敵連合と名乗った彼らの目的はオールマイトを殺すこと。狡猾で、それは即ち計画的で効果的な手段を持っているということだ。まあ、生徒、私達を殺すことなのだが。
相澤は捕縛布をたなびかせ群衆に突撃していく。悪意を持つ人間には、覚悟は無い代わりに全てが空っぽだ。くだらない事だが、なんの信念もないというのは時に鋭い凶器になる。
各々の持つ武器を一斉に振りかぶるが、捕縛布を引っ掛けた敵を振り回し一掃する。拳に反応し身体をひねりながら新たな捕縛布で敵一体を引き寄せ引敲く。効率的に効果的に相手を潰すその動きはヒーローの写りを気にした動きよりも遥かに戦闘に重きを置いていた。
「つ、強い…!」
「…なるほどな。ゴーグルで視線を隠し、誰の個性が消されてるか分からない。集団戦の悪いとこだ…肉弾戦も強い。」
有象無象では、歯が立たない。卵を殺すには十分だが。
飯田は既に走り出した。各々出来ることを画策している。戦闘向きでない葉隠を守るように切島は立ちはだかる。上鳴は通信を試み、同時に八百万は無線機を作り出した。爆豪は手に汗を貯め、何時でも突っ込むだろう。
魔の手は見えない。光よりも早く弱みにつけこむ。
「させませんよ。生徒となれど、優秀な金の卵。」
突然目の前に現れた霧を纏った男に爆撃を食らわせる爆豪。轟は氷で壁を作ろうとしている。
「おおっと…危ないですね…やはり、散らして嬲り殺しにするのが良い…」
闇で、包まれる。これも、ヒミコの計画のうちなのだろうか。
目を開けると市街地の開けた路地。ガラス片の落ちているそこに、10は超える有象無象の敵と、少し高い街灯の上にヒミコが立っていた。
「じゃ、殺っちゃってください。」
私は極彩色の槍で目に見えた全てを貫いた。呼吸するひまも与えず、ただ確実に消すために。声を上げることすら出来ずに沈んで行った骸の上でヒミコは嬉しそうに微笑んでいた。
「葵ちゃん!」
「おっと…まさかほんとに来るなんて思って無かったよ。」
飛び降りてきたヒミコを抱きとめ頬を撫でる。嬉しそうに胸に顔を埋めて擦り付く。猫みたいに喉を鳴らしているので暫く撫でてやる。
「大体5、6分ぐらい時間あると思うのです。えへへ〜…」
「よしよし…んで、ほんとにオールマイト殺すの?」
ヒミコは鼻で笑って答える。
「そんな訳ないじゃないですか〜。敵のボスさん曰く、れべるあっぷ…の為らしいですよ?」
ああ、なるほどと納得する。つまりあの手の…「死柄木弔くんです。」…死柄木弔の経験のための挫折か。
「一応秘策もあるみたいで…なんて言ったかな…カァイクなかったので…うむむ…なんかオールマイトみたいな力と物理吸収をもった人造人間みたいなやつ…がいるみたいです!」
ヒミコを横抱きにして、拒絶を椅子状にして底に腰掛ける。膝に乗せて撫でながら話を聞く。
「それでこれからどうするの?」
「えっとー、無傷で帰られても怪しまれるので、葵ちゃんのことちょっと刺したりちうちうして帰ろうかなと。」
ナイフをシースから引き抜きお腹に刺しながら首を噛まれて血を吸われる。何時もよりも少し多く、味合われながら吸われるものでゾクゾクする。ゆっくり背中を撫でながら満足するまで待つ。
刺さったナイフを時々ぐりぐりして反応を楽しんでるようで、痛みを拒絶しているとはいえどうにも気持ちが悪い。酷い生理の時の様だ。身体が勝手に跳ねる。
「がふっ…ヒミコ、帰ったら覚悟してよね。」
「はーい…んー…♡」
口からのぼってきた血が吹き出る。これはこの場で倒れていた方が良さそうだ。
「あ、それ美味しそ…んっ…♡」
口の中の血を貪られる。舌を絡めれば、舌を噛んでまだ血を欲しているようだ。ゆっくり手を繋いで指を絡める。ヒミコの特徴的な犬歯を舐めれば擽ったそうに身をよじる。
何処かで何か高エネルギーなものがぶつかる音がした。ヒミコはそんなのそっちのけでまだ貪っているので背中をぽんぽんと叩いてやる。
「ぷはっ…んぁー…もうオールマイト来たのです…?」
「げほっ…多分ね…帰る手段あるの?」
「んー…まあ向こうに合流した方が疑われないですかね…じゃあね葵ちゃん、愛してるよ…」
「私も、愛してるよ。」
名残惜しそうにキスをしたヒミコは走り去っていった。さて…どうするか。とりあえず有象無象は消すとして、私は壁にでももたれかかって誰かが私を見つけるのを待っていようかな。
留守電ではなく繋がらないというのは、何かおかしい。
街で救助活動をしたあとちょっとばかり(かなり)遅刻をしてしまった私は校長室で校長先生にお茶を入れてもらっていた。可愛い。
校長先生は話し出すと長いが、その教師論を聞く。3件の事件を解決したが、それはつまり教職を疎かにしていることだと、叱られてしまった。
「君のさ、怪我と後遺症のヒーロー活動の限界というのも考えものさ。後継者の育成も大事、ヒーロー活動も大事。それをどちらも悟られることのないように私が教職を進めたんだぜ?もう少し腰を落ち着けてもいいんじゃないかな。」
「仰る通りです…はい…。」
「まずヒーローと教師という関係の脆弱性についてだね…」
ティーカップを高らかに持ち上げ話始めようとするところに扉の叩く音が響き渡る。
「失礼します!!!」
私は急いで腹筋に力を入れてマッスルフォームになる。残り10分程度と言ったところか。
「大変です!1-aの訓練中に敵の大群が現れました!!!」
「なんだって?!」
「無線封鎖され、飯田天哉くんが走って伝えに来てくれました。」
なんという事だ。私が教職を疎かにしていなければ今頃私は…
「オールマイト、行けるね?」
「…はい、もちろんです。」
私は、私は……何を成すべきなのでしょう、お師匠様。正しい道を教えてください…!
イレイザーヘッドの肘は崩され、水難ゾーンで顔に手を当てられた蛙吹。力を振り絞り死柄木にSMASHを叩き込もうとするが、脳無に阻まれる。絶体絶命。
ギリギリ死柄木の崩壊が発動する前にイレイザーヘッドの個性で消すことに成功したが、脳無によって地面にたたきつけられ意識を失う。
(やばい、効いてない。まずいまずいまずい。力の制御が上手くいったことを喜んでる場合じゃない。)
脳無の腹に突き刺さることも無く乗っただけの拳は、いとも容易く掴まれる。蛙吹の言葉が脳裏をよぎる。
(「殺せる算段整ってるから、連中こんな無茶をしてるんじゃないの?」)
ああそうだ、これは、対オールマイト用の算段の最たるそれ。なんだ、力が強いだけじゃダメだ。早い訳でもない……物理…無効?!
イレイザーヘッドすら沈んだ今、できることは無い。だが諦めることなかれ、どうすればいい。
「いい動きするなぁ…スマッシュってオールマイトのフォロワーかい…?でも残念、君はオールマイトじゃない。」
筋肉の繊維が収縮する。自分を葬ろうとする脳無の腕が視界を占める。死の恐怖を感じることも無くゆっくり動く世界の中で、人体の構造を見る。
それは即ち卵ではなく、体の構造だ。個性とは、自分そのものである。後から追加された身体機能。オールマイトはなんて言った?ケツの穴引き締める…?心の中で叫ぶ…?
ああなんだ…そんなの、必殺技を出すための、力を込める前準備じゃないか。
雷電迸る。たった一瞬。魔の手と似て勇気もまた、光よりも早い。身体を個性が走る。卵を電子レンジに入れる?馬鹿なことを考えたものだ。当たり前のように意識せず使えて当然のもの。
脳無の、対オールマイト用に造られたであろうその力にほんのコンマ1秒程ではあるが緑谷出久は理解した。自分の個性の何たるかを。力強く自分を振り回そうとでもしたのだろうその腕に拮抗…いやそれよりも強く引き寄せた。
1秒。死ぬかもしれないと思った時人間は遥かにゆっくり流れる曖昧な時間を過ごす。短い1秒だが、されど1秒。
平和の象徴が到着するまでの残された時間。正義と悪がぶつかるまで後0秒。
「もう大丈夫…私が…来た…っ!」
「あー…コンテニューだ。」
主人公活躍させるかヒミコが活躍するか迷ってこうなりました。皆微強化入ってますので、そこら辺もおいおい書きます。