・・・あった!2095年9月だ!」
「急いで回収しないと、主任に怒られる〜!」
2095年 9月
夏休みも終わり、学校へ向かうのび太。しかしそこにはドラえもんも一緒だった。九校戦の時はのび太の関係者だったからその場に居られただけで一高とは無関係、そんなドラえもんが何故のび太と一緒に登校しているのか、のび太も疑問に思っていたのだが・・・・
昼休み、生徒会室で昼食をと真由美に誘われていたのび太は達也と深雪と一緒に生徒会室に向かうとそこには
「やぁ!」
「「「ドラえもん(ドラちゃん)!?」」」
「ふふふ、驚いた?」
真由美はにししといたずらっ子の様に笑う。
「本日からのび太君の在籍する間だけだけど生徒会特別顧問に就任していただきました〜」
そんな無理が押し通るものなのかと達也は考えたが真由美ならやりかねないと思いそれ以上の事は考えなかった。
そしてランチタイムは各々の夏休みの話題(キャンプの事は伏せて)盛り上がった。すると不意に真由美がぽつりと呟いた所から空気が変わった。
「それにしても、私達も今月で引退かぁ・・・・」
「そういえば、会長選挙は今月でしたね」
「ええ。選挙は月末ですが、一応の体裁を整えるためにも、来週中には選挙公示をして諸々の準備に取り掛からなければいけません」
「体裁?」
鈴音の言葉に、達也が首を傾げた。
「立候補者が複数いれば選挙が行われますが、生徒会長になろうという生徒は限られていますので、結局は身内同士の争いとなるでしょうね」
「そうなんですか?」
「過去5年間、生徒会長は主席入学だった生徒が務めています。6年前は違いましたが、それでも生徒会役員でなかった生徒が会長になった例はありませんので、今回もまた中条さんと服部くんの一騎打ちとなるでしょう。そういうときは事前協議をして、どちらか1人に絞ることとなります」
「私は生徒会長なんて無理です! 立候補するつもりはありませんので!」
と、名指しされたあずさが拳を握り締めてそう力説した。まだ立候補すらしていない段階で目に涙を溜めていては確かに難しいだろうな、と達也は内心で納得する。
「そうすると、6年振りに主席入学以外の生徒会長となるな」
「あれ、首席って中条先輩だったんですか?てっきり服部先輩が首席だとばかり思ってました」
どうやらのび太にとっては、次の生徒会長が誰かよりもそちらの方が気になったようだ。彼の台詞はあずさに対して失礼にも聞こえるが、あずさ自身は気恥ずかしそうに俯くのみで気分を害した様子は無い。
「今でこそ服部の方がトップだが、2位の中条とはほとんど差は無いんだよな?」
「はい。理論は五十里くんが主席、中条さんが次席、服部くんが三席。実技は服部くんが主席、中条さんが僅差で次席となっています」
「でも中条先輩は九校戦では選手じゃなかったですよね?」
「確かに成績でいえば花音とかよりも優秀なんだが、中条は細やかな技術力が持ち味だからな、スポーツ競技には不向きなんだよ」
「それにしても、次の会長ははんぞーくんかぁ・・・・」
真由美のその言葉には、ありありと不満が滲み出ていた。確かに真由美と彼ではポリシーが違うので気持ちは分かるが、肝心のあずさ本人にやる気が無いのならば仕方ない。
そうしてランチタイムは終了、午後の授業を受け風紀委員のパトロールを終えていつものメンバーと合流し帰り道の途中にある喫茶店でテーブルを囲んでいた。
「へぇ、ドラえもんが特別顧問にねぇ」
「そんな事があったんだ、ドラちゃんに口添えしてもらって部費上げてもらおうかしら・・・・」
「そんなこと出来ないのはエリカちゃんが一番分かってるでしょ?」
「まぁねぇ〜」
「生徒会と言えば、もうすぐ会長選挙だけど。結局服部先輩と中条先輩どっちが会長になるんだろう」
「恐らくだが、このまま行くと消去法で中条先輩が会長になる可能性が高い」
「どうして?服部先輩、割と野心家で会長の座とか欲しがりそうだけど・・・・」
「今日のパトロール中に聞いた話なんだが、どうやら服部先輩は部活連の会頭になるつもりらしい」
本日のパトロール。達也とのび太は新委員の千代田花音と共にパトロールに出向いたのだがその道中剣道部と剣術部の合同練習の場にも足を運んでいてその時に一緒にいた桐原と壬生から聞いたのだ。ちなみにその時風紀委員長の後任が千代田である事も聞き達也は深いため息を着いたのはここだけの話。
「でも中条先輩、やる気無いんでしょ?」
「まぁ、昼休みの会話から察するにそうだな」
「可能性の話だけど、生徒会役員から会長が選ばれるって言う不文律が根付いているなら司波さんが槍玉に挙げられる可能性も、いや七草先輩が生徒会の一科生縛りを無くすって言ってたから最悪達也も無視できなくなってくるんじゃない?」
「・・・・・」
達也は否定したかった、いや出来なかった。達也は魔法科高校に入学してから様々な厄介事に巻き込まれてきた。達也にしてみればテロリストと戦う程度なら別になんとも思わないがドラえもんと関わってからの出来事を経て可能性の話ですらほぼ起こり得る事象として捉えてしまう癖が着いてしまった。更に言えば現生徒会長の真由美や風紀委員長の摩利は前進的な考え方をする人達であり「前例は覆すためにある!」とか言って無理矢理推し進める可能性だって無きにしも非ず。
達也は海底キャンプの時の決戦時の様な顔付きをし
「・・・・早めに手を打たなければならないな」
そう呟いていた。
そうして決意を固めた達也は深雪を引き連れて、あずさを“説得”した。
説得といっても、別に如何わしいことは何も無い。ただ単に、あずさが立候補しなければ“4年前の悲劇”が再来すると脅しを掛けたうえで、再来週に発売するFLTの飛行デバイスのモニター品を生徒会長就任祝いとしてプレゼントする、という飴と鞭の基本戦術に則っただけである。
しかしあずさにとっては効果覿面であり、最終的には(主に飛行デバイスに目が眩んで)生徒会長立候補を引き受けたのだった。
さて、そんなこんなで時間は巡り、9月も末に入った。まだまだ残暑の厳しい季節だが、肌寒く感じるときも増えていき、いよいよ秋の匂いを感じ始めてきた頃である。
「校内の雰囲気が少しも熱くならないのもまた、どうかとおもいますが」
「なんの事?」
小首を傾げる真由美を少しばかり目を細くして達也は見返した。
「生徒会選挙のことですよ。いよいよ明日が生徒総会、そして生徒会選挙が控えているというのに、どうにも校内の盛り上がりに欠ける気がしまして。こういうときって、あちこちで論説やアピール合戦が行われるものと思っていたのですが・・・・」
「そうか? 高校の選挙なんて、こんなものだと思っていたが」
摩利の言葉も確かに納得できるが、それでも達也にとっては物足りないという感想が正直なものだった。
「まぁ、今回は残念ながらあーちゃん1人になっちゃったからねぇ・・・・」
――白々しい
のほほんとした笑顔を浮かべる真由美に、達也はそんな意地悪なことを考えてしまったが、わざわざ口にすることはなかった。たとえ彼女が対立候補となりそうな生徒を1人1人“説得”して回ってたとしても、自分には関係無いことだった。
ちなみに唯一の候補者であるあずさは、このような状況でも気を抜くことなく、わざわざ紙媒体に印刷した原稿を熱心に読み込んでいた。やはり事前に渡した“プレゼント”が効いたのだろう。彼女のような性格の場合、プレゼントを先延ばしにするよりも先渡しでプレッシャーを与える方がテンションを持続させやすいのである。
「でもまぁ、明日は投票前の立会演説もあるし、それなりに盛り上がるんじゃないかしら?」
「問題があるとすれば、その前に行われる生徒総会の方でしょうね」
今まで無言だった鈴音の言葉に、その場にいた全員が納得した。
明日の生徒総会にて、真由美は春の臨時集会で宣言した“生徒会役員一科生限定廃止案”を議題にするつもりだった。春の時点では雰囲気に呑まれて表立った反対者は見られなかったが、それでも心情的な反発を覚えている生徒は少なくない、とこの場にいる全員が考えている。
「あれだけ大見得切ったんだからな、今更引っ込めることはできないぞ」
「あら摩利、今更引っ込めるつもりはないわよ?」
「もしかしたら暴走する方も出てくるかと懸念していましたが、杞憂だったようですね」
「はははっ。我が校の生徒に、この女に闇討ちしようなんて命知らずはいないさ」
「摩利、女の子相手にひどいんじゃない? ねぇ、のび太くん、ドラちゃん?」
「「えっ? あはは・・・・」」
と絵に書いた様な作り笑いで誤魔化すのび太とドラえもん。
「ですが、やはり用心に越したことはないですよ。一部の生徒が会長の提案を潰そうと画策し、しかしそれがほとんど功を奏していない、という噂は聞いているでしょう?」
「確かに、そういった話も聞かなくは無いが・・・・」
「向こうとしても、残された期間は今日と明日だけですからね。念の為、今日はお1人にならない方が良いかと」
「もしかして、何か掴んでるのか?」
「それが分かっていれば、却って安心なのですが」
考えすぎだとは思いますけどね、と言って達也は軽く笑ってこの話題を打ち切った。
それが単なるポーズでしかないことは、誰の目から見ても明白だった。
「3人共、今から話があるんだが、本部に来てくれないか?ドラえもんも来て欲しい」
昼休みも残り僅かとなり教室に戻ろうとしていた達也たちを呼び止めたのは、摩利だった。
「俺達は大丈夫です。深雪は?」
「私も、午後は一般科目なので多少は遅れても平気です」
「僕も」
摩利は「すまない、ついてきてくれ」と歩き出した。そうして5人は、生徒会室を通れば近道なのにわざわざ廊下を歩いて階段を降りて本部へとやって来た。
半年前とは比べ物にならないほどに片づけられた本部にて、4人はこれまた半年前には無かった応接セットに座った。司波兄妹は並んで摩利と向かい合わせに、のび太は摩利の隣、ドラえもんは2組の間に座った。
「相談したいのは、真由美のことだ。実はアタシも、達也君と同じ懸念を抱いている」
「委員長も、反対派が大人しすぎると?」
「ああ。あまりこういうことは考えたくないんだが、平和的な裏工作が上手くいかず暴力的な手段に出る奴が出てくるんじゃないか、というのは充分警戒すべきだと思う」
「摩利さんの考えすぎとかじゃなくてですか?」
「私の考えすぎならそれはそれでいい。だが真由美は人が良いというかお嬢様育ちというか、他人の“悪意”に疎いところがあってな。“窮鼠猫を噛む”という心情も、おそらくアイツには理解できないだろう。さっきの達也君の話も、あまり真面目に受け取っていないようだしな」
「ですが渡辺先輩、会長には“マルチスコープ”があるのではないですか?」
「確かにそれで周囲を警戒していれば、アイツが闇討ちに遭うなんてことはないだろう。だがそのためには“周囲を警戒する”という行動が必要だ。“マルチスコープ”は常にスタンバイ状態の能力ではないからな」
埒のない話だな、と摩利は一旦話題を切り替えると、改めて3人に向き直った。
「君達3人に頼みたいのは、今日は真由美と一緒に帰ってくれないだろうか?」
「真由美さんと一緒に家まで行けば良いいんですか?」
「いや、別に家までは――いや、その方が良いだろうな。学校にいる間は大丈夫だろう。常に取り巻きがいるし、生徒会室には私や市原も服部もいる。一番気になるのは下校時なんだ。あいつはなぜか、学校の外では取り巻きを近づけさせないんだ」
摩利にはその理由は思い至らなかったが、達也には理解ができた。十師族の直系ともなれば政治的な目的で誘拐を企む者がいてもおかしくないし、単純にお金持ちのお嬢様というだけで誘拐する理由になる。もしそうなったとき、無関係の人間が巻き込まれるのを極力防いでいるのだろう。
「こういう時期でなければ服部に頼むところなんだが、アイツは部活連の方で忙しくしててな。それに達也君の“術式解体”とのび太君の早撃ちがあれば、どんな闇討ちにも対抗できるだろう?」
「お任せください、兄でしたら間違いありません」
扇動の意図を多分に含んだ摩利の問い掛けに、深雪がまんまと乗っかってしまった。そのせいで、達也は先程から胸に抱いていた疑問を口にすることができなかった。
「てかそれだったらドラえもんの道具使った方が早いと思いますよ。ドラえもん何かいい道具ない?」
「うーん、警備の道具か・・・・・そうだ。テッテレー『さいなん報知器』〜これは忍び寄る災難を知らせる腕時計形ひみつ道具でこれを装着している人になにか災難が近づくと、「ビビーッ」とブザーを鳴らして事前に警告してくれる」
「便利な道具だな」
へぇと一同関心を寄せるが摩利の中ではまだ何か足りないのか
「・・・・すまない。それを持たせて且つ君達も付いていて欲しいんだ」
そこまで行くと少々過保護では?と言いかけたが実際どうなるかなんて誰にも分からない。キャンプの時も予想をはるかに超えた問題が発生して対応する羽目になってしまったことを思い出すと摩利の最終的に人の目で確認したいと言うのも否定出来ないと達也は思った。
パシャ
「・・・・何を撮ってるんだ?」
「制服姿、夏休みの最後に会った人に送るんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・念の為に聞くが、その人の名前は分かるか?」
「五輪澪さんって人」
「お前のその人を引き寄せる力は何なんだ?」
名前を聞いて頭を抱える達也なのだった