目の前には呪詛師として日本でそこそこ暴れまわっているクソババアがいた。
通称オガミ婆。
長ったらしい詠唱と触媒であるこれから降ろす人間の身体の一部を自身か、あるいは契約関係にある人間かが体内に取り込むことで自身の魂や肉体を降ろす人間の姿や能力に変化させる呪術、降霊呪術を使う呪詛師。
ババアは撫でながら、優しげに微笑む。ちなみに優しくはない。
「お前はアタシの取っておきなのさ。いっひっひっ」
うんざりするほど胡散臭い表情と仕草である。その言葉に愛情といったモノが塵の一つどころか1ミクロンもないことを知っている。
舐めるなよババア。殴りますよ? それはお互い様だぞ? こちとら、この邪悪極まりないババアとは本当に血の繋がっている人間である。その裏にどんな言葉が隠れているのか、想像するのは容易いのだ。
俺も二年くらい前にババアと同じ術式を受け継いだ。
呪術は縛りが強ければ強いほど、そこにある呪いが重ければ重いほど、命をかければ賭けるほど威力が増す。
術式から婆が考えてるその狙いも使い道もよく分かる。そこらから拾ってきた知らん孫(笑)みたいな連中とは違う本物の孫を、命を強制する縛りで俺を使うならさぞ強力な降霊が出来るだろうさ。
だがその逆も然りだ。
「俺もだよ。ババア」
日本に向かう飛行機の中で目が覚める。
うっすらと浮かぶ汗を拭うとため息を上に吐きながら座席に沈むのだった。
夢見悪すぎ定期。十数年くらい前の記憶である。
その後、ババアに呪詛師として殺しの技術を叩き…英才教育され、おかげさまで今では立派?な呪詛師である。
つーか、この環境でそれ以外になれんやろがい! ハイハイお先真っ暗真っ暗。
だがしかし、ならば突き抜けてしまえば良かろうなのだ。
降霊術には圧倒的な暗殺性能がある。故人とはいえ他人の身体に完全な変化を出来るのはあまりにも便利すぎる。最初から最後まで赤の他人が何も因果関係のない相手を完璧に暗殺して、目星がついた人間を捜査すればすでに死人という理不尽。完全犯罪待ったなしである。
呪術の認識が薄い海外では最早無双も無双である。科学の外側にある超能力みたいなもんでもうやりたい放題も良いところ。今もなおテレビに流れるニュースを見れば世界的実業家の訃報が世界中を駆け巡っていることだろう。
そしてその代わりに、俺の口座には……。いっひっひ。
まあ、唯一そこだけはババアには感謝してやらないこともないこともないこともないことも……な。
まあ、幼少からの鍛錬のおかげで呪術師の一級なら軽くねじ伏せるくらいには強くなった。我ながら才能がありすぎて怖いまである。こわいわぁ。ホントに怖いわぁ。あのババアですらもさっき見た悪夢の後一年くらいでもう教えることはないって投げ出す程だからね。
だがしかし、それでもあの五条悟には届かない。
アレがいる限り日本で呪詛師として活動するのはリスク高すぎ高杉君のまじムリゲー。出会い頭ピチュンとか笑えねーって。やってらんねー。
まあ、とか言いつつも? ありとあらゆる準備をした上で環境を整えれば紙一重の一勝は出来る自信はあるけど、ね。
なんちゃって!
いやウソウソ盛った盛った。無理でーす。
そんな感じだから海外で細々と凄腕暗殺者として程よく稼いで過ごしてた今日このごろ。珍しくババアからたまには顔を見せろとラブコール。そして今ここってやつである。
絶対に厄介ごとなのは間違いなし。それもきっと新宿京都百鬼夜行並みの荒事に違いない。こういう勘は外したことないのよね。それでも行く俺はなんて優しいのだろう。ババア孝行ここに極まれりってやつだ。
空港から出て、待ち合わせの喫茶店。
おやおや、早く来過ぎたかな? なーんて時計を確認していたら、二人の近づく足音が聞こえてくるではあーりませんか。気配から一方は間違いなくババア。もう一方は、なんとなく知ってるようで知らないような足音。
とりあえず、遅せーよババアと悪態付こうと目線をよこした瞬間、思考が停止する。
「やっ! 久しぶりだね。
「いや、誰だよお前」
ババアの隣に死んだはずの夏油傑が、いつもの穏やかな笑顔を浮かべて片手を上げて待っていたのでした。オウ、見るからに厄介なやーつ。
ババアやったか?
それ明らか五条悟の逆鱗ぞ?
ピチュンされんぞ?
やさしくして、ね?
ナナミン、生存してほしい?
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強化して生存
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原作こそ美しい