迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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第13話

 まあ、言葉の謎は一応解けたことだし、奴ら(コスプレ野郎)のことは一旦置いておいて他の事をしよう。

 で、差し当たっての問題の中でも、早急に決めたいのが……。

 

「下に降りるとか色々やることはあるけど、先ずはお互いの呼び方を決めよう!」

「呼び方?」

「そう、呼び方。または名前ね。俺も君も名前ないでしょ? それとも何か覚えてたりする?」

「う~ん? う~ん。……ないかも」

「やっぱりそうよね。俺も無いし」

 

 俺が名前の有無を聞くと、彼女は腕を組み唸りながら少し考えて、しょんぼりしながら頷いた。一応、奴ら(妄想の産物)が既に名付けているなんて事も危惧したけど、そうではなくて良かったわ。

 俺自身には名前があるけど、身体が違うのに死者の名を名乗るのもどうかと思ったので、前世と割り切る意味で一緒につけることにした。まあ、死んだ記憶は一切無いんだけれども、こうなっちゃね。未練もないし。

 

「どんな名前がいい? やっぱ可愛い感じかな?」

「う~んと、チキンがいい!」

「……っ!? ちょっ、ちょっと待って! 何でチキン!?」

「えっ? 美味しそうで幸せそうだったから」

「いや、食べた事無いでしょ!? それとも君も前世があるの!?」

「あるかわかんない。けど、見たよ?」

「見た? ……それはまさか、俺の記憶では?」

「うん。スクリーンに灰色のプルプルしたのがバーンって写ってたよ?」

「俺の記憶は映画じゃ無いんですけどぉぉぉ」

 

 まさかの記憶上映会が開かれていたようだ。どこまで見たのかは知らないし、怖くて聞けない。人様に自信を持ってお見せできる様な人生じゃ無かったし。

 俺は両手両足をついてガックリと項垂れた。彼女がどうしたの?何て言いながら、俺の頭を撫でる手はとっても優しかった。あと彼女が見たのは、蒟蒻(こんにゃく)を鶏肉だとひたすら思い込んで食った時の記憶だろうと思う。…………あの頃は色々あったなぁ。……あったんだよっ!

 

 結局、流石にチキンはあんまりにもあんまりだろうと言うことを彼女に力説した事によって、その名前は回避された。

 

「改めて名前考えよ? ねっ? 可愛い感じのヤツさ」

「う~ん。じゃあ、あれがいい! 君のお家の前に咲いてるお花」

「俺の家の前? なに咲いてたっけな……」

「可愛い赤色と紫色のお花! アジサイだっけ?」

「ああ、そういや咲いてたなぁ。隣の婆さんが手入れしてたヤツ」

「それがいい! 私が赤アジサイで君は紫アジサイ!」

「いや、いやいやいや! 待って、それじゃ色以外一緒じゃん!」

「一緒がいいの!」

 

 ヤバい、超笑顔だっ!? このままだと俺の新たな名前が紫アジサイになってしまう! 何とかしなければ……っ!

 

「そっ、それだと分かりにくいからさ、アジサイを他の国の言葉に直して別けるとかじゃダメ……?」

「え~、どんなの~?」

 

 全力で思い出せ俺! あの不良坊主に婆さんの手伝いさせられた時に、婆さんから教えてもらったはずだ……! そう、確か……!

 

「ハイドレンジア……だっけ。これを分けて、俺がハイド、君がレンジアでどう?」

「う~ん。レンジアじゃなくてシアがいいかも」

「君はシアがいいの?」

「なんかそっちの方が好き!」

「じゃあ、決まりだ! 俺はハイドで君はシアね!」

「うん! んふふっ! 私はシア、よろしくハイドっ!」

 

 お互いの名前が決まり、シアが嬉しそうに俺の名前を呼んで抱きついて来る。

 にっこにっこしてる彼女に抱きつかれながら内心で俺は、心底紫アジサイ君にならなくて良かったと思っていましたとさ、まる

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 見事、紫アジサイ君を回避した俺ことハイドだが、まだ互いの名前を決めただけで、やらないといけない事は山積みだ。なので……。

 

「次は外で食べ物と飲み物をどうにか確保しないとな」

「食べ物と飲み物……。それ、いるの?」

「要るでしょ。俺やだよ? 飢えて、ひもじいのは」

「お腹って空くの?」

「……え? そりゃ空くでしょ」

「私たち氣を吸ってるのに?」

「……。た、多分、恐らく、メイビー。生きてるんだから空くと思いたい……。生きてるって素晴らしい」

「う~ん。そうなのかなぁ~?」

 

 シアは少し動揺して変な事を言う俺を気にせず、首を傾げる。

 ウルトラマイペースですね……。

 

「あの、スルーですか? っていうか、氣を吸ってるってシアも氣の操作ができるの?」

「ううん。ほとんど出来ない」

「あれ? じゃあどうやってんの?」

「私、ハイドと繋がったままだもん。だから、ハイドから貰ってるの」

「えっ? ……あっ! ホントだわ」

 

 すっかり使うのを忘れていた千里眼を使うと、空間はなんか色とりどりの光に満ち溢れていた。割合としては青とか緑系の色が多め、次点に薄い金色。

 それと同時に自分とシアの体を覆う濃い金色の(もや)も見えていて、これは多分、俺たちの体から漏れ出ている氣なんだろうと思う。呼吸する度に、周りに漂ってる色んな色の光を取り込んで金色に染め上げてる。そして(もや)の一部は繋がっていて、お互いの間を循環してる。特に意識してやってる訳じゃなくて、勝手にそうなってた。

 だから、その様はまるで二人で一つの器官であるようにも見えて、これが俺たちの当然であり自然だと言われているようにも感じる。

 

「シアはさ、これ見えてたの?」

「ううん。見えないけど、感じるの」

「流石、感覚派……!」

「あと、多分ハイドの目をスクリーンに写せば見れる」

「シアの精神世界で? 俺の視界を?」

「うん! 頑張ればなに考えてるかもわかる! ……はず」

「はぇ……。すごっ……」

 

 恐らく俺の能力が千里眼なら、シアの能力は読心とかその辺なんだろうな。俺たち双子っぽいし、そういう事もあるんだろう。もしくは、(ひたい)に付いてる宝石、これが原因かもしれん。

 

「まあ何はともあれ、もし俺たちに食事とか要らないとしても、ずっとここに居るわけにもいかないでしょ」

「何で?」

「だって暇じゃん」

「ハイドと二人なら楽しいよ?」

「あっ、ありがと。でっ、でも、あとは近くに襲ってくるヤツがいないとも限らないし……」

 

 まぁ!シアったら可愛い子なんだからっ!凄い笑顔で急にそんな事言われたから、動揺してどもっちゃったじゃないのよぉ~!

 

 こんな感じで、内なるオネエが顔を出したせいで喜びながらクネクネと身を(よじ)らせている俺を、シアはふんふんと言いながら興味深そうに観察している。

 その視線にちょっと恥ずかしくなったので、俺は強引に話を進める事にして、今の体と同じくらいに成長した精神体を出し、外の偵察をしようとする。 すると、シアが俺の本体を指差して怒り出した。

 

「あ~! ハイド、一人で外に行く気だ~!」

「いや、偵察にね? わかんの?」

「ちょっと減ってるからわかるよ!」

「減ってる!?」

 

 シアからすると精神体は見えないけど、俺の気配が急に半分ずつに別れたように感じたらしい。

 そこから直ぐに俺の意図を察するなんて、この子ホントに前世があったか覚えてないの? ちょっと前まで赤ちゃんだったんだよ……?

 

 それからプンスカしてるシアに、本体は側に居るし、視界は精神世界で見ればええじゃろと説得して同意を得た俺は、えっちらおっちら精神体を外に向かって移動させた。




話がたいして進まないのは、展開を何も思い付いてないからです。
あとは、そういう仕様です。

※なんとなく一週間くらい通常投稿にしてみようかと思います。
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