「君も私と来るかい? 拝神」
羂索はそう言ってこちらに手を差し伸べる。
俺に、呪詛師にそんなことをする馬鹿を見るのは二人目だ。そいつは奇しくも同じ姿をした別人で夏油傑という男だった。
子供には子供にしか出来ない黒い仕事がある。
助けを求めるな。他人任せな考えは死に直結する。甘えは強いやつの特権で、弱みを見せれば付け込まれる。気を抜くな。嘘を見抜け、すべての情報は疑え。仲間だと思うな。心を閉じろ。隙を見せたやつが悪い。その末路を幾つも知り尽くしているだろう。
そんな世界で生きてたら誰かを信用するなんて命取りな行為はしなくなる。
そんな時、大人に成りかけの生きる指針として答えを決める時期に夏油傑と縁があった。
バリバリ人間不信を発揮してたから、結局その手を握ることはなかったが仕事で頼るうちにそいつの人となりを嫌でも分かってくる。
そいつは心底馬鹿だった。
どうしたって手からこぼれ落ちるものを必死に守ろうとする奴で。
誰より大人のくせに誰よりも子どものように諦めの悪い奴で。
俺よりも苦しんでるくせに目の前で苦しむ誰かを助けずにはいられない。
夏油パイセンは人より痛みの許容量が大きいだけなんだ。隠すのが上手いから見た目で分からないだけでちゃんと傷つくし、誰より苦しんでる。ただ我慢強いだけなんだ。
何が大義だ。変な思想で言い訳しやがってチキショーめ。
くそったれ。大馬鹿め。狂ってしまえれば楽なのにそれさえ出来ないほど強かった。みんなが斜めに見てるものを真っ直ぐ見つめるほど真面目だった。優しすぎたんだ。向いてねーよ呪術師。
そんな奴だった。
でも、だからこそ俺はあのとき夏油パイセンみたいな人間がいるって知って、救われていた。
救われてたんだよ。夏油パイセン。
人でなしの俺だけど少しだけ分かることがある。
きっとお互いに誰にも「助けてほしい」なんて言えなかった。言えない位置にいた。だから、そんな心の悲鳴なんて聞こえてないフリをしたし、そんな声の上げ方も分からなかったんだ。
そうして、あんな無茶を通した。
そこに気がつけば良かった。夏油パイセンは強いやつだから助けなんて要らないかもしれない。なんて思わずに助けに行けばよかった。たとえ仕事外のことでも、五条悟にかち合ってもそうするべきだった。
「崇。もし私に何かあったらあの子達のことを気にかけてあげてほしいんだ」
…………。
しょうがないからパイセンの思想になんてクソほども興味ないが、アンタの家族くらいなら俺が少しだけ助ける。
だから安心して死んでろ。この手の後悔するのはもう懲り懲りだかんな。
「美々子! アンタは先に行きな!」
「でも! そしたら菜々子が…………!」
見覚えある双子を見つけるとその子達を追っている呪霊どもの首をまとめて落とす。
「なんでまだこんなとこに居んの? トロ過ぎ」
「はぁはぁ、アンタ、拝神?」
「いまさら! 私達に! 何しに来たの!」
「別に、ただの恩返しだよ。夏油にな」
ギャーギャー騒ぐ二人を脇に抱えて街を駆ける。
これから術師が表舞台に上がる世界になる。
それを不都合だと認識するのは隠してきた連中だ。これまで影で死んで逝った者たちの供養ができるし、幽霊の正体見たり枯れ尾花だ。解明が進めばそれまで危ないとされたものだって人の力に変わる。今までの歴史がそれを証明してる。表と裏で呪力そのものの研究も進めばインテリどもが言っていた世界以外の可能性だって十分にあり得る。
何より普通の人とは少し違う見えないものが見える、そんなことで迫害されてきた子たちには希望の光になるはずだ。
なんてね。
前回のあとがきでこのあとの展開で期待することを感想で教えてほしいというお願いをしていたのですが、そういう感想はハーメルンの規約的にアウトだよとご指摘がありました。してくださった方、ありがとうございます。本当に助かります。
感想でそんな感じの感想がありましたら、こちらがお願いして応えてくださった優しい方々ですので報告等せずスルーしていただけると幸いです。
そして書いてくださった方々にはこちらの我儘ばかりで本当に申し訳ないのですが、嫌な思いをしてほしくないのでそう見えないようなフワッとした表現に変えていただくか削除する方向でお願いします。
感想いつも楽しみに読んでます。また書いて貰えるととても嬉しいです。
こちらの確認不足でした。本当に申し訳ございませんでした。マジ、スンマセン!
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