話し合いがあった次の日
「・・・・・」
「何を考え込んでいるんですか?」
「あーうん、ちょっとね。壬生先輩の事でね」
「話し合いの後解放されたんでしょ?ならいいじゃない」
「そっちじゃなくてさ・・・」
のび太が気にしていたのは先程まで起きていたことではなく、そもそもそこまでに至る経緯についてだった。
のび太の中での彼女は真っ直ぐでそれこそ魔法なんて二の次、我が道を行く、そんなイメージが浮かぶのだが・・・・
「何か、別の理由があるのでしょうか?」
「有り得るかもね、まぁ、それは後に聞いても遅くは無いと思うわ。今は午後の討論会よ、ブランシュが関わってるってなるとただの討論会で済まないような気がするのよね・・・・」
「やっぱり?今日の討論会で会場の警備をやるんだよね、しかも何人かエガリテのメンバーをマークしておいてくれって言われたんだよ」
「討論会で暴動でもやる気かしら?」
「暴動だけならいいんですけど・・・・」
討論会
『二科生はあらゆる面で、一科生より劣る差別的な扱いを受けている!生徒会長はその事実を誤魔化そうとしているのではないか?!』
『ただいま、"あらゆる面で"とおっしゃいましたが、具体的にはどの様な事を指しているのでしょうか?』
『一科生の比率が高い魔法競技系のクラブは二科生の比率が高い非魔法競技系のクラブより明らかに手厚く予算が配分されています!これは一科生の優遇が、課外活動に置いても罷り通っている証ではないでしょうか?!』
『それは、各部の実績を反映した結果です。非魔法競技系のクラブでも全国大会で優勝するなどといった成績を収めている部には魔法競技系のクラブに見劣りしない予算が割り振られています』
討論会には今回の騒動の中心メンバーが討論しておりその相手を真由美1人でしていた。これは相手に時間的な余裕を与えないのと、1人の意見の食い違いから揚げ足を取られ、感情論に持ち込まれないようにする為この様な手段をとった。
そして真由美の近くには服部が、舞台袖には摩利や市原、達也などが、他の風紀委員も会場のあちこちに配備されている。
「最早討論会ではなく、真由美の演説会になっているな・・・・それにしても、何をするつもりか分からないがこちらから手出しは出来んからな、専守防衛とは聞こえがいいが・・・」
「渡辺委員長、実力行使を前提に考えないでください」
「分かっている、心配するなって・・・・」
討論会は終始真由美のペースで進められ、二科生の生徒達は尽く論破されていってしまっている。
そして、真由美は今回の討論会の決定打となる話を始めた。
「ブルームとウィード」
「「「ッ!」」」
ざわざわ・・・・
「学校や生徒会、風紀委員が禁止としている言葉ですが、残念な事にこの言葉を多くの生徒が使用しています。しかし一科生だけではなく、二科生の生徒自身も自らをウィードと蔑み、諦めと共に受容する。そんな悲しむべき風習が確かに存在します」
まさかの発言に会場内のほぼ全ての生徒が動揺し、話を聞いたリストバンドを付けた生徒達が『そんなことは無い』『出鱈目だ』等と叫ぶも真由美は話を進め、自身の意見、そして、自身の希望であり、差別の象徴となってしまっている生徒会の選任基準の改定、それを生徒会長として最後の仕事にするつもりだと宣言した。
そしてその話に一科生二科生全ての生徒が共感し、会場内が拍手喝采で埋め尽くされる。
ドカーーン!
すると突然会場の外から爆発音が聞こえ、それと同時にリストバンドを付けた二科生の生徒が動き始めた。
「委員長!」
「取り押さえろ!!」
元々警戒していたこともあってか、動きを見せた生徒達のすぐそばに居た風紀委員が拘束、一番前の席に近づいた生徒も達也によって拘束された。
すると今度は会場の窓ガラスが割られそこから黒い何かが放り込まれ、
バンッ!バンッ!バンッ!
たが、遠くの方から銃声が3発、その黒い物に当たりまるで映像の巻き戻しの様に割られた窓に向かって戻っていき、外で煙が広がった。どうやら放り込まれた物はガス弾だった様で、外で数人、生徒ではない人間が煙を吸い込んだらしく、その場で倒れていた。
「今のは・・・・」クル
「咄嗟に外に出しちゃったけど、大丈夫だったかな?」
発砲音の主はのび太だった。
のび太は窓ガラスが割られたと同時にCADを取り出し、ガス弾が放り込まれた瞬間に魔法を発動させ、空気砲をガス弾に当てて外に出したのだった。
「いや、問題な『バタンッ!』!」
今度は入口の扉が蹴破られ外からガスマスクを被って武装した状態の侵入者が入ってきた。
「眠ってもらうぞ!」
「うぉぉ・・・!」
侵入者に対して摩利が魔法、『MIBフィールド』を用いて侵入者を制圧した。
MIBフィールドとは気体分子の分布に干渉する魔法だ。ガスマスク内の狭い空間における酸素濃度を操作し、彼らの顔付近の酸素を極端に少なくすることで急激な酸素欠乏症を生み出し、筋力低下や意識混濁を引き起こしたのである。
「委員長、俺は爆発のあった実技棟へ向かいます」
「お兄様、お供します」
「僕も行くよ!」
「お前達・・・・気をつけろよ?」
「「「はい!」」」
達也達が外に出ると既に侵入者と生徒、教員や警備員が交戦をしていた。
その中で実技棟に向かう途中、同級生のレオが侵入者に囲まれている。すると深雪が片手でCADを操作し、単一系移動魔法を発動、レオを囲んでいた侵入者は全員空高く吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「達也、これは一体?」
「レオ!っと、援軍が到着してたのね」
自身の分とレオの分のCADを抱えてやってきたエリカと合流し、1度状況を整理するため校舎の影に身を潜める。
「テロリスト?じゃあ問答無用でぶっ飛ばしていいのね?」
「あぁ、生徒でないのなら手加減は無用だ。所で他に侵入者は見なかったか?」
「彼等の狙いは図書館よ」
どこからともなく現れたのはカウンセラーの小野先生だった。小野先生は侵入者は図書館のメインデータベースにある国立魔法大学の最先端資料であることを知った。そしてそこに沙耶香が居ることも。
そしてその事を何故自分たちに伝えたのか、それは沙耶香の事を助けて欲しいと、カウンセラーとして彼女の境遇を見てきた小野先生が沙耶香と関わりのある達也達に頼むことにした。が、達也の答えはNOだった。流石に冷たいんじゃないかと言われるが侵入者がいる中で人の事を気にしている余裕はないと返し、深雪と共に図書館へと向かっていった。
「・・・・・」
「小野先生」
「っ、大丈夫よ、そうよね、今はそんな時じゃ「僕達に任せてください」!」
「何処まで出来るか分かりませんけど、それでも放っておけないので。それじゃあ!」
自分の事を気遣って言ってくれた言葉なのかもしれない。根拠の無い言葉、出来なかったどうするつもりなのか。達也ならそう返す場面なのだが、何故か小野先生の中にはのび太なら、沙耶香を助けられるんじゃないか、そういう考えがあった。
図書館に向かう道中、やはりと言うべきか生徒と侵入者で乱戦状態になっていた。
「うぉぉぉ!
そう叫びながら乱戦に飛び込んでいくレオ、すると左腕全体を覆うプロテクターのようなものが魔法式を読み込んでいく。プロテクターは彼のCADであり、レオが使った魔法は音声認識と逐次展開を行った硬化魔法だった。
逐次展開(ちくじてんかい)は、起動式の展開と魔法式の構築・発動を並列的に行う技術である。この技法により魔法を継続的に更新する事ができる。
一般的には時間的に大規模な魔法の想子消耗量は多く、同じ魔法を長時間更新し続けると経過時間に対して比例的にではなく指数的に想子消耗量が増えていく。
「音声認識とは、また懐かしいものを・・・・」
「プロテクターその物にも硬化魔法をかけているのか、どれだけ乱暴に扱っても壊れない、レオにはピッタリだな」
レオの魔法に関心を寄せながらも先に進む達也達、すると右側から銃を構えている
図書館受付
図書館の中に入り受付カウンターの机に身を潜め、侵入者の様子を伺う。
すると達也は目をつぶり、ある魔法を発動、その魔法により図書館内部に居る侵入者の数と配置を見る。
「・・・階段の登り口に4人、階段を登りきった所に1人、2階特別閲覧室に4人、だな」
「凄いね、達也くんがいれば待ち伏せの意味がないや」
「実戦では相手にしたくないわね・・・・」
凄いなと思うのび太とは反対にリアルな感想を言うエリカなのだった。
特別閲覧室で一体何をしているのだろうと深雪が達也に訪ねると恐らく魔法大学が貯蔵する機密文章を盗み出そうとしているのではないか、と答える。
「じゃあ、盗み出さられる前に捕まえないとね。のび太?」
「うん!」
エリカとのび太が顔を見合わせ、頷くと2人は一斉に飛び出し階段へと突撃していく。
「何者だ!」
「止まれ!!」
待ち伏せていた4人、そのうちの2人は近接武器を、あとの2人はマシンガンを所持している。のび太の先に走ったエリカは前に居る2人に一気に近づき、最初の人を飛び越え少し後ろにいる男の腹部に警棒型CADを突き刺し、ダウンさせ、後ろから迫るもう一人の男を振り向きざまに頭を殴って気絶させた。
するとさらに後ろの方でエリカに向けて銃を構える2人に気が付く、しかしエリカはその場を動かずにしゃがみ込んむ、エリカの後ろにいたのび太も銃を構えておりエリカがしゃがみ込んだ瞬間に2発発砲する。すると2人が構えていた銃が内側から爆発し、その隙にエリカ近づいて2人の男を気絶させた。
「ナイス、ホールインワン」
「まぁね〜」
「そこで何している!」
下の異変に気が付いたのか、2階にいたはずの見張りの男が下まで降りて来たのだ。
しかしエリカが早くに反応し、男が振りかざした刀を警棒で受け止め、男を足止めをする。
「ここは任せて、3人は先に行って!」
「分かった」
「気をつけてね」
達也は階段の壁に加速系の魔法を展開、壁を蹴った際に飛ぶ方向へ加速がかかりその勢いで2階に到達、その後に続いて深雪は移動系の魔法を展開しゆっくり空を飛び、のび太はエリカが足止めしている間に脇を通り深雪の後に着いた。
「ここだな」
「でも達也君、鍵かかってるよ?」
「それなら、扉を壊せばいい。この間みたいに生徒だけでは無いから壊したとて何も言われんだろう」
そう言うと達也はCADの引き金を引きく。すると扉の境目が一瞬ひかり、分厚い扉が内側に倒れ、中で資料を盗み出そうとしていた侵入者3人と沙耶香が困惑した様子でいた。その事を気にもとめず達也は更にコピーをするために使うハッキングツールと記録用キューブをバラバラにする。
「お前達の企みはここで潰えた」
「司波君・・・・」
「くそっ!」ガチャ
焦った記録係の男が拳銃を達也の方に向けた瞬間、銃を持っている手が凍りついた。急激に冷えた事によって男の手は凍りつきながらも赤く腫れ上がり凍傷となっているのだろう。
「愚かな真似はやめなさい。私がお兄様に向けられた害意を見過ごすわけがありません」
「壬生先輩、もうやめましょう。こんな事しても先輩が苦しむだけですよ」
「・・・してよ、なんでこうなるのよ、差別を無くそうとしたことが、間違いだったって言うの?!君だって、散々周りの人と比べられていたのでしょ?!そして侮辱を受けてきたはずよ!誰からもバカにされてきたはずよ!」
沙耶香はのび太にそう問い質す。実際のび太自身、沙耶香の言った通りジャイアンに殴られ、スネ夫にバカにされ、先生からも色々言われたりしていた。
「そうですね、確かに僕は周りから散々バカにされて来ました」
「なら、「でもね」っ」
「それでも僕は、壬生先輩見たいに、全部を諦めたりしなかった。バカにされたら親友と一緒にやり返したり、できないって言われていたことも、エリカちゃん達と一緒に出来るようになるまで頑張った。どんなに強大な敵が来ても逃げないで戦った。先輩・・・・先輩には先輩の頑張りを認めてくれる人は居なかったんですか?」
「・・・!!」
「先輩の頑張りは、絶対見てくれている人が居ますよ。もし居なかったら僕達が居ますから」
「俺達も見るのか?」
「当然!」
2人の肩に手を置き、自分達が居るから心配ないと言わんばかりの回答を出す。2人は少し困惑しているが・・・・
すると
カチッ
「壬生!指輪を使え!」
「っ!」ギューン!
「「「っ!」」」
「キャストジャミングか!」
沙耶香の後ろでタイミングを伺っていた3人、そのうちの一人がスモーク弾を噴射し視界を奪う。そして沙耶香も指に嵌めていた指輪のボタンを押すと達也が扱うキャストジャミングが放射されのび太達は魔法が使えなくなってしまった。
そして魔法使えなくなった隙に3人の男が一斉に襲いかかって来る。が、達也は人数差などものともせず3人を倒す。たが更にその隙に沙耶香は特別閲覧室を抜け出した。
深雪は沙耶香を拘束しようとするがのび太に止められた。
「何を!」
「ちょっと待って欲しいんだ。ここはエリカちゃんに任せて欲しいんだ」
「でも・・・」
「大丈夫だよ、絶対」