迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

7 / 18
第7話

 あらかわいい!

 

 落ち葉にくるまって横になっている二人の赤ちゃんを見た感想がそれだった。

 おでこに何か宝石みたいな異物が付いてるけど、それを除けば前世でもあまりお目にかかれない位には可愛らしい赤ん坊達がそこにいた。

 

 玉のような美しさって言うのはこういう事言うのかって納得出来てしまう。しかも、その片割れが俺だってんだから、嬉しいやら恥ずかしいやら。

 

 そんな感じでしばらくナルシストっぽくなっていた俺がうへうへとニヤついていると、天使と悪魔のコスプレした俺のイメージがいつの間にかお隣さんの元へと移動している。

 そこでさっき俺が見た赤ん坊の姿になったお隣さんに、『ああなってはいけない』、『あれは非常に恥ずかしいぞ』などと好き勝手のたまっていた。

 

 

 あいつら何なの? 俺の妄想の産物じゃないの? あと、全くもってその通りです……。

 

 

 何が起きているのか全く分からないが、お隣さんの面倒を見てくれてるし、行動は別として言動もそこそこ真っ当な様子なので、しばらくそのまま任せることにした。

 正直かなり不安だが、今から俺も集中しなければならないので背に腹は代えられない。苦渋の決断だった。

 

………………

…………

……

 

 

 精神世界みたいなとこでお隣さんとコスプレ野郎どもがワイワイ遊んでいるのを尻目に、俺は深く集中し視界を移動させていく。

 楽しそうな思念が精神にダイレクトアタックしてきて、何か寂しいが気にしないことに努める。

 

 視界がうろから出るとそこは林の中のようで、木が生い茂っていた。木漏れ日が柔らかく射し込み辺りを明るく照らす、自然豊かな場所だ。

 だが、これだけ環境が整っているのに生き物の痕跡がない。俺が狩人でもない素人だからわからんのかもしれないが、思えば今まで鳥の声すら全く聞いてないんだ。

 

 

 かすかな違和感。だが不快な物ではない。

 

 

 ……なら、悩んでも時間の無駄だな!

 

 

 そう俺は思い切り割りきって無視することにした。

 正直そんなん考えてる暇などないのだ。こうしている間にもジリジリと限界が迫ってきてる。俺達が生き残るにはそんな事にかかずらっている場合じゃなかった。

 

 ゆるゆると視界を動かして何か救いの一手はないかと探し回るが何もない。延々と林が続いているだけだ。

 木の根元辺りによく目を凝らさないと見えないほど薄い足跡を見つけたが、それを辿ろうにも、視界は俺の体がある木からあまり遠くには離れられなくて断念した。

 まあ、足跡の主は俺達を捨てたヤツだろうし、追って行って人里見つけた所でって感もあるからどうしようもない。今必要なのは遠くの可能性じゃなくて近くの可能性なんだ。

 

 

 折角、視界の移動という新しい手段が上手くできたと思ったのに成果もなしじゃ、ただ上げて落とされただけだ。

 隣からは相変わらず楽しそうな思念が届くし、寂しくなっちゃうじゃん。

 

 とりあえず寂しくなった俺は、視界を自分達がいる場所まで戻した。

 相変わらず落ち葉にくるまってる二人の赤ん坊は手を繋いだままで、片方はニコニコとしながらも顔は青白く、もう片方は目を閉じたまま仏頂面をしている。もちろん仏頂面してるのが俺だ。

 お隣さんは楽しそうだが、体調は依然として芳しくない。コスプレ野郎(おれのイメージ)どもが機嫌を取ってくれてるお陰で何とか持ってるが、このままでは不味いのは変わらない。

 でも何の糸口もないんだよなぁ~、なんて思いながら自分達がいるウロの中を観察するとあることに気付く。

 

 ……あれ? 金色の線見えてなくね?

 

 見えていた氣の線が、自分から離して視界を移動している時には見えてない。

 なら氣がなくなったのかといえば、そんな事もなく、今も俺は氣を吸い上げて状態を維持している。

 

 で、あるならばだ。金色の線が見えなければおかしい。思えば、さっきの違和感の原因もこれだったのだろう。

 

 

 

 なぁ~にが悩んでも時間の無駄だよ! 命かかってんだから、はよう気付けよ俺のバカぁ! これなら悩んだ方が早かったかもしれんわ!

 

 

 

 そう自分にツッコミを入れて、この失態による精神的ダメージを誤魔化して、俺は視界の移動をしたまま金色の線を見れるように一心不乱に念じる。

 すると、徐々にウロの壁に流れる金色の氣の線が見えてきた。しばらくするとはっきりと見えるようになり、壁に触れている俺の小さい手へ流れている様子も確認できるようになる。

 

 この状態でも氣の流れを見ることができたことに一安心した俺は、次いで疑問だった氣の流れの根源を確かめる為に金色の線を追っていく。段々と視界を下げていくと金色の線は木の根元まで達していて、地面の下まで続いているようだった。

 何となく予想していた通り、氣は根っこから吸い上げているらしい。

 

 だがしかし、地面が金色になっているかというと、そうでもない。地面は普通に土の色をしていて、氣で染まってる訳ではなかった。

 

 ならこの木は何処から氣を吸い上げているのか?

 

 思い当たるのは地中。しかも地表から金色が透けて見えない程度の深くだ。

 

 そう思った俺は、意を決してゆっくり視界を地面へと近づけて行く。

 徐々に近くなってくる地面にちょっとビビりながらも速度は変えずに移動を続け、視界一杯に地面が広がった所で一旦止める。

 

 そこで深呼吸をして気持ちを落ち着かせた俺は、勇気を出して一歩踏み出す気分で視界をそのまま下へ移動させた。

 すると、なんの抵抗もなく視界は地中へと潜っていく。流石に目の前は真っ暗だけど、自身に異常も問題もないので俺は緊張を解いたのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。