迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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第6話

 無事に俺を通して氣が吸収され始めたのは喜ばしいんだが、どうにも容態が安定しない。

 呼吸はかろうじて保てるくらいにはなっているが、それ以上回復する兆しが見えないんだ。握っている手にも力が戻ってこない。

 それに俺自身の活力もジリジリと減ってきている感覚がある。

 せめてもの慰めは、隣の子の不安が少しだけ和らいで俺に心を開いてくれているというのが、送っている氣を通して伝わってくることだけだ。

 

 とは言え、「このままではヤバいんじゃないか?」という思いが脳裏を掠める。

 すると、隣の子にもそれが伝わってしまったようで、すぐに俺に伝わってくる感情の中の不安の割合が増してしまった。

 

 慌てて隣の子を宥めると同時に、自身の感情を落ち着かせる為に、現在の状況を整理しよう。

 

 今わかってることは、俺達は恐らく生後数ヶ月の赤ちゃんで、木のうろの中に放置されてるってこと。

 親とか保護者的な存在はいない。っていうか、そもそも人が居なさそう。

 

 あと、隣の子は多分俺とは異性だってこと。何でわかったかと言えば、手を繋いで氣のやり取りをしていて感じた氣の質みたいのが、俺とは真逆だったから。

 氣の質って何だよって思うかもしれないが、俺にも具体的にはわからん。けど、直感的にそういう感じがしたんだ。

 だから多分異性だと思われる。

 そもそも股間に手が届かんから、今の俺の性別がわからんが……。

 

 まぁ、今はそれは置いといて、つぎに良かった事といえば最優先でクリアしないといけなかった隣の子の衰弱が、俺からの氣の供給が上手くいったことで改善され、一先ず最悪の状況は脱し、すぐに死ぬということは無くなっただろうという事。

 隣の子との氣のやり取りを介して、簡単なコミュニケーションが取れるようになった事。それに伴って、隣の子が俺に心を開いて信頼してきてくれている事。

 

 良いことはとりあえずこのくらいだ。

 

 そして悪い事は、隣の子の体調は最悪を脱しただけで、回復までには至っていない事。

 俺も氣を吸収しているにも関わらず、だんだん空腹を感じ始めて活力を失ってきている事。

 このままだと、恐らく俺も隣の子も共倒れになるだろうという強烈な危機感が沸き上がってきていている事だ。

 

 これらの問題の共通点は、恐らく俺たち二人の消費量に対して、氣の供給量が絶対的に足りてないって事なんだろう。

 俺が吸収して貯めた分も合わせて流していても、それでも氣の量が足りないから隣の子の状態は一定以上の改善はしないし、俺も少しずつ腹が減ってきているんだと思う。

 

 

 状況が整理できた所で、俺は俺自身に問うた。

 

 

 Q.氣が足りないんですけど、どうすればいいですか?

 A.答えは簡単だ! もっと全力で吸い上げればいいじゃないか!! やればできる!!!

 

 

 俺の脳内で暑苦しくそう答えてサムズアップしてきた悪魔のコスプレをした俺。

 残念ながら、どうやら彼は脳筋に汚染されてしまっているようだった。

 

 ほ、他に案を出す俺はいないのか……!? このままじゃ俺は、俺は、脳筋(バカ)になってしまう!

 

 そう脳内で一人焦っていると、天使のコスプレをした俺が自信満々に現れる。俺は藁をも掴む思いで彼に問いかけた。

 

 

 Q.その様子を見るに、他に妙案があるんですね!?

 A.ない!!!!

 

 

 自信満々にそう言い切った天使(おれ)に、俺は脳内で崩れ落ちた。

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 俺の脳内で天使(おれ)悪魔(おれ)が肩を組んで、るんたった、るんたった、とか歌いながら踊っているイメージが隣の子に伝わっているようで、お隣さんからは楽しいという感情が伝わってくる。

 

 一時的にでも辛さや不安を忘れられるんならと、俺はそのまま脳内でソイツらを踊らせ続けつつ、脳筋戦法で氣の制御を頑張ることにした。

 

 木の壁の線を小さい手で鷲掴み、全力で氣を吸い上げる。

 どっちもそういうイメージでやってるだけで、実際には線は掴めてないし、氣の方は詰まってるストローを力んで吸ってる感じだ。

 

 つまり、あんまり効率は変わらないという事で、精神的に疲れる分マイナスだった。

 

 手詰まりだ。

 どうすれば良いのかわからない。何か見落としているのか?

 そもそもここに捨てられてる時点で、もうダメなのか?

 

 

 

 教えてくれ……不良坊主……。俺は何か間違ってるんか…………って、ん?

 

 

 

 よくよくあのジジイの話を思い返して今の俺と比べてみる。

 

 ジジイは金色の力を取り込んだ、俺も取り込んでる。

 ジジイは金色の力が見えた、俺も見えてる。

 ジジイは身体から意識が飛び出し浮き上がった、俺はそんな事ない。

 

 俺はまだ身体に意識が残って、周りが十分に見えてない。

 

 …………そうか、これか。

 

 俺はそれに気づいた瞬間、何かカチッと嵌まったような感覚がした。

 そして即座に瞑想を始めると、勝手に千里眼が開き、視界が広くなっていく。

 そして視点も自分の額からだけではなく、自由に色んな場所に置くことができるようになった。

 

 試しに天井に視点を置けば、落ち葉を被り、手を繋いだ赤ちゃん二人が横になっているのが見える。二人の額には、目と同じくらいの大きさの宝石のようなものがくっついていてとても綺麗だ。

 試しに俺は手を振ってみると、視界に映る片方の赤ちゃんも同じく手を振ったのだった。

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