拝神が五条家に侵入する前、調べに調べまくって慎重に慎重を重ねた計画で五条悟が現れることがないタイミングで挑むにしても、万が一を考えて出来る限りの準備をしてきた。
「うおおお!簡易領域使えたんかワレェ!」
「当たり前だろーが!つか使えねーわけないでしょ!」
「だって降天!蒼で無理やり抜けてきたじゃん!!!」
「そりゃどっちも俺にも出来るって煽りに決まってんじゃん?」
「ふざけんな!ばーか!いっぱいがんばって来たんだぞぉ!弱者のための領域だぞぉ!今から使うの禁止だかんな禁止!」
「知るか!!」
いくつかバフ系の術式を使い捨ての縛りで自らを強化したり、この日に備えて呪力制限して過ごす縛りで今現在の一時的な呪力を上げたり、今使っている術式だって拡張は勿論、制約と誓約による縛りで効果を高めた対五条悟専用カスタマイズ。
「あんた!絶対!呪詛師向きじゃん!性格悪いし!人を人だと思ってないし!ちょっとタンマ!」
「おい、言葉選べよ、今際の際だぞ。タンマなし!」
本当はもっといっぱい術式を用意したかったが五条悟の無下限にそもそも通用する術式なんて数少なければ目をつけていた術式もそう都合よく見つからず、まあでーじょーぶでーじょーぶ!!だって会わないし☆って甘く見積もったらこの有り様である。
「つかなんでこんなに騒いでんのに五条家の他のやつでてこんの?」
「あ?知らねー。いつものことだしな。まっ実際俺一人で十分つーかいても邪魔」
「…………仮にも次期当主ですよね。そもそもなんで出てくんの?あんた絶対雑魚倒して最後に出てくるボス役じゃん」
「あん。そりゃ……あれ、なんでだろーな…」
「五条家の闇を見た」
幸運なことに逃走用の術式の遺物はある。
ただそれを引き出すまでの時間を、猶予をあの五条悟が与えるはずもない。そして憑依させたところですぐにバレる。タイミングが大切である。
(このままだと呪力が持たないかもしれぬ)
(このままだと脳が持たねーかもな)
「そのままじゃあ呪力使い果たしちゃうんじゃねーの?」
「そっちこそさっきから冷や汗出てきてんじゃァん?」
「はっ!まさか!あと何時間でも戦えるっつーの!オマエこそ術式だけで体術に自信がねーんだろ?」
「あーん?いいぜそのやすい挑発に乗ってやんぜ!」
((ラッキー!!))
大きな隙を作るために大技を決める必要がある。
領域は使えるがまだ必殺を組み込む領域に不慣れで満足に使えなければ未熟も未熟で押し合いに負けるからできない(五条悟が使えるかどうかは不明)。
ならばもう領域をきっぱり諦めてそれを縛りに活かすのが拝神流なのだ。
この術式に領域を使用しない縛りで色々底上げしていた。それでようやっとまともにやりあえている事実。この選択は間違いではなかったらしい…。アブネアブネ
そして現時点、拝神崇、五条悟はどちらも同じく決定打らしい決定打を決められず、呪力とか脳の処理とか持たなくね?って感じで、なんかもう簡易領域の中でゴリラ廻戦を始めて数分。
「オマエ、何歳なの?」
「えー?多分〇〇才」
「まじか!年下じゃねーか」
若干仲良くなり始めていた。
互いに距離を空けて見合う。
「ちょっと聞きたいことあんだけど」
「何でしょう?」
「その呪力。どうなってんの?」
………。
「どどどどう、とは?」
「めちゃくちゃ動揺してんじゃねーか。その膨大な呪力量と出力。どっかの名家のハグレ者かと思ったけどそれなら俺が知らないはずない。そんでよーく見たらオマエ」
「………。」
「混じってんじゃん。しかも何人もの呪力が」
「ええ?六眼ってそんなのも観えんのぉ……」
「説明してけよ、冥土の土産に」
「………。いいよ、教えたげる」
愛より歪んだ呪いはない。
拝神崇は生きなければならないという強迫観念に囚われている。
その魂には生き残らなければならないという呪いが刻まれている。
その心の中に生き抜かなければならないという約束がある。
それは今より数年前の出来事。
『たかちゃん…おきて、ねぇ、おきて!』
裏の世界で生きていれば、命の危機なんていくらでもある。幼い子供になら尚更。
『タカシ!死んじゃやだよ!タカシ!』
血溜まりに沈む拝神崇の周りには契約状態にある無垢な魂が跳び回る。
『どうしよう!どうしよう!このままだと死んじゃう!』
拝神崇は咎を背負っている。
『起きて!起きて!死んじゃだめ!』
背負い続けている。
『みんな落ち着こう。僕に考えがあるんだ』
逃れることの出来ない咎を。
『タカシが僕たちを繋ぎ止めてくれてるように、次は僕たちがタカシを繋ぎ止めるんだ』
何故ならば拝神崇のその魂に幾人もの子供の魂を取り込んでいる。
『大丈夫。やり方はタカシの知識から学んだし、タカシの術式を借りればできる。でも、そうすると僕たちは二度とタカシに会えなくなるかもしれない。みんなそれでもいいかい?』
呪力は魂からこぼれ落ちるエネルギー。
ならば複数の魂から一つの体に供給され続けたならそれはどれほどのものか。複数の魂が融合し強化されたその出力はどれほどのものか。
『うん。決まったね。なら僕たちでタカシを助けよう』
それはまさしく拝神崇の膨大な呪力と出力の秘密。
やろうとするならば恐らく夜蛾正道のパンダよりおぞましくたちが悪い。美談にしてはならない、誰にも伝えてはならない最悪の外法。
「みんな…まって、おれ…を…ひとりに………しないで」
『大丈夫。タカシは一人じゃない。ずっと一緒さ』
『あたし達の分まで生きてね。約束だよ』
『ぼくたちのことなんて忘れていいからタカは幸せになって』
『みんなタカシのことが大好きなんだから。後悔させないでよね!』
『たかちゃん、生きて』
真人の無為転変のとおり、複数の魂をかけ合わせると拒絶反応で反発する。拝神崇はその拒絶反応がまったくない魂のかけ合わせ、魂の融合の成功例。
取り込まれた魂側が自ら望み、命をかけた縛りで成り立つ大禁呪。
「駄目だよ!みんな!そんなの!」
膨大な呪力で守られたおかげで一命を取り留める。ただその代わり、拝神の周囲には誰一人居なくなった。
「嘘だ!嘘だ!こんな…の、あり得ない!みんなが居なくなったら俺が生きてる意味なんて」
自身の魂に複数の魂が混ざり合っているのが見える。呼吸が粗くなる。その事実がどうしようもなく拝神を苦しめる。
「な、んで、なんで、なんで!俺は!壊してばっかで!みんなに貰ってばかりで何も!何一つ!返せてないのに!なんで!どうして!!!」
それは拝神崇の強さであり、弱さの証明。
子供たちはきっと拝神と一緒に生きている。そう思っているだろう。
「俺が、弱いからだ………!俺が弱いせいで!何も守れないで!」
だが、拝神はこう思う。
恩人を二度も自分の手で殺してしまった、と。
狂えてしまえば楽だった。壊れてしまえれば楽だった。だがもうそれすらも許されない。
「ふざけんな!ふざけんなよ俺!」
かくして、孤独となった拝神崇は自らを呪い続ける。
「あああぁぁぁぁァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!」
みんなを生き返らせてみせる。
それだけが心の中にただ一つ残った決意。
そのためには強くならなければ、戦わなければ、生きなければならない。
生かされた理由を、自分が生きている意味を意義を価値を証明するために。
拝神崇はなんでもないように話し終える。
「そんな感じ。これで、話は終わりね。もういいでしょ。この戦いも次で終わりにしよ」
「……ああ」
話をする時間のおかげでだいぶ呪力を回復できた。
この話を聞いて五条悟がどう思うかなんて知ったこっちゃない。聞き出してきたのはそっちだし、同情するようなタチでもないでしょ。
ただ、こっちの覚悟はとっくの昔にガンギマッてるってだけの話。
「
「位相、黄昏、智慧の瞳」
呪力が爆発するようにぶち上がる。
「極ノ番」
「術式順転、最大出力」
これが最後。
「黒」
「蒼」
すべてを飲み込む蒼と黒の巨大な球体が衝動する。
この戦いの行方によって拝神の人生は大きく左右されるのだった。
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生存ルート、了
天内理子のルート分岐
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生きろ そなたは美しい
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定めならね 従うしかないんだよ