なんだか色とりどりの光がそこら中に漂ってるせいでガチャガチャと鬱陶しい視界に、既に若干の疲労を感じながらも、精神体を出口まで移動させる。
後ろを振り返れば、焦点の合わない遠い目をして壁にもたれ掛かってる俺(本体)と、そんな俺(本体)に寄り掛かってニコニコしながら目を閉じているシアが見えた。俺に見られている事がわかったシアはそのまま精神体に向かって手を振ってくれる。
どうやら無事に視界を共有できてるみたいだわ。繋がってる氣を通じて彼女がワクワクしているのも伝わってくる。
まあ、俺は変なモノが出ないかってドキドキしてるんですけどね!
そんな感じで少しだけビビりながらも、俺は出口の穴から精神体の頭を出してキョロキョロと周りを伺った。
さっき見た景色と変わらず地上は遠く、周囲に乱立する巨樹は
なのに不思議と周囲は暗くなかった。葉っぱが光を通してるのか、それ自体が発光してるのかわかんないけど明るいのでヨシとする。……きっと深く考える時は今じゃないからな!
周囲を見回した限り、何かしら脅威になるような物は無さそうなのでヒョイっと地上に飛び降りてみる。
結構なスピードで地面に着地をするも精神体なので音も衝撃もない。制御をミスって地下に潜る事もないし、足元の苔だってフカフカなままだ。見渡す限り地面は一面柔らかい苔で覆われていて、その他は点々と見たこともない花や植物が生えている。
「スッゲー! フカフカじゃんこれ! 感触ないからわからんけど……」
「感触ないんだ?」
「あれっ!? シアさん喋れるの!?」
その場で足踏みしたりしながらそんな独り言を言ってると、精神体の口が勝手に動いてシアの声が出てきた。
「うん! 何かボタン押したら出来た!」
「ボタン? なにそれ?」
「う~んとね。何か隣の座席に付いてた。おしゃべりって書いてある」
「あっ。ホントに
よくよく話を聞くと、映画館のように幾つもある座席には各々ひじ掛けの所に一つづつボタンがついているようで、それぞれに『おしゃべり』やら『こうどう』等と書いてあるらしい。その中の一つに『ねんわ』と書いてあるボタンが有ったそうで、試しに押してみて貰うと、精神体の口からではなく俺の精神に直接シアの声が届く。
座席はまだまだ数多くあるらしく、ボタンは付いてたり付いてなかったりまちまちなんだそうだ。
この事から、シアは割りと色んな能力が使えるという事実が判明した。
……控え目に言ってウチの子、天才なのでは?
俺が使えるのなんて千里眼と氣の操作とこの精神体だけなんですが……。なにやら才能の格差を感じますねぇ……。
なんて少し羨んでみたものの、俺はこの三つでさえ上手く扱いきれてない感じなんでそれどころじゃない。精進せねばなるまい……!
気を取り直して探索を始める為に一歩踏み出す事にした。目標なんて何もないので取り敢えず森の正面を真っ直ぐ進んでみる。
だいたい等間隔で並んでいる巨樹が近くに見えるけど、実際は結構距離があるらしく子供の歩幅では中々そこへと到達しない。
遠近感がおかしいせいで騙し絵みたいに見える光景の中を進んで行くと、巨樹の向こう側、その遠くに色とりどりの光が密集している場所が見えた。
「あれなんだろうな?」
「きっと行ってみればわかるよ!だから行ってみようよ!」
「う~ん、他に目につく物もないしそうしようか」
探索にノリノリのシアさん(推定零歳児)に促され、俺はそっちへと足を向ける。
やっぱり結構遠いみたいで巨樹の間を何本も通りすぎ、時には咲いてる花や生えてる植物に気を取られながら進んで行く。
近づくにつれて光が周囲を不規則に飛び交っている様子が詳しく見て取れた。なんか蝶々とかその辺の生き物っぽい動きをしてる感じがして、さっきはそんな事無かったのになぁ、なんて内心首を捻りながらそれを辿っていくと、とある巨樹の前にたどり着く。どうも光達はこの巨樹の裏側から行ったり来たりしてるようだった。
「光がふよふよ飛び交ってるけど、大元はこの木の裏側かねぇ?」
「そうみたい。ねえねえ!覗いてみようよ!」
「オッケー。じゃあ、ゆっくり覗いてみますか……」
俺は精神体を巨樹に張り付けて、ゆっくりと慎重に覗き込む。
するとそこには畑のようなものがあり、畑の中央には一人の女性の後ろ姿が見えた。その後ろ姿から、明らかにただ者ではないオーラを発している気がする。……気のせいかも知れないけど。
果たしてそんな彼女が何者で何をしているのかと観察していると、その女性がおもむろに手をゆったりと動かす。その度に色とりどりの光がその動きに沿って飛び交っていく。
よくよく見れば光はそれぞれの色ごとにある程度纏まって動いていて、例えば茶色や水色なら地面へ、緑は植わっている芽からといった具合に、出たり入ったりを繰り返しているようだ。
そんな光景を覗き込みながらボケッと見ていた俺は、くるりとこちらに振り返ったその女性とバッチリ目が合ってしまったのだった。