『ようこそ、キャッツ・アイへ!』
「やぁ、『海小坊主』ヾ(・ω・`*)元気かい?」
『海小坊主、元気!』
目的の店にやって来た2人を出迎えたのは配膳ロボットの『海小坊主』。
そして
「いらっしゃい」
「・・・・」
カウンターの奥ではこの店の店長である海坊主と美紀が作業をしていた。
「どうも〜」
「お邪魔します・・・・」
2人はカウンター席に着くのと同時にコーヒーを置いた。
「はい、ウチ特性のブレンドコーヒーよ」
「ありがとうございます」
ずずっと一口、口に含む。鼻に抜ける香りが一般的なコーヒーとは別物だと感じさせる。普段は深雪が豆から挽いたコーヒーを飲む達也、勿論深雪が入れたコーヒーが美味しいが、店でしか味わえない特別な味わいを感じるのと同時に店主のこだわりを感じた。
するとずっと黙っていた海坊主が口を開いた。
「聞いたぞ、街中でドンパチやり合ったらしいな。どこの奴らとやり合った?」
「分かんない、外国人っぽかったのは分かったんですけど・・・・」
「外国人・・・・・」
「何か、心当たりでも?」
「・・・・・ちょっと小耳に挟んだ事なんだが、なんでも最近密入国者が増えてるらしい」
流石は裏社会の人間、そう言う話は直ぐに耳に入るのかと思った。
「それと関係あるかは分からんがな」
「いえ、その話を聞けただけでも十分です。すみませんトイレを借りてもよろしいでしょうか?」
「あぁ」
達也は席を立ちそのままトイレへ向かった。
『随分と連絡が遅かったな、特尉』
「申し訳ありません、少佐。電話を掛けられる状況ではなかったもので」
トイレで達也が電話を掛けたのは、独立魔装大隊司令部の風間少佐だった。
『街路カメラの方は心配するな、既に処理は終わっている。――それにしても、随分と思い切りの良い相手だな。都心ではないとはいえ、都内でいきなりライフルをぶっ放すとは』
「油断していたことは否めませんが、恐るべき技量でした」
『魔法は使っていなかったのだな?』
「間違いありません」
達也の知覚力をもってすれば、弾道を誘導する魔法の存在に気づかないはずがない。
風間もそれをよく知っているため、それ以上追及することは無かった。
『ふむ、夜間に光学スコープのみで千メートル級の狙撃を成功させるか。それだけの腕を持つスナイパーを調達できる組織は、世界でも限られてくる。敵の正体は案外簡単に分かるかもしれんな。まあ、そんなスナイパー相手にカウンタースナイプする彼も彼だが・・・・・』
彼とはのび太の事だろう。達也は銃火器の事にはさほど詳しくないがまさか現役の軍人がため息を吐くほど事だったとは思わなかった達也。
『車の方も既に見つけているから、こちらで取り調べたうえで処分しようと思う。構わないな?』
「お手間を掛けます」
達也は通信を切り、水をを流してトイレを出た。
「達也君、気になってたんだけどさ。狙われてた人って・・・・」
「・・・・」
達也はのび太に耳をかせと言い、小声で
「戸籍上の俺の母親だ」
「・・・・あーそういう事、ならなんで・・・・・」
「“これ"だ」
達也は持っていたジュラルミンケースをテーブルに上げケースを開く。軍事機密レベルの物を見せてもいいのかと思われるかもしれないがここにいる人間が簡単に口を割るとは思っていないから達也も見せても問題ないと考えたんだろう。
「・・・・勾玉?」
「ただの勾玉じゃない。
「そいつは・・・・!」
「何か問題でもあるの?」
「問題ありまくりだ!つまりそいつは
「えっ・・・・」
「えぇぇぇ!?そ、そうなの!?」
「まだ仮説の段階、ですがね。だがその魔法式の保存機能が本当だとしたらこれからの魔法業界、いや、他の世界でも多大な影響を生み出すだろうな」
「なんで、そんな物を・・・・・いえ、やめとくわ」
美紀は達也にどうしてそんな物を持っているのかを聞こうとしたが仮にも裏社会の人間、秘密にしたい事の一つや二つあったって不思議じゃないし、そんな事に首を突っ込んでいい試しが無いことは分かりきっているからだ。
その頃、とある廃墟、その一部屋はモニターで囲まれ複数の人間でモニタリングしている。
その中でリーダー格の男が
「状況を説報告しろ」
「はい、横浜の魔法師協会への侵入に成功しました。引き続き作業を進めます」
「現地協力員の確保に成功。間もなく行動を開始します」
「レリックの奪取には失敗したようです」
「・・・・レリックの魔法式保存機能は、確認出来たのか?」
「いえ、それも現物が無いと確認できないとのことです」
「魔法式保存機能が事実だとして、それを手に入れることが出来れば我が『大亜連合』の戦力は飛躍的に向上させる。なんとしてもレリックを確保せよ!」
次の日
キャッツ・アイを早めに出て各自家に戻った2人は制服に着替えて学校に行った。
そして放課後、のび太はエリカに拉致られサンドバックに、達也はプレゼン用の資料を揃えるため図書館へ向かった。本音を言うならレリックの解析に専念したかったが論文コンペの準備も疎かにする訳に行かない。
空きのブースを探して閲覧室を奥へと進んだ達也は個室タイプのブースから知り合いが出てきたのに出会した。
「あら、達也君」
「七草先輩・・・・・『読書の秋』ですか?」
「違うわよ、あのね私3年生なんだよ?」
「はぁ、存じておりますが・・・・」
「高校三年生と言えば大学受験でしょう?なんで受験勉強って発想が出てこないのかなぁ・・・・私って、そんなお気楽なキャラに見える?」
────割と間違って無いようにも見えるが・・・・・
しかし達也は余計に分からなくなった。
「七草先輩は、推薦が決まっているのでは?」
成績優秀、生徒会長を務め、魔法競技アスリートとしても有名で獲得したトロフィーは数知れず。
これで推薦がつかなかったら誰が推薦されるのだろうと不思議に思っていたのだが真由美がその理由話した。
「あれ?達也君知らないんだっけ、私、推薦は辞退したのよ。生徒会役員経験者は推薦を辞退するのが当校の不文律なのよ?」
「そうだったんですか」
「所で達也君は何しに来たの?」
「論文コンペの資料を集めに来たんですよ」
「あぁ、リンちゃんにお手伝いを頼まれてたわね。じゃあこんな所で立ち話しちゃあ他の人の邪魔になるし、中に入ろうか」
何故、と思いながらも真由美に押され閲覧室に入って行った。
「達也君にとって急な話だったと思うけど、リンちゃんにとってはコンペの勝ち負けに留まらない意味を持ってるから、よろしくね?」
「は、はい・・・・市原先輩は今回のテーマに何か特別な思い入れがあるんですか?」
「“魔法師の地位向上"、魔法を経済活動に不可欠なファクターとする事で、魔法師は本当の意味で兵器として生み出された宿命から開放される。重力制御魔法式熱核融合炉はその為の有力な手段ってリンちゃんはずっと言っていたわ。今回の論文作成はその為の具体的な第一歩なの」
達也は驚愕した。市原が
「・・・・こんなマイナーな思想の持ち主が、こんな身近にいるとは思いませんでした」
驚いたと言うよりむしろ感心したように呟く達也に真由美は何故か、ジトっとした目を向けた。
「ふ〜ん、良かったわねリンちゃんと気が合って・・・・」
「いえ、別に気が合うとか合わないとかという問題ではないと思いますが・・・・市原先輩と俺とでは方法論が違いますし・・・・」
「でも基本コンセプトは一緒でしょ?達也君って、リンちゃんみたいなのがタイプなの?」
「はぁ?」
「こーんな美少女と肩を寄せあってお話しているって言うのに全然手を出す素振りも無いと思ったら・・・・ごめんね、お姉さん、幼児体型で」
この人は一体何を言ってるんだ?というのが達也の感想だった。
「・・・・俺に露出性癖はありませんよ。監視カメラの前で女性に手を出したりはしません」
「えっ・・・・じ、じゃあ、カメラや人目がなかったら・・・・?」
「勿論、先輩の据え膳なら、遠慮なく」
「えぇ!!?」
赤面した真由美がスツールごと壁に密着し、狭い室内で精一杯達也から距離を取った。
達也は少し意地悪しすぎたかなと思いながらもようやく自分の作業ができると思い、モニターに視線を戻した。何故か真由美は出ていこうとはしなかったが。