復讐少女は拒絶する。   作:3m6ry0

3 / 19
最近メンヘラを脱したと思ってたんですけど、これ書いてると心の中のメンヘラが叫ぶんです。だから書きます。


渡我被身子の原点

心優しき殺人鬼。底抜けた明るさと、沈む様な闇の混同。それが渡我被身子という女だった。

 

ドイツの犯罪学者ヘンティッヒは殺人を5つに分類した。

 

 

1.利欲殺人

強盗殺人が典型例。金品を奪うために行う殺人で誘拐殺人も含まれる。殺人目的ではない。

 

2.隠蔽殺人

 

口封じのための殺人。犯罪行為を目撃されて口封じのために殺す。共犯者の殺害、レイプ被害者の殺害も含まれる。「バレたらやばい」「警察につかまりたくない」という心理で殺人を起こすパターン。

 

3.葛藤殺人

 

「怨恨」や「痴情のもつれ」など憎しみや嫉妬などの精神的葛藤が原因となる殺人。親密な人間関係の間で起こることが多い。これまで暴言を吐かれ続け、かっとなって殺したり、「これ以上は耐えられない。許せない」という心理で殺人を犯してしまう。

 

4.性欲殺人

 

性的欲求を満たすために殺す。レイプして殺すまでが性行為の代償となっている。レイプし人を殺すのが愉快、興奮する心理で犯行に及ぶ。

 

5.無定型群

 

上記の1から4に当てはまらない殺人。政治犯による犯罪など。

 

渡我被身子は4番と5番の混合であった。ただし、ここが個性蔓延る世界だという前提条件を忘れてはならない。個性とは時に呪いとなる。

 

個性を使えば気持ち悪くなる、欲が強くなる、痛くなる、熱を持つ…強大な力には当たり前のように、そして呪縛のようにデメリットが絡みつく。

 

渡我被身子にとって、それがたまたま血を吸うという行為であったがために。それは1種の呪いとして作用する。

 

初めはなんだったか、愛着の湧いたものへ対する、血液への異常なまでの執着。それは個性が血を求めているからに過ぎないのだが、幼子には刺激が強すぎた。

 

ある種の中毒のように、目の前にある食事を何日間も見せ続けられてるだけかのような、強い欲。

 

脳はまともに回るはずもない。少しづつ歯車と共に止まっていく。

 

脳の腹側被蓋野から扁桃核に伸びている神経系が報酬系と呼ばれている。この刺激は更に前頭前野に信号が投射されています。報酬系を担っている神経伝達物質は、ドーパミンだ。

 

個性はそこを乗っ取った。

 

報酬系と言われるそれは、人間の行動を決定づける、本能に直結している。寝れば気持ちいい。ご飯を食べれば満足する。性行為をするのも、遊ぶのも、褒めてもらおうと努力するのも全ては、このドーパミンを得るためだ。

 

そんなもの、子供が耐えれるはずも無い。大人ですら耐えることがままならないのに。

 

渡我被身子はもう抑えが効かない。可愛いと思ったスズメへ手を伸ばし…深く牙を突き立てた。

 

手の中で温もりが、鼓動が少しづつ失われていく。舌へ濃厚で、甘美な、更には脳へ、電撃が走る。1秒間に100億近くの情報を送ることが出来るが、その全てが、目の前の血液の風味と、愛情が溢れて、チカチカした。

 

痺れたのだ、文字通り。惚れてしまったのだ、その全てに。

 

さて、常識とはなんだろうか?辞書を引いてみよう。

 

健全な一般人が共通に持っている、または持つべき、一般的な知識や思慮分別。

 

普通とはなんだろう。

 

かのアインシュタインは言った。「常識とは十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」

 

親は渡我被身子を叱責した。それはもう連日続く。寝る事も、食べる事も、血を吸うことも許されない。愛すことも、愛されることも二度と許されない。親の普通を。偏見を押し付けられた。

 

四角の箱に、丸いボールになりなさいと言ってどうにかなると思うか?もちろんならなかった。角を削り、その体積に合うように心を削りに削った。

 

ボロボロの渡我被身子の心を見て親は喜んだ。ああ普通だ。歪な、見かけだけの心を喜んでしまった。

 

中学の卒業式のある日。桜も散っていただろう。片想いという苦しく長かった、そして普通という、常識という、全てがどうでも良くなった。単に限界だったのだ。腹が減ったから飯を食う。喉が渇いたから水を飲む、愛してしまったから、傷つける。

 

片想いをカッターを通して同級生の男の子に伝えた。勿論、受け入れられるはずもなく、異端として拒絶。首を切って血を啜る。逐電。

 

渡我被身子は表舞台から姿を消した。

 

 

 

 

「…これが、私という人間です。」

「……」

「やっぱり…気持ち悪いですよね…」

 

私は目の前の新しい恋人に昔話をした。渡我被身子がトガヒミコになって、ヒミコになるまでの一生。

 

「やっぱ別に好きな人いたんだ…」

「へ?」

「…ふーんだ。」

「ま、待ってください、今そんな…」

「私とお揃いだね、いいじゃん。」

 

まともな事のなんとつまらないことか。彼女はそう言って、嫉妬を顕にした。中学の頃の名も知らぬ男の子に。

 

「でも他に好きな人がいたのは許さない。もう二度と私以外見ないで。」

「…はい…そうですよね…血も葵ちゃん以外からは吸いません。」

「スズメもダメだからね。」

「はい、もちろんです。」

 

悩んでたのが、バカみたい。

 

私は、この人の為に生きよう。この人の人生になろう。私が生きていけないように、この人を生きていけなくしよう。私で埋めてしまいたい。私は、貴方になりたい。

 

「ヒミコ愛してる。」

「私も愛してます。」

 

あの時の血よりも遥かにドーパミンが溢れる。セロトニンが、オキシトシンが、全身を巡る。

 

瞳孔が開く、心臓がバクバクする、子宮がキュンキュンする。

 

一瞬よりも遥かに短い電気信号が永遠に送られる。彼の血を吸った時よりも、彼女と触れ合った時の方が気が狂いそうになるぐらい満たされる。

 

渡我被身子は、トガヒミコは、幸せになるのです。これが私の原点。トガヒミコは…普通の女の子です。貴方が見てくれる限り、普通の、かぁいい、女の子。

 

私のヒーロー、私の恋人、私の人生、私の…私だけの…葵ちゃん。

 

一緒に何処までも堕ちよ…?更に混沌に…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。