迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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別視点での先の話


第11話

 穏やかな昼下がり、とある町の空いている酒場で武器装備を身に付けた冒険者の男達が一仕事終えて酒を片手に談笑していると、入り口から一人の少年が入ってきて壮年の二人に話しかける。

 

「なあ、おっちゃん!また話聞かせてくれよ!」

「あぁ? ……なんだ坊主か。見てわかるように、今俺らは楽しんでんだよ。今度にしな」

「まあ、良いじゃねえか。そう邪険にするもんじゃねぇさ。おい坊主、何の話が聞きたい?」

 

 話しかけられた二人の内、短髪に無精髭の男は少年をぶっきらぼうにあしらおうとするが、もう一人のスキンヘッドで強面の男がそれを宥めて、愛想よく少年へ問いかける。

 少年はしばし考えた後に、こうリクエストした。

 

「迷いの森の話が聞きたい! おっちゃんら行ったことある?」

 

 少年のキラキラとした眼差しとその質問を受けて、短髪の男はイヤそうに、強面の男は苦笑いをしながら答える。

 

「行ったことなんざねぇし、行きたくもねぇよ。あんなとこ」

「あそこは誰も奥へは行けない場所だからな」

「どういう事?」

 

 二人の回答に少年は首を傾げた。

 

「お前よぉ、そもそもあそこがどんな場所か知ってんのか?」

「行っちゃダメな事しか知らない」

 

 少年の答えに、はぁ~と大きなため息をついて、短髪の男はその場所について説明を始める。

 

「いいか? あの森はなぁ、百年だか二百年だか分からんが、そんくらい前に一晩でできた森だって言われてる場所だ」

「一晩で?」

「ああ。話が本当ならな」

「しかも範囲がデカすぎて、色んな国と国を結ぶ街道を幾つも飲み込んで国同士を分断したらしい。だから今はどこの国もあの森に沿って国境線が引かれてる」

「当時、幾つもの種族が戦争の真っ只中だったてなもんで、相手へ攻め込む為の道に困った国がその森の調査に人を出したんだが、森に入った途端に濃い霧が立ち込めて迷い、先に進んだと思ったら森の外に出ちまったんだとさ」

「それから誰が入っても同じく外に出ちまうってんで仕方ねぇから木を切って道を拓こうとしても、その生えてるバカでかい木はどんな斧でも歯が立たねぇ上に森は広大。それでどの種族も手に負えないと諦めたそうだ」

「今でも十人だの二十人くらいだので腕広げて囲んでも、囲み切れないくらいの巨樹がそこらじゅうにポンポン生えてて、どこ行っても景色は変わらず、霧で先も見通せない。しかも中じゃ魔術も使えないし、使えてもちゃんとした効果が出ない役立たずだから余計に迷う場所だって話だな」

「それで付いた名が、迷いの森って訳だ」

「今じゃ万が一帰って来れなくなると周りが困るから、軽い禁足地扱いだな」

 

 男達は酒を飲みながら交互に話していく。少年はそれを興味深そうに聞き、また質問をする。

 

「へぇ~。じゃあさ、その森には何かないの?」

「さあなぁ? 森の浅い所だと薬草が採れたりするらしいが、その辺でも生えてるヤツだって話だ」

「奥まで行けば大精霊が住んでるとか、財宝があるだとか、万能の薬草があるだとか、色々と胡散臭い噂も聞くぜ?」

「誰も森の奥に行ったことないのに、何でそんなんわかるんだって話だけどな」

 

 二人の男はそう言ってゲラゲラと笑ってまた酒を飲む。見れば顔が真っ赤になっていてかなり酔っているようだった。

 

「まあ何があるのか知ってるのは、あの森を一晩で作った奴だけで、ホントにそんな奴が居るんならソイツはきっと化物かなんかだろうな」

「それで、ソイツは森の奥でお前を喰うために待ち構えてんだ!」

「そっ、そんなわけないだろ!」

「わかんねぇぞ? 昔は説教される時に言われたもんだ。悪い子は迷いの森に置いてくよ!ってな」

「そうそう。酒も飲めねぇ癖に酒場に来る悪い子は迷いの森に喰われちまうぞ? さあ話は終わりだ。帰った帰った!」

「うぅ~! なんだよ~!」

 

 そうして酔っぱらい二人に笑いながらからかわれた少年はムっと顔をしかめつつ、また話を聞かせてね!なんて叫びながら走って酒場を出ていったのだった。




またの名は説明回
まあ、大したこと説明してないけど

なお、多分おっさん達も少年も今後話に出ることはないでしょう
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