素早く飛び出して行ったそれは、涙を貯め脚に力を込めて…飛んだ。土瀝青がひび割れるほどの力強い、だが曖昧な跳躍。
これ程の力があるのにも関わらず、どこか不安気な歪さを感じた。これでは、届かない。
目の前で落ちてトマトソースだらけになられても困るし、いいポイント稼ぎだ。手伝うことにしよう。
「それを踏め!!!」
「跳躍」と書いた、普段よりも強い拒絶の力を込めた板を、高く、しかし届かない彼の足元に出現させる。
困惑しながらもそれを踏み、もう一度空に舞う彼にはもう迷いがなかった。
なんだ、居るじゃないか、ヒーローっぽいの。
「SMASH!!!!!」
弾けるエネルギー、光と轟音。空気が震えて、首筋がちりちりと痛む。あれはいけないものだ。あんなものがふたつとあっていい物か!単なる超パワー?違う。何か条件付き?自己を破壊する代わりに力でも得るのか。
ボロボロになった腕を庇うことも出来ずに落ちてくる彼を眺めていた。自己犠牲こそヒーローの本質とは、オールマイトが言ったか…そんなものがあっていいはずがないのだ。
「…ぅぁああぁぁあ?!」
…まさか着地のことを考えてなかったのか?このままではほんとにトマトソースを拝むことになる。位置エネルギーさえ拒絶してしまえば問題は無いが、こんな所でシールドと個性を偽っている弊害が出るとは…止まるとでも書けばいいか。
そう考えているうちに、瓦礫に掴まり浮いた少女が彼をビンタし、ゆっくりと地面に落ちてきた。まあそういう個性なんだろうなぁと、さっさと近寄って応急処置に勤しむことにする。
「大丈夫?怪我…はしてるか…まあよくやるよ。」
「君は…?うっ…」
「私は…まあいいじゃん、それより君のその腕だよ、変色までして、そういう個性?」
「へ、あ、あはは、そ、そうなんだよ、ね!」
じょ、女子に話しかけられたPart2!!ギリギリ誤魔化しながら腕を庇う。彼女はさっき跳ねる何かを出して手助けしてくれた人なのだろう。同じ声だ…でもあの跳ねるのはどんな個性なんだろう…弾性があると言うよりかは上に打ち上げられた…?いやいや、下方向のベクトルが突然上に変わったような不思議な感覚が… 」
「それだけ喋れたら問題ないか…そっちの君は…個性に酔ったのかな。」
思考に耽ると言葉に出てしまう気持ち悪い癖を彼女はどうでもないことかのように流し、入試前にあった浮かす能力の女の子の背中を撫でている。
「どうせすぐ医療チームが来るだろうから、暫く安静にしてるといいよ。もう入試は終わるみたいだしね。」
彼女がそう言いきった時に、プレゼントマイクの終了の声が響いた。どうしよう…まだ1ポイントも取れてない……
「…なんで腕よりも終わった方に顔を青くしてるの…??」
不可解そうな声は、直ぐに思考の渦の外に流れていってしまった。
腕の骨をボッキボキにした彼は、終わったあとすぐ医療チームに連れて行かれた。入試が終わったことを伝えると顔を青くして焦っていたところを見ると、個性の反作用が故か、ポイントを稼げなかったように思える。
「ま…枠が空いたと思えばいいか…」
「あー、葵ちゃん、私と一緒にいるのに別の人のこと考えてますねー!!」
「ごめんごめん、入試のこと思い出しててさ。」
お怒りのヒミコの腰を強めに抱いて引き寄せ、背中をぽんぽんと軽く叩く。すぐにご機嫌に首を甘噛みし始めた。
「そういえば、合格発表は今日ですねー?」
「あー…そういやそうだっけ…んー…いいや、どうせ合格だし、今はヒミコで私はいっぱいいっぱい。」
「んへー…私もです…ようやくいっぱい一緒にいれますもんね…今日もいっぱいイジめてあげますね…♡」
そのまままたヒミコに押し倒された。しばらく会えて無かったからか、まあいつも通りの流れではあるが、あれからしばらく服さえ着てない。
「また服着れないの?」
「着る必要あります?♡」
「…ま、それもそうか…あっ…♡」
この子は最近攻めたいみたい。
じっとりと汗ばんだ肌を抱きながら、煙草を燻らせる。
「今日こそ…私が…勝てると思ったのに…はぁ…はぁ…♡」
「ふふっ、甘い甘い…まあカァイイからいいじゃん?」
「私が…カァイイカァイイしたいんですよぅ…♡」
何時までもやられる訳には行かないので…というか堪えきれなくなったので途中からは私の方が攻めた。ヒミコは攻めたがるがMっ気が強いのでちょっといじめるとすぐに屈服して可愛い。いや、カァイイ。
それにしても、ヒミコは行為中に血を欲するため、ベッドが何時でも血だらけになってしまう。まあ自分の血を美味しそうに、恍惚として嚥下する姿には欲情してしまう訳だが…
「…んー?どーしました?」
頬を撫で、口に指を入れると、トロトロとした舌が絡みついてくる。熱い。何の気なしに指を入れてみただけなのに、躊躇いもなく嬉しそうに舐めてくる。
「美味しい?」
「おいしーですよ…血があればもっとおいしーけど…ちうちうしていいですか?」
無言で犬歯を撫で、引っ掛けて皮膚を裂いて血を舌に塗りつける。嬉しそうな、私にしか見せることの無いその忌憚のない笑顔が、恍惚と、赤く染まり始める頬が、気持ちよさそうにくゆらせる足が、艶めかしく私の肌をなぞるその指が、私のことしか見ていないその瞳が、存在そのものが私を虜にして離さない。
「…あー、ムラムラしてきた。」
「んふ、またシます?今度は負けませんよ!♡」
「よく言うよ…いつも水浸しにするくせに。」
「葵ちゃーん、雄英からお手紙ですよー?」
「…あ!忘れてた。」
合格発表をしっかり確認したのは、届いてからしばらく経ってからだった。
これ行けそう?大丈夫???