復讐少女は拒絶する。   作:3m6ry0

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入試実技

太陽の光を反射した銀色の髪、表現出来ないほど美しい紫の瞳を持つその娘は、こんなにも目立つ姿なのに、いつの間にかそこにいた。気怠げに遠くの方を眺めているが、ぼーっとしてる訳では無いように思う。

 

恣意の表れか、周りよりも大人び、焦る様子もなく明らかに落ち着いている。すらっと伸びた足がスカートから覗く。腰に巻いたカーディガンと、黒いマスクがよく似合っていた。

 

どんな個性なんだろう、どんな子なんだろう、もし一緒に学校生活をおくれたら…

 

こちらを一瞥したその女子生徒(になる予定の子)は、開始の声より少しだけ早く動いた気がした。

 

「本番じゃよーいドンなんて優しいこたねぇぞ!もう走り出してるリスナーもいるんだぜ!!」

 

プレゼントマイクのその声が聞こえなくなるほどここにいる会場の人間は焦り、そして嫉妬する。

 

誰よりも早く駆け出した彼女の背を追うことになることを。

 

足の速さに自信がある?腕っ節に、頭脳に、自分のその個性に、誰しもが自信を持っていた。

 

プレゼントマイクが口を開く少し前、彼女は足元に六角形の板を作り出し前方に跳ねようと脚に力を入れていた。

 

少しだけ残ったその板には「跳」と書いてあった。

 

彼女の背を追って走り出した皆は、色んな方向に目を向け、そこにある強敵に各々挑んでいく。鋼鉄でできた仮想敵…ロボットをどうにかして倒す。

 

1本の道のように壊れた仮想敵の山の上で、あとから湧いてきたたそれを壊すのは高みにある彼女の力をこれでもかと分からせられた。

 

なんだ、ヒーローだなんて簡単だと、周りがスゴイといった自分のなんと凄くないことか。自分にあったのは誰かを守る力ではなく、誰かに褒められたいという自己顕示欲か?

 

勝てない、そんな気持ちがぐるぐると脳を回る。力強く立っていた足に力が入らなくなっている。気が回らない。仮想敵はそれでもこちらを潰そうと拳を振り下ろす。

 

(ああ…もう避けられない…流石に死なないよなぁ…でも…痛いだろうなぁ…)

「っと…大丈夫?顔青いよ。」

 

走馬灯もそこそこに、閉じようとしていた瞼の暗がりよりも早く目の前には「守」と書かれた青白い板と、誰よりも早く駆け出した彼女がいた。

 

「なんていうか…体調悪いなら無理しないでね。」

 

こちらを心配そうに覗き込みながら、増えた仮想敵の攻撃を「反」と書かれた板で跳ね返しているように見える。こちらを、覗き込みながら。大した大きさではなく、仮想敵の拳一個分ピッタリのそれで。

 

「ぁ…ああ…ありがとう。」

 

助けてくれて、ありがとう。ヒーローを諦めさせてくれて、ありがとう。

 

心の、折れた音がした。

 

 

 

 

 

 

ちょび髭のプロヒーローが、私の会場の試験官のようで、口を開く予備動作を見て個性で跳ねる板を作った。

 

運動エネルギーが0のとこから、跳ねないという事実を拒絶することで高く高く、そして速く跳躍する。

 

個性とはすなわち自分の身体能力であり、想像力であり、応用力である。そして知識は最も信頼出来る味方であり、それを蓄えない理由は無いわけで。もっともその上にヒミコがいるのは言うまでもないが…

 

見えないという事実は否定すれば存在を確認できるし、とはいえ死んだ事実を否定したところで甦らない。自分にできる範囲を確認する事は急を要するものだった。

 

跳躍板を何枚もだし、それを踏み込み誰よりも早く進む。こんなもの用意するだけ無駄だし、個性の上限に近づくからなんのアドバンテージもないが、いつか来るその日、ただ一瞬の隙の布石であるのは言うまでもない。

 

「斬」と書いた板を思いっきり仮想敵に投擲すると綺麗に真っ二つになる。ビルのような大きさの仮想敵は、ゲームに出てきそうなロボット型、電気信号で動くならもっと簡単に壊せる。

 

この受験の実技は簡単なもので、強そうな仮想敵を沢山倒せばいい。ポイントを稼げと言うだけ…では無いだろうなぁと、板を仮想敵にぶん投げて、新たな敵を探しながら考える。

 

どうせ誰かを助けてもポイントが入るだろうな、ヒーロー科だし。そう考えるとこのまま誰もいない方向に行くのは問題か…とはいえ人が多い方に行くのはそれはそれで…

 

来た道を戻ればいいかと、踵を返すとそこには尻を付き仮想敵に押し潰されそうになっている男子生徒を見つけた。

 

点数稼ぎになってもらおう。

 

少し大きめの板を出し、攻撃を拒絶する。守るとでも書いておけばそれっぽい。

 

その生徒は怯えと嫉妬と…そして挫折を瞳に浮かべこちらを見ていた。彼はきっとヒーローを志していたのだろう。努力してきたのだろう。名も知らぬ、個性の片隅も知らぬこの彼は、もう折れてしまった。

 

私のために折れてくれてありがとう。きっと誰かが君を必要とするだろう。ここでは、なかったみたいだが。

 

彼もまた、復讐をするのだろうか?

 

 

 

暫くは周りにいる人間の前に盾を出して守ってみたり、射撃系の個性のカバーをしてみたり、ありとあらゆる手助けをしてみた。どの助けがどれだけのポイントに繋がるか分からない以上、何でもかんでもしなくては行けないと思ったからだ。

 

「おいあんた!逃げろ!」

「なんだあれ…デカすぎだろ…」

 

そこには今までより遥かにでかい仮想敵の姿があった。あれを倒したらさぞポイントが貰えるだろう。

 

「あれ0ポイントだろ、逃げようぜ…」

 

貰えなかった。

 

まあいい、どちらにせよ助けになってポイント貰えるだろう。逃げていく人波に逆らって巨像へ向かう。

 

理解できないような視線を背中に感じるが、理解できないのはこちらの方。この程度の敵に勝てないで命を取りに来る悪に勝つつもりなのだろうか…?

 

それはそうとどうやってデカブツを吹き飛ばせば教員にプラスイメージを与えられるだろう。真っ二つにでもすれば印象与えられるのだろう。

 

その時、後ろから何かが飛び出していった。

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