もう何もかもが分からない尽くしだけど、何か出来ちゃった精神体みたいなのはかなり便利だった。
手を掻き分ければ周囲の氣から受ける圧力を分散させるし、掴み取れば掻き分けたそれを吸収することも、しないこともできる。特段、この遠隔吸収によって本体自体への恩恵があるわけでは無さそうだが、氣を吸収する度に心持ち精神体が成長している。まあ、ほんの気持ち程度の誤差なんだけども。
足も掻くように動かせば推進力を生むから、もっと効率のいい動かし方を模索する。どうやらバタ足よりは蹴るように動かした方が早く動けるみたいだった。これに手の動きを合わせる。
するとどうでしょう! アナタは地中を平泳ぎモドキで泳ぐ、半透明の赤ん坊に進化しました!! 実に不気味ですね!!!
客観的に考えると、ほぼ心霊現象か怪談の類いだった。これが自分じゃなけりゃ、見た瞬間に悲鳴を上げてるだろう。
だけど、こんなとこで見てる奴なんかきっと居ない。居ないったら居ないっ。だから気にすることなんかないんだっ……!
お隣さんの精神世界で
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さて、もうすぐ大元に着くかな?なんて思いながら、相変わらず地下を泳ぐようにしてゆっくりと潜っている俺です。
進むにつれ、周囲の氣が放つ金色の光によって少しずつ明るさが増してってるし、受ける反発の圧力も増してきてるから確実に近づいてはいるはず。
そろそろ大元を発見したときにどうするかを考えておかないといけない。全く考え無しという訳じゃないけど、若干ノリと勢いで大元を目指しているという感が否めないからね。
そもそも目指している理由は、俺たちの居る木が吸ってる氣の量を増やそうと思ったからだ。けれどどう頑張っても増えなかった。なら大元から汲んでくればいいじゃんっていうノリで今に至っている。
結局の所、金色の線に流れる氣の量を増やせればいいんだから、今俺への圧力になってるこの辺の氣を集めて操作して流せばいいんだろうけども、それでも量が足りるのか正直不安だ。流れていく内に減衰とかされて、俺たちまで届く量が減ったら目も当てられない。
だからもっと根本的に氣が多く存在するであろう、まだ見ぬ氣の大元へ向かってる訳で。
なら俺がやることは一つ、そこがどんな風になってるかは知らないが、そこから氣を操作して、途中で多少減っても問題ないくらいの量を俺たちまで届ける。ただそれだけだ。
なぁに、今のこの精神体の俺なら余裕余裕!ちょっと分けて貰うだけだかんな、見つけちまえばこっちのモンよぉ!
なんて余裕ぶっこいてたこのときの俺は、浮かれポンチのお馬鹿さんだった。
ある時ふと、少しずつ見通せる距離が長くなってきたことに気付いた。さっきまでは3メートルくらいだったのが、今じゃ倍くらい先が見える。
果たしてこれは周囲の輝きが増して明るくなったせいなのか、精神体が成長して千里眼がレベルアップしました的なそれなのかがわからない。しかもまだ明るさは増してるし、見える距離も延びている。
何かと便利だから順調に能力が成長してると思いたいが、ホントのところはどうなんだかなぁ。なにもわかんねえ。ゲームのステータスみたいな、何かわかりやすく状態がわかるモンは見れないもんかね。
内心でそう都合のいい物なんかないだろうなと思いながら、太さを増す金色の線の側を泳いでいると、突然目の前が爆発でもしたかのように輝いた。驚いた俺は慌ててその場で進むのを止めて、両手で目元を庇う。
うわ、まぶしっ! なんだぁ!? 何が起きたぁ!? ああクソっ! 手が透けてるから庇っても意味ねぇ!
庇った所で精神体は透っけ透けの半透明ボディーなので、輝きを遮ることは出来ない。当然目蓋も同じく透っけ透けだから、俺は目が慣れるまでその場でのたうち回る羽目になった。思わぬ弱点が発覚した瞬間だった。
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しばらく悶絶していると、徐々に目が明るさに慣れてきて視界を取り戻す。
えがったえがった、なんて訛りながら安堵のため息を吐くジェスチャーをして視線を先へ向けると、延びた視認距離の先、たぶん五百メートルくらい先に超巨大な金色の川の流れが見えた。その川はいま俺の側にある氣の線なんか話にならないほど太く大きい。また、それは強烈な輝きを放っていて、まるで太陽が溶け出しているのかと錯覚するほどだ。
しかもそこから凄まじい氣の圧力を発している。
コレだってたぶん直径二十メートルくらいはあるだろうに、比べたらまるで紐みたいだ。あの川どんだけデカいんだよ? っていうか近づいて大丈夫なのアレ……? 俺、バターみたいにジュッって溶けちゃわない?
いきなり視認できる距離がバカみたいに延びたとか、なんでこんな化物みたいな氣の流れに気付かなかったのかとか、この流れが何処から来て、何処に流れてんのかが見えないくらい長いとか色々頭を過ったけど、俺はそんなの気にならないくらい、アホみたいに口を開きっぱなしでボケッと