オガミ婆の孫(本物)   作:スターリー

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天元様と星漿体の詳しい話を聞いて最強二人は任務に向かう。家入パイセンは、じゃっ私帰る!っと迷わず帰路へ。まさかの夜蛾センセーとタイマンである。

 

「ところで崇、お前学校はどうした」

「イジメ?とかしてるイキってる連中に絡む遊びしてたらその親玉?みたいなの出てきて全員まとめてボコったら停学んなりやした!」

 

実はパイセンズにはナイショの話。五条家は俺に関して完全にスルーする方向らしく気にする必要はなさそうだけど、気にかけてくれる夜蛾センセーにはバレそうだしゲロっておく。

 

「まったく。どおりで最近高専に入り浸っていると思ったら、理由はそれか!」

 

いやぁ、勉強しようにも学者の魂も解析済みだから学ぶところないっていうかそれより詳しいまであるし、進路も高専一択だから身が入りませんのよね。

 

気分転換してたらクラスメイトが絡まれててちょうど良いからそいつ等をオモチャに、と言い訳しようとしたところで呆れた顔の夜蛾正道を見て察する。

はっ!ヤバい!エマージェンシーコールだ!長い説教が始まる予感!こちらから話題を変えるぜ!

 

「それにしてもさっきの話!星漿体の少女の護衛と抹消。酷いこと言うんだ。夜蛾のセンセーは」

「……なんのことだ」

「天元様と星漿体。今どき生贄を捧げるみたいなクソみたいな話でしょ。それを学生に、子供二人に任せちゃうんだ。へぇ?」

「その言い方は天元様に失礼だが否定はしない。確かに事実かもしれんがそれで多くの人々が助けられているのもまた事実だ。……あの二人なら今回のことも成長につながると信じている。悟だけならともかく傑がついているからな」

 

そりゃしっかりしてるしマトモですけどね、夏油パイセン。だからこそ危ないと俺は思うんですよ。

だってまだ俺たち多感な十代の半ばですのよ?

 

「五条パイセンは夏油パイセンに善悪の判断を委ねてる。マトモな夏油パイセンなら生贄を、星漿体を助けるために動くと思うんすけど。絶対に。二人を呪詛師にしたいの?」

「つまり何が言いたい」

「二人が星漿体を助ける選択をしたときに二人の立場が悪くならないように保険を作っておくのがセンセーたち大人の役割なんじゃないんですかね」

「悟たちがその選択をした場合を考慮して、前もって天元様の同化中止の公式な許可を取ってこい、と言う事だな?」

「ういうい」

 

なんか遭ってあの二人闇落ちして呪詛師になったら最悪日本滅ぶよ!

夏油パイセンの呪霊は通常兵器で戦えてもホントの意味で殺せないし、タイマンで五条パイセン突破出来るやついないだろうし、タッグ組まれたら成功するって意味で三日天下ですよ!

 

「さっきも話をしていた通り最悪億単位で人が死ぬ。この国の人間が滅ぶかもしれん。だから申請したとしてもその許可が降りるのは不可能に近いだろう。天元様が人類の敵になったとき誰もその責任をとれんからな」

「最悪の可能性の話でしょ?正直やってみなきゃどうなるかわからないが正解のはずじゃないすか。それに俺からすれば人一人の命を殺し続けなきゃ存続出来ない世界なんて滅んで当然なんじゃないんですかね。今まで天元様に負債を押しつけ続けてきたツケを払うだけのことですよ」

 

最小の犠牲で最大を生かす。

それがきっとこの話の本質でそれが正しいか否かでぶつかっている。俺が気に食わないのはその最小の犠牲をなくすための努力を術師側がしてないことだ。

どのみち二人が呪詛師になったらそれこそ日本が滅ぶ。なら博打したって試すだけの価値があるじゃない?

 

「崇。お前の気持ちもわかるが自分と自分に関わるもの以外の命も重いということも覚えておけ。俺達の腰が重いのはそれぞれに守りたい命があるからだと頭の隅に置いておくだけで良い」

 

だから慎重にならざるを得ない。

変革に伴う犠牲だって安くない。自分の選択で家族、友人、他の誰かの命を奪ってその上で無意味に終わる可能性だってある。

なら想定される最悪の事態さえ避けられれば今生きる人々を守れる選択だって正しいはずだ。少なくとも現状を維持することは正しくなくとも間違いではない。そう考える人間は多い。

 

「だがまあ言いたいことは分かった。もともと出来る限りはするつもりだった。だが、お前が望むところまで出来るかは保証できん。期待はするなよ」

「へいへーい。まあまあまあ、その交渉には俺も協力いたしますんで上で胡座をかいてる連中にいっちょ目にもの見せてやりましょうぜ!」

「頼むから大人しくしていろ!」

 

それにしても、と夜蛾正道は話を続けるとニカッと大笑いして頭をワシャワシャと撫でてくる。その腕を掴んで抵抗を試みるが動かない。つっよ!!

 

「なぁんすかぁ!?!?」

「いや、なに。ずいぶん二人に懐いているんだな」

「はー?そんなんじゃねーし!別に懐いてねーし!」

 

夜蛾正道はその細い目を更に細める。

こうして話していると子どもとは思えない言動をする。だがそれは大人にならざるを得ない世界で生きてきた証明だ。

 

両親に甘えたり、友達と遊んだり、失敗と成功を繰り返す大切な時間を、そういう一つ一つの大人になるための過程をすっ飛ばして今まで生きていたのだろう。

 

五条家はともかく、呪詛師として生きてきた拝神崇を普通の中学校に通わすことに異を唱える術師は多かった。その懸念は正しい。実際夜蛾正道が指導せずに悟たちと行動を共にさせているのは拝神崇が万が一呪詛師としての一面を見せたときに即時処理をするためという裏事情がある。

 

だが、少なくとも関わった人間だけとはいえ他人を思えるこの子供なら更生の余地があると、そう思えてしまう。

 

「崇。お前が呪詛師だった過去は消えることはない。これまで犯した罪は消えない。これからも償っていかなければならない。だが、お前はまだまだ子供だ。別の道に進むことだって出来るはずだ」

「まさか。罪は死んでから償いますよ。俺は術師です。どれだけ恨まれても、憎まれてもその道を進むつもりです。俺には俺の望みがありますから」

 

よくも悪くも夜蛾正道は暗がりに立つ人間を理解できない。それは良いことだ。そうあるべきで、ある意味当たり前なことだ。

 

ただ拝神崇にとって夜蛾正道が指し示してくれているその道は、自らの意思で他人の命を奪ったときから潰えている。

術師が行うソレには責任はあっても正当性がある。大義があって、理由があって、正義がある。いくらでも言い訳が出来る。

 

呪詛師は根本が違う。

他人を慈しみ尊ぶよりもそれを否定して奪ってでも己の我を優先した。他の誰でもない自分で選んでその道を進んだ。そこに言い訳をしてはならないし出来ない。

殺人に快楽を感じるタイプならともかく拝神崇は違う。

 

オガミ婆の元で呪詛師エリートしてたらそうなってたかもしれない。そこから抜け出して子どもたちのおかげで人間性を取り戻しかけていたときだった。

地獄を見た。現実を知った。絶望を味わった。

 

今でも夢に見る。

 

命を奪う感覚。人が物に変わる光景。手に染み込んだ血の匂い。

 

何を今更と後悔すらおこがましい。

本能による単純な殺戮ではなく、理性を持って利害で命を奪う。その人間にしかない穢れ。あの世界で生きていると人間が呪霊を生み出すその理由がよく分かる。

この醜悪で残酷で最低な行動は人間しか出来ないだろう。

 

引き返せない、もう戻れない、言い訳できない。

 

覚悟せざるを得ないその呪いの重さを。

 

正直それを知らない人間が眩しくて仕方ない。

 

 

 

 

ただ

 

 

 

だからこそ

 

 

 

拝神崇にしか出来ないやり方が、役割がある筈だ。

 

 

自分でも気づかない心の奥底で思う。

 

それは暖かい記憶。大切な思い出。

 

『悟、硝子、崇。桃鉄やろう』

『おっいいねぇ!』

『えーまたやるの?良いけど、今度は私が勝つし』

『桃鉄?なにそれ、美味しいの?』

『いや、美味しくはないね。まあ、やればわかるさ』

『何年やる?うしっ、じゃあ初めてやる崇が決めて良い』

『何年あるの…えと、ほうほうなるなる。それじゃあもちろん百年やるぅー!』

『『『マジ?』』』

『え?マジマジ!あー?さてはビビってんだ三人とも!へー?』

『あーん?はっいいだろう!そっちがその気なら受けてやろうじゃないの!』

『えぇ?本当に大丈夫かい?いやまあ私も付き合うけども………』

『私も暇だしやるよ』

 

『『『『あ゛あ゛あ゛あ゛終わらねぇぇ』』』』

 

こんなもの、あのパイセンたちには背負ってほしくないなぁ、と。

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