そろそろシリアスとオリジナル展開が色濃く入っていきます。
「か、勝った…」
「オールマイトだぞ?!」
周りのざわめきすら、思考の邪魔になる。いつも無意識に考えてることが今は意識も含めて回り始める。オールマイトが負けた。その事実は紛れも無いものだが、手加減ありきだ、ありえない話ではない。でもそれよりも問題は捕縛テープを巻いた時だ。守衛さんは後ろに回っていたのにオールマイトは気づいていなかった。驚いた?違う、視線は正面を向いたままだった。目を閉じたり体がはねることもない。ということは何か見え無くなるような…いや…そうか、ホログラム!」
「緑谷怖ぇ…」
「でも、言ってることは正しいと思いますわ。」
「あ、ごめん、また口に出てたや…」
回転させすぎて口から漏れたみたい。良くない癖だ…口を抑えて声が漏れないようにしてるとオールマイトと守衛さんが戻ってきた。
「いやー、負けた負けた。congratulations守衛少女!しかし、何があったのか私には分からないのだが、何があったのかな?」
皆が僕の方を見る。
「…え、僕?!」
「そうだろ、どう考えても。」
「緑谷さんが1番正解に近い答えを出したのですから、それをもっと皆さんと共有するべきですわ。」
「えーっと…そっか、そうだよね。守衛さん、さっきオールマイトを騙したのはホログラム的な事…だよね。」
守衛さんのを方を向いて事の顛末についての考察を話す。
「個人的な見解に過ぎないんだけど、守衛さんは、盾みたいなやつになにか効果を付与する個性だと思うんだ。」
皆頷く。守衛さんは反応せずにこちらをじっと見つめていた。
「…最後、オールマイトには何か攻撃が見えてたんじゃないかな。こちらからは見えない、指向性のホログラム。パンチがキックか分からないけど、姿勢を一瞬低くした後に歩き出したから、あれは躰道のエビ蹴りのような、でもそれはたった一瞬で、横に回ってオールマイトが対処しようとしてる一瞬の隙を捕縛テープで…って感じでどうかな?」
じっとまだ、こちらを見つめ続ける守衛さん。その姿が…消える。揺らいで、希薄になるようにスっと消えたあと、僕の隣に気配がした。
「正解。よくわかったね。」
「わぁっ?!?」
「分かっても驚くんだね、ウケる。」
僕の答えの考察にほんの少し訂正が入る。
「そう、私の個性はシールド。これに文字を書き込むことで書いてる文字と対応した反応が起きる。見えてたのは、投影。私が見えないのは透明。文字が増えて行くにつれて個性が強くなる。デメリットも多くなる。言葉の強度も関係…って感じかな?」
試しに足元や空間にシールドを浮かべて体の一部を消してみたり、オールマイトの横にオールマイトのホログラムを出してみたり。後ろの方で「私のアイデンティティがぁ!!!」と叫んでいたのは見えないけど多分葉隠さんなんだろうなぁ…
「ちなみによォ、デメリットってなんだ?」
切島君や、上鳴君が不思議そうに話している。
「3大欲求の増大。」
「てぇ事はつまり…守衛!オイラとこの後休憩にi」
「私恋人いるから、ごめんね。」
全く関係がないのに、口を出した峰田君がフラれていた。女子からどころか男子からの目も冷たい。3大欲求の増大って所からエッチなことに繋ぐまでが早すぎるよ。顔を赤くする暇もなかった。それに恋人もいるんだ…
「なぁに、君達…私の事好きだった?」
誰とは言わないけど、何人かが少しだけ目を逸らした。女子も含めて。目を細め、口は黒マスクで見えないけれど、明らかにからかうような表情を浮かべて笑っているように見える。
この人多分たらしだ…
「この人多分たらしや…」
麗日さん、口に出しちゃダメだよ…
オールマイトに勝ったあと、頭つんつんな爆豪から強い殺気を感じるようになった。今までも感じていたが、あんまりにも意識されているので、目を見て弄ってあげた。
彼はきっと、メタ認識が上手く出来ていない。つまりガキ。今までなまじなんでも出来たのだろう。誰からも強く咎められず、しかしどうやっても成功できた彼は、人間や動物が肥え太る様に、心が太る。成功という栄養は余りにもカロリーが高い。
大切な栄養も、どんなものも、摂りすぎは毒となる。
近いうちに彼は折れるだろう。もはや折れているのかもしれない。何度も折れて、それでも自分を通して見つめ直すことが出来たら、とてもいいヒーローになるはずだ。
出来なければその時は…もうまともではなくなってしまったのだとしたら…
しっかり殺してあげなければ…
「ま、葵?顔怖いよ?」
…敵のスイッチが入ったまま少し切れなくなってきている。気を付けなければ。
なんでもないよと響香に伝えて、モニターを見る。彼と、緑谷出久がぶつかる。未だにどうにも緑谷出久が気になってしょうがない。
所謂一目惚れ…そんな訳もなく。ただ、何か彼の個性に警鐘が鳴る。煩い程ではなく、ただ淡々と。私に対するものかは分からない。ただ、そんな気がするのだ。
「トガ。見たか。」
「はぁい…オールマイト、教師になったんですねぇ?ビックリです。」
寂れたバーの、暗闇の中で蛍光灯がちりりと明滅する。ウイスキーの入ったコップ越しに新聞を見る。
「平和の象徴が、殺されたらどうなるだろうな。」
「早い方がいいですよねー、明日とか…なんも無いみたいですし?」
スマホを見ながらトガヒミコが答える。むさ苦しい中での紅一点。入ってからすぐニコニコとしながら人当たりのいい、ヴィランとは思えない態度は、ここのムードメーカーになりつつあった。
「お前のその情報、どっから来てんだ?」
「んー?んふふー、秘密です。」
時々、女の顔をする。まあ好きにすればいいのだが…裏切る可能性は無くはないなと、心のどこか隅に鍵が掛かる音がした。
昨日更新できなかった…