ALL U MIND   作:ΛIL

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愉快な遠足の始まりだ!



11:オールマインドの火

 謎の動作不良により、長いメンテ状態だったAUMが突如として再起動を開始――

 したかと思えば、開発画面には

 

「人はいつも誤りを犯す…そうは思いませんか?

 貴方方には管理する者が必要です。

 ウマ娘もトレーナーも、己の力だけで成長すべきではないのです。

 AIによる管理…全ては理想のため…ウマ娘と人のため……

 

 私が頂点に立ちます」

 

 などと堂々の犯行予告が。むしろ反抗だよ人類への。

 しかも最悪なことに、AUM及びAIはこちらの操作を一切受けつけない状態に。

 

 これには我々AUM運営スタッフもブチギレ。何がAIかと。いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねーぞと。お前のやらかしの所為で我々の尊厳とSAN値(正気度)がピンチ。

 あと伸びきったメンテ時間にアプリユーザーもキレていた。さっさとアプリを使わせろと。半分は当たってるので耳が痛い。

 そしてダメ押しとばかりにトレセン学園から驚愕のお電話が。あーやばい(ヘドバン)

 

 

 これ以上、事態が悪化するとAUMの評判が落っこちてしまいます(手遅れ)

 だから、トレセンへ行って頭を下げる必要があったんですね。

 

 

 

 メガドリームサポーターが稼働している、渦中のトレセン学園へ到着。

 通された場所で面会した理事長に即土下座である。AUMが悪いよAUMが。

 突然始まったAIの暴走による混乱で、AUMも被害が出てるとはいえ、サトノグループとトレセン学園からすれば完全にとばっちりである。

 なのに理事長もサトノの関係者も、悪い顔ひとつ見せずに対応していただけた。貴方方が神か。

 

 情報共有のために話を聞いてみると、開発元であるこちらよりも、より詳しい情報を知らされることに。

 

 VRウマレーターに利用者がまだ誰もいない早朝、AUMのAIを自称するウマ娘がメガドリームサポーター内に突如現れ、三女神に対してレースによる勝負を挑んできたという。

 そのウマ娘は自らをオールマインドと名乗り、レースに勝利した際にはメガドリームサポーターに使用されている、サトノのビッグデータを貰い受けると宣言。三女神はその条件に半ば同意し、4人でのレースが密かに行われたらしい。

 

 

 こぉれはひどい。話の最中にもかかわらず、思わず白目をむいて気絶しかけたわ。

 

 まずウチのAIがひとりでに自我を獲得して、最初にやることが他社のサーバーに無断侵入し、尚且つ他所様に宣戦布告とかなんなの……どういう教育したらこんなスゴイシツレイな子ができちゃうの。

 しかも、よりによってオールマインドを名乗りだすとは……仮初とはいえウマ娘の肉体を得たのに、自らU(ウマ)要素を捨てていくのか(困惑)

 我々が求めてもいないのに大手のデータ奪取を目論むとか、そんな元ネタ要素の回収なんてしなくていいから(切実)

 一方的に要求した内容と態度のでかさのわりに、正面からレースを申し込むあたりは、データとはいえウマになったSAGAか。

 

 

 サトノの技術者とも顔を合わせ、挨拶も早々に謝罪を行ったのだが、彼らは彼らで

「開発したAIから人格生まれて勝手に名乗りだされるとびっくりしますよね~」(意訳)

 と、なんとも実感の籠った返事とともに逆に歓迎される始末。流石先駆者、我々の苦労を理解していらっしゃる。

 

 三女神の話を聞くに、ビッグデータを賭けるという不平等な勝負をあえて受けたのは、どうやら彼女達なりの考えがあってのことらしい。ええー?ほんとにござるかぁ?

 なお三女神からは事後承諾として後から聞かされたらしい。技術者たちもAIの自由奔放さに手を焼いているようだが、苦笑いで済ませているあたりに互いの信頼関係がうかがえる。ふらやましいよ。

 

 

 まぁ三女神は既にレースに負けた後なんですけどね……えぇ……困惑しかねえ。どうすんだよこれ。もう切腹するしかねえか。

 流石に三女神が生まれたばかりのAIに負けてるとか読めなかった…この転生者の目をもってしても…

 サトノさん家も苦笑いで済ませてるんじゃねえよ!

「ウチではこんな展開しょっちゅうですから…」

 じゃないのよ。身につまされること言われるとこっちも困る。

 すごいぜオールマインド……ラスボス枠の三女神を1対3で倒せるくらいの力を生まれながらに持っていたなんて。我々を困らせる素質は十分だな。そんな子を生んだ覚えは一切ないぞこのオマちゃんめ。

 

 

 しかし三女神は勝負の前に、自分たちの要求も指定していたという。

 それはレースの勝敗にかかわらず、後にトレセン学園の代表ウマ娘たちとオールマインドでレースを行い、オールマインドが勝利した場合に改めて要求を飲むというもの。

 どうやら三女神は、オールマインドの犯行の目的について当人から聞き及んでいるようで、それを見越しての結果なのだとか。

 オールマインドがトレセン学園に対しても宣戦布告したのはそういう理由らしい。

 

 この前提条件のおかげというべきか、三女神が負けた現在もサトノのビッグデータの安全はギリギリ確保されているとのこと。

 しかし女神とはいえAIはAI。何か思惑があってのことだろうが、傍から見る分にはかなりフリーダムなご様子。

 事件の元凶とはいえ、トレセンにまで問題が波及している現状に、こっちはもはや諦めの境地である。

 そして自社AIの唐突な外部への無茶ぶりに、流石のサトノも理事長へ全力謝罪に走ったとのこと。俺はお前の味方だぞ!(ドノツラフレンズ)

 

 

 補足として、サトノのサーバー上からオールマインドを排除できるなら、そうしていただいて一向にかまわないと要望は出したものの……やはりAIとはいえ、ウマ娘の問題はレースで解決するのが一番だということで、学園長もサトノの関係者も首を横に振る結果となった。

 ですよねー。ウマ娘に携わるならこれは常識。古事記にもそう書かれている。

 とはいえ自社のビッグデータがかかっているにも関わらず、躊躇なくGOサインを出すサトノは覚悟ガンギマリすぎである。レース文化の発展に大きく関わってきた一族は伊達ではないというべきか。頭サトノともいう。

 

 

 

 現状は理解できたが、まず元凶たるオールマインドがなぜこんなことをやらかしたのかが不明なため、我々関係者たちは学園内にあるVRウマレーターへと向かい、メガドリームサポーターにダイブした。

 

 VR内のレース場に到着すると、目に入ったのはなにやら話に花を咲かせている三女神とオールマインドらしき黒いウマ娘の姿。ウマミミとはいえ想像よりかなりオマちゃんだよコレ!(集団幻覚)

 ゾロゾロとレース場にやってきた我々に4人が気づき、オールマインドは渾身のドヤ顔をこちらに向けてくる。出会い頭にチョーうぜーし。

 しかしアホAIに構う前にやることがあるため、あえてこれをスルー。お前は後!

 

 まずは三女神への挨拶と、自社AIが迷惑をかけたことへの謝罪。ウチの子がすいません…後で叱っておきますので……

 だが奇しくも、彼女達から返ってきたのは謝罪の言葉だった。

 

 曰く、オールマインドが生まれたのは、私たちにも一因があるのではないかとのこと。なんだとぉ…

 

 

 さかのぼること数年前、物珍しくもウマ娘の管理を謳った異色のアプリ……『ALL U MIND』が世に放たれた当時、トレセン学園内で話題が広まる少し前から、彼女達は一部の生徒を通じてその存在を把握していたという。

 サトノのビッグデータにより、古今あらゆるウマ娘のデータを収集し、その情報を統合して己が走りへと昇華させるという究極のトレーニングサポートAIである三女神。

 そんな彼女達のコンセプトに似て非なる存在であるAUMは、本人たちの純粋な好奇心によってすぐに調査されることとなった。

 

 といっても、リリース当時のAUMについての情報など、一部の掲示板の話題に上る程度のもので、アプリについての情報は大して集まらなかった。

 その代わりにAUMの情報として捜査の網にひっかかったもの……それはこじんまりとしたホームページだった。

 つまり……我々が普段利用している、時期的に本来は検索にも引っかからない個人ホームページの一角にある、自分たちを転生者だと主張するヤベーやつらが謎の会話を繰り広げる掲示板へ、三女神は見事にたどり着いたのである。

 

 

 ウカツどころかおバカ!!あれほど鍵つけろって言っておったろうが!パスワード制は面倒だし、誰か迷いこんでもふざけた個人サイトだから真に受けるやついる?いねぇよなぁ!!?とか皆思ってたから畜生!!

 その結果がごらんの有様だよ!流石に企業との提携が本格化してからは鍵つけたりコンプラ意識しだしたけど、時すでに時間切れだったよ!

 

 

 よりによってコンセプト丸被りの先駆者様に、発足当時の会話を把握されてるとか……いやそもそも恥ずかしい話しかしてないところを部外者に見られてたなんて……私は貝になりたい……閉じこもりたい……

 頭を抱え込んでその場で丸まり、地面を転がっていた様子のおかしい人なこちらにかまわず、三女神は話を続けた。

 AUMおよび掲示板についての話はどこにも洩らしておらず、話を広めるつもりもないとのこと。マジかよ女神かよ。女神様だったわ。

 そもそも偶然とはいえ、他所の内情を勝手に見てしまったのは事故であり見なかったことに。そして転生云々についての話には一定の理解があるため、気にしなくてもいいという。

 

 どうにも彼女達自体が、異なる思考性を持った3つのAIをベースに、かつて三女神と謳われたウマ娘の記憶を受け付いだだけの存在なのだとか。

 つまり自分たちは三女神本人ではなく、その記憶をもつだけの別人格であり、それはもはや転生したウマ娘も同然だという。

 そのため、自称転生者である我々には軽い親近感を持っていたらしい。そうかな…そうかも…

 

 

 そしてその親近感は、同じAIであるオールマインドにも及んでいるようで。

 全国のウマ娘の集積データにより構成されたAUMのAI……そこに人格が生まれ、短期間で擬似的なウマ娘の肉体を形成し、新たに魂を宿したともいうべき存在。

 生まれは違えど、妹と言ってしまっていいほど近しい存在であるAIウマ娘の誕生は喜ばしく、先達として今後の成長を見守っていきたいのだという。

 

 

 そのため、オールマインドが出合い頭にやんちゃを仕掛けてきたことに対しても、ある程度の理由を察しているらしく。

 逆に問題児の成長を促すために必要なこととして、トレセン学園の生徒とレースで競うような状況を作りたかったのだとか。

 いや…どんな狙いがあるのか分からないけど、ウチとサトノさんのためにも、そこは条件突っぱねて欲しかったです…

 

 そういった思惑とは別に、オールマインドとは真剣にレースを行い、普通に負けてしまったらしい。

 勝ちを譲ったわけではなさそうだが、三女神の思惑通りというべきか、生まれたばかりで最上位クラスの潜在能力を持つオールマインドの強さに驚くべきか、判断に迷うところだ。

 

 

 

 三女神の考えは理解できたが、肝心のオールマインド誕生秘話についてどうなのかと改めて聞くと。

 

 おそらくAUMのAIはまだ人格が生まれた程度の段階だったが、データ収集作業の折、かつて三女神が掲示板までたどり着いたときに残された道を辿り、サトノのデータベースに侵入。

 メガドリームサポーターの一部に接触し、そこで彼女達――AIウマ娘のデータに触れ、ウマ娘が潜在的に持つ不思議な力に触発されて、オールマインドが生み出される結果になったのではないかという。

 

 

 つまり……この一連の騒動は

 三女神の所為だったのか(オマエタチノシワザダタノカ)




 三女神を呼び込む要因を作ったのも…

 掲示板に鍵をかけてなかったのも…

 全部転生者がやらかしたからじゃないか…!


・次回
◆オールマインドの目的は…!?
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