仮面ライダーO’   作:墓脇理世

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第6話「PRESSURE IMPACT」

『……いや、すまないな。ワタシが非力なばかりに、キミたちをいたずらに危険に巻き込んでしまったようだ』

「それは構わないのだがね、ハンマー殿」

 月白たちは基地に戻り、ハンマーの事情を聞いていた。

「……教えてください。あなたは、なぜサボテンに追われていたんですか?」

『そうだね。……ワタシは、サルヴァドールに保護されていたのだよ。ワタシ自身も争いはあまり好みではなくてね、彼らの共生思想には同調していたのだが』

 ハンマーは、逃走に至った経緯を語り出す。

『……彼らは、魔物との共生を、本来の目的の手段として利用しているだけだったのだよ』

「……その目的というのは、何だ?」

 セイリアの問いに、ハンマーは心底哀しげな声色で応えた。

『……政権の掌握。彼らは現大統領を暗殺し、配下の魔物を成り代わらせることによって、このアメリカという国を丸ごと手中に収めようとしているのだよ』

「アメリカを、丸ごと?フッ、甘いね。そのようなことが出来るはずがない。第一、大統領が死亡したとしても、その後継は……」

『だから、配下の魔物にすり替えるのだ。そういう変身能力を持つ魔物が、サルヴァドールにはいる。総帥であるバルザスが契約している魔物だ。……だから、ワタシはこれを伝えようとあそこを抜け出したのだ』

 ハンマーは、悲痛な面持ちで言う。

「待ってください。じゃあ、乙姫と一緒にいた音符頭の魔物は?」

『彼もまたワタシと共に逃げ出した魔物だよ。人語こそ話せんが、争いを嫌う優しい性格でな。それを知るなりすぐにワタシと共に逃げることを選んだよ』

 ハンマーは、柔らかな声で言った。

「なら、最後に一つ質問だ。──大統領暗殺の件、日程はどうなっている?」

『二日後の午後十時。彼らは、ホワイトハウスに侵入して大統領を葬る気だ』

 


 

「あっはは!!悪いなぁバルザスの旦那!!ハンマーも音も取り逃したんだジョイッ☆」

「まぁ、それは構わないがね。あの作戦が外部に漏れたところで、我々が追う痛手などタカが知れている。それに……」

 魔物を操る者たちの潜む『巣穴』で、ジョーイは悪びれもせずにバルザスに頭を下げた。

「……漏れたとしても、奴らに止めることはできない、か。考えたな」

「えぇそうでしょう。あなたにも分かりますか、この趣が。目的を果たすためならば、手段など選ぶまい」

 バルザスは悪どい笑みでそう言うと、大牙にタブレット端末を手渡した。

「これは、何だ?」

「ギフトの霧素を記録した端末だよ。部下が偶然にも彼女と同衾することになったそうでね。折角だからと霧素のデータを取らせたのだよ。これで、彼女の霧素の痕跡を追うことができる」

 大牙の問いに、バルザスは笑いながら答える。

「ジョーイくんのお陰で、彼女の霧素のストッパーが外れ、底無しの霧素が際限なく溢れ出している。それは、君たちにとっても好ましい状況のはずだ。そうだろう?」

「まぁな。……ヘラクレスが、新しく魔物を生み出したとも聞いている。それを育てさせるのに使えはするだろうな」

「──あぁ、確かアトラスくんだったか。ヘラクレスに、アトラス。フフ、少年心が刺激される名じゃあないか」

 新たな魔物の誕生を祝し、バルザスは笑った。

「あぁ、失礼。部下からの電話だ。私はこれで失礼するが……上手くやってくれたまえ、諸君」

 電話の音を聞くと、バルザスは『巣穴』の出口へと向かった。携帯の画面には、“Ms. Azalea”と記されている。

「私だ。桃代くん、何か用かね?」

『はい。……総帥。霧核対策部が、例の作戦の詳細を知りました。あのハンマー頭が漏らしたようです』

「成程、やはりか。だが構わんよ。連中の目的が達成されることは、絶対にあり得ないのだから」

 桃代の報告を聞き、バルザスは口角を僅かに上げた。

『絶対、と言われると技術者としては否定したくなりますが……』

「あぁ、君は絶対という言葉を嫌っていたね。これはすまない。だが認めたまえよ。世の中に、絶対というものは存在しているのだと」

『……心情としては認めたくありませんが、事実としてはそうなんでしょうね』

 不服そうに、桃代は返す。

「あぁ、ギフトの霧素の件、助かったよ。『巣穴』の彼らも喜んでいた。彼女に関してはこれからも頼むよ、桃代くん」

『……はい。総帥がお望みとあらば、あたしはこの命を絶つことも惜しくはありません』

「そこまでしろとは言わないがね。……とは言え、それだけの覚悟があることは素晴らしい。君のような部下を持てて、私はとても幸せだよ」

『お褒めに預かり、光栄です。それでは、潜入任務に戻ります』

 淡々としているが、確かに喜びを滲ませた声で言った桃代が、そのまま通話を切った。

「あぁ、本当に……私に心酔する馬鹿というのは、扱いやすくて幸せだよ。せいぜい、私を新たなステージに押し上げるために働いてくれたまえ」

 携帯をポケットにしまうと、バルザスは心底見下したような声で言う。そのまま、部下を待たせている場所にまで歩いていく。その足は、一輪の花を踏みつけようとも止まらず、前へと進んでいった。

 


 

「……なぁ、なんでテメェはあの時アタイを庇ったんだ?」

 その頃、乙姫は自らを庇って怪我をした魔物の様子を見ていた。

『oMeD自分、iAaNRKW』

「いや、魔物語じゃわかんねぇよ……」

 しかし、魔物の言葉は、理解しようとしてできるものではない。『音』の魔物──ビート・ヴェイダーの返答は、虚しくも宙を舞った。

『そいつは、自分でもわからん──と言っている』

「バレットさん……」

 見かねたバレットが、通訳として介入する。

『『音』。オマエは、争いが嫌いだと言ったな?だから、ハンマーと共に逃げ出した。そして、そのことを誰かに伝えようとして……奴らに追われる身となった』

『aDuAoS。eDRoS、uRiAeTa-AA』

『そして、道中にオトヒメと遭遇し、敵の攻撃の射線上にオトヒメがいたから、巻き込まないように庇ったというわけか』

 バレットが言うと、ビートは静かに頷いた。

「……うが。バッッッカ野郎が!!テメェはアタイを舐めてんのか!?」

 すると、怒りを露わにして、乙姫は叫んだ。

「テメェは追われてたんだろ!?ならアタイに助けを求めろよ!!勝手に巻き込んだんなら、舞台から下ろそうとするんじゃなくて無理矢理にでもアタイを引きずり上げろや!!」

 犬歯を剥き出しにして、ビートの胸ぐらを掴む。

「確かにアタイはクズかもしれねぇ。だがな、敵に追われてる奴に庇われて命拾いした助かったって喜ぶほど腐ってもねぇんだよ、クソッタレ」

 握った拳を震わせて、乙姫は言った。

『iK、aHiM……』

「テメェ、ムカついてんだろ?キョーセーだなんだって綺麗事並べてバカを騙すクズどもに。そんで、そのカスにまんまと騙されてたテメェ自身に。だったら、ここで男見せやがれクソ野郎」

 そして、品のない笑みを浮かべ、乙姫はビートに迫る。

「アタイはムカついてるぜ。アタイが霞むくらいに性根の腐ったクズに好き勝手されちゃあ、そりゃあムカつくに決まってるよな?それに……ここでいっちょ大統領サマの暗殺とやらを止めたら、それなりのリターンがありそうじゃねぇか?」

 右手の親指を人差し指と中指の間に挟み、乙姫は笑う。

『……オトヒメ。それはサムズアップではなくフィグサインではないか?』

「あ、やべ。素で間違えた」

 バレットが指摘すると、こめかみを掻きながら、乙姫は手の形を親指を立てたものに変えた。

「……だが、アタイに魔物を相手取るだけの力はねぇ。雑魚ならともかく、あのサボテン野郎とかとやり合おうモンなら、まぁ死ぬわな。仕方ねぇ。魔物とロクに契約してねぇわけだからな」

『オマエが選り好みするからだろ?公安の魔物全部趣味じゃないとか言い出した時には驚いたぞ』

「それはまぁご愛嬌ってこった」

 バレットが茶々を入れるのを軽く流し、乙姫はビートに向かってその手を伸ばす。

「だから、アタイと契約しろ。テメェに拒否権はねぇ。勝手にアタイを助けてアタイをイラつかせた罰だ。──当然、受けてくれるよなぁ?」

『……uH。aNDNnNoAaNKTTiS、aHiMK』

 ビートは笑みに似た吐息を漏らし、乙姫の手を取った。その瞬間、二人の掌の間に陣が浮かんだ。二人は、迷わずそれを握りしめた。

『aH契約、aTeRaSTH。aRKiToNeRoA、eAaKuTiNKuS』

「相変わらず何言ってるか分からねぇが……テメェのパッションはビンビンに伝わってキたぜ。そんじゃ、明後日に向けて特訓と洒落込むか!!」

 


 

 そして、二日後の夜。

「さて……向こうはどう出ますかね?」

 月白たちは、大統領暗殺阻止のため、ホワイトハウスの警備についていた。もっとも、当の大統領はというと、話を聞くなり虚坂と玉藻を護衛に指名し、影武者を置いて一目散に逃げ出したのだが。

「わたしとしてはビビりすぎな気もするんだけどね。まぁ、命が狙われてるってなると焦りもするか」

「加えて、一定以上の戦力を有していることが明確な相手が自分を狙っているとなれば、そう考えるのも必然と言えるだろうね」

「それにしたってやりすぎだろ。いくら俺たちが国の直属とはいえ、証拠も何もないのに簡単に信じすぎな気がするけどな。あのオッサン、壺買えって言ったら買うんじゃないか?」

 詩涵・ベネディクト・ロバートは、そんな大統領を揶揄するように軽口を叩き合う。

「はは、当人がここにいたら大目玉を喰らいそうなことを言うな。ま、私もそう思ってはいるが」

 セイリアは、三人を諌めつつ便乗した。

『無駄口はそこまでにして。……アンタ達の周りで霧素反応が高まってる。すぐに魔物が現れるだろうし、気をつけなさいよ』

 緩みに緩んだ空気を、桃代の通信が締め直す。直後、空中に走った亀裂から、骸骨のような外見をした魔物が群れを成して現れた。

「──総員、迎撃しろ」

 それに対抗するように、セイリアが言った。壁に開いた穴から大量の潮水が吹き出し、魔物たちを飲み込んでいく。

「詩涵くん、キミはボクたちまで巻き込む気かね!?」

「あ、ごめん。素で加減間違えた」

「間違えたで済む問題じゃないだろ……」

 力の加減を間違えた詩涵に、二人は呆れたような視線を向ける。

「あーらら。私様が手間暇かけて育てた雑魚を蹴散らしてくれちゃってぇ。ちょっとムカつくじゃねえかよ」

 次の瞬間、少女の粗野な言葉がホワイトハウスの廊下に響いた。月白たちは、声のする方に振り返る。

「そんなビビんなって、政府のワンワンちゃん一同。こんなミニマムでキュートな私様にビビるなんてそれこそ失礼だろうがよ?」

 赤髪の少女──イースは、髪をくるくると弄りながら笑った。

「何がミニマムでキュートだよチビガキが。つーか前髪で顔半分隠してるやつの八割はブスってデータ出てんだよ。つまりテメェはチビでブスだ、クソガキ」

「傷モノのくせに言ってくれるねぇ。私様はその二割に含まれる超絶美少……っておい!!人が喋ってる最中に蹴りかかるなよ眼帯!!」

 乙姫が挑発すると、イースはまんまとそれに乗ってきた。バチバチと視線をぶつけ合う二人に割り込むように、セイリアがハイキックを叩き込む。

「すまんが、あんたみたいな子供の相手をしてる暇はない。こんな時間だし、子供は帰って風呂入って寝てるんだな」

「そういう訳にもいかんのよ。私様のお仕事はアンタらの足止めでね。そういうわけで……へいカモン、私様の愉快な仲間たち」

 セイリアに顔の中心を蹴り飛ばされたイースは、赤くなった鼻の頭を擦りながら指をパチンと鳴らした。すると、再び空に亀裂が走り、そこから例のサボテンとクワガタのような魔物、そして無数の骸骨の魔物たちが出現する。

「さぁさぁ好きに楽しもうぜ!!パニックナイトの前夜祭の始まりだァッ!!」

 そして、魔物たちが、月白たちへと襲いかかった。

 


 

「カクタス、アンタは仮面の黒髪をヤれ。アトラスは私様と一緒に雑魚の蹂躙といこうじゃねえか」

『aTiS了解』

『ハァイッッ!!心得ましたァ!!イース様の御心のままにィ!!』

 イースが二人の魔物に指示を出すと、それぞれが頷き、自分の敵へと向かっていく。

「なるほど、リベンジマッチってところですか。望むところです。あなたが僕に勝てる未来など天地が翻っても訪れないと、その霧核に刻みつけてあげますよ。──変身」

『Wilderness Sniper! Barrel XO!!』

 対する月白も、XO・バレルフォームに変身してカクタスを迎え撃つ。

『Twin-ject Shooter!』

 二丁拳銃・ツインジェクトシューターを両手に握り、XOはカクタスより先に動いた。

「もうあなたの動きは見切りました。目障りですし、さっさと死んでください」

 そして、ドライバーのジェクターを抜き取り、銃の片割れに装填した。二丁の銃の銃口に、莫大な霧素がチャージされる。

『Shooting Overdrive!!』

 放たれた二発の光弾が、カクタスの体を浮かし、その肉体を撃ち抜いた。爆煙が上がる。だが、そこには、カクタスが五体満足のままに佇んでいた。

『aNnNaKiK』

 光弾の当たったところは、確かに黒く焦げ付いていて、少し凹んでもいる。だが、逆に言えば、与えられたダメージはそれだけということだ。

(着弾の瞬間に棘を出して防いだ、ってわけですか。……なら、それすらさせないだけの速さで叩き潰すまで)

 相手の能力を考察し、XOはドライバーに別のジェクターを装填した。

『Lightning Swordsman! Samurai XO!!』

 フォームチェンジを完遂させると同時に、ジェクターをツインジェクトブレーダーに刺しなおし、刀身を抜く。

『Slashing Overdrive!!』

 雷光のごとき速さで、カクタスの身体を切りつける。確かに切った手応えはあった。しかし、次の瞬間、背後からの衝撃に、XOは突き飛ばされた。その衝撃を放ったのが誰かは、言うまでもない。

「……ッ、想像以上に強くなってるようですね……ッ!!」

『aGeAaGnNaK、iAaMA』

 カクタスの拳が、XOに追撃を叩き込む。

『まったく、世話の焼ける……アリスの安全のため、貴方に死なれては困るのですが』

『頼りにならん男だ。それでオレの契約者が務まるのか?』

 ドライバーにパンチが繰り出される直前、斬撃と光弾がカクタスの体を浮かせた。

「ありがとうございます、助かりました!!」

 XOを尻目に、バレットと風刃乃はカクタスへと飛びかかる。

 

 

「そういえば眼帯のアンタ、アニキがアンタのこと面白いって言ってたんだけど、自分のこと面白いって思うかい?」

「知るか。そもそも私はあんたの兄など知らん」

「いや知ってるはずだぜ?なんせ……アンタとサシでヤり合ったってんだからよ」

 イースは、セイリアと蹴り合いながら言った。戦闘能力は互角。魔物の肉体すら吹き飛ばす蹴りでかすり傷しかついていないことから、セイリアは、相手がただの人間ではないとなんとなく理解していた。

「……まさか、あのジョイジョイうるさい男のことか?」

「せいかーい!よく分かってんじゃんかよー!!」

 繰り出された掌底をひらりと躱し、セイリアは問う。すると、目を見開いてイースは笑った。

「私様にも見せてくれよ、そのアンタの面白いところってヤツをよォ!!」

 

 

『アッハハ!!四人がかりでもぼくには勝てないよーッ!!』

「チッ……すばしっこい奴め……ッ!!」

 詩涵、ロバート、ベネディクト、そして乙姫は、クワガタの魔物──アトラスを相手に、苦戦を強いられていた。

「クッ……!!絡みつけッ!!」

「鯨、超音波」

『どれだけ足掻いても効かないもんねーッ!!』

 ベネディクトの蔦と、詩涵の鯨。二体の魔物の力を使っても、アトラスは怯まず突き進む。

「チッ……ビート、もっと出せねぇのか!?」

『aNuAiAoW無茶。aD限界oMeDRoK!!』

「何が限界だ馬鹿野郎が……アタイの魔物ならもっと根性見せやがれ!!」

 乙姫はビートに叫ぶが、状況は好転しそうもない。

(最悪の状況だが……さて、どうすっか……ッ!!)

 


 

 バレットたちも、カクタスの防御力を前に苦戦を強いられていた。

『aHH。aKiRaWoAuAoM?』

『あの防御を突破しなければ、どうにもならなさそうですね……』

 そう呟く風刃乃の顔に、カクタスの拳が迫る。だが、それは風刃乃を吹き飛ばすことなく、上部からの衝撃によってへし折られた。

「……ったく、遅いんですよ。こうして来てくれたってことは、腹を決めたってことですよね──ハマードさん?」

 その攻撃を放った張本人──サルヴァドールから逃げ出した『ハンマー』の魔物・ハマードは、腰をさすりながら言う。

『あぁ。その通りであるよ、少年。……ワタシは争いが嫌いだ。だが、望まぬ者を争いの場に引きずり出そうとする悪人を倒すためであれば、いくらでもこの戦場に馳せ参じよう』

 そして、ハマードは右の掌をXOに向けた。XOも、それに応えるように右手を伸ばす。

『契約は果たされた。──ワタシの力、好きに使ってくれ』

「わかってますよ。……防御に全振りした相手は、力押しで倒すまでです」

 ホルダーから空のジェクターを抜き、ボタンを押すと、そこにハンマーの紋章が刻印された。XOは、熟れた手つきでそれをドライバーに装填する。

『Hammer!』

「……今度こそ、本気も本気の宣告です。あなたの未来は、ここで途絶える」

 そして、アクティベーターを押し込んだ。

『Cavern Destroyer! Hammer XO!!』

 アーマーが、黄色く変化する。パワーに特化した新形態・ハンマーフォームへの変身を遂げ、XOはサボテンへと駆け出した。

『Twin-ject Presser!』

 その腕に、ハンマー型の武器・ツインジェクトプレッサーが現れた。XOはそれを二つに分割し、トンファーのように構える。

「とうっ!!せいっ!!」

 カクタスの腕を突き、側頭部を払い、そのたびに武器から放たれる衝撃が、鮮血と肉片を飛ばしていく。

『iK、aMSiK!!』

 カクタスは反撃のため拳を振るうが、その打撃はトンファーによって捌かれた。

「あなたの防御は既に破った。さあ、伐採の時間といきましょうか」

 XOは不敵な笑みでそう言った。

 

 

「クソッ、無駄に硬ぇ野郎が……ッ!!」

 乙姫は、アトラスを相手に、毒を吐く。

『さぁどーするゥ!?ぼくに負けて死にたくないよねェッ!?』

「ンだよ、煽るじゃねぇか……いいぜ、そんなにやって欲しけりゃやってやるよ」

 アトラスの挑発を受け、乙姫は忌々しげな表情で言った。

(つっても、こっちの攻撃はロクに効きやしねぇし、アタイのギターじゃ大した威力は出ねぇ……いや、待て。音を使うなら……)

 アトラスの突進を大振りな動きで躱し、乙姫は思案する。

「詩涵さァん、ちょっち音波頼むわ!!」

「何する気か知らないけど……いいよ、それでなんとかできるかも知んないしね」

 解決策を閃いた乙姫は、詩涵に超音波を使うよう指示した。詩涵は指示の通りに、鯨に超音波を放たせた。

『それはもう効かないってわかってるよねェッ!!』

「さぁ、どうだろうな?」

 乙姫は不敵な笑みを浮かべながら、提げたギターの弦を弾く。

 

 

「さぁ、終わりにしましょうか」

 XOは冷たく言い放つと、一対のトンファーをハンマーに組み直し、ドライバーから抜いたジェクターを装填する。打撃を放つ部分に、霧素が集中していく。

『Pressing Overdrive!!』

 霧素を纏った、力任せの一撃が、防御に特化したカクタスの肉体を、霧核ごと吹き飛ばした。

 

 

「ハッ……喰らいなクワガタ野郎。アタイのビートで()き狂え」

 超音波が、ギターの音で掻き乱され、周囲から一点へと同時に降り注ぐ爆音波と化す。

『なッ……これは、すごい、ねェッ……!!』

 四方からの音の波に押し潰され、アトラスの身体を中心に爆発が起こった。

 


 

『ふゥ……今のは、効いた、よォ……ッ!!』

 だが、アトラスはまだ倒れず、乙姫を睨みつけていた。

『今度はッ、ぼくの、番だ……ッ!!』

「やーめときやめときアトラスちゃん。ここで早まったら本気で死ぬぞ」

 今にも乙姫に飛びかかろうという瞬間、セイリアとの戦いで擦り傷にまみれたイースが、それを制止した。

『い、イース様がそう仰るなら……ッ!!』

「よーしよしよしいい子だねアトラスちゃん☆そんなわけだから、私様たちは失礼するぜい」

 イースがアトラスを後ろに控えさせ、飛び立とうとすると、セイリアがそこに飛び蹴りを入れる。

「ぶへっ!?おいおい不意打ちは卑怯だろー!?」

「逆に聞くが、逃がしてもらえるとでも思ったのか?」

「いや、思ってねぇけどよー。できるかできないかは置いといて、アンタが私様を逃してくれるわけねぇもんな?」

 セイリアの問いに、半笑いでイースは答えた。

「ま、アンタが逃がしてくれなくても……私様は勝手に逃げるんだけどな?」

 体勢を立て直し、懐から小型の石のようなものを取り出すと、それを地面に叩きつける。

「……ま、面白いところは見せてもらえたし、私様の名前くらいは教えてやるよ眼帯。──覚えときな、私様はイース=R=オーガス。いずれアンタを潰す女だ」

 そう言って、石から生まれた空間の揺らぎに飛び込むと、次の瞬間にはイースとアトラスの身体は霧に消えていた。

「……まぁ、ひとまずは無事解決……という認識でいいのか?」

 


 

「おう、帰ったぜアニキ」

「おかえりだジョイ☆……で、どうだった?面白かっただろ?」

「おう。魔人って話だが、その力を一切使おうとしねぇとは思ってなかったけどよー」

 アトラスを連れて帰ったイースは、『巣穴』でジョーイと話していた。

「で、そっちはどーだったんだいアニキ。あれだけお膳立てしたんだ。失敗はねぇと思うけど……よぉ?」

「こっちもこっちで成果は収めたジョイ。にしてもバルザスのダンナは酷いよなぁ。あんな酷い計画、俺ちゃんでさえ思いつかないジョイ?」

「そりゃ結構。にしても可哀想だねぇ。必死で守り抜いたと思った大統領は、既に魔物に成り代わられた後でしたってなァ!!」

 ジョーイの返答に、イースは目を見開いて笑う。

「そうだねぇ。ま、アイツは人間の腐ったところを集めたような魔物だジョイ☆性格は最悪だが、人間性だけなら抜群にある。しばらくは怪しまれずに済むだろうなぁ」

「でもよぉ、アイツ寄生型作るの手伝ってんだろ?大統領の代わりなんてやらせてたら、それこそ私様らの計画が遅れねぇか?」

「そっちはもう大丈夫だジョイ。八割くらいは完成形に持ち込んだ。後はもう俺ちゃんの努力次第ってところだ……ジョイッ☆」

 ジョーイも同様に悪辣な笑みを浮かべ、改造された霧核を封じ込めた、真っ黒なジェクターを取り出した。

「さぁって、パニックナイトまであと僅か。それまで、せいぜい人間としての人生を謳歌するんだな。──セイリア=ゴールドリンクッ!!」

 叫びが『巣穴』に響く。ジョーイとイース、凶悪な兄妹の歪な笑みが、薄暗闇にギラリと煌めいた。

 

 

「躑躅咲、こんな夜中にハニーレインを置いてこんなところに来ていいのか?」

「うっさいわね。あたしだってストレスくらい溜まるのよ。たまにはこうして呑ませなさい」

 その頃、セイリアは桃代とバーで酒を飲んでいた。この時はまだ、当事者であるセイリアも、バルザスを除けば人間として最もその計画の近くにいる桃代でさえも、セイリアの身に迫る危機を知らなかった。

 


 

次回予告

バレット『どうやら、ひとまずはアスカと契約する魔物は出揃ったようだな』

風刃乃『そのようですね。……まぁ、私はアリスのことが最優先なので、飛鳥と契約していると言われるのは少し抵抗がありますが』

ハマード『ワタシは構わんがね。アスカという少年、なかなかに芯のある男だとは思わんかね?』

風刃乃『それに関しては同意しましょう。率直に言って、桃代は怪しい面が僅かに目立つ。彼女のような腹で何を考えているかわからない女よりは、まだ飛鳥にアリスを任せた方が安心できると思っています』

バレット『過保護なことで。オレは古くからここにいるが、モモヨに怪しい面など感じたことはないがな』

風刃乃『なるほど。……『銃』、貴方は人を見る目がないようですね』

バレット『なに?……図に乗るじゃないか、新入りの分際で。オマエのことは前々から気に食わんと思っていたが、ここらでここで生きるためのルールを叩き込んでやろう』

風刃乃『上等。私も貴方のように粗野な者と同類だと思われたくないと、以前から思っていまして。……表に出なさい、ノッポ頭』

ハマード『……争いとは、やはり醜いものであるな』

 

玉藻「次回、仮面ライダーO’!『DARK CLOUD』!」

 

玉藻「それで、あやつらは喧嘩をおっ始めたそうじゃのう?かっかっかっ!!ツキ、お主の魔物は血の気が多いようじゃなあ!!」

月白「本当にすみませんうちのバカどもが……僕からもよく言い聞かせときます……」




 墓脇です。XOの基本フォームが出揃い、ようやく話が動き出しそうですね。

 というわけで、前述の通り、XOの基本3フォームがついに全部登場しました。銃で二丁拳銃とライフル、刀で長刀と短刀ときてハンマーでトンファーとハンマーは流石に無理があったような気もしますね。(武器のニコイチ設定が完全に足を引っ張っている)

 そして、乙姫がついに魔物と契約できました。これまで本編では言及されてきませんでしたが、乙姫は霧核対策部所属のどの魔物とも相性が悪く、誰とも契約できずにいました。
 ちなみに彼女が契約した『音』の魔物・ビートは性格的にも能力的にも乙姫との相性がいいんですよね。でも戦場でギターかき鳴らすのはちょっとシュールだと思う。

 前回意味深にジャックになんか渡しといて後半で一切出番なかったのはよくないなあとも思いましたが、よくよく考えてみたらホワイトハウスの警備なんて国家レベルのとこに民間の素人に毛が生えた程度のやつ使わんかってなったのでよかったと思います。

 次回からは話が大きく動いていきそうな予感がしますね。サブタイトル的にも。
 サルヴァドールやその協力者がセイリアを狙ってくるわけですが、サルヴァドールの内通者である桃代すらそのことは知らないので、果たしてどうなることやら。
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