迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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第4話

 翌日、射し込んできた陽の光で目が覚めると、お隣の赤ちゃんの様子を確認する。安らかな寝息が聞こえてきて、無事に一夜を乗り越えている事に安堵した。

 

 俺と同じくらいなら首が据わって無いところからみて、俺もお隣さんも恐らく生後1~2ヶ月って所なんだろう。このくらいの赤ちゃんなんて、親の庇護が無ければちょっとしたことですぐに死んでしまう。

 ましてや今の状況は、親の庇護が無いどころか捨て子同然だ。寝ている間に冷たくなっていても不思議じゃなかった。

 

 まあ、とりあえずお隣さんも無事生き残ったみたいだし、昨日の続きをしますかね。

 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 千里眼を使っていて幾つか分かったことがある。

 

 先ず一つ目、自分に流れる金色の線の流れは操作ができるようだ。

 昨日俺は金色の線の流れが生臭坊主の言ってた力なんじゃないかと予想を立てた訳だが、そうなるとこれは取り込む事ができるモノの筈だと考えた。

 そこに至るまでの一先ずの取っ掛かりとして、自分の手に流れる線を操作しようと念じると、ほんの少しだけ流れの速度が変化したり、流れの太さが変わったりする。

 それと同時に手の感覚も鈍くなったり、鋭くなったり、暖かくなったり、冷たくなったりした。

 たったそれだけの事でもかなり難しかったのだが、今まで感じたことの無い感覚に喜び勇んだ俺は、しばらくその操作に没頭することになった。

 

 

 二つ目は、どうやら自分に流れているもの以外の金色の線の流れも操作できるようだということ。

 

 自分の流れを操作する事にまあまあ満足した俺は、次に自分の外の線に目を向けた。

 木の壁には幾つかの線が走っていて、その中の一番細い線を動かしてみようと試みる。細い方が太いものより簡単だろうという判断だったのだが、まぁ失敗だった。

 

 幾ら俺が動けと念じようとも、その線はびくともしない。

 そんなに直ぐ操作出来るとは思っていなかったので、とりあえず対象を変えてみたが、それでも動かない。どんなに強く念じようが対象を変えようが自分のときのように上手くはいかなかった。

 

 念じ疲れた俺は一旦諦めて、息抜きに伸びをしようと手を伸ばすと木の壁に触れる。

 こっち側の壁はこんなに近かったのかと思いながら木の感触を楽しむ。ゴツゴツしてるのかと思っていたが、案外ツルッとして触っていて気持ちがいい。

 暖かみがあるってこういう事言うのかな? っていう感じだ。

 

 ふと、このまま念じてみたらどうなんだろうと思った俺は、そのまま壁を擦りながら念じた。すると手の触れた線は流れる速度を少し変えて、なおかつ流れるその感触も感じることができる。

 思わぬ成果に興奮した俺は、さらに操作の練習に没頭した。

 

 

 わかったことの三つ目は、金色の線の流れはやはり何かしらの力であり、取り込む事で何となく調子が良くなるってことだ。

 

 壁に流れる金色の線を操作するのにも大分慣れてきて、手を壁から少し離していても操作できるようになってきたので、当初の仮説を検証するためにどうにかしてその線を自分へと取り込もうと試行錯誤を始めた。

 先ずは壁の線を動かして、流れ自体を掴もうとしたが、失敗。

 線の一部を壁からはみ出させる事には成功したが、触ろうとしても感触はあれど小さな俺の手を通り抜けていく。まるで水のようだ。

 俺の千里眼を通してという特殊な条件で見えているだけで、実体の無いモノなんだろうと予想していたから、この結果は意外でもなかった。

 

 ……しっかし、どうすればこの流れを取り込めるんだ? 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで急に話は変わるが、こうやって疑問に思ったり色々な試行錯誤していたこのとき、俺は非常に腹が減っていた。それはもう猛烈に。

 いつから栄養を摂っていないのかわからないが、少なくともこの状況に気が付いてから半日以上は何も食べていない訳で……。

 赤ちゃんがそんなことになれば、いくら中身が俺とは言え、当然飢えて食欲に支配されるのだ。

 

 結果として、ぐーぐーと鳴る空きっ腹を抱えて限界に達し、思考を食欲に奪われて正気を失った俺には、視界に入る物の全てが食い物に見えていた。

 本能全開で口からよだれをだらだらと垂らし、手当たり次第に口に入れようとするが、このウロの中にあるのは自分達と布団代わりの落ち葉が少々のみで、食える物は何もない。

 腹が減りすぎて、とうとう視界に入る壁の金色の線が飴みたいに見えてきた。

 

 やけくそになった俺はそれに手を伸ばし、それを食ってやるという強烈な意思を持って線に触れようとする。

 すると何故か線はその手を通して俺の中に流れ込んできた。

 

 予想外の事に驚きつつ、絶対にこのチャンスを逃せん!と本能で理解した俺は、必死にその線を切らさないように操作して流れを自分の中に取り込み続けた。

 

 金色の線の流れが俺に流れ込んでくるに連れて、じわじわと体が暖かくなって満たされいく。

 気付けばあんなに強烈だった食欲も少し落ち着いていて、余裕ができていた。

 

 なんかちょっと体調もいい感じだし、あの不良坊主のジジイが言ってた事は本当だったんだなぁと一人納得した。

 

 

 

 

 というわけで現在の俺は、一生懸命この金色の線の流れを吸収しようと集中している。

 まだまだ細い線しか操作できず、細い線では絶望的に足りないとボンヤリと感じていた。

 何が足りないのか、この思考はどこから来ているのかがまるでわからないが、コレを無視してはいけないという予感がする。

 

 推定前世の時から、こういう予感を無視していい目を引いた事がなかったんだ。

 もっと精進しなきゃなるまい。

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