復讐少女は拒絶する。   作:3m6ry0

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皆様読んでいただきありがとうございます。

文字数が少ないですが、まぁSSだと思って気軽に読んでいただければ幸いです。


当然

「今年も豊作かぁ?」

「にしたってまぁ…こりゃ凄いな…」

 

雄英入試実技終了後、教員達の審査は細々と行われる。大量の珈琲と茶請けは、いつもの比にならない。

 

何十時間と拘束された教員達、主にヒーローだが、彼らは身を削って添削をしていく。赤ペンのキュッキュッと言う音は、時代が変われど丸をつける教員の矜恃のようなもので、あるいは本質であった。

 

かつて学生だった諸君が、先生の赤ペンに抱いたその感情は、彼らとて忘れることの出来るものでは無かった。

 

然しながら、もっぱらこの丸をつけるという作業は、華々しい教員生活の中で一二を争う困難極まりない、言ってしまえば拷問に近いもので、全く同じことを何千何万とやるのは娯楽なしでは厳しいものであった。

 

「毎年苦痛でもあるし…楽しみでもあるけども…通年1人か2人は飛び出したヤツがいるもんだ。にしたってこりゃ…」

 

娯楽にしては責任が伴う上に少し口が悪くはあるが、光あるヒーローの卵の実技を見るのは、少なからず全ての教員の気晴らしになるのは自明の理である。

 

「守衛 葵(しゅえい まもる)…全教科満点、実技も撃破、救助問わず文句なしのトップ成績…」

「どうだか…救助のポイント制度に気付いているようにも見えるが…」

「とはいえ、事実として救助していますし、そこに正義があるかここで審議するのは野暮なのでは?というか無理がありますよそんなのは。」

 

大型モニターに移るその動きは、どうにも同学年を遥かに凌駕した、あまりにも実力が突出しすぎている。

 

純粋な戦闘力は勿論、周りを把握する力、戦力差を図る知識、圧倒的な機動力、何よりそれを持って正義を執行できる覚悟。

 

行動に移すまでが早く、ありとあらゆるそれがシームレスだ。予知にも近い認識力は、感によるものとも思えない。

 

「まあ少し服装がラフというかこれは、あれか?」

「「「ギャル…」」」

 

ヒーロー的にはギャルは如何なものか、いやいや見た目は人気に直結している、大切だ。でも少しラフすぎるのではないか?

 

早くも結論が出ているため、各々映像を見ながら気晴らしの討論は加速していく。会話もまた、心を豊かにするものだ。

 

「合格で間違いは無いが、問題無いとは…言い難いな?」

「…どうあれ、使えなければ、そこに正義足りうるものがなければ、除籍するだけです。私に任せて欲しい。」

 

そこまで静かにプロフィールと映像を見ていた男が声を上げる。周りの視線を集め、少し居心地の悪そうに声を揺らすのは、性格であろう。

 

「相澤くんであれば安心だろうね!でも去年みたいに全員除籍なんてことはやめて欲しいのさ!」

「彼ら次第です。」

 

職務はまだまだ続く。公平で独断で偏見によった、正義の卵を見分けるために、間違う訳にはいかないのだ。

 

 

 

 

 

 

まあその激務の間、主人公たる彼女も、激務だった訳だが…

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、合格でした?」

「うん。首席だって。」

「流石です!なでなでしてあげましょー!」

 

ニコニコしながら撫でる手の温もりに、気持ち良く受け入れる。

 

「これから暫くは会えなくなっちゃうんですかね…やだなぁ〜…」

「毎日帰ってくるよ、ヒミコも、ちゃんと帰ってきてね?」

「任せてください!12時出勤、18時退社、です!」

「ヴィランめっちゃホワイトじゃん。」

 

ヒミコを膝に乗せて強めに抱きしめる。ヒミコは私の為にもう一度闇に足を踏み入れてくれる。私のために頑張ってくれる。

 

「…明日、デート行こっか?」

「ほんとですか!?やったー!」

「むぐっ…」

 

見上げて目を合わせながらデートに誘えば、力強く抱擁された。柔らかい胸に顔を埋め、擦り付く。ああ、いい匂い…

 

「んふふ…ほんと好きですよねー…赤ちゃんみたい…」

 

先程の天真爛漫な少女としての顔から、母親のような優しい笑みに、やはり少女のような悪戯な瞳、どうにも擽る甘い声。指先で髪を縋れるのが、とても気持ちがいい。

 

「ヒミコ」

「はぁい?」

「大好き。」

「私も、大好きですよ。」

 

こんな時間が、永遠に続けばいいのに。私の心の氷を、空いた空白の全てがヒミコで埋まっていく甘美な感覚が、とても幸せだった。

 

だからこそ、ヒミコ。この素晴らしき愛する人を傷付けたそれを許すことは出来ないし、許すべきでは無い。

 

そして、私は過去に決別する為、自分の人生を歩むために、この復讐を完遂させ、鎖をちぎらなければ、ならないのだ。

 

この幸せは、しかし過去によって膿のように汚染されるのが、耐えられるものではなく、その対比が私を更に狂わせている。

 

ヒミコがすぽっと服の中に私を入れてくれた。

 

「…のびる…てか下着は?」

「いります?それ。いいよ。」

 

素肌に顔を埋め、ヒミコの匂いに包まれる。この子の前だとどうにも子供っぽくなる。そしてそれがバレているのに、ちょっとだけ恥ずかしい。

 

そんなものがどうでも良くなるほど、とくんとくんという心臓の鼓動が愛おしい。

 

再度闇に飲み込まれそうになる私の心をヒミコの愛情が楔になっているから、これ以上腐らない。堕ちない。

 

暖かい…いい、そして大好きな匂い…

 

「これも好きなんですよね…うふふ…知ってる…蕩けちゃってカァイイですね…」

 

こんなにも心地好くって…あぁ…ヒミコの全てが私の全てなんだと…分かってしまう。

 

拒絶しようがない、私を唯一拒絶させない、愛する人。

 

「ヒミコ」

「はぁい?」

「呼んだだけ。」

「あはっ…カァイイねぇ…♡」

 

明日まで、まだ時間はたっぷりある。

 

「ん…」

「ひゃっ…やっぱり我慢できなくなりました?いいよぉ…明日までたっぷり時間ありますもんね?♡」

 

そのままヒミコを押し倒して、今日もまた愛に堕ちていく。復讐に堕ちるより幾らかマシだろう?




イチャイチャ出来てる?ヨシ!
次はデート回の予定ですが、前後する可能性はあり。

R18版投稿のご要望が沢山あれば、期待に添うかも知れません(露骨なコメ稼ぎ)
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