思いもよらない告白にポカンとする俺にお姉さんは続ける。
「だって、私って元は一本の木で、この森の一部でしかないのよ?森という群体を構成してるただの木に名前なんて必要ないでしょ。動かないんだし」
あっけらかんとした感じで割りとドライなことを言う彼女。表情と声のトーンから本当に本心でそう言ってるのが伝わってきて、この人マジで俺と種族が違うんだな~と実感する。
「いや……まあ、本人がそういうなら……そういうもんなんだろうけど」
「そういうものなのよ」
「そうなんですかぁ……」
わりと反応に困る事を言われた俺が、何て言ったらいいのか考えながら言葉を選んでいると、さっきと変わらない口調で普通に押しきられた。
やっぱり!俺は!!押しに!!!弱い!!!!
自分の意思の弱さにガックリと肩を落として項垂れてると、上からお姉さんが顔を覗き込んでくる。
「それでね。これからはそれじゃ不便だろうから、二人に私の名前を考えて欲しいのよ!」
俺が上目遣いで見上げると、微笑みながらそう言ったお姉さんの言葉にシアがすかさず反応した。
「……!いいの!?」
「ええ。良いのを考えてくれると嬉しいわ」
「わかった!ねえハイド、何がいいと思う~?」
いや、俺に聞かれましても……。ねぇ……?
それからシアと共にああだこうだと言いながら考えた結果、リオと呼ぶことにした。由来は前世の昔に聞いた覚えのあるバカでかい木の名前から、女性っぽい響きの一部を拝借した形となる。
「リオ……いい名前ね!気に入ったわ!」
「じゃあ、決まりって事でいいですかね?」
「ええ、今から私はリオよ。改めてよろしくね、二人とも!」
「わ~い!よろしくね~リオおねーさん!」
「うぐッ。……よ、よろしく」
俺たちが考えた名前を伝えたところ、お姉さん改め、リオは気に入ってくれたようでとても嬉しそうに受け入れてくれた。
喜んでもらえたならこっちも必死に無難な名前を考えた甲斐があるってもんだ。
何せシアさんったら、
そんなこんなで改めて彼女の新たな名前で自己紹介を交わすのだが、シアがテンション高く挨拶したら感極まった様子のリオがギュっと抱き締めてきて、俺は苦し気に呻きながら挨拶をする羽目になり、なんかしまらない感じになってしまったのだった。
……………………
………………
…………
……
さて、リオが何処のどなたか知ることが出来たので、他の事も聞いてみよう。という事で質問タイムを再開。
「でさ、リオさん。さっき聞きそびれたんだけど俺も人間じゃないの?」
「人間ではあるわよ?」
「えぇ?でもさっき人間じゃないって言ってたっしょ……?」
「あら、私は人族ではないって言ったのよ」
「いや、何が違うんです?」
リオの答えがよく分かんなかったから、もっと詳しく聞くと、どうやら人間というのは幾つかの種族を纏めた呼び方で内訳は色々と居るらしい。リオが知っている知識では大まかに人族、獣人族、ドワーフ族、エルフ族、他となるようで、大体二足歩行が出来て自力で空が飛べなきゃ人間って括りなんだそうだ。
人間って括り以外にも種族はいて大半が自力で飛べたりする奴らなんだと。俺も空を自由に飛んでみたかったわ……羨ましいぜ。
して、肝心の俺はというと、額に大きな石があるという身体的特徴から恐らくマテル族っていう種族だろうとのこと。
シアにもその特徴があるから同じくマテル族なんだろう。というかやっぱり俺たちは双子なんだろうなコレは……。
そう俺たちの出自に思いを馳せていた時、リオが付け加えていった。
「あっ、そうそう。たしかマテル族ってエルフ族に攻撃されて、もうほとんどいないはずよ」
「…………(絶句)」
…………拝啓、不良坊主さま。
生まれ変わった俺ですが、俺たちの種族は既に滅んでいるそうです。
クソがよッッ!!!