迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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第16話

 俺たちの境遇を説明し終わった所で目を閉じた美人さんは、う~んと唸りだした。その様子に俺の説明に何か問題でもあったんか?と俄に焦ってると、彼女は閉じていた目を開いてうんと一つ頷いて言う。

 

「あなたが言ってることは本当みたいね。……というか自分で確認すれば早かったわ」

 

 まあ、とりあえず理解してもらえたみたいで良かった。後半はボソボソと口の中でなんか言ってて聞こえなかったけど。

 

 それよりも今言うべきは……。

 

「あの~、信じてもらえて何よりなんすけどぉ……」

「なに? まだ何かあるのかしら?」

「……いやですね、そのぉ、放して貰えたらなぁって思う次第でぇ」

 

  俺がなんでこんなこと言ってるかって言うと、現在絶賛抱き上げられてるからです。

 

 

 何故って思うだろ? 

 ははっ!気が合うね!俺もそう思ってる。

 

 あっダメです!頭を撫でないでください!

 なんか気持ちよくて駄目になっちゃうから!駄目になっちゃうからぁ……!!

 

 

 説明の最中、俺とシアの本体は巨大樹のうろにいると話すと、美人さんはおもむろに俺を抱き上げて地面に腰を下ろし膝の上に座らせた。

 なんのてらいもない実に自然な動きだったから、俺は全く反応出来ずに成されるがまま。そして、そのままぎゅっと抱き締められて今に至る訳なんですが……。

 

「私に抱っこされるのはそんなに嫌かしら?」

「いやいやいや!そんなことはなくてですね!ちょっぴり恥ずかしいって言うかなんでこんないきなり親密な感じなのか疑問といいますか!」

「嫌ではないのね?」

「そりゃあもう本音で言えばバッチコイな感じではありますけどねぇ!」

 

 俺の頭を撫でながら少し悲しそうにそう聞いてくる美人さんに、慌てて早口になりながら取り繕う。正直に言えば訳わかんなくて少し怖いんだけども、それはそれ。

 

 

 美人のお姉さんに甘やかされてイヤな奴なんかいねぇよなぁ!

 

 

 この人、何か清涼感のあるいい香りがするし、温かくて、大いなるもの(意味深)に(いだ)かれている安心感がある。このまま身を委ねて(とろ)けていきたいわぁ。

 

「ハイドったら、やらし~んだ」

「なにおう! ひ、人聞きの悪いこと言わないでいただきたい!」

「動揺してるじゃ~ん」

「しっ、してねーし!」

 

 そんな風に微睡んでいるとシアからからかわれた。

 俺は全くもってそんな疚しい気持ちなんて持ち合わせていなかったけど、指摘されると途端に意識しちゃって酷く気まずくなってくる。

 

 しかぁし! 俺はホントに疚しい気持ちなど、全く! これっぽっちも! 欠片も! ないのだ!

 

 

 …………ホントだよ?

 

 

「ふふっ、二人はとても仲が良いのね。でも、この子をこうして抱き上げているのには、ちゃんとした理由があるのよ」

「理由?」

 

 シアとじゃれあっている俺を見て、優しく微笑んだ美人さんが俺を通してシアに向けてそう言った。シアも自分に話かけられたと理解して疑問を返す。

 

「こうやってこの子と触れ合うとね、私に力が(みなぎ)るのよ」

「お姉さんもハイドが好きなの? だから漲っちゃうの?」

「シアさん!?」

 

 なに言っちゃってくれちゃってんの、この子は!?

 

 シアの発言に慌てふためいた俺が叫ぶけど、美人さんは落ち着いたまま微笑んでいる。

 

「ふふっ。もちろん好きではあるけれど、そういうことじゃなくて、この子から漏れ出ている力を分けて貰っているのよ」

「チカラ……? 力ってこの金色のやつ?」

「そうよ。その金色のやつ」

「……このもやもや見えるの?」

「もちろん見えるわよ?」

「へぇ~…………そうなんだぁ…………」

 

 

 へっ、へぇ~、この人普通に氣がみえるんだぁ。

 ま、まあ俺だけの特別な能力ってわけじゃないんだろう。きっと、メイビー。

 ……残念じゃないぞ。少しも残念なんかじゃないんだ。だからがっかりする必要もない!

 

 

 俺がそう自分に言い聞かせて心の平穏を保っていると、その隙をついてシアと美人さんが話し始めていた。

 

「それってハイドは困らないの?」

「貰っているのはこの子が自然に垂れ流してる分だけだから大丈夫だと思うわ」

「そうなんだ!なら安心だね!良かったねハイド!」

 

 

 そうだね、安心だね。良くはないけど。

 っていうかやっぱ氣を垂れ流してんだな。

 

 

 邪が一切ない二人の会話のお陰で、俺は少し不貞腐れながらも自身の事に一つ詳しくなった。




今後も不定期更新です
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