オガミ婆の孫(本物)   作:スターリー

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 領域が解かれる。

 拝神はそれで陀艮が祓われたことを察した。すると、向こうから強めな気配。ヒタヒタと歩いて現れたのは特級呪霊の漏瑚。消えゆく陀艮をそっと手に取りその死を惜しむ。

 

「逝ったか…………陀艮。後は任せろ。人間なんぞに依らずとも我々の魂は廻る。百年後の荒野でまた会おう」

 

 ……。それは羨ましい限りだ。

 

「……オガミ、貴様がいながらなんて様だ。やはり人間は使えんな」

「それ八つ当たりだって、それに迷子には言われたかねぇよ。来んの遅すぎんだろ」

「何だと、焼き殺すぞ貴様!」

 

 と、掴み掛かられ引き寄せられたと思ったら小声で話し出す。

 

「虎杖悠仁に関わるものは殺すな。半殺しにしろ。それ以外はどうしようと構わん」

 

 意外とクールじゃん? 

 いや、無駄にしない覚悟か。そういう目をしていた。

 

 そういや確か誰だか知らんが宿儺の地雷がいたんだったな。それとも半殺ししたやつを縛りに使うつもりかな? 

 まあ、どっちもか。呪霊のくせになかなか小賢しいこと考えんじゃん。いやー、はははっ。怖いねぇ~。こいつだけ頭一つ飛び抜け過ぎだろ。弱らせんの大変そうだなぁ。

 

 俺も小声で返す。

 

「俺に指図とか気に食わんけど、乗ったげるよ。そんで貸二つだ」

 

 掴み掛かる手を剥がしながら上手く宿儺の指を渡す。一瞬、お主? という顔をするがすぐに戻す。

 

「離せよハゲ! ここは俺の狩り場だっつ―の。シッシッ、失せろっ」

「ハゲとらんわ! ちっ、きっちり殺せ。同じ人間同士だからって手加減するんじゃないぞ」

 

 演技派だねぇ。

 

「誰にものを言ってんの。陀艮の敵討ちだからな」

 

 フンッとこちらに背を向けると漏瑚は先を急ぐ。

 これが漏瑚との最後の会話になるとは、その時の俺は微塵も考えていなかったでござる。

 

 さて、静かに傍観していた四人に向き直す。

 七海建人、禪院家の速いジジイ。高専の影の少年と呪具の少女。その誰もが死にかけで肩で息をする状態。

 正直な話、俺もう目的達成したから羂索のところに帰りたいのだが、そういうわけにも行かないだろう。

 

 こいつ等の目的は羂索が持ってる獄門疆。

 俺がここで「じゃ!」って言っても同じ方向に一緒に帰ることになる。気不味いというか、それは流石に駄目だな……。

 

「そんな状態で俺の相手する気か? 逃げんなら追わないよ―」

 

 俺の言葉に少年少女が吠える。

 

「ざけんなっ! 誰が逃げるか!」

「お前はなんでそっちの味方するんだ。人の世が終わるかもしれないんだ! お前たち呪詛師だってただでは済まないはずだ!」

 

「呪詛師の差し引きなら僅かにプラスが大きいね。それに君等が守ってみせろよ。人の世が終わるってんなら、バランスを崩した張本人とはいえ何もかも五条悟一人に背負わせてきたツケってやつだ。今この状況はまだ五分五分のはずだろ?」

 

 まあでも呪霊の世も来ない感じがする。

 詳しくは聞いてないけど、きっと羂索は目的はどうあれ術師の世を起こそうとしてる気がする。

 

 いや、ほんとに目的はどうあれね!! 多分個人的な国家規模の実験とかそんな感じだと思うけど!! 

 

 まあ、それは置いといて。

 誰にも知られず影で死んでいく術師たち。彼らの見えない犠牲の上で成り立つ平和。それを都合良いとする世界。

 今の状態はクリーンともフェアとも言えないだろうさ。そいつをぶっ壊す良い機会でもあるだろ。少なくともそいつ等の、お前らのためにはなると思う。

 

 俺は呪詛師だから関係ねぇけど。

 

「呪詛師に何を言ったところで無駄だと何故わからん。オマエ、殺されたくなければそこをどけ」

「殺れんの?」

 

 その瞬間、ジジイが目の前にいた。

 さっき薄めにだが見た術式。その手のひらが触れると薄い板のような状態になって動けない。

 

 でも、意識はある。なら呪力ガードはできるな。

 続けざまに蹴られて開放される。

 このハメ技みたいな動けない状態は長く持たないと見た。たとえば、切りよく一秒以内とか。

 

「防ぎよったか」

「早く動く術式。あの拘束するやつは手のひら当てないと駄目だろ。じゃなきゃ俺なら蹴りながら拘束してまた一撃入れる」

「ほう。実力は、確かなようだな」

 

 おっ、当たったみたい。

 バレたなら仕方ないと術式の開示が始まり、迫る七海の一閃が掠りながら避ける。前よりも数段鋭い斬り込みになってる。今の間に游雲を回収した少女と少年が犬を呼び出して三位一体の連携を軽くいなす。

 

 あれは十種影法術……まじか。

 ジジイも強いし七海も相当レベル上げたみたいだし? 

 

 てかこのチーム潜在能力やべぇじゃん。疲労を回復させないためにも長引かせるのは悪手だな。

 

 ジジイは殺してそれ以外は半殺し。一気に片付けるとするか。

 

「いっひっひ。これは他の誰にも見せたこと無いんだぜ」

 

 ムカデの式神が現れる。俺に這いずり上がるとその足が俺の脊髄にピッタリと食いつく。

 呪霊の血が入ったカプセルを肩に頭を乗っけてるムカデに食わせた。

 

 誰かが止めろと叫ぶがもう遅い。

 

 

 

「降霊呪術、部分憑依、『■■■■』」

 

 

 それは俺の術式拡張で生まれた成果の一つ。

 

 呪霊の魂を人にどうこうするのはあまりに危険。

 そこに夏油パイセンからの助言。呪霊操術の極ノ番による術式の抽出が、術式だけなら利用可能だと証明してくれた。

 

 それを俺の解釈で可能にするのがこのムカデ型の式神『百々魂(ももこ)』の存在である。

 呪霊の術式が式神に宿り、式神はそれを俺と共有出来る。

 

「領域展開、蕩蘊平線」

 

 ジジイが止めにかかるが片腕になっていなければ止められたかもね。

 

「さあ、陀艮。敵討ちをしよう」

 

 

 南国の海、晴れ渡る蒼天。

 

 そこは死の楽園。




禪院直毘人にはストーリー上どうしても退場してもらう必要が…。じゃないと禪院家なら死ぬよりひどい隠居生活なりそうだし…

次回、ふるべゆらゆら

わーい日間ランキング三位だー!!
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