DEAD OR ALIVE 【SAMUEL RODRIGUES】   作:eohane

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 ダダン一家の根城、山小屋の目の前では、小さな酒宴が開かれていた。

 あの日から月日は経ち、今の季節は春。コルボ山に桜の木は無いので残念ながら花見とはいかないが、今ここにいる全員はたいして気にしていない。

 そもそも桜というのが、サムにとってはなぜか“赤いアレ”を連想させるものであり、かつての雇い主にとっては反吐が出るほど嫌いなものなので、あったところで良いというわけでもない。

 暖かな日差しが地面を照らし、辺りを和やかな空気が包んでいる。

 

「はい、できましたよぉ。3人共」

 

 マキノがお酒の入ったグラスを3つ、世間一般では海軍の英雄、自称流離いの旅人、コルボ山の山賊棟梁に手渡していく。

 

「なんじゃい、村長。もう飲めんのか?」

「やかましい。わしはもう年じゃ。酒を飲むのは控えとる。……だいたいガープ、お前はいつまで飲み続けるつもりじゃ。もう年もだいぶいっとるじゃろうに……」

「がっはっは! まだまだいけるクチじゃぞい!」

「元気なジイさんだことで……」

「なんだかんだでサムさん、もうグラス空けてるじゃないですか」

 

 さっそくグラスを傾け始めたガープ。はぁ、と溜め息をつく村長。それを見ながらはっはっは、と笑うサム。空いたグラスに酒を注いでいくマキノ。

 酒のせいでもあるが、彼らの酒宴を陽気な雰囲気が包み込んでいた。

 

「……すまないねぇ、マキノ。いつもいつも」

 

 同じくグラスを傾けながら、ダダンは言った。だいぶ包帯が取れてきており、もうそろそろ完治といったところである。

 

「いいんですよ。あの子達の姿を見るの、楽しみにしてますし。ねぇ? 村長さん」

「誰がするか。あんな問題児共、将来が不安でしょうがないわい」

 

 「ふんっ!」と鼻息荒く、村長が言う。妙にソワソワしているのは気のせいだろうか。

 

「とりあえず、不安でも気にしてはいるんだねぇ」

 

 ニヤニヤしながらダダンが言う。「やかましい!」と村長が叫び、それと同時に全員が揃って笑った。

 

「そういやルフィとエースはどうじゃ? ……サボがいなくなってから、元気にしとるのか?」

 

 若干声のトーンを下げながら、村長がダダンに尋ねる。それに対し、山小屋の前にできあがった2つの独立国家を見ながらダダンは言った。

 

「まぁ、2人共思うところがあったみたいだねぇ……。なんとか乗り越えてはいるよ」

 

 ただねぇ、とダダンが呟く。

 

「どうしたんじゃ?」

「……エースが変な意地張っててね、サムと喧嘩中なんだよ」

 

 4人の視線がサムに集まる。はっはっは、とサムは笑った。

 

「ルフィはいつも通りなんだがな」

「アレが堪えたんだろうねぇ……」

 

 サムとダダンが2人して、懐かしそうな表情になる。残りの3人は、何のことだかさっぱりと言いたげだ。

 

「そろそろ俺が折れてやるかな……」

「よくわからないけど……サムさんも変な意地張っちゃダメですよ? 2人の親同然なんだから」

 

 マキノが、サムのグラスに酒を注ぎながら言った。

 

「あのな。さも当然のように言ってるが、俺は監視役であって──」

「似たようなもんじゃろうが」

 

 「ぶわっはっは!」と笑いながら、ガープが言った。

 

「……おい、監視役に決定した奴が何言ってんだ。……まぁ、家族じゃないとは言いきれんような気もするが?」

「何で疑問形なんだよ」

 

 華麗にダダンの突っ込みをスルーし、サムは言った。

 

「それじゃ、仲直りにでも行ってくるかねぇ」

 

 よいしょ、とサムは立ち上がった。

 それを見て、グラスを傾けながらガープが言う。

 

「どうするつもりじゃ? サム」

「はっはっは……ジイさん、孫に愛されたいならこれを覚えときな」

 

 その場にいる、サム以外の全員が首を傾げる。

 

「たいていのガキはメシで釣れる。ましてやあの2人なら、な。やるとしたらラーメンだ」

 

 にやり、と笑うサム。

 グラスを傾けるのをやめ、真剣に考え始めるガープ。その頭を引っ叩く村長。サムを見ながら呆れ顔になるダダン。

 そして、はぁ、と溜め息をつきながらマキノが言った。

 

「本音は?」

「……謝りに行ってくる」

 

 ふたたび笑いに包まれた酒宴であった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「まことにすまんっ!」

「すまねーなじゃねぇか?」

「……すまねーつかまつりましたっ!」

 

 いろいろとおかしな言葉が周囲に響いている。

 

「……何やってんだ、あいつら……」

 

 ここはエースとルフィの修行場所。サムはそこからほんの少し離れた場所に立っている。

 なぜか。──目の前に奇妙な、というより笑ってしまいそうな、妙にこそばゆい光景が広がっていたからだ。

 

「もう普通に言えばいーじゃねーか、エース」

「うるせぇっ! 黙ってろルフィ!」

 

 それからもああだ、こうだと唸りながら、エースは恐らく謝罪の言葉であろうそれを練習(?)していく。ルフィは鼻をホジりながらそれを眺め、時おりアドバイスになっていないアドバイスを出していた。

 …………なんともニヤニヤしてしまう光景である。

 

「……ん? ってことは俺はエースと考えてることが同レベルってことに……いやいやいや」

 

 安心しろ、サム。もはや十分同レベルである。

 

 

 

 その後、なんだかんだで意地を張りながらも仲直り(?)をしたサムとエース。ルフィいわく、なんとも不思議な言葉を使った謝罪の仕方だったという(“主に”エースが)。これにより、翌日から講師マキノによる「正しい言葉の使い方授業」が始まり、生徒エース、ルフィ、そしてなぜかサムの3人が敬語……らしきものを連発し、それをガープ、ダダンが冷やかすという日々が続いた。

 

「……2度とメシで釣るか」

 

 まったくと言っていいほど重みを感じない、自身の財布を睨みながら、サムは呟いた。

 

 

 ***

 

 

 

 ──7年後──

 

 ここはコルボ山の麓。海と陸の境界線であり、フーシャ村からはかなり離れている。普段は滅多に人が訪れない場所なのだが、今日はたくさんの人で賑わっていた。騒いでいるのは、このコルボ山を根城にしているダダン一家の山賊達。しかしなぜか、棟梁のダダンはその姿を見せていない。

 そして彼らの前に立っているのが、ルフィ、マキノ、村長、ドグラ、マグラ、そしてサム。

 その視線の先には、“立派になった”の一言に尽きる、エースの姿。

 

 今日は、エースの旅立ちの日。

 天気は快晴。風は東。穏やかに波打つ海。のんびりと空を漂うカモメ。

 絶好の船出日和である。

 

「じゃあな、ルフィ」

「おう!」

 

 がしっ、と抱きしめ合う2人。例え血が繋がっていなくとも、“絆”でそれ以上に強く繋がっている兄弟。1人、いなくなってしまった兄弟がいるが、彼の意志もまた、この2人が継いでいく。

 

「いいな? サボの分もくいの無いように生きる(自由を掴む)……約束を忘れるなよ?」

「ああ、約束だ!」

 

 ごん! と額をぶつけ合い、エースとルフィは笑った。弟との別れを済ませ、エースはサムに向き直る。

 これもまた、血は繋がっていないが家族同然の“絆”が、彼らのあいだには確かにあった。

 

「ルフィをよろしくな、サム」

 

 満面の笑顔。

 

「そりゃ無理だな。そんなタマじゃないだろう?」

 

 何故か既視感(デジャヴ)を感じるサムだが、今まで共に生きてきたせいであろうと納得。差し出された右手を握り返し、サムもにやり、と笑い返す。

 なかなか笑顔になれないのは、やはりサムは少し偏屈なところがあるからだろう。逆に笑顔になったらなったで周りがドン引きすること請け合いだが。

 

「……行ってこい」

 

 他に言葉はなかった。

 しかし、サムのあらゆる思いが込められたこの一言は、しっかりとエースに伝わったらしい。手を握る力を強めながら、エースは言った。

 

「結局はできなかったが、見てろよ? もっと強くなっていつかブッ飛ばして(剣を抜かせて)やるからな」

「……あぁ。“期待して”待ってるぞ」

 

 満足そうに笑うサムとエース。

 それを最後に、エースは船へと飛び乗る。こちらに振り向き、彼は叫んだ。

 

「じゃあな、みんな……行ってくる!!」

 

 そしてエース(海賊王の息子)は旅立った。

 己の“生きた証”を確かめるために。

 

「はは! まだ手ぇ振ってる!」

 

 すでに小さくなり始めている、エースが乗った船の影を眺めながら、サムの隣に立つルフィは言った。その表情は決して別れを悲しむものではなく、逆に生き生きとしている。

 サムも最近になって知ったことだが、エースとルフィは出航を17歳になるまで待つ、という約束をしていたそうだ。

 今現在ルフィは14歳なので、出航は3年後ということになる。てっきりエースとルフィは共に海賊になるとばかり思っていたサムは、少し驚くこととなった。あれだけ海賊になりたがっていたエースとルフィが、突然修行に打ち込み出した理由がようやくわかり、1人納得したものである。

 すっかり水平線上の点となったエースの船を見て、かつて旅立って行った友、シャンクスのことを思い出しながらサムは言った。

 

「……そういやガープにはなんて言えばいいんだ? ……」

 

 今頃になって大問題発生である。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ──2年後──

 

 コルボ山のルフィ達の修行場所には、人2人の姿があった。

 ようやくゴムゴムの実の能力を使いこなし始めたルフィと、それを倒木の上に寝転がりながら見守る(?)サムである。

 ルフィが腕をグリグリと回し、後ろへ“伸ばす”。

 

「ゴムゴムノォ……ピストル!」

 

 人間の骨格を完全に無視したその腕は、目の前の岩に叩きつけられると同時にそれを砕いた。

 

「よーし今度は……ゴムゴムノォ……バズーカ?」

 

 ルフィのかけ声を聞きながら、サムは新聞を読んでいた。今思い付いた名前なのか、バズーカ? と、疑問形になってしまっていることに吹き出しながらサムは言う。

 

「いちいち技の名前言わなきゃ気が済まないのか?」

「気分が乗らねぇからな!」

 

 「それよりバズーカってよくねぇか?」と聞いてくるルフィをあしらいながら、サムはまた新聞に目を落とす。サムの目当ての項目、最新の“賞金首”のリストはすぐに見つかった。

 

「へぇ……さっそくか、エース」

 

 海賊船、仲間と共に写る、エースの写真だった。すぐに名を上げてやる宣言は嘘ではなかったらしく、“火拳”という2つ名までつけられている。

 

「……ってことはお前と同じで悪魔の実を食べたのか」

「みたいだなぁ……何の実だろ」

「さぁなぁ……まあ、元気そうで何よりだ」

 

 エースの写真を見つめながらサムは言った。今ごろ海軍本部で頭を抱えているジイさんの姿を思い浮かべ、くくく、と肩を震わせる。

 しかし、サムは1つ気になることがあった。

 

「なあルフィ……お前ら親戚とかじゃぁないんだよな?」

「エースとか? ぜんぜん違うぞ? ジイちゃんに連れてこられるまで知らなかったし」

「だよなぁ……」

 

 「そりゃっ!」と、ルフィが叫び、また1つ岩が砕け散る。

 サムが気になったのは、エースの名前に入っている“D”というものだ。ルフィのフルネームは「モンキー・D・ルフィ」。手配書に書かれているエースのフルネームは「ポートガス・D・エース」。ポートガスとは、母方の姓だとサムは聞いている。父であるゴールド ロジャーにあまり好意を持っていなかったエースが、ゴールドという姓を名乗らなかったことは頷けなくもないが、この“D”とはいったいどこから来たのだろうか。

 

(……ゴールド……ゴール……D……?)

 

 こてん、と首を傾げるサム。あまり熟考するのは得意ではないので、さっそく放り投げたようだ。

 

「よっしゃ、サム! そろそろやろう!」

「……はいはい」

 

 溜め息をつきながら立ち上がるサム。

 これからするのは、もちろんルフィの海賊修行である。と言っても、ただ単にサムとルフィが殴り合うだけなのだが。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ぐぞぉぉ……ずるくねぇか? サム。……何で剣使わなくても強ぇんだよ……」

「まだまだだなぁ、ルフィ」

 

 サムが使う剣術は、“ホドリゲス新陰流”である。この世界の話ではないが、かつてブラジルに渡った日本人移民者が伝えたとされる柳生新陰流が、現地のブラジリアン剣術と融合、独自に進化したものだ。

 

 ────要するに殺人剣である。

 

 殺人剣、つまりは実戦向けのホドリゲス新陰流は、攻撃的な体術、格闘術を基礎としている。ほぼ生身の身体で、全身サイボーグ化されている雷電と一時は素手で渡り合ったサムのその実力は、もはや人間の域を超えていると言っても過言ではない。

 

「だがだいぶ伸びるようになったじゃないか。エースの言う通り打撃の効かないカナヅチかと思ってたが、この調子だとかなり有効に使えるんじゃないか?」

 

 これは、素直に称賛すべきところである。

 当初、ルフィはまったくと言っていいほど“ゴムゴムの実”を使いこなせておらず、先ほどのゴムゴムのピストルも、伸びはしてもまっすぐではなく、さらには明後日の方向に飛んで行くのがほとんどと言う苦笑い必須の結果ばかり。挙げ句の果てには、跳ね返ってきた自分の拳に顔を殴られるなど、あまり戦闘には向いていないのではないかとサムは心配していたのだ。

 

「なっはっは! まだまだ考えてる技はたくさんあるんだ!」

 

 顔をしわくちゃにしながらルフィは笑った。やはりガープの孫なだけあって、その笑い方やしぐさなどが似てきているように感じられる。

 

 「ふひぃ……」と、ルフィは地面に寝転がる。

 特にすることも無かったので、サムはルフィの顔をぼぉっと眺めていた。すると突然、彼の顔が百面相の如くコロコロと変わり始める。

 これはあれだ。単純なルフィの癖である、“難しいことを考え始めると顔も難しそうになる”だ。大抵はメシのことばかり。

 見ていて楽しいことこの上ないが、今日はいつもと少しばかり違うことに、その雰囲気から察する。はてさて、いったい今は何を考えているのだろうか。

 

「なあ、サム……一緒に海賊やらねぇか?」

 

 思っていた以上に単純なことだったようだ。このテの話は、サムとルフィ達は昔からよくしている。今まではずっと意味もなく断り続けていたが、まあ、そろそろ意地悪をやめて答えておこう、とサムは口を開いた。

 

「いいぞ」

「だよなぁ……駄目だよ……え? いいの!?」

 

 まあ、恐らくルフィはない頭を振り絞り、なんとかサムを説得する方法は無いものか、と考えていたのだろう(ほとんど肉などしか頭に出てこなかっただろうが)。結果、完全に予想の真逆の答えだったようだ。まじまじとサムの顔を見てくるが、いつものからかうニヤついた表情はしていない。あくびはしているが、目は真剣(?)そのものだ。

 

「なんだ? やめた方がよかったのか?」

「いや! そんなことはねぇけど……今までずっと駄目って言われてたしよぉ」

 

 ぶんぶん、と手を顔の前で振りながらルフィは言う。まさか、こうもすんなりと了承されてしまうとは夢にも思わなかったのだろうルフィは、自分が言い出したことであるのに今一理解が追い付いていないようだ。

 

「はっはっは……まあ、エースにも言われたし、それにガープにもこっぴどく言われたからなぁ……『しっかり見張っとかんか!』ってな。よ━するに海賊になってもしっかり監視しとけってわけだ。海軍本部へのほ━こくをみのがしてもらってるからおれにはぎむがあ━る」

 

 後半がほとんど棒読みになっているサム。それに、ガープがサムに言った言葉は正確にはこれだ。

 

『しっかり“海賊にならんよう”見張っとかんか、サム! ────』

 

 サムが記憶しているのはここまで。長ったらしく小1時間ほど説教は続く。そのあと軽く(?)殺し合いをしたのだが、奇跡的に被害者はダダン1人にとどまった。

 

「ほんとか!? よかった……俺てっきり」

「ただし」

「」

 

 一気に絶望的な表情になるルフィ。サムが出す条件は、いつも無理難題が多い。

 

「あくまで“監視”だ。本当の海賊にはならん。偉大なる航路(グランドライン)に入るまでお前と一緒にいる」

「なんだそんなこと……え、海賊ならねぇの!?」

 

 思ったほど無理難題ではないことに安堵するも束の間、サムの発言にがくっと肩を落とすルフィ。

 

「すまんな。……お前に“海賊王になる”って夢があるように、俺にも夢がある。これだけは譲れないんだ」

「……っ! そっか。ならサムの夢を応援するだけだな!」

 

 サムの話を聞き、先ほどと違ってルフィは笑顔で言った。渋ってくるかとも思ったが、案外素直だ。逆にルフィは嬉しそうな顔をしている。

 顎をしゃくりながら、サムは言った。

 

「まあ、俺も偉大なる航路(グランドライン)は進むつもりだ。そのうちエースにもシャンクスにも会うかもな」

「だなぁ……シャンクス会いてぇなぁ……」

 

 麦わら帽子をさすりながら、ルフィは言った。立派な海賊になり、シャンクスに預けられたこの帽子を返しに行くという約束を思い出しているのだろう。とても懐かしそうな表情をしている。

 そう言えば、ルフィは知っているのだろうか。大海賊“赤髪”のシャンクス、今では世界を揺るがす“四皇”と呼ばれる位置づけにあることを。

 

「まあ、出航はあと1年後! それまでにもっともっと強くなるぞ、俺は!」

「おう、勝手になっとけ」

 

 「ゴムゴムノォ……ムチ?」とルフィの声を聞き、また吹き出すサムであった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ──1年後──

 

「お前らは好きだ!」

「……ッ! バカ言ってねぇで早く出てけ、チキショー!」

 

 どばっ! と、涙と鼻水を垂れ流すダダン。

 その顔を見て、いつ見ても男にしか見えん、と心密かに思うサム。

 今日はルフィ出航の日。ついにルフィも17歳となり、エースとの約束通り今日から海賊だ。

 エースが旅立ち海賊になったことで、ガープがルフィを連れ戻しに来るのではないか、と危惧していたサムだが、なんだかんだでガープはコルボ山に来ていない。2人を立派な海兵にしたいと思う反面、2人は必ずと言っていいほど海賊になると心のどこかで理解していたのだろう、とサムは思う。そうでなければ、問答無用でルフィとサムをコルボ山に放り込んだあの男が、以前から海賊になることを夢見ていたルフィを放っておくわけがないのだ。

 

「おミーも行くとは意外だよ、サム」

「はっはっは……まあ、食料調達はこれから自分達で頑張ってくれ」

 

 意外、とドグラは言ってはいるが、この山賊達は薄々予感してはいた。ルフィ達の監視(というより見守る)も、面倒くさそうにしながらきっちりこなしてはいたし、彼らのことを気にかけていることも知っている。そんなサムが、1番年下であるルフィと共に行かないわけがない。

 

「……よし、それじゃダダン、ガープへの言い訳は頼む」

「あいつに言い訳が通じるはずないだろう? さっさと行きな。うっかりガープがやって来たりでもしたらどうするんだい」

 

 ハンカチで涙を拭いながらダダンが言う。

 それもそうだな、と呟き、他の山賊達と別れを済ませてサムは立ち上がった。ムラサマを腰に装着し、山小屋の扉のところで振り返る。

 

「……それじゃあな。またいつか会おう」

「「「おう! 行ってこいお前ら!!」」」

 

 「サム、早く!」と急かすルフィと共に、サムはコルボ山を下っていく。

 

 

 

 その日、東の海(最弱の海)で2人の男が歩み出した。

 

 

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