迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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見切り発車です


第1話

「はっ、はっ、はっ」

 

 薄暗い林の中を使用人の服を着た女性が、手に赤ん坊を二人抱えながら息を切らせて走っていく。

 三人の額には大きな宝石のようなものが付いていて、懸命に走る女性の表情は焦りでこわばり、今にも倒れそうだった。

 

「どこに行きやがった! 探せ! まだ遠くへは行ってないはずだ!」

 

 女性が走ってきた方向からそのような声と大勢の怒号が聞こえてくる中、必死に走る。しかしその時足に痛みが走り、見れば木の根を踏んでしまい左足の足首を捻ったようだ。

 

「はっ、はっ、もう逃げきれない。……しかし、せめてこのお二方だけでも……」

 

 女性は震える足を引きずりながら辺りを見回し、大木のうろを見つけた。息を整えつつそこへと向かう。

 

「奴等の手にかかる位なら、もうここに賭けるしか手はないわ」

 

 そう言って女性は腕の中にいる二人の赤ん坊を優しく大木のうろの奥へと入れて隠す。

 

「申し訳ありません、ソフィア様。命じられた通りにお二方を連れて逃げきれない私の力不足をお許しください……!」

 

 女性は自身の不甲斐なさを噛みしめ、悔しさに涙を流しながら誰かに謝ると、そばに落ちていた落ち葉を赤ん坊の上にそっとかけて、その姿を覆い隠した。

 

「ですがこのリンリー、命を賭してでも決してお二方は奴等には渡しません!」

 

 決死の覚悟をした女性は来た道とは別の方向、この大木からできるだけ遠くへと、足を引きずりながら走って行った。

 それからしばらくすると、女性が引き付けていったのか林から大勢の気配が無くなる。

 半日も過ぎると大木からは小さく赤ん坊の泣き声が聞こえてきたが、それを聞くものはもう誰もいなかった。

 

 二人の赤ん坊が隠されてから一日が過ぎようとしていた頃、突然大木のうろが光輝き、ゆっくりとだが徐々に大木全体を覆っていく。

 

 そしてその大木の全てを暖かい光が覆うと、その大木はどんどんと驚くべき速度で巨大に成長していった。

 同時に光は周りの樹木にも根を伝って次々と伝播していき、それらも同様に成長する。

 更に周囲へと伝播していく光に刺激され次々と新しい樹木も生えていき、天を突く程まで巨大に成長した二人の赤ん坊が隠された大木を中心とする巨大樹の森が、あっという間に出来上がった。

 

 驚くべき早さで出来上がったこの広大な巨大樹の森に気づいた者達が、そこを探ろうと森に侵入するが、そこらじゅうに乱立する見たこともないほどに巨大な樹木で出来た天然の迷路と、そこに漂う霧のせいで迷い、気付けば森の外へと出てしまう。

 突然出来た巨大な森を様々な者達が調査しようとしたが、みな一様に迷い誰一人として奥へと進むことは出来なかった。

 

そして大陸のど真ん中に出来たその森は、いつしか迷いの森と呼ばれるようになり、国と国を隔てる緩衝地帯となったのだった。

 




飽きたり、続きを思い付かなかったら止めます。
あと不定期更新です。
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