迷いの森の引きこもり   作:曽良紫堂

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第8話

 さて、無事地中にも視点を動かすことができた訳だけど、目の前は真っ暗で位置的には近くにあるはずの根っこすら見えない。

 このまま視点をむやみに動かせば、迷子になって一生地中を彷徨うなんて事もあり得る。活力がじり貧で限界が見えている今では、一生迷子だなんて笑える冗談でも何でもなく、単なる事実だった。

 少し日和った俺は、一旦千里眼の視点移動を解除して戻れるのかを確認する。結果は成功で、一瞬で肉眼の視界に戻ることができた。

 

 

 よ、よかったぁ~。一瞬終わったかと思ったわぁ。

 

 

 相変わらず伝わってくるお隣さんの楽しそうな思念を他所に、俺はひとり安堵する。

 

 何でこんなに日和ってるかというと、まあ……その……、少し……方向に疎い所がね……? 

 一つ言えることは、ナビってありがたいよねって事だけだ。

 そうして安心した俺は旅にいこうってなわけで、現在地中にいます。視点が。

 

 さっきと変わらず真っ暗な視界で困っちゃう訳だが、対処法はさっき学んだ。

 その経験に従って少し念じると、視界に金色の線が見えてくる。

 ちょっとコツを掴んだみたいで、さっきよりはスムーズに切り替わるけど、視点移動中に少しでも気を抜くと途端に見え辛くなる。集中を切らさないように注意しよう。

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 視界をぐるりと回すと、見渡す限りに細い金色の線が網目のように広がっていた。無数にあるそれらは途中で纏まって太くなったり、別れて細くなったりを繰り返していて、おおよそ全てが地中深くから繋がってきているようだった。まあ、下はよく見えないから推測なんだけども。

 

 

 まさか、これ全部植物の根っこが吸ってる氣なの……? 凄いな。イルミネーションの中に居るみたいだ。

 

 

 暗闇に浮かび上がる地上に向かって光ながら流れていく氣の流れ。

 その幻想的で美しい光景を目の当たりにして、そんな事を考えながら呆気にとられていた俺は、はっと気を取り直して自分たちがいる木の根が吸っている氣を遡って地中深くへと潜る。

 何故か地上と違って地中ではゆっくりとしか進めなくてもどかしい。

 けれど全く進めなくなるという事はないので、精神を落ち着かせ、氣を導として進んでいく。

 先への視界、つまり地下深くへの方向は大体3メートルほどしか見通せず、他に指針のない俺はそうする他なかった。

 

 

 自分と同じ深さの周囲なら、もっと遠くまでみえるんだけどなぁ。急に何か出てきたら、死ぬほどビビりそう。

 

 

 そんな事考えながら進んで行くと、徐々に広がっていた金色の線は寄り集まって、次第に他の木が吸っている線も合流し、より太く大きくなっていく。

 今どのくらいの距離を潜っているのか見当もつかないが、位置関係的にはほぼ真っ直ぐ下へと進んでいるみたいだ。

 

 時間をかけて進めば、金色の線はもっと太くなり、直径がドラム缶より太くなった。

 周囲を見渡すと、遠くに同じような線が何本か延びているのが見える。それぞれの距離も離れているので、各エリアごとに纏まっているんだろうなと思う。

 

 さらに先に進み、線の合流が繰り返され、目に見えて本数が少なくなってきた事で、俺はそろそろ大元に着くんだろうと予想する。

 と、同時に視界が少しだけ明るくなり、下から圧力のようなものを感じ視界が進みづらくなった。

 

 

 うぐぐっ! 何だコレっ!? ほとんど進めんぞ! 柔っこい壁にめり込んでるみたいだ!

 

 

 決して進めない訳ではないんだけれども、さっきよりも気合いを入れないと進めない。

 しばらくそうやって頑張っていたけど、ある地点からはどうやっても先に進めなくなった。

 周囲も薄く金色に染まっていて、それが弾力を持って俺を押し返そうとしている。正直ここに留まるだけでも一苦労だ。

 

 

 くそっ! どうしたらいいんだよっ! 全っ然進めないぞ!?

 

 

 謎の反発力に行く手を阻まれているが、お隣さんに拒まれてしまった時の反発とは何となく種類が違う気がする。この反発に何者かの意志が介在しているという事は感じない。

 でも、もう少しってタイミングでコレは、誰かの嫌がらせかと疑っちゃうね。

 

 

 なに? 何なの? まさか俺って神様か世界に嫌われてんの? やっぱ前世で何かやらかしてたんかぁ!? 誰か教えて頂けませんかねぇ!! こちとら最後のチャンスなんですよぉ!?

 

 

 色々疑問も尽きないが、俺は精神的にもう疲れていた。

 千里眼で地下に潜行する為に気を張って、なおかつ本体では氣の吸収を切らさないように注意する。慣れない作業を同時にこなし、しかも片方は命に関わるからミスれないというのは、存外強烈なストレスだったようで、疲労は限界だった。

 

 

 

 

 なのでハジけた。

 

 

 

 

 ク~ソ~がぁぁぁぁっ!!! 通せやぁぁぁぁ!!! さもなくば氣を寄越せぇぇぇぇ!!!

 

 

 上手くいかない現状にキレて、がむしゃらに前を目指す。ただそれだけに集中する。

 反発する力を手で掴み、強引に掻き分け、足で地を泳ぐようにバタつかせ、少しでも推進力を得ようともがく。

 すると少しづつ反発が減っていきスムーズに進めるようになっていく。

 

 進めることに満足し意気揚々とまた氣の流れを遡り始めて、はたと気づいた。

 

 

 手足ができてるぅ!!? なにコレェ!?

 

 

 視界に入る半透明の手を見て疑問に思い、進みを止めずに全身を見回すと、半透明の身体が出来ていた。しかも赤ん坊サイズのだ。

 慌てふためきながら本体に意識を向け、肉体があるかを確認する。相変わらず肉体は存在して、隣の子と手を繋いで氣を分けていた。

 

 

 どうやら肉体を失ったとかではないみたいで、かなりホッとしたわ。

 

 




日記

何か先月から結構体調が悪いのだ!!(半ギレ
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