「ようこそ、霧核対策部へー。私達は、あなた達を歓迎しますー」
霧核対策部本部で、虚坂が言った。
「──ん?あぁ、そういえば今日だったか。完全に忘れていたよ。歓迎の準備ができてなくて悪いな」
金髪に眼帯の女性は、頭を掻きながら言う。
「ふむ……なるほど、いい“オーラ”を持っている。選ばれし者たるに相応しい高貴さだ。褒めてあげよう」
銀髪の、背の高い男が続ける。
「あら、アジアの方?同じアジア出身同士、仲良くしようね」
チャイナ服の少女は、屈託なく笑って言った。
「ていうかバレさんその黒髪にベルトあげたって本当か?いくらなんでも考えがなさすぎだろ……」
緑髪マスクの青年は毒づく。カードゲームをしていた四人がそれぞれ口を開いた次の瞬間、微妙な静寂を金髪の少女が切り裂いた。
「うるっさい
狐耳の幼い少女に似つかわしくない古めかしい口調。月白と乙姫は口をあんぐりと開けたまま、閉じることは終ぞ叶わなかった。
「えっと、その、うちはこういう組織ですのでー……引かないでくださいー……」
こういうってどういうモンだよ。その言葉を、乙姫は飲み込んだ。
「かーっかっかっ!!いやはや、これはすまんのう!!お主ら新入りじゃったか!!そうならそうと疾く言わんか!!」
「言わせてくれない雰囲気だったじゃないですか……」
「童が雰囲気など気にするでない!!わしからすればお主らも元々居る奴らも糞餓鬼じゃ!!餓鬼が大人の顔色なぞ窺うな!!わかったかの?」
豪快に狐耳の少女は笑う。
「いや、テメェの方がガキだろ……」
「なんじゃと小童?お主はいくつじゃ?大して歳を食っておる面ではないのう。苦労をてんで知らん青い顔じゃ。お主のような
「あぁ?んだとテメェ……」
狐娘に煽られ、乙姫の額に青筋が浮かぶ。拳が振るわれそうになったところを、眼帯の女性に阻まれた。
「お狐様に勝てる人間などこの世にいない。命が惜しければ弁えろ」
「……ッ!!そのガキはなんなんだよ……ッ!!」
「ほう、そんなにわしが気になるか小童?よいよい、そんなに照れるな!!わしのことなら聞けばいくらでも話してやろうぞ!!」
狐娘は豪快に笑い、その右手で乙姫の肩を抱き寄せた。乙姫は離れようとするが、見た目よりも遥かに力が強く、全く抜け出せない。
「わしは
「あぁそうかよ……わかったから離せやエキノコックス野郎……ッ!!」
「おうおう吠えるのう童が!!よいぞ、わしは小童の戯言に怒るほど狭量ではないのでな!!」
玉藻は嫌がる乙姫の頭をわしわしと撫でる。そんな玉藻の手を、眼帯の女性が掴んだ。
「……そこまでにしておけ、お狐様」
「ほう、どうしたセイリア?構ってもらえんで寂しかったか?
「……別に、そういうわけじゃない」
少しだけ声に怒気を含ませ、セイリアと呼ばれた女性は呟く。
「……ああ、私はセイリア=ゴールドリンクだ。ここの実質的なリーダーをしている。誘宵学区の出身だから、あんたらの先輩といえばいいのか?そういうわけだから、よろしく頼む」
セイリアは無愛想に言うと、銀髪の男に声をかけた。
「ボクだね。ボクはベネディクト=キングワーズ。見ての通り、高貴な家に生まれた高貴な男さ。君たちもボクの高貴さを見習うといいだろう」
「うわっ、すっげぇムカつく野郎。月白あいつ一発殴っていいか?」
「ダメに決まってるでしょ。馬鹿なんですか乙姫?」
ベネディクトの高慢な態度に、乙姫はまたも拳を振り上げるが、今度は月白がそれを阻止した。
「わたしは
詩涵はそう言い、視線を緑髪マスクの青年に向ける。
「あー……俺も言わなきゃダメだよな。ロバート=ウィリアムズ。特に他に言うことはない。……これでいいか?」
「見るからな根暗じゃねぇか。やだよアタイこんな根暗の仲間と思われたくねぇ」
「そうじゃそうじゃ!!ロバは
「うるさいなぁ!!直せって言われてすぐ直せれば苦労しないんだよ!!」
ロバートが言うなり、乙姫と玉藻が煽るように野次を飛ばした。すると、ロバートは声を荒げた。
「今いるメンバーはこんなところだ。あとはラボに篭ってる科学者が一人と……出張中の学生が二人。そいつらについては追って説明する」
一同が静まった頃、やっとかと言わんばかりにため息を吐き、セイリアが言った。
「虚坂。そいつらを寮まで連れて行ってやれ。詳しい話はまた明日以降でいいだろ」
「了解しましたー。さあ行きますよー」
指示を受け、虚坂は二人を車まで連れて行った。
「……うん。色々と、言いたいことはありますけど」
「これ決めたのテメェじゃねぇって分かってんだけどよぉ、とりあえず八つ当たりさせろやコラ」
寮へと連れてこられた二人は、確かな怒気を孕ませた声色で虚坂に詰め寄っていた。
「「なんッッッでこいつと同じ部屋にしやがった(んですか)!!??」」
「そっ、そんなの私に言われても困りますー……」
そう。何らかの手違いがあったのか、月白と乙姫が同室ということになっていたのだ。互いに友情以上の感情を抱いてはいないとはいえ、年頃の男女である。何か間違いが起こったらどうするというのか。
「とっ、とりあえずセイリアさんに聞いてみますー……!!」
八つ当たりされた虚坂は、あたふたしながらセイリアに連絡を取る。
「虚坂ですー……月白さんと弦巻さんが同室になってるんですけど何かの手違いでしょうかー……?」
『いや、部屋が足りてないからとりあえず仮決めでそうしておいただけだ。……あんたの声色から察するに、やはり文句が出たか』
セイリアはさほど興味もなさそうに答えた。
『まぁ、文句が出ようが、今から部屋を空けることはできん。どうしても嫌ならしばらく弦巻の方をあんたの部屋に泊まらせるんだな』
「えぇー……私ですかー……?ならセイリアさんでもいいじゃないですかー……」
『私の部屋はお狐様のおかげで常時荒れ放題、人を上げられる状態じゃないんでな。なら周か?いや、あいつは他人を部屋に上がらせるのが嫌いだったか』
珍しく愉しげな声色でセイリアは言う。
「わかりましたよー……私がやりますよー。その代わり今度飲み行く時奢ってくださいよー?」
『ああ、後ろ向きに検討しておくとするよ』
「せめて前向きにお願いしますー……」
笑うセイリアを置いて、通話を切った。
「どうやら他の部屋が空いてないらしいですー。どうしても嫌でしたら私の部屋なら構いませんけどー……」
虚坂は、セイリアと話した通りのことを言う。しかし、
「いやぁ……ロクに知らねぇ奴と同室ってのもなぁ……いやでも…………」
乙姫は煮え切らない表情で頭を抱える。
「ん〜……悪りぃ、よく知らねぇアンタと同じ部屋になるよりゃまだ月白のがマシだし遠慮しとくわ」
「えぇ……いや、乙姫がいいならいいんですけど……なにか間違いがあっても知りませんよ……?」
「その辺は大丈夫だろ。そうなったらアタイが優しくリードしてやっからよ」
「キュン……っ」
「きっっっっっっしょ!!口で言うなや気持ち悪りぃな。ぶっ殺すぞ」
始まった。二人が口喧嘩を始めた以上、他者がそこに乱入することは叶わない。
「なんで私こんな役回りばっかなんですかー……うえぇん泣きたいよー…………」
乙姫の件がこうして終わった以上、酒を奢る話も破談になるのだろう。虚坂は今日一番大きなため息を吐いた。
「──んで、今日から学校行くんだっけか。クソだりぃなぁ……」
「露骨に嫌そうな顔しない。そもそも表向きの目的はそっちじゃないですか」
「だとしてもだよ。逆にテメェは学校行きてぇのかよ?」
「いえ、行きたくはないですけど。でも魔物とかわけわかんない奴らと戦わされるよりはまだ学校の方がマシじゃないですか?現実はどっちもしなきゃいけないわけですけど」
二日後の朝、二人は留学先の学校へ向かうため、嫌々ながら準備をしていた。
「つーかアレなんだろ?アメリカの学校ってスクールカーストとか酷ぇってんだろ?」
「映画の見過ぎ。流石に黄色人種だからって迫害とかはされないでしょ」
拳をパキパキと鳴らし息巻く乙姫を、月白は呆れたような苦笑を浮かべる。
「どーだかな。それで迫害されたらテメェどう責任取ってくれんだ?あぁん?」
「知りませんよ。仮に乙姫が迫害されたとしてもそれは乙姫の態度が原因でしょうし僕は擁護しませんよ」
「かーっ、冷てぇ野郎だなテメェは。だからモテねぇんだよ」
「モテるモテないは関係ないでしょ。それに、それを言い出したらあなただって大してモテてないでしょうに」
またも低レベルな口喧嘩が勃発する。が、このまま続けていけば初日から遅刻は間違いない。仕方がないので、二人は適当なところで切り上げた。
「まぁ、なるようにしかなりませんよ。せめて余計な揉め事は起こさないでくださいね?」
「テメェはアタイを何だと思ってんだ?」
「余計な揉め事を起こすのが趣味のろくでなし、ですかね?」
「よしテメェ表出ろ。ここで余計な揉め事起こしてやるよ」
「時間ないんでやめてください。今のは僕が悪かったです。すみませんでした」
平身低頭。月白の不用意な発言でまたも火種が生まれるが、それはすぐに鎮火された。
「あぁ〜……大人しく清楚系お嬢様で通すの辛ぇ〜……暴れてぇ〜…………」
「どうどう。せめて学校終わるまでは取り繕ってください。終わったらいくらでも僕をおちょくってくれて構いませんから、ね?」
何とか問題も起こさず昼休み。二人はカフェテリアに赴いていた。凶暴な本性を何とか覆い隠してはいたものの、乙姫の我慢はそろそろ限界に達する。乙姫は、このフラストレーションをやけ食いで解消しようと考えていた。
「っつーか、なんで誰もあの辺の席座らねぇんだ?空いてんのによ」
「座らないってことはそれだけの理由があるんでしょ。座ったら魔物に食べられるとか。……って人が言ってる側から座りに行くんじゃありませんよバカが!!」
不自然に空いている席に、乙姫は我が物顔で座った。周囲の視線が、乙姫に集まる。
「あ?なんか悪りぃことでもしたか?」
「なんらかの理由があって座られてないって言ってるでしょもー!!人の話聞きなさいよバカー!!」
「誰がバカだコラ。ぶん殴られてぇのか?」
「別にぶん殴ってもいいですけどさっさと離れましょうよ。何が起こるかわからな……」
次の瞬間、その場の空気が一転する。
「おい、
背後に現れた肩幅の大きな男の一人が言った。
「……あ゛?」
侮辱の意を最大限に込められた男の問いに、乙姫は額に青筋を浮かべて睨み返す。
「バカ乙姫!!すみませんこいつバカでルールとか何も分かってないんですよ……許してやってください!!ホラ乙姫もさっさと退いて頭下げる!!」
月白が必死で頭を下げるが、乙姫は退こうとする素振りも見せない。
「グックにここに座る資格はねえ。退きな。……いや待て、傷物だが顔と胸はいいじゃねえか。俺たちと遊んでくれるなら考えてやってもいいぞ」
男は、下卑た視線を頭から胸へと移していく。次の瞬間、立ち上がった乙姫の爪先が、男の顎を蹴り抜いた。
「あガッ!?」
「きめぇんだよファッキン
冷たい声で言い放つ乙姫に、周囲の人物たち──特に、月白の口があんぐりと開かれた。
「調子乗んなクソビッチがァァァ!!」
「ほら言わんこっちゃない!!乙姫っ、あなたバカでしょ!?バカを超えたバカ!!なんでそう余計なことしかしないんですかドバカぁぁぁぁ!!」
男たちが、一斉に乙姫と月白に飛びかかる。これでもいくつもの死線をくぐり抜けてきた二人だ。決して捌けないことはないが、面倒ごとを避けたいと言った側からこれだ。月白の絶叫が響いた。
「やめろッ!!昼飯時に騒々しいッ!!」
乙姫のボディブローが男の懐に沈む直前、月白の爪先が男の股間を蹴り潰す直前に、一際大きな声が響いた。声を放った主──筋骨隆々で背の高い男は、男たちを自分の後ろに下がらせる。
「済まねぇな、おれの取り巻きがお前らに迷惑をかけた。雑魚にいちいち構うなってルールも守れないバカどもはおれが叱りつけておこう」
「あ?んだコラ、テメェも喧嘩売ろうってのか?」
「力ある者は弱者を守る。当然のルールだろ?……ん?待て、そこの黒髪、一歩前に出ろ」
男は月白を一歩前に出させると、制服につけていたピンバッジに視線をやった。
「そのバッジ……公安か。おこぼれ狙いのハイエナに優しくする必要もあるまい。おれの気が長いうちに目の前から消えろ」
声色を冷たいものに変え、男は言い放つ。
「あ?んだ、テメェ……ッ!!」
「……行きましょ、乙姫。僕も、こんな居心地の悪い空間にいたくありません」
二人は、重い空気の中、カフェテリアを出て行った。
「──あぁ、あんたらを公安と呼んだとなると、そいつは民間の魔物狩りだろうな。私たちとあいつらは仲があまり良くないからな」
放課後、そそくさと霧核対策部に戻り、その話をすると、セイリアが言った。
「民間……って言うと、僕たち以外にも魔物を倒す人たちがいるんですか?」
「そりゃあいるさ。逆に聞くが、うちの連中だけでアメリカ全体をカバーしきれると思うか?この少人数体制だぞ?」
「そりゃ、無理でしょうけど……」
セイリアは勝ち誇ったように笑う。
「魔物と契約していない連中はいるにはいるが、高位の魔物にはまるで歯が立たん。あんたが前に戦った蜘蛛も、うちで相手できるのはお狐様と私、あとは虚坂くらいだぞ?」
「あれ、そんなに強かったんですか?」
「ま、それなりにな。さて、学校に行って疲れてきたところだと思うが、ここでセイリア先生の授業タイムといこうか。弦巻は……いない?」
「めんどくさそうだからと寮に戻りました」
「あいつは……随分な問題児だな……」
大きなため息の後に、セイリアはこほんと咳払い。
「仕方ない。あんたには私から教えるが、後であいつにも伝えておけ。魔物の戦闘能力の区分について話す」
月白は席につき、セイリアの話を聞く。
「魔物は、基本的にDからAのランクに分かれている。Aに行くにつれて霧素の保有量、単純に言えば戦闘能力が高くなっていく。番外としてD未満の雑魚がEランク、Aにはとても収まらない強さの魔物がSランクに分類されるが、こっちは後回しでいいだろう」
セイリアは、分かりやすく魔物のランク区分について書いていく。
「D〜Cの中でも弱い魔物は、さっき言った魔物と契約してない連中でも二、三人でいけばまず負けることはない。が、ある程度を超えた時点でそいつらでは太刀打ちできなくなる。そんなわけで、C以上は基本的に魔物と契約してるやつを向かわせることになってる」
「あの、質問なんですけど……バレットさんはどこに位置するんですか?」
「Cの上位。お狐様を除けばウチで二番目に強い。ちなみにお狐様は番外のSだな」
少し誇らしげにセイリアは言った。
「あんたが前に戦った蜘蛛はBの中位、その中のちょっと下くらいだな。本来、あの強さの魔物が出ることは珍しい。特に、市街地ともなるとな」
「……確か、魔物って人を食べて強くなるんですよね?なら、市街地の方が出るんじゃないですか?」
「普通はそれだけ強くなる前に狩られるんだよ。それに、人の多く集まる場所は基本的に結界のようなものが張られてるんだ。新しく強い魔物が生まれないようにな」
セイリアは頭を掻きながら、面倒そうに言う。
「ちなみに、C以上は大体、その魔物と同等級の魔物と契約している魔物狩りを向かわせることになってる。……あんたを除いてな」
「あのドライバーがあるから、ですね?」
「そうだ。B級中位程度なら難なく撃破できたんだろ?出ないのが一番だが、もしまたB級が出たらその時は頼むぞ。あの完勝がビギナーズラックじゃないと証明してくれ」
セイリアがそう告げると、ブザーが鳴った。魔物の出現を告げる音だ。
「ランクCか。今手が空いてるのは……月白、ロバートと一緒に向かってくれ」
「セイリアさんは来ないんですか?」
「今虚坂がいないから指示を出せる奴がいないんだよ。安心しろ、もし釣られてB級が出てきたら私も向かう」
そう言われて、月白はロバートの車の助手席へと乗り込んだ。
「アレが対象の魔物ですね。それじゃ行きま──」
「月白、待て。この赤いマークがわかるか?」
「いえ、その辺は何も聞いていないので……」
現場に到着した。一般市民はあらかた避難していたようで、人影は一つを除いて見えない。
「マジか。セイリアさん、そこも話しとけよ……じゃあ俺から説明するけど、これは民間のハンターがマークしてるから手出すなって意味な。一応、状況が悪化した時のために俺たちは現場に残ることになってる」
必要な説明をしていないセイリアにため息を吐きつつ、ロバートは言う。
(あぁ、あの人が言ってた『ハイエナ』ってそういうことでしたか)
「そういうわけだから、しばらく様子を見るぞ。民間の連中、手柄横取りされるとキレるからな」
助手席の窓から、ちらりちらりと外を盗み見る。
「……あれ、さっきのあの人じゃないですか」
「お前になんか言ってきたってやつか?あの制服からすると……ガブリエル会のやつか。この中にそいついるか?」
制服から例の男の所属する組織を特定したロバートは、月白にその組織のメンバー一覧を見せた。
「……いますね。この……ジャック=K=トップランカーさんが彼のはずです」
「ジャックか……聞いたことはないな。有名なハンターとかじゃないみたいだが」
窓の外では、ジャックが蛸のような魔物──オクトパス・ヴェイダーを追い詰めている。彼が腕を振るうたびに、五つの斬撃が放たれ、オクトパスの足を切り刻んでいく。
その光景を、どこか遠くから眺める影があった。それも、月白たちとは別に。
「──つまらない。もっと、楽しくないと……だめ」
その少女の指先から、莫大なエネルギーが放出された。それは瞬く間に空気に溶け、オクトパスのもとへと辿り着く。次の瞬間、オクトパスを中心に爆発が起こり──一瞬前までとは比較にならないほどのオーラを纏った魔物が、そこに佇んでいた。
「おいおいマジかよ……
「……確か、魔物のランクと遣わされるハンターが契約してる魔物のランクは同じなんですよね?それは、民間でも同じですか?」
「あぁ。……だが、それでも、俺たちは手出しできない。あいつが助けを求めるまでは」
頭を掻きむしり、ロバートは言う。
「……でも、そう言ってられる状況じゃありませんよね。僕は行きます」
「お前……その勝手な行動の責任を誰が取ると思ってるんだ!!」
「じゃああなたは人を見殺しにして、その責任を取れるって言うんですか!?何もできずに目の前で人が死ぬのがどれだけの苦痛か、あなたに分かるんですかッ!!」
止めようと肩を掴んだロバートの手を跳ね除け、月白は叫んだ。
「ふざけんなよ……セイリアさんからもなんか言ってやってくださいよ!!」
ロバートは怒りのままに、セイリアに通信を繋いだ。
『状況はこっちでも把握してる。ルールに則れば月白の考えには賛同できん』
「ほらセイリアさんだってこう言ってる!!お前の勝手な行動は許さないからな!!」
『人の話は最後まで聞けよウィリアムズ。私は規則に則ればって話をしたんだ。規則ではなく私の倫理に基づいた結論はこうだ。──派手にかませ月白、全責任は私が負う』
セイリアの言葉が月白の背中を押す。月白は、ドライバーを装着し、構えを取った。
「変身ッ!!」
『Wilderness Sniper! Barrel XO!!』
そして飛び上がり、ジャックを拘束していた触腕を引きちぎり、彼を解放した。
「オマエは、公安の奴か……?ふざけるな!!おれはお前のようなハイエナの助けなど……」
「あなたが公安を毛嫌いしているのは知ってます。その背景までは知りませんけど。……でも、あなたが公安を嫌うのと同じくらい、僕は目の前で誰かに死なれるのが嫌いなんですよ。だから……悪いですけど、大人しく助けられといてください」
XOはそう言って、ジャックを抱えたまま大きく飛び上がると、ある程度離れた安全な地帯まで避難させた。
「その声……昼の、あいつか?」
「あいつじゃなくて月白です。月白飛鳥。恩人の名前くらい覚えといてください、ねっ!!」
XOはそう名乗り、地面を蹴ってオクトパスのもとまで舞い戻る。
『aDeRaD、aHMSiK!?』
「だから、何言ってるかわからないんですって。コミュニケーションヘタクソかよ」
『奴は「誰だ、貴様は」と言っているようだな』
「うわっビックリした!!いるならいるって言ってくださいよバレット!!」
オクトパスと相対したXOは、背後から現れたバレットに少し驚いた素振りを見せる。
「……あぁ、そういえば名乗ってませんでしたね。冥土の土産に聞かせてあげましょうか。仮面ライダーXO。あなたを狩る男の名です」
先日、スパイダーを撃破した後に、虚坂から教えられた名を、XOは名乗った。かつて、仮面を纏ってバイクを駆るハンターがいたらしく、そこから名前を取ったらしい。
「さて。……宣告しましょう。あなたの未来は、ここで途絶えるッ!!」
『Twin-ject Shooter!!』
XOの両手に、二丁の銃が出現する。それをオクトパスに向け、引き金を引いた。交互に放たれる光弾が、次々と襲いくる触手を撃ち抜いていく。
「あぁくそ、これじゃキリがない!!」
しかし、オクトパスは撃ち抜かれるたびに触手を再生させるため、XOは苦戦を強いられていた。
「バレット、何かないんですか?ガトリングになる追加パーツみたいなやつとか!!」
『無いッ!!』
「そんな自信満々に言い切らないでくださいよ!?」
『何と言おうが、無いものは無いのだから仕方ないだろう!?』
そう言い合っているうちに、触手が鞭のように振るわれ、XOとバレットは吹き飛ばされた。
『追加パーツはないが……新しく武器を出すものならある!!使え!!』
何とか着地したバレットは、ドライバーのスロットに装填されているものとはまた違った色のインジェクターを投げ渡した。ナイフのような刻印がされている。
「これは……空いてる方に挿せってことですか?」
『あぁ、相変わらず理解が早くて助かる!!』
「考査でも登場人物の心情を慮る問題はいつも満点でしたからね!!」
半ばヤケになりつつも、XOは空いているスロットにそれを装填した。
『Weapon-ject! Crossing Knife!!』
すると、二本のナイフが出現した。──二丁の銃、その銃口の先に。
「なんッッッでそこに生えるかなぁ!?舐めてんですか!?ぶっ殺しますよ!?」
『aH。iRaNMZuB!uAoRaYeTiSoRK!!』
何に使えばいいか、全く意図の読めない位置に現れたそれに、XOは取り乱す。オクトパスはそれを嘲笑うような声を上げながら、XOへと飛びかかった。
「あぁもうやればいいんでしょやれば!!クソが!!」
怒りのままにXOは引き金を引く。すると、銃口からナイフが射出され、いくつもの触手の群れを切り裂いた。
「意外と使えますねこれ……見た目最悪ですけど……」
襲い来る触手を、その度に切り裂くナイフの弾丸。XOは華麗に舞いながら、着実にオクトパスを追い詰めていく。
だが、XOは気付いていた。ナイフを放ってから再び現れるまでに、僅かながらタイムラグがあることに。そしてそれは、目の前の魔物も同じであった。
「チッ……!!」
その隙を突く触手の殴打が、再びXOを吹き飛ばした。
『aAS、oWeAaMoA、oAeSaWuK!!』
そして、無防備になったXOに、オクトパスが飛びかかる。それを阻もうとするバレットも、触手の打撃で横合いに吹き飛ばされた。
「ま、ず──ッ!?」
だが、次の瞬間、XOに向けられていた触手たちは引きちぎられ、地面に転がっていた。
「人に目の前で死なれたくないなら、自分もそうするようにしろ。……借りは返したぞ、月白!!」
ジャックが、自らの契約している魔物──『猫』の魔物の力で、オクトパスの触手を切り裂いたからだ。
「ありがとうございます、ジャックさん。……さて、一転攻勢といきましょうか!!」
XOは立ち上がり、銃を再び構えた。ナイフを射出し、オクトパスの懐へと潜り込んでいく。
「引っ掻け!!」
ジャックも、猫の力を使い、XOを援護する。
『この状況でいつまでも倒れてられん。オレも、できることをするとしよう!!』
そこにさらに、バレットの光弾も加わる。押されだしたオクトパスは、形勢逆転のために黒いエネルギー弾を放とうとするが、
『吹き飛べェッ!!』
放つ寸前に、バレットの頭部から放たれた極大の光弾を受けたことにより、そのエネルギーの制御が効かなくなり、大爆発を引き起こした。爆風で、オクトパスの体が宙に舞う。
『今だアスカ!!ドライバーのインジェクターを押してからアクティベーターを押し込め!!』
「了解ッ!!」
XOがドライバーを操作すると、胸のアーマーで増幅された霧素が、両脚に収束していく。そのまま地面を蹴り、XOは大きく飛び上がる。
「すみませんけど……死んでくださいっ♡」
『Re-Inject! Barrel Crossing Overdrive!!』
XOのキックが炸裂し、オクトパスは四肢を吹き飛ばして爆散した。その核が霧に溶けて逃げようとするも、高圧の霧素に潰され、砕け散った。[newpage]「月白。……おれは公安が嫌いだ。人が死にそうになっていても、救援要請が出されていないからと見殺しにする、そんな連中が大嫌いだ」
戦いを終え、瓦礫に腰掛けながら、ジャックは言う。
「昔、おれの仲間は魔物に殺されたんだよ。公安の連中は、その場にいながら何もしなかった。だから許せなかった。人助けの一つもせず、人が狩り損ねた魔物を横から掻っ攫うハイエナどもが」
フゥ、とジャックは息を吐いた。
「だが、オマエはそうじゃなかった。……公安のことは嫌いだが、オマエのことはそうでもない。……今後も、機会があればオマエに協力を頼むかもしれん。その時はよろしく頼むぞ、ブラザー」
そして、サムズアップしてジャックはその場を去った。
「いえ、あなたのブラザーになった覚えはありませんが……」
「クソッ!!なんでアイツはあんなにみんなに認められてるんだよ!!俺だって……俺だって……!!」
その頃、ロバートは車内で呪詛を撒き散らしていた。
「バレットも、セイリアさんも……アイツさえいなければ、今頃俺は……!!」
そして、その表情は卑屈な笑みへと変わっていく。
「そうだ……アイツさえ、いなくなれば…………全ては丸く収まる!!」
「あーあ。また失敗作かぁ。つまんないの」
どこかの真っ白な部屋では、身体中に痣のできた少女が独り言ちていた。
「早く見つけないと。……わたしの人生、めちゃくちゃにされる前に」
狂気的な笑みで、少女は自らの手首にカッターナイフを充てがい、真一文字にそれを引いた。
「……あの毒親に、裁きを下すために」
次回予告
乙姫「おっ、リーダー気取りのジャック君じゃ〜ん!!元気〜??」
ジャック「オマエは……月白のバーターの」
乙姫「誰がバーターだコラ。一発シメられてぇのかなぁ〜??」
ジャック「おれは月白が好きなだけでオマエら公安は大嫌いなんだ。そこを履き違えるな」
乙姫「好き……?あ、あぁ、そういう趣味ね。アタイはそういうの否定しねぇけど……な、なんつーか……が、頑張れよ!!おう!!」
ジャック「おい待て、オマエ何か勘違いして……って待て!!逃げるなお前!!おれをファゴット扱いするんじゃねぇぇぇッ!!」
月白「次回、仮面ライダーO’!『GIRL LOVED BY』!」
乙姫「やめろ追っかけてくんじゃねぇ気持ち悪りぃんだよサノバビッチ!!」
ジャック「誰がサノバビッチだファッキンジャップ!!トーキョーワンに沈められてぇか!?」
月白「ほんと、品のない奴ばっかですみませんね…………」
墓脇です。第2話に色々と詰め込みすぎた気もします。
というわけで、霧核対策部の面々とジャックが今回初登場です。
第一部では執行衛兵第六六支部の面子をあまり活躍させられなかったので、今回はその反省を活かしたいと思っております。
今のところは特にロバートくんの動向に期待ですね。
カフェテリアのシーンは完全にフォーゼ 1話のノリでしたね。書いてる時合間合間にフォーゼ見てたんですけど多分それのせいだと思います。
ちなみにO’は学校の描写に重きを置いていないので、学校から始まる関係性のキャラクターはジャック以外には出ないと思います。まだどうなるかわからんけどね。
次回はタイトルにもあった通り女の子キャラクターがメインに絡んできます!
乙姫かな?虚坂かな?それとも今回出てきた三人かな??誰なんだろ〜!!楽しみだな〜!!